社会福祉施設に入所する高齢者や体の不自由な方の多くは、火災が起きても自力ですぐには避難できません。
そこで消防法令は、燃え広がりにくいカーテンやじゅうたんなどの防炎物品の使用を義務付けています。
昭和61年に社会福祉施設「陽気寮」で死者8名を出す火災が起きたあと、消防庁は追加の通知を出しました。
その通知が積極的な使用促進を求めたのは、実は法律の義務に入っていない寝具類でした。
うちの施設にもカーテンやじゅうたんはありますが、防炎品かどうかまでは確認したことがありません。
それに寝具まで防炎にする必要があるとは知りませんでした。
カーテンやじゅうたんは消防法令ではっきり義務になっています。
寝具は法律の対象外ですが、施設だからこそ積極的な使用が求められています。
義務ではないなら、後回しにしてもよいということでしょうか。
出火件数のデータを見ると、寝具は特に注意が必要な物品です。
通知の中身から順番に確認していきましょう。
- 通知は昭和61年7月31日に社会福祉施設「陽気寮」で発生した死者8名の火災を受けて出されました
- 対象になる物品はカーテン・じゅうたん等の法定の防炎物品と、寝具類などの任意の防炎製品の2種類です
- カーテン・じゅうたん等は消防法施行令第4条の3が定める義務で、社会福祉施設等にも適用されます
- 寝具(ふとん等)は法律が定める防炎物品のリストに含まれておらず、使わなくても法令違反にはなりません
- それでも出火件数データで上位を占める寝具類には、行政指導により積極的な使用促進が求められています
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目次
社会福祉施設の防炎対策はなぜ通知で強化されたのか

まず何が起きたのかを確認します。
昭和61年7月31日の火災の直後、消防庁はまず同年8月8日付の消防予第107号で防火安全対策の徹底を指導しています。
今回取り上げる消防予第150号は、その追加として同年11月11日に出されました。
高齢者や身体の不自由な方など自力避難が困難な者を収容する施設ほど、いったん火災が起きたときの人命危険が高いという認識が背景にあります。
だからこそ、出火防止対策の一環として防炎物品・防炎製品の使用促進が特に重要だと位置付けられました。
通知が2段構えだったとは知りませんでした。
最初の通知だけでは足りなかったということですか。
最初の通知は防火安全対策全般の徹底でした。
今回はそのなかでも防炎物品・防炎製品にしぼった追加の指導です。
どの物品が法律で定められた防炎物品にあたるのか

まず義務の範囲を確認します。
消防法施行令第4条の3第1項は、社会福祉施設等が含まれる(6)項をはじめとする建物を、防炎物品の使用が必要な防火対象物として指定しています。
同条第3項が定める物品はカーテン・布製ブラインド・暗幕・じゅうたん等・どん帳等の舞台幕・工事用シートなど、リストが決まっています。
このリストに載っている物品には、燃え方の基準(残炎時間・炭化面積など)を満たした防炎表示付きのものを使わなければなりません。
逆に言えば、このリストに載っていない物品には、この義務そのものが及びません。
うちの施設のカーテンとじゅうたんは防炎表示を確認したことがあります。
他にも義務になっている物品はありますか。
リストにあるのはカーテンやじゅうたん等・暗幕・舞台幕・工事用シートなどです。
次は、このリストに入っていない身近な物品を見ていきます。
通知は寝具類にどんな取り組みを求めているのか

まず示されたデータを確認します。
通知が示した昭和59年のデータでは、ふとん・寝具類が全体の11.0%で第3位、カーテン・じゅうたん等の繊維製品が5.8%で第7位を占めています。
つまり義務の対象であるカーテン等より、寝具類のほうが出火件数そのものは多いという実態があります。
そこで通知は、寝具類等の防炎製品についても㈶日本防炎協会による試験と防炎製品認定委員会の認定という別の仕組みを使って、使用促進を積極的に指導するよう求めました。
これは消防法が定める「防炎表示」ではなく、民間の認定マークによる任意の取り組みです。
寝具のほうが出火件数が多いとは意外でした。
認定マークはカーテンの防炎表示と同じものなのでしょうか。
別の仕組みです。
日本防炎協会が試験と認定を行うマークで、次でその違いを詳しく見ていきます。
寝具が防炎品でなくても法令違反にならないのはなぜか

義務と任意の境目を条文で確認します。
消防法第8条の3が定める防炎規制の対象物品は、令第4条の3第3項に列挙されたカーテン・じゅうたん等・暗幕・舞台幕・工事用シートなどに限られます。
寝具・座布団・クッションなどはこのリストに含まれていないため、防炎表示のない寝具を使っていても消防法違反にはなりません。
だからこそ、通知は法律の義務ではなく行政指導という形で、日本防炎協会の防炎製品認定マークが付いた寝具の使用促進を呼びかけています。
「義務ではないから後回し」にしてしまうと、出火件数の実態から離れた対応になってしまいます。
義務ではないと聞くと、つい後回しにしてしまいそうです。
立入検査でも指摘はされないのでしょうか。
法令違反としての指摘はできません。
ただし出火件数の実態を踏まえた指導は行われるので、早めの対応をおすすめします。
施設は明日から何を確認すればよいのか

どちらも見落とさないことが大切です。
まずカーテン・じゅうたん等の防炎表示を1枚ずつ確かめ、表示がなければ法令違反として交換します。
次に寝具類は、日本防炎協会の防炎製品認定マークの有無を基準に、計画的な入れ替えを検討します。
通知は社会福祉施設だけでなく、医療施設や旅館・ホテル等の就寝施設にも同じ考え方を広げているので、系列施設があれば横展開しておくと安心です。
義務と任意を混同せず、根拠を説明できる状態にしておくことが、立入検査でも施設の信頼にもつながります。
義務と任意の違いがはっきり分かりました。
まずはカーテンの表示から確認します。
寝具は認定マークの有無を基準に選んでください。
系列の医療施設や旅館があれば、そちらにも同じ確認を広げましょう。
よくある質問
まとめ
義務と任意の違いがはっきり分かりました。
まずはカーテンの表示から確認します。
寝具は認定マークの有無で選んでいただければ大丈夫です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 社会福祉施設等における防炎物品等の使用促進について(昭和61年11月11日 消防予第150号)
- 社会福祉施設における火災予防対策について(昭和61年8月8日 消防予第107号)
- 消防法第8条の3第1項
- 消防法施行令第4条の3第1項・第3項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





