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特定建築物定期調査の屋上まわりはどこを見るのか|屋上面からドレーンまで5つの検査項目を解説

屋上まわりの劣化診断はどこを見ればよいか

特定建築物定期調査の「建築物の外部」には、屋上とその周辺だけをまとめた区分があります。
屋上面・パラペット・笠木モルタル等・金属笠木・排水溝と、隣り合う部位でも調査方法や判定基準が少しずつ違います。
雨水を直接受け止める場所だからこそ、劣化を放置すると階下への漏水や仕上げ材の落下につながります。
本記事では、屋上まわりの5つの検査項目について、確認するポイントと判定基準を解説します。

うちのビルの調査報告書に「屋上面」「パラペット」「笠木」って別々に書いてあるんですが、そんなに細かく分かれているんですか。

はい、屋上まわりだけで5つの検査項目に分かれています。
今日はその全部を順番に見ていきますね。

笠木って、パラペットの上に乗っている部分のことですよね。

その通りです。
金属製かモルタル製かで見るポイントが変わる点も説明します。

この記事の結論
  • 屋上まわりの調査は屋上面・パラペット・笠木モルタル等・金属笠木・排水溝(ドレーン)の5項目に分かれています。
  • いずれも目視等、またはテストハンマーによる打診等で劣化を確認します
  • 屋上面は歩行上危険なひび割れ・反り、または伸縮目地材の欠落による植物の繁茂が要是正の基準です。
  • 笠木・金属笠木は著しい白華・ひび割れ・錆・接合部の緩みがあれば要是正になります。
  • 排水溝(ドレーン)の不具合は屋上面全体の劣化に直結するため特に重点的に確認します

屋上まわりの劣化はここを見るという5項目のチェックポイントを示す図解

屋上面の防水は劣化するとどうなるのか

屋上面の断熱ブロックのひび割れを目視で確認する調査員
雨水を直接受ける屋上は、防水層だけでなく、その上の保護層まで含めて調査します。
断熱ブロックやクリンカータイルが割れると、そこから水が浸入するきっかけになります。
調査1 屋上面のうち、断熱ブロック、クリンカータイル、防水モルタル等の仕上げ材にひび割れ、欠損、浮きなどがないか、また伸縮目地材の欠落がないかを、目視等により確認する
判定1 歩行上危険なひび割れ若しくは反りがあること、又は伸縮目地材が欠落し植物が繁茂していることは要是正となる。
歩行上危険かどうかが、屋上面の要是正を分ける境目です。
仕上げ材はアスファルト防水層を守るための保護層であり、割れても即座に防水性能が失われるわけではありません。
ただし伸縮目地材(エキスパンションジョイント)が欠落すると、そこから雨水や植物の根が入り込み、保護層自体が押し上げられて破壊されます。
点検では、ひび割れの深さより歩行時に足を取られる段差があるかどうかを重点的に見ます。
気になる箇所を見つけたら、次回調査を待たずに管理会社へ相談するのが実務的な対応です。

屋上のタイルにひびが入っていても、防水シートは無事なんでしょうか。

保護層の下にアスファルト防水層があるので、すぐには漏水しないことが多いです。
ただし目地の欠落は放置しないほうがいいです。

パラペットの立ち上り面はなぜ打診まで必要なのか

パラペットの立ち上り面をテストハンマーで打診する調査員
屋上の周囲を囲む立上り壁をパラペットといい、防水層の端部が入り込む重要な部位です。
表面が保たれていても、内部でモルタルが浮いていることがあります。
調査2 パラペットの立ち上り部について、ひび割れ、エフロレッセンス(白華)、欠損、浮きなどがないかを、目視等及びテストハンマーによる打診等により確認する
判定2 モルタル等の仕上げ材に著しい白華、ひび割れ等があること、又はパネルが破損していることは要是正となる。
白い粉のような跡(エフロレッセンス)は内部の水分移動のサインです。
パラペットは建築基準法施行令第39条が求める「風圧や地震による脱落防止」の対象部位で、外装仕上げ材と同じ考え方で調べます。
表面のひび割れだけでなく、テストハンマーで叩いたときの浮き特有の乾いた音がしないかを確認するのがポイントです。
押えレンガやモルタルの破損が進むと、屋上を利用する人の頭上や道路側に落下する危険もあります。
高所からの落下物は歩道に面した側で特に注意が必要な項目です。

パラペットの表面はきれいなのに、指摘を受けたことがあります。なぜでしょうか。

打診で内部の浮きが見つかったのだと思います。
見た目だけでは分からないので、打診の記録も報告書で確認してみてください。

笠木モルタルの劣化はどこで見分けるのか

パラペット天端の笠木モルタルのひび割れを確認する調査員
パラペットの天端を保護する笠木には、モルタルや人造石研ぎ出し仕上げ(人研ぎ)が使われることがあります。
天端は雨がかりが多く、劣化が進みやすい部位です。
調査3 笠木モルタルや人造石研ぎ出し仕上げ(人研ぎ)について、ひび割れ、エフロレッセンス、欠損、浮きなどがないかを、目視等及びテストハンマーによる打診等により確認する
判定3 モルタル面に著しいひび割れ、欠損等があることは要是正となる。
笠木モルタルのひび割れは、剥落すれば直接下に落ちる危険があります。
駐車場の車止め付近や、人の通行がある足元のモルタル笠木では、ひび割れの進行を特に注意深く見ます。
バルコニーの手すり支柱まわりのモルタルも、金物との取合い部から欠損が起きやすい箇所です。
塗装が著しく劣化している状態は要是正には当たりませんが、特記すべき事項として報告書に記録されます。
天端の劣化は雨水の浸入経路になるため、パラペット内部の点検とあわせて見るのが実務のコツです。

塗装が剥がれているだけなら、今回は問題なしということですか。

塗装劣化は要是正の基準ではありませんが、特記事項として記録されます。
次の改修計画の参考にするとよいです。

金属笠木はなぜ固定状態まで確認するのか

金属笠木の接合部のゆるみを打診で確認する調査員
鋼製やアルミニウム製、ステンレス製などの金属笠木は、モルタル製とは劣化の起き方が異なります。
強風による飛散のリスクがあるため、固定状態の確認が欠かせません。
調査4 金属笠木部について、錆、変形、脱落、落下危険性の有無、強風等による飛散の有無、固定状態を、目視等及びテストハンマーによる打診等により確認する
判定4 笠木に著しい錆若しくは腐食があること、又は笠木接合部に緩みがあり部分的に変形していることは要是正となる。
接合部の緩みは、部分的な変形として表面に現れます。
金属笠木は複数の部材をジョイントでつないで施工されるため、接合部のゆるみが生じると、その部分だけ波打つように歪みます。
腐食が進んだ笠木は、強風時に外れて飛散する危険があり、周辺への被害につながりかねません。
テストハンマーによる打診で、固定金物のガタつきがないかもあわせて確認します。
金属笠木の劣化は美観の問題ではなく、落下・飛散という人身事故に直結するリスクとして扱われます。

金属笠木がガタガタしているのを見たことがあります。あれは危ないんですか。

接合部の緩みは要是正の対象です。
強風で飛ばされる前に、早めの補修をおすすめします。

排水溝とドレーンの点検はなぜ屋上全体に関わるのか

屋上の排水溝とドレーンの詰まりを確認する調査員
屋上に降った雨水を集めて排出する排水溝とドレーンは、屋上面全体の防水性能を左右する要の部位です。
ここが詰まると、水はけの悪さが屋上全体の劣化を早めます。
調査5 排水溝のモルタルのひび割れ、浮き等の有無を目視等及びテストハンマーによる打診等により確認するとともに、ドレーンについては錆や破損等の有無を目視等により確認する。
判定5 排水溝のモルタルに著しいひび割れ、浮き等があることは要是正となる。
ドレーンまわりの不具合は、漏水のみでなく屋上面全体の劣化に直結します。
排水溝のモルタルが浮き上がると、その隙間から雨水が防水層の下に回り込みやすくなります。
ドレーンが破損して雨樋に詰まりが生じると、屋上に水が滞留し、想定していない箇所へ漏水が広がるおそれがあります。
特記すべき事項として、ドレーン周りに雑草が繁茂している状態も報告の対象です。
落ち葉やゴミが集まりやすい場所なので、調査のタイミングにあわせて簡易な清掃を依頼しておくと安心です。

ドレーンの周りに雑草が生えているのを見かけます。これも指摘されるんですか。

はい、特記すべき事項として報告書に記録されます。
詰まりの原因になるので、早めの除草をおすすめします。

よくある質問

Q屋上まわりの調査は、屋上面とパラペットで違う調査員が担当するのですか?
Aいいえ。特定建築物定期調査は一級建築士や特殊建築物等調査資格者など資格を持つ調査員が、屋上まわりの5項目をまとめて確認します。
Q笠木モルタルと金属笠木、どちらのほうが劣化しやすいですか?
A環境によって異なります。モルタル製はひび割れや白華、金属製は錆や接合部の緩みが主な劣化サインで、材質ごとに見るポイントが違います。
Q排水溝の詰まりは、日常の管理でも防げますか?
A定期的な清掃で防げます。落ち葉やゴミがたまりやすい箇所なので、定期調査を待たずに日頃から点検・清掃しておくと安心です。
Q要是正の指摘を受けたら、すぐに補修工事が必要ですか?
A危険性の程度によります。歩行上危険なひび割れなど緊急性の高いものは速やかな対応が必要ですが、軽微なものは計画的な改修で対応することもあります。

まとめ

屋上まわりの調査は屋上面・パラペット・笠木モルタル等・金属笠木・排水溝(ドレーン)の5項目に分かれています。
いずれも目視等、またはテストハンマーによる打診等で劣化を確認します
屋上面は歩行上危険なひび割れ・反り、または伸縮目地材の欠落による植物の繁茂が要是正の基準です。
パラペットは白華・ひび割れ・パネルの破損を、打診で内部の浮きまで確認します。
金属笠木は錆・接合部の緩みによる変形が、強風時の飛散リスクにつながります。
排水溝とドレーンの不具合は屋上面全体の劣化に直結するため重点的に確認します
気になる劣化を見つけたら、次回調査を待たずに専門業者へ相談することが実務上の対応です。

屋上まわりだけでこんなに見るところがあるとは思いませんでした!
次の調査までに排水溝の掃除だけでもしておきます。

屋上まわりの劣化は放置すると階下への漏水につながります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令第39条(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行規則第5条(e-Gov法令検索)
  • 建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件(平成20年国土交通省告示第282号)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。調査の方法や判定の適用は建物や特定行政庁の運用ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門業者にご確認ください。

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