防火設備定期検査の報告書には、「開閉機」「ガバナー」「危害防止装置」「危害防止用連動中継器」といった、聞き慣れない装置の名前が並びます。
これらはどれも、防火シャッターを動かし、そして人や物に危害を与えることなく安全に閉じるために欠かせない装置です。
動かす仕組みだけを見ていても、安全に止める仕組みを見落としてしまいます。
この記事では防火シャッターがどんな装置で動き、どうやって安全に止まるのかを解説します。
防火シャッターの点検報告書に「ガバナー」とか「危害防止用連動中継器」とか書いてあるんですが、正直どれがどの部品か分かっていません。
それぞれ防火シャッターを動かし、安全に止めるための装置なんです。
シャッターって、ただ重みで下りてくるだけだと思っていました。
今回は動かす仕組みと、安全に止める仕組みを、順番に整理していきますね。
- 防火シャッターは開閉機によって駆動し、電動機・減速機・ブレーキ装置・ガバナー・スプロケット・手動操作部分などで構成されます。
- ガバナーは自重降下時に巻取りシャフトの回転数を一定に保ち、閉鎖時の衝撃を緩和する装置です。
- 建築基準法施行令第112条第19項第一号ロは、防火設備の閉鎖・作動に際して周囲の人の安全を確保することを求めています。
- 危害防止装置は座板感知部が人や物との接触を検知すると降下を自動的に停止させ、除かれると再び降下させます。
- 危害防止用連動中継器は、連動制御器や手動閉鎖装置からの信号を受けて自動閉鎖装置に電源を供給する装置です。
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目次
防火シャッターは、どんな装置で動いているのか

まずはこの装置がどんな部品で構成されているのかを確認しましょう。
電動機が生み出した回転力は減速機で速度を落とされ、スプロケットとローラチェーンを介して巻取りシャフトに伝わります。
停電時や非常時には手動操作部分(ハンドル式)に切り替えられる構造になっており、電源が失われても閉鎖動作が妨げられない工夫がされています。
点検では、開閉機を構成する各部品に異音や油漏れ、腐食がないかを個別に確認する必要があります。
次に確認するガバナーも、この開閉機を構成する部品のひとつです。
開閉機の中に、こんなにたくさんの部品が入っているとは知りませんでした。
はい、動かす部品と止める部品が1台にまとまっているんです。
ガバナーは、なぜ自重で降りる速さを一定に保てるのか

その役割を担っているのが「ガバナー」です。
バランス式の耐火クロススクリーンでいう調速機と、ほぼ同じ役割をガバナーが果たしていると考えると理解しやすくなります。
建築基準法施行令第112条第19項第一号は、区画に用いる特定防火設備等について随時閉鎖又は作動をできるものであることを求めており、降下速度が一定に制御されていることはこの基準を実務で支える要素のひとつです。
点検では、降下速度が明らかに速すぎないか、開閉機からの異音がないかを確認します。
ガバナーが正常に働くことは、次に説明する危害防止装置が正しく機能するための前提でもあります。
ガバナーが壊れると、シャッターがそのまま速く落ちてくるということですか。
そのとおりです、異音や降下速度の異常があれば点検を依頼してください。
危害防止機構は、なぜ設置が義務付けられるようになったのか

この危険を防ぐための考え方が「危害防止機構」です。
建築物の竪穴区画などに用いる特定防火設備や、施行令第112条第19項が対象とする防火設備には、この要件が構造基準として課されています。
ここでいう危害とは、防火シャッターや耐火クロススクリーンでは、シャッターカーテンやカーテン部と床との間に人が挟まれ、重大な怪我をすることを指します。
つまり、シャッターは閉じることだけでなく、閉じる過程で人を挟まないことまで法令で求められているということです。
次に確認する危害防止装置は、この考え方を実際の設備として実現したものです。
古いビルの防火シャッターにも、この考え方は関係あるんですか。
設置時期にかかわらず、危害防止装置の有無や作動状況は定期検査で必ず確認しますね。
危害防止装置は、人や物をどうやって守るのか

どのような仕組みで人や物を守っているのかを確認します。
シャッターカーテンの下端にある座板感知部が接触を検知すると、開閉機のブレーキが復帰して降下がいったん停止します。
人が移動したり物が取り除かれたりすると、ブレーキが再び解放されて自動的に閉鎖動作が再開します。
この一連の動作こそが、前段で確認した「周囲の人の安全を確保する」という基準を、現場で満たす仕組みです。
点検では、座板感知部に模擬的な接触を与え、停止と再降下の両方が正しく作動するかを確認します。
一度止まったあと、また勝手に動き出すのは知りませんでした。
はい、人や物が除かれたことを確認してから再降下する仕組みです。
危害防止用連動中継器は、どんな役割を担っているのか

その電源供給を担っているのが「危害防止用連動中継器」です。
火災の発生時だけでなく、危害防止装置が降下を再開させる場面でも、この中継器が自動閉鎖装置に電源を供給しています。
つまり、開閉機とガバナーが動かし、危害防止装置が止め、危害防止用連動中継器が電源を送り続けるという役割分担で、防火シャッターの安全な閉鎖が成り立っています。
点検では、中継器の配線に断線や緩みがないか、表示灯が正常に点灯しているかを確認します。
5つの装置がそれぞれの役割を果たして初めて、防火シャッターは安全に閉じきることができます。
動かす・止める・電気を送るって、役割がちゃんと分かれているんですね。
はい、5つの装置が連携して初めて安全に閉じられるんです。
よくある質問
まとめ
開閉機やガバナー、危害防止装置のそれぞれの役割が分かって、点検で何を見ればいいのか整理できました!
防火設備の点検や部品交換のことも、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第19項第一号
※本記事は建築基準法・同施行令の現行規定に基づき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。開閉機やガバナー、危害防止装置等の個別の構造や仕様は、製品や大臣認定の内容によって異なります。実際の点検・整備については、専門の検査資格者にご相談ください。





