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固定給油設備のポンプ機器はなぜ吐出量の上限があるのか|懸垂式ホースの長さ制限と自動戻し装置も解説

固定給油設備のポンプとホースはなぜ基準が細かいのかを示すアイキャッチ画像

ガソリンスタンドの給油ノズルから出る危険物の量には、実は毎分あたりの上限が細かく決まっていることをご存知でしょうか。
軽油とガソリンでは吐出量の基準が違い、ホースの構造や長さにも独自の決まりがあります。
これらは政令が総務省令に委ねた技術基準で、ポンプの内部構造からホースの材質まで一つずつ規定されています。
この記事では、固定給油設備・固定注油設備のポンプとホースに求められる構造基準と、その理由を順番に整理します。

うちのスタンドの給油機、なんでガソリンと軽油で出る速さが違うんでしょうか。

それはポンプ機器の吐出量に危険物の種類ごとの上限があるからです。

ホースの長さとかも決まってるんですよね。

はい、ホースの構造や長さにも細かい基準があります。

この記事の結論
  • 固定給油設備・固定注油設備のポンプ機器には、規則第二十五条の二で吐出量や構造の細かい基準が定められています。
  • ガソリン・メタノール等・エタノール等は毎分五十リットル以下、軽油は毎分百八十リットル以下です。
  • 懸垂式のポンプには、圧力が上がりすぎたときに危険物を専用タンクへ自動的に戻す装置が必要です。
  • 専用タンク内の油中ポンプ機器は、ホース機器が転倒した場合にポンプと供給の両方を止める措置が欠かせません。
  • 判断に迷う場合は、点検業者や所轄消防署に確認してください。

固定給油設備のポンプ機器はガソリン等が毎分五十リットル以下軽油が毎分百八十リットル以下という吐出量の上限と懸垂式ホースが地盤面上〇・五メートルで半径三メートルを超えられない長さの制限を示す図解

固定給油設備のポンプ機器にはなぜ吐出量の上限があるのか

ガソリン用と軽油用の給油ノズルが並び吐出量を示す計器がそれぞれ違う数値を指しているイメージ
まずはポンプ機器そのものの基準を確認します。
出発点は固定給油設備と固定注油設備の構造基準です。
危険物の規制に関する規則第二十五条の二第一号 ポンプ機器の構造は、次のとおりとすること。イ 固定給油設備のポンプ機器は、当該ポンプ機器に接続される給油ホースの先端における最大吐出量が(略)メタノール等又は(略)エタノール等にあつては毎分五十リットル以下、軽油にあつては毎分百八十リットル以下となるものとすること。ロ 固定注油設備のポンプ機器は、当該ポンプ機器に接続される注油ホースの先端における最大吐出量が毎分六十リットル以下となるものとすること。ただし、車両に固定されたタンクにその上部から注入する用に供する固定注油設備のポンプ機器にあつては、当該ポンプ機器に接続される注油ホースの先端における最大吐出量が毎分百八十リットル以下となるものとすることができる。
固定給油設備と固定注油設備のポンプ機器には、吐出量の上限があらかじめ決まっています。
規則第二十五条の二第一号イにより、ガソリン・メタノール等・エタノール等は毎分五十リットル以下、軽油は毎分百八十リットル以下です。
ロにより、固定注油設備は原則毎分六十リットル以下ですが、車両に固定されたタンクへ上部から注入する場合に限り毎分百八十リットル以下まで認められます。
軽油の上限がガソリン等より高いのは、引火点の違いによる危険性の差を踏まえたものと考えられます。
つまり同じ給油取扱所でも、扱う危険物ごとにポンプの出せる速さそのものが変わります。

軽油のほうが基準がゆるいんですか。

はい、軽油はガソリン等より上限が高く設定されています。

懸垂式のポンプにはなぜ危険物を専用タンクへ戻す装置が要るのか

懸垂式の給油ノズルのホースの根元に圧力を検知して配管を専用タンクへ切り替える弁が描かれたイメージ
続いて、懸垂式のポンプに特有の安全装置を見ます。
天井からホースを吊り下げる構造ならではの基準です。
危険物の規制に関する規則第二十五条の二第一号ハ 懸垂式の固定給油設備及び固定注油設備のポンプ機器には、ポンプ吐出側の圧力が最大常用圧力を超えて上昇した場合に、危険物を自動的に専用タンクに戻すことができる装置をポンプ吐出管部に設けること。
懸垂式のポンプには、圧力が上がりすぎたときの逃がし道が備わっています。
規則第二十五条の二第一号ハにより、ポンプ吐出側の圧力が最大常用圧力を超えて上昇した場合、危険物を自動的に専用タンクへ戻す装置をポンプ吐出管部に設けなければなりません。
これはホースの先端を閉じたままポンプを動かし続けたときのような、圧力の逃げ場がなくなる事態を防ぐための仕組みです。
懸垂式は地上据置式よりホースや配管が長くなりやすく、圧力変動が起きやすいことも背景にあると考えられます。
次は同じ懸垂式のポンプに関わる、もう一つの安全装置を見ます。

圧力が上がりすぎたら勝手にタンクへ戻るんですね。

はい、専用タンクへ自動的に戻す装置が義務付けられています。

専用タンク内のポンプにはなぜ転倒時の停止装置が要るのか

専用タンクの中に沈められたポンプにつながるホース機器が転倒しポンプの運転が自動的に止まっているイメージ
続いて、専用タンクの中にポンプを設ける場合の基準を見ます。
地上のポンプとは別の安全装置が求められます。
危険物の規制に関する規則第二十五条の二第一号 (略)ニ ポンプ又は電動機を専用タンク内に設けるポンプ機器(以下「油中ポンプ機器」という。)は、第二十四条の二に掲げるポンプ設備の例によるものであること。ホ 油中ポンプ機器には、当該ポンプ機器に接続されているホース機器が転倒した場合において当該ポンプ機器の運転を停止する措置が講じられていること。第二号 (略)ト 油中ポンプ機器に接続するホース機器には、当該ホース機器が転倒した場合において当該ホース機器への危険物の供給を停止する装置が設けられていること。
油中ポンプ機器には、地上のポンプとは別の安全装置が求められます。
規則第二十五条の二第一号ニにより、ポンプや電動機を専用タンクの中に設ける油中ポンプ機器は、地下貯蔵タンク内のポンプ設備と同じ基準に従います。
同項ホと第二号トにより、油中ポンプ機器に接続するホース機器が転倒した場合には、ポンプの運転とホースへの危険物の供給の両方を止める措置が必要です。
車両の衝突などでホース機器が倒れても、地中のポンプだけが動き続けて危険物を送り出す事態を防ぐためです。
次はホースそのものの長さと材質の基準を見ます。

ホースが倒れただけでもポンプは止まるんですね。

はい、ポンプの運転とホースへの供給の両方が止まる仕組みです。

給油ホースの長さと材質にはどんな基準があるのか

天井から吊り下げられた給油ホースが地面近くで描く円の半径を作業員がメジャーで示しているイメージ
最後に、ホースそのものの長さと材質の基準を確認します。
まずは懸垂式のホースの長さです。
危険物の規制に関する規則第二十五条の二の二 (略)ホース機器の引出口から地盤面上〇・五メートルの水平面に垂線を下ろし、その交点を中心として当該水平面において給油ホース等の先端で円を描いた場合において、半径三メートルを超える円を描くことができない長さとする。
懸垂式の給油ホースは、届く範囲が半径三メートルまでと決まっています。
規則第二十五条の二の二により、ホース機器の引出口から地盤面上〇・五メートルの高さで円を描いたとき、その半径が三メートルを超えてはいけません
これはホースを目一杯伸ばしても、給油空地の外まで届かないようにするための基準と考えられます。
材質にも基準があり、規則第二十五条の二第二号イにより、給油ホース等は日本産業規格K六三四三の一種の性能を満たすものでなければなりません。
同号ハにより、著しい引張力が加わったときに破断による危険物の漏れを防ぐ措置も講じる必要があります。

ホースを目一杯伸ばしても届く範囲は決まってるんですね。

はい、半径三メートルが上限です。

明日から何を確認すればよいのか

作業員がクリップボードを持ちノズルとホースと配管をひとつずつ指差し確認しているイメージ
ここまでの基準を、現場で確認する手順に落とし込みます。
まずは自分のスタンドの設備を確認してください。
給油ホースの先端の吐出量が、扱う危険物ごとの上限内に収まっているかを確認してください。
懸垂式の場合は、ホースを目一杯伸ばしたときに半径三メートルを超えて届いていないかを確認してください。
油中ポンプ機器を使っている場合は、ホース機器が転倒したときにポンプと供給の両方が止まるかを点検業者に確認してください。
判断に迷う場合は、点検業者や所轄消防署に確認することをお勧めします。

まずは自分のスタンドの設備を確認してみます。

それが一番確実です。
よくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q固定注油設備は常に毎分六十リットル以下しか出せませんか?
Aいいえ。車両に固定されたタンクへ上部から注入する場合に限り、毎分百八十リットル以下まで認められます。
Q懸垂式でなければホースの長さの上限はありませんか?
A規則第二十五条の二の二は懸垂式の固定給油設備等を対象とした規定です。地上据置式は別の構造でホースの引出範囲を確保しています。
Q油中ポンプ機器はどんな給油取扱所でも使えますか?
A設けるかどうかは施設の設計によります。設けた場合は第二十四条の二に掲げるポンプ設備の例にも従う必要があります。
Q給油ホースの材質は自由に選べますか?
Aいいえ。規則第二十五条の二第二号イにより、日本産業規格K六三四三の一種の性能を満たすものでなければなりません。

まとめ

固定給油設備・固定注油設備のポンプ機器には、規則第二十五条の二で吐出量や構造の細かい基準が定められています
ガソリン・メタノール等・エタノール等は毎分五十リットル以下、軽油は毎分百八十リットル以下が上限です
固定注油設備は毎分六十リットル以下、車両タンクへの上部注入なら毎分百八十リットル以下まで認められます
懸垂式のポンプは、圧力が上がりすぎたときに危険物を専用タンクへ自動的に戻す装置が必要です
油中ポンプ機器は、ホース機器が転倒した場合にポンプと供給の両方を止める措置が欠かせません
懸垂式の給油ホースは、地盤面上〇・五メートルの高さで半径三メートルを超えて届く長さにできません
判断に迷う場合は、点検業者や所轄消防署に確認してください

ポンプとホースに求められる基準がよく分かりました。
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㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第十七条(給油取扱所の基準)
  • 危険物の規制に関する規則第二十五条の二(固定給油設備等の構造)・第二十五条の二の二(懸垂式の固定給油設備等の給油ホース等の長さ)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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