BLOG

防火設備定期検査告示はなぜ令和7年に改正されたのか|常閉防火扉の区分から目視に類する方法まで解説

防火扉を点検する女性検査員のアイキャッチ画像

令和7年7月1日、防火設備定期検査に関わる国土交通省告示が改正されました。
常閉防火扉の検査区分や、検査方法の考え方まで見直しの範囲は多岐にわたります。
「うちの建物は何が変わるのか」を正しく理解しないまま検査を迎えると、対象の見落としにつながりかねません。
この記事では、令和6年・令和7年の告示改正で具体的に何が変わったのかを、5つの視点から整理します

うちのビルにも防火扉があるんですが、検査のルールが変わったと聞きました。
何がどう変わったんでしょうか。

今回の改正で、常閉防火扉の多くが防火設備定期検査の対象に統一されました。
検査方法や危害防止装置の考え方も見直されています。

検査の対象が増えるということですか。
うちの建物にも当てはまるのか不安です。

はい、対象の考え方が変わったので確認が必要です。
この記事で5つのポイントに整理してご説明します。

この記事の結論
  • 防火設備定期検査告示は令和6年6月28日令和7年1月29日の2つの国土交通省告示で改正され、令和7年7月1日から施行されています
  • 各階の主要な常閉防火扉は、特定建築物定期調査ではなく防火設備定期検査の対象に統一されました(避難経路・吹抜き・通行頻度の高いものなど)
  • 危害防止装置の検査対象は人の通行の用に供する部分の防火設備に限定することが明確になりました
  • 検査方法は「目視により確認する」から「目視又はこれに類する方法により確認する」に改められ、センサー等の活用も可能になりました
  • 特定建築物定期調査の検査結果表に添付する各階平面図には、防火区画を明示することになりました

防火設備定期検査告示令和7年改正の5つのポイントを示すインフォグラフィック

防火設備定期検査告示はなぜ令和7年に改正されたのか

令和7年の告示改正のポイントを書類で確認する女性作業員のイラスト
特定建築物定期調査・昇降機定期検査・遊戯施設定期検査・建築設備定期検査、そして防火設備定期検査の告示が一斉に見直されました。
制度全体の整合性を取るための改正です。
問1 防火設備定期検査の項目・方法・判定基準を定める告示は、いつ、どのように改正されたか
答1 防火設備の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法及び結果の判定基準並びに検査結果表を定める件(平成28年国土交通省告示第723号)は、令和6年6月28日国土交通省告示第974号と令和7年1月29日国土交通省告示第53号の2つの告示により改正され、令和7年7月1日から施行される
改正はこの告示だけでなく、建物の定期調査・検査制度全体を見直す一環でした。
特定建築物定期調査告示・昇降機定期検査告示・遊戯施設定期検査告示・建築設備定期検査告示・防火設備定期検査告示の5つの告示が同時に改正されています。
国土交通省は地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的助言として、特定行政庁にその運用を通知しました。
背景には、特定建築物定期調査と防火設備定期検査の間で検査対象が重複していたり、基準同士が食い違っていたりする問題がありました。
まずは告示改正の全体像を押さえたうえで、次からは具体的に何が変わったのかを見ていきます。

告示ってひとつだけ変わったわけじゃないんですね。
知らない間に対象が広がっていたら怖いです。

おっしゃるとおり、5つの告示が同時に見直されました。
次は検査区分がどう変わったのか、具体的に見ていきましょう。

常閉防火扉の検査区分はどう変わったのか

常閉防火扉の検査区分の変更を確認する女性作業員のイラスト
これまで常閉防火扉は特定建築物定期調査、随時閉鎖式の防火設備は防火設備定期検査、というように担当する制度が分かれていました。
改正後はこの整理が変わります。
問2 常閉防火扉の検査は、改正の前と後でどのように変わるのか
答2 改正後は、各階の主要な常閉防火扉を防火設備定期検査の対象とする。「各階の主要な常閉防火扉」とは、原則として①避難経路に設けられたもの、②吹抜きに面して設けられたもの、③日常の通行が多く開閉作動の頻度の高いもの、その他安全上必要なものをいう。ただし②のうち昇降路に設ける防火扉は、従前どおり昇降機定期検査の対象となる
常閉防火扉は「主要なものだけ」防火設備定期検査で見る、という形に整理し直されました。
従来は常閉防火扉の運動エネルギー等の検査を特定建築物定期調査で行い、随閉防火扉・防火シャッター等は防火設備定期検査で行うという二本立てでした。
改正後は主要な常閉防火扉を防火設備定期検査に一本化し、対象を避難経路や吹抜きなど安全上重要な箇所に絞り込みます。
竪穴区画に設ける防火扉のうち、エレベーターの昇降路に設けるものは対象から除かれ、引き続き昇降機定期検査の側で確認します。
建築基準法施行規則第6条第1項の検査時期の定めにも、常閉防火扉の固定の状況に関する項目が追加されています。

うちは吹抜きに面した防火扉があります。
これも対象になるということですね。

はい、吹抜きに面する常閉防火扉は主要なものとして検査対象です。
エレベーターの扉だけは昇降機側の検査になります。

危害防止装置の検査対象はなぜ人の通行部分に限定されたのか

人が通行する部分の危害防止装置を点検する男性作業員のイラスト
危害防止装置は、防火設備が閉まるときに人が挟まれないようにする仕組みです。
改正前は、構造基準と検査基準の間にずれがありました。
問3 危害防止装置の検査対象は、改正でどのように整理されたか
答3 防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件(昭和48年建設省告示第2563号)は、人の通行の用に供する部分の防火扉等について危害防止装置の設置を求めているが、改正前の防火設備定期検査告示は、人の通行の用に供する部分以外の防火扉等についても危害防止装置の検査を求めており、構造基準と不整合が生じていた。改正後は、検査対象を人の通行の用に供する部分の防火扉等に限定することを明確化した
設置義務のない場所まで検査していた、という食い違いが解消されました。
昭和48年建設省告示第2563号は、人が通行する部分の防火扉等にだけ危害防止装置の設置を求めています。
ところが改正前の防火設備定期検査告示は、通行部分以外の防火扉等についても危害防止装置の検査項目を求めていて、構造基準と不整合な状態でした。
改正後は検査対象を人の通行の用に供する部分に限定することが明確になり、構造基準と検査基準がそろいました。
危害防止装置そのものの仕組みは変わらないので、対象範囲の考え方だけを押さえておけば十分です。

人が通らない防火シャッターにも危害防止装置が付いているんですが、検査は要らなくなるんですか。

通行の用に供する部分でなければ、検査項目としては対象外に整理されます。
設備そのものを外すという意味ではないのでご安心ください。

目視又はこれに類する方法とは何を指すのか

センサーを使って設備の状態を確認する女性作業員のイラスト
検査方法の表現も、今回の改正で見直されました。
これまでは「目視により確認する」という一本の表現でした。
問4 検査方法の「目視により確認する」という表現は、改正でどう変わったか
答4 改正前は、定期調査・検査等の各項目について「目視により確認する」とされ、実質的に資格者の立会いを必要としていた。改正後は、センサー等の新技術を活用できるようにするため、「目視又はこれに類する方法により確認する。」に改められた。目視その他これに類するものの運用については、令和6年6月28日の事務連絡で示されている
検査の手段が、資格者の目だけに限られなくなりました。
従来の「目視により確認する」という表現は、実質的に資格者本人の立会いを前提としていました。
改正後は「目視又はこれに類する方法により確認する」となり、センサー等の新技術を組み合わせた確認も認められます。
ただし、何を「これに類する方法」と認めるかは事務連絡で示された運用によるため、独自の判断で機器だけに任せることはできません。
検査員自身の判断が要る場面が引き続き多いことに変わりはありません。

センサーを付ければ検査が要らなくなる、というわけではないんですね。

はい、目視に類する方法として認められる範囲は運用で示されています。
どこまで使えるかは検査員にご確認いただくのが確実です。

検査結果表の各階平面図には何が追加されたのか

各階平面図で防火区画を確認する女性作業員のイラスト
検査結果表に添付する図面の内容にも、改正の影響が及んでいます。
発注者から検査者への情報提供を後押しする狙いです。
問5 特定建築物定期調査の調査結果表に添付する各階平面図は、改正でどう変わるか
答5 改正前は、建築設備定期検査及び防火設備定期検査を実施するにあたり、発注者から検査者に対して検査に必要な図面等の情報提供がなされていない実態があった。改正後は、特定建築物定期調査の調査結果表に添付する各階平面図に防火区画を明示することとし、建築設備定期検査及び防火設備定期検査における当該図面の活用を促進する
検査者が防火区画を把握しやすくするための改正です。
これまでは検査に必要な図面が発注者から検査者へ十分に提供されない実態がありました。
改正後は特定建築物定期調査の各階平面図に防火区画が明示され、防火設備定期検査でもその図面を活用できます。
どの防火設備がどの区画を形成しているかを図面で確認しやすくなり、検査計画を立てる際の負担軽減にもつながります。
検査を依頼する側も、この図面が手元にあるかを事前に確認しておくとスムーズです。

図面があれば、どこが防火区画かひと目でわかるということですね。

そのとおりです、各階平面図に防火区画が明示されていれば検査計画も立てやすくなります。
図面の有無を事前に確認しておくことをおすすめします。

よくある質問

Q改正前から常閉防火扉の検査を受けていた建物は、あらためて何か手続きが必要ですか?
A直ちに追加の手続きが必要になるわけではありません。次回の検査時期から、主要な常閉防火扉が防火設備定期検査の対象に含まれる形になります。
Qセンサー等を使えば、有資格者の検査を省略できますか?
Aいいえ、省略はできません。目視に類する方法として認められる範囲は運用で定められており、判定は引き続き検査員が行います。
Q危害防止装置の検査対象が絞られたのは、防火扉だけの話ですか?
Aいいえ、防火シャッターや耐火クロススクリーンも含め、人の通行の用に供する部分の防火設備等が対象という考え方は共通です。
Q令和7年7月1日より前に検査を始めた場合はどうなりますか?
A施行日をまたいで実施される検査は、施行日前に着手していれば改正前の検査結果表、施行日以後の着手であれば改正後の検査結果表に従います。

まとめ

防火設備定期検査告示は令和6年・令和7年の2つの国土交通省告示で改正され、令和7年7月1日から施行されている
各階の主要な常閉防火扉は、防火設備定期検査の対象に統一された
主要な常閉防火扉とは、避難経路・吹抜き・通行頻度の高いものなどを指す(昇降路の防火扉は除く)
危害防止装置の検査対象は人の通行の用に供する部分に限定された
検査方法は「目視又はこれに類する方法」に改められ、センサー等の新技術も活用できる
ただし目視に類する方法として認められる範囲は運用によるもので、検査員の判断は省略されない
特定建築物定期調査の各階平面図には防火区画が明示され、他の定期検査でも活用できる

うちの常閉防火扉がどこまで対象になるか、次の検査の前に確認しておきます。

ぜひ早めにご確認ください、告示改正への対応も含めて㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件等の一部を改正する告示(令和6年6月28日国土交通省告示第974号)
  • 建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件等の一部を改正する告示(令和7年1月29日国土交通省告示第53号)
  • 防火設備の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法及び結果の判定基準並びに検査結果表を定める件(平成28年国土交通省告示第723号)
  • 防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件(昭和48年建設省告示第2563号)
  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項
  • 建築基準法施行規則(昭和25年建設省令第40号)第6条第1項
  • 地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項

※本記事は、令和6年6月28日国土交通省告示第974号及び令和7年1月29日国土交通省告示第53号による防火設備定期検査告示等の改正内容を、国土交通省の技術的助言をもとに整理したものです。個別の建物における検査対象・検査方法の判断は、所轄の特定行政庁及び検査を担当する有資格者にご確認ください。㈱防災屋は法令解釈について責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
防火扉を点検する女性検査員のアイキャッチ画像
令和7年7月1日、防火設備定期検査に関わる国土交通省告示が改正されました。 常閉防火扉の検査区分や、検査方法の考え方まで見直しの範囲は多岐にわたります。 「うちの建物は何が変わるのか」を正しく理解しないまま検査を迎えると...