認知症高齢者グループホームのような小規模社会福祉施設は、延べ面積が275平方メートル以上になるとスプリンクラー設備の設置が原則義務になります。
しかし建物の構造そのものが火災に強く、しかも屋外へ容易に逃げられるようにできていれば、また別の免除の道が用意されています。
消防法施行令第32条の特例では、平屋建てや低層の建物で、各居室から屋外や一時避難場所へ直接出られる構造かどうかが判断のポイントになります。
この記事では、その中でも「各居室から屋外等に容易に至ることができる」ルートの具体的な要件と見落としやすい点を解説します。
うちの施設は平屋建てで、どの部屋にも外に出られる掃き出し窓があるんですが、それだけでスプリンクラーは要らなくなりますか。
実は施行令第32条の特例に、部屋から直接屋外に出られる建物を対象にした免除ルートがあるんですよ。
それってどんな条件を満たせばいいんですか。
建物の構造と避難経路、両方の条件を確認する必要があります。
順番に見ていきましょう。
- 認知症高齢者グループホームなど小規模社会福祉施設は、延べ面積が275平方メートル以上になるとスプリンクラー設備の設置が原則義務になります。
- ただし消防法施行令第32条の特例により、「各居室から屋外等に容易に至ることができる」建物には専用の免除ルートが用意されています。
- 対象は平屋建て又は地上2階建てで、壁及び天井の仕上げが不燃材料等であることが前提です。
- すべての居室が、扉又は掃出し窓等から地上又は一時避難場所へ直接出られる構造でなければなりません。
- 免除は自動的なものではなく、所轄の消防長又は消防署長が個別に判断するものです。
▼

目次
なぜ避難経路の確保だけで免除の道が用意されているのか

まずは施行令第32条の特例が何を根拠にしているのかを確認しましょう。
平成19年の改正で、認知症高齢者グループホームのような小規模社会福祉施設も、延べ面積が275平方メートル以上であればスプリンクラー設備の設置対象に含まれるようになりました(消防法施行令第12条第1項第1号ハ)。
この基準は設備を追加することを前提にしていますが、建物の構造そのものが避難のしやすさを備えていれば、設備によらずに同じ目的を達成できると考える免除ルートが別に用意されています。
この「各居室から屋外等に容易に至ることができる」というルートをどう使うかが、この記事のテーマです。
設備を足すのではなく、建物のつくりで安全を確保する道もあるんですね。
そのとおりです。
ただし対象になる建物には条件があるので、次で確認しましょう。
どんな建物が対象になるのか

まずはこのルートが想定している建物の姿を確認します。
3階建て以上のマンションや大規模な建物は、居室から屋外までの距離や経路が複雑になりやすいため、このルートの対象には含まれません。
そのうえで、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げが不燃材料、準不燃材料又は難燃材料であることも同時に求められます。
次は、居室から屋外までの避難経路そのものに求められる条件を確認しましょう。
うちは平屋建てなんですが、内装の仕上げまでは意識したことがなかったです。
階数と内装はセットの条件です。
次は避難経路そのものを見ていきましょう。
すべての居室に求められる避難経路の条件は何か

2つのルートと、避難場所そのものの条件を確認しましょう。
最も分かりやすいのは、扉又は掃出し窓を介してそのまま地上やバルコニーに出られる部屋です。
それができない部屋でも、どの居室が火元になっても火災室の前を通らずに地上や一時避難場所へ行ける経路があれば条件を満たします。
さらに、たどり着いた先の一時避難場所そのものが、川や崖に面していないなど外部からの救出を妨げない場所である必要があります。
窓から出られる部屋が1つでもあれば、それで足りるんでしょうか。
いいえ、すべての居室で経路が確保されている必要があります。
次はよくある見落としを見てみましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

夜間の体制まで含めて確認しておく必要があります。
夜間に夜勤者が1名しかいない2ユニットの施設では、その夜勤者に加えて近隣協力者が1人以上確保されていることが条件に含まれます。
ここでいう近隣協力者は、居所から施設に2分以内で駆けつけられ、自動火災報知設備と連動する装置を備え、消防計画等で役割が明らかになっている人に限られます。
また「掃出し窓」といえるかどうかや一時避難場所の妥当性は建物ごとに事情が異なるため、所轄の消防長又は消防署長による個別の判断が最終的な決め手になります。
建物のつくりだけでなく、夜間の人員まで見られるんですね。
はい、そのとおりです。
最後に明日からの確認手順をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

所轄消防署への相談もあわせて進めましょう。
そのうえで、各居室の扉や掃出し窓が実際に地上や一時避難場所へ直接出られる位置にあるかを一室ずつ確認します。
一時避難場所については、川や崖に面していないか、隣接する建物や物置などで進入経路がふさがれていないかも見ておく必要があります。
夜間の勤務体制が夜勤者1名の2ユニットになる場合は、近隣協力者の確保状況もあわせて整理し、最後に所轄の消防署へ事前に相談しておくと確実です。
今度、各部屋の窓の位置と一時避難場所の周りを図面で確認してみます。
それが確実な第一歩です。
これでよくある質問を確認しましょう。
よくある質問
まとめ
うちの窓と経路が条件に当てはまるか、一度整理してみます。
ぜひ所轄の消防署にも相談してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第12条第1項第1号ハ・第32条(e-Gov法令検索)
- 小規模社会福祉施設等に対する消防用設備等の技術上の基準の特例について(平成19年6月13日 消防予第231号 消防庁予防課長)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





