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屋外タンク貯蔵所はなぜ黄りんは被覆し二硫化炭素は水没させるのか|禁水性物品と特殊引火物の構造基準を解説

被覆されたタンクと水槽を点検する作業員の写真

屋外タンク貯蔵所と聞くと、大きな円筒形のタンクが敷地に並ぶ光景を思い浮かべる方が多いはずです。
位置や保有空地、鋼板の厚さといった構造基準は、貯蔵する危険物の種類にかかわらず共通して適用されます。
ところが黄りんや二硫化炭素のように性質が極端な危険物では、この共通基準だけでは安全を保てません。
危険物の規制に関する政令第十一条第一項が、被覆と水没というまったく異なる二つの追加基準を用意しているのはそのためです。

うちのタンクは普通の鋼板でできていますが、黄りんや二硫化炭素を扱う施設は何が違うんですか。

一般的な構造基準に加えて、危険物の性質に応じた特別な基準が上乗せされます。

被覆したり水に沈めたりと、普通のタンクとはずいぶん違いますね。

はい、水と反応する危険物と発火点が極端に低い危険物とでは、守り方がまったく逆になります。

この記事の結論
  • 屋外タンク貯蔵所には共通の構造基準に加え、危険物の性質に応じた特別な基準が上乗せされることがある
  • 黄りんなどの禁水性物品を貯蔵するタンクには、防水性の不燃材料による被覆設備が必要になる
  • 二硫化炭素のタンクは厚さ0.2メートル以上の鉄筋コンクリートの水槽に水没させなければならない
  • 二硫化炭素は発火点が100度以下の特殊引火物で、水に沈めることで空気との接触を断つ
  • 特別な基準の対象になるタンクでは、被覆や水槽の状態を日常点検で確認することが欠かせない

屋外タンク貯蔵所の共通基準に上乗せされる禁水性物品の被覆基準と二硫化炭素の水没基準を示す図解

屋外タンク貯蔵所の構造基準はなぜ危険物ごとに違うのか

屋外タンク貯蔵所に並ぶ複数の屋外貯蔵タンクの一般的な構造
屋外タンク貯蔵所の技術上の基準は、危険物の規制に関する政令第十一条第一項に定められています。
第一号から第十五号までは、位置や保有空地、鋼板の厚さなど、貯蔵するほぼすべての危険物に共通して適用される基準です。
危険物の規制に関する政令第十一条第一項 屋外タンク貯蔵所(次項に定めるものを除く。)の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次のとおりとする。
この条文の号一から号十五までが、屋外タンク貯蔵所に共通する土台の基準です。
たとえば位置や保有空地の幅、鋼板の厚さ、通気管や自動表示装置の設置は、貯蔵する危険物の種類を問わず一律に適用されます。
ところが同じ第一項の中には、号十六・号十七という、特定の危険物だけを名指しした基準も含まれています。
黄りんなどの禁水性物品には防水の被覆設備、二硫化炭素には水没という、共通基準には出てこない対策です。
この二つがなぜ必要になるのか、次の項から見ていきます。

うちは灯油タンクだけなので、位置と空地の基準しか意識していませんでした。

危険物の種類によっては、共通基準の上にさらに基準が加わることを知っておくと安心です。

どんな危険物に特別な基準が上乗せされるのか

被覆されたタンクと水槽に沈められたタンクを並べた特別な屋外貯蔵タンクの対比
特別な基準の対象になるのは、消防法上の分類で性質が大きく異なる二つのグループです。
一つは水と接触することを嫌う危険物、もう一つは極めて発火しやすい危険物です。
消防法別表第一備考第十一号 特殊引火物とは、ジエチルエーテル、二硫化炭素その他一気圧において、発火点が100度以下のもの又は引火点が零下20度以下で沸点が40度以下のものをいう。
二硫化炭素は、消防法上「特殊引火物」に区分される危険物です。
発火点が100度以下という数値は、第四類危険物の中でも際立って低く、常温でも発火の危険を考えなければなりません。
一方、黄りんやカリウム、ナトリウムなどは第三類の自然発火性物質及び禁水性物質に区分されます。
水と接触すると発熱したり可燃性ガスを発生させたりする性質があり、貯蔵の仕方が第四類の危険物とは根本的に異なります。
どちらも屋外タンク貯蔵所で貯蔵する場合、共通基準に加えてそれぞれ専用の対策が求められます。

同じ屋外タンクでも、中身の性質で対応が全然違うんですね。

はい、水を嫌う危険物と、水中に逃げ込ませたい危険物とでは対策が正反対になります。

禁水性物品の屋外貯蔵タンクにはなぜ被覆設備が必要なのか

防水性の不燃材料で被覆された禁水性物品の屋外貯蔵タンク
黄りんなど禁水性物品を貯蔵する屋外貯蔵タンクには、雨水との接触を断つための設備が義務付けられています。
条文の文言はごく短いものですが、要求している中身は明確です。
危険物の規制に関する政令第十一条第一項第十六号 固体の禁水性物品の屋外貯蔵タンクには、防水性の不燃材料で造つた被覆設備を設けること。
この号が求めているのは、タンクを雨や地下水から遮断する被覆設備です。
禁水性物品は水と接触すると発熱や可燃性ガスの発生を伴うため、屋外に置くタンクにとって雨天は日常的なリスクになります。
材料は防水性の不燃材料と定められており、燃えない性質と水を通さない性質の両方を満たす必要があります。
被覆設備は一度設ければ終わりではなく、劣化や破損によって防水性が失われていないかを継続して確認する対象です。
号十六の対象は固体の禁水性物品に限られ、液体の危険物には別の基準が適用されます。

被覆って、具体的にどんな材料を使えばいいんでしょうか。

防水性と不燃性を両方満たす材料であれば方法は複数あります。
劣化がないか点検を続けることが大切です。

二硫化炭素の屋外貯蔵タンクはなぜ水槽に沈めるのか

厚さ0.2メートル以上の鉄筋コンクリートの水槽に水没させた二硫化炭素の屋外貯蔵タンク
二硫化炭素は発火点が極めて低いため、空気に触れさせないという発想でタンクの構造が決められています。
一般的な屋外タンクとは正反対に、あえて水の中に置く基準です。
危険物の規制に関する政令第十一条第一項第十七号 二硫化炭素の屋外貯蔵タンクは、厚さ0.2メートル以上の壁及び底を有する水漏れのない鉄筋コンクリートの水槽に入れて水没したものであること。
二硫化炭素のタンクは、水槽そのものに水没させることで空気との接触を断ちます。
発火点が100度以下という性質上、タンクの外面が空気にさらされているだけでも危険が高まるためです。
水槽は厚さ0.2メートル以上の鉄筋コンクリートで造り、水漏れが生じない構造でなければなりません。
水没させたタンクは、水槽自体が構造の一部を担うため、通常の屋外貯蔵タンクとは点検の視点が変わります。
水槽の水位が下がってタンクの一部が水面から露出すれば、この基準の前提そのものが崩れることになります。

水に沈めるなんて、普通のタンクの感覚からするとかなり意外です。

発火点が低い危険物ほど、空気を遮断する発想が優先されます。
水槽の水位が保たれているかが点検の要になります。

明日からなにを確認すればよいのか

被覆設備と水槽の状態を点検する作業員
被覆設備と水槽は、どちらも「見えない劣化」が進みやすい設備です。
日常点検の中で、次の視点を持っておくと見落としを防げます。
  • 被覆設備の表面に破れやめくれ、腐食による穴が生じていないか
  • 被覆の下に雨水が浸入した形跡がないか
  • 水槽の水位が基準どおり保たれ、タンクが完全に水没しているか
  • 水槽の壁や底にひび割れ、漏水の兆候がないか
被覆や水槽は、事故が起きて初めて基準の意味に気づく設備です。
禁水性物品の被覆が破れていても、雨が降るまで異常は表面化しません。
二硫化炭素の水槽も、水位が少しずつ下がっていくだけでは気付きにくい変化です。
日常点検の中にこの二つの視点を組み込んでおくことが、条文の要求を実質的に満たすことにつながります。
特別な基準が定められている設備ほど、点検の手を抜かない意識が必要です。

被覆と水槽、どちらも普段は目立たない場所なので意識して見るようにします。

その意識が一番の対策です。
異常があれば早めに専門業者に確認してもらいましょう。

よくある質問

Q屋外タンク貯蔵所の構造基準はすべて共通ではないのですか?
A位置・保有空地・鋼板厚さなどの基本的な基準(危険物の規制に関する政令第十一条第一項第一号から第十五号まで)は共通ですが、貯蔵する危険物の性質によっては追加の基準が定められています。黄りんや二硫化炭素はその代表例です。
Q禁水性物品とはどんな危険物を指しますか?
A消防法別表第一第三類に区分される自然発火性物質及び禁水性物質のことで、カリウム・ナトリウム・黄りんなどが該当します。水と接触すると発熱や可燃性ガスの発生を伴う性質を持ちます。
Q二硫化炭素はなぜ特別扱いされるのですか?
A二硫化炭素は消防法別表第一備考にいう特殊引火物で、発火点が100度以下という極めて低い性質を持ちます。空気中に置くだけで発火の危険があるため、水中に沈めて空気との接触を断つ構造が定められています。
Q被覆設備や水槽の点検は誰が行うのですか?
A危険物施設の維持管理は危険物保安監督者や施設の管理権原者の責任のもとで行われます。被覆の破損や水槽の水位低下は、日常点検の中で確認すべき代表的な項目です。

まとめ

屋外タンク貯蔵所の構造基準は、位置・空地・鋼板厚さなど共通の基準がまず土台になる
危険物の性質によっては、この共通基準だけでは足りず追加の基準が定められている
黄りんなどの禁水性物品は、水と接触すると発熱や可燃性ガスを発生させる性質を持つ
禁水性物品の屋外貯蔵タンクには防水性の不燃材料による被覆設備を設ける
二硫化炭素は発火点が100度以下の特殊引火物にあたる
二硫化炭素の屋外貯蔵タンクは厚さ0.2メートル以上の鉄筋コンクリートの水槽に水没させる
被覆の破損や水槽の水位低下がないか、日常点検で必ず確認する

屋外タンクといっても、中身の性質でここまで対策が変わるとは思いませんでした!

被覆や水槽の点検で気になる点があれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第十一条第一項第十六号・第十七号
  • 消防法別表第一備考第十一号(特殊引火物の定義)
  • 消防法別表第一第三類(自然発火性物質及び禁水性物質)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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