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酸化性固体はなぜ燃焼試験と打撃感度試験で判定するのか|粉粒状かどうかで手順が変わる理由を解説

白い粉末を円錐形に積んで観察する作業服姿の人物の写真

危険物の規制では、固体の物品も性質によって細かく分類されます。
その一つが「酸化性固体」ですが、何をもってこの区分に当たると判定されるのでしょうか。
実は消防法令には、粉末を燃やしたり鋼球を落としたりする専用の試験手順が定められています。
政令と省令が定める試験の中身を、条文から確認します。

うちで扱っている酸化剤の粉末なんですが、酸化性固体に当たるのかどうか見た目だけでは分かりません。
色が白いだけで、特に危険そうには見えないんです。

見た目ではなく、決められた試験の結果で判定しますよ。
順番に確認しましょう。

どんな試験を使えば、酸化性固体だと確認できるんでしょうか。

政令が指定する専用の試験があります。
まずは定義から確認しましょう。

この記事の結論
  • 酸化性固体とは、固体であって酸化力の潜在的な危険性又は衝撃に対する敏感性を判断する政令で定める試験で、政令の定める性状を示すものをいいます。
  • 試験は燃焼試験と落球式打撃感度試験の2つが政令で指定されています
  • 粉粒状の物品とそれ以外の物品では、そもそも使う試験の種類自体が変わります。
  • 燃焼試験は、標準物質と試験物品をそれぞれ木粉と混ぜて円錐形に積み、ニクロム線で点火して燃焼時間を比較します。
  • 落球式打撃感度試験は、鋼球を落として爆発する確率が50パーセント以上かどうかで判定します

酸化性固体の判定手順を示す図解(燃焼試験と打撃感度試験)

酸化性固体とはどんな危険物を指すのか

白い粉末の入った容器と炎のアイコンのイラスト
危険物の規制では、固体の物品もその性質によって細かく分類されます。
消防法の別表第一には、酸化性固体をどう定義するかがあらかじめ書かれています。
消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)別表第一備考第一号 酸化性固体とは、固体((略)以下同じ。)であつて、酸化力の潜在的な危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの又は衝撃に対する敏感性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すものであることをいう。
酸化性固体も、試験の結果で決まる区分です。
見た目が危なそうかどうかではなく、政令で定める試験で一定の性状を示すかどうかで判断します。
条文には「酸化力の潜在的な危険性」と「衝撃に対する敏感性」という2つの視点が書かれています。
どちらの試験を使うかは、この先の政令の条文まで確認する必要があります。
まずは試験の名前を見てみましょう。

燃えやすさだけじゃなく、衝撃への強さも見られるんですね。

そのとおりです。
どちらか一方でも該当すれば酸化性固体になります。

酸化性固体はどんな試験で判定するのか

円錐形に積んだ粉末とニクロム線の点火装置のイラスト
消防法別表第一の定義を受けて、実際の試験名を指定しているのが政令です。
条文を確認します。
危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第一条の三(抜粋) 法別表第一備考第一号の酸化力の潜在的な危険性を判断するための政令で定める試験は、粉粒状の物品にあつては過塩素酸カリウムを標準物質とする燃焼試験とし、その他の物品にあつては過塩素酸カリウムを標準物質とする大量燃焼試験とする。(略)法別表第一備考第一号の衝撃に対する敏感性を判断するための政令で定める試験は、粉粒状の物品にあつては硝酸カリウムを標準物質とする落球式打撃感度試験とし、その他の物品にあつては鉄管試験とする。
指定されている試験は、燃焼試験と落球式打撃感度試験の2つが基本です。
燃焼試験は、標準物質と試験物品それぞれの燃焼時間を比較して、酸化力の潜在的な危険性を判断します。
落球式打撃感度試験は、標準物質と試験物品それぞれの爆発する確率を比較して、衝撃に対する敏感性を判断します。
条文をよく読むと、「粉粒状の物品」と「その他の物品」で試験の名前そのものが違うことが分かります。
この違いは、この先の落とし穴で詳しく確認します。

燃焼試験と落球式打撃感度試験、どちらか一方に当てはまれば酸化性固体になるんですか。

はい、どちらか一方の性状を示せば該当します。
次は試験の中身を見てみましょう。

燃焼試験と打撃感度試験はどんな手順で行われるのか

鋼球を落とす試験装置と赤りんの容器を観察する作業服姿の人物のイラスト
試験の名前が分かったところで、次は実際の手順を確認します。
細目を定めているのは、政令からさらに委任を受けた省令です。
危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第一号)別表第一・別表第三(抜粋) 試験場所は、温度二十度、湿度五十パーセント、気圧一気圧の無風の場所とする。標準物質と木粉との混合物を高さと底面の直径の比が一対一・七五となるように円錐形にたい積させ、円輪状にしたニクロム線(温度千度に加熱されているもの)を基部の全周が着火するまで接触させて燃焼時間を測定する。落球式打撃感度試験は、標準物質と赤りんとの混合物に鋼球を落下させた場合に五十パーセントの確率で爆発する高さから、鋼球を試験物品と赤りんとの混合物に落下させて爆発する確率を求める。
試験の条件は、温度や湿度、器具の寸法まで細かく決められています。
燃焼試験は温度20度・湿度50パーセントの無風の環境で、混合物を円錐形に積み上げて燃焼時間を測ります。
点火にはニクロム線を使い、混合物の基部の全周が着火するまで接触させます。
落球式打撃感度試験は、標準物質との混合物にまず鋼球を落として50パーセント爆点を求め、その高さから試験物品でも同じ手順を繰り返します。
どちらの試験も、標準物質との比較で結論を出す仕組みです。

円錐形に積む角度や、鋼球を落とす高さまで、細かく決まっているんですね。

はい。
条件を揃えることで、誰が試験しても同じ結果になります。

粉粒状かどうかで試験は何が変わるのか

網ふるいを通過する細かい粉末と塊状の物品を並べたイラスト
ここまでの試験は、実は「粉粒状の物品」だけを対象にしたものです。
その他の物品には、まったく別の試験が用意されています。
危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第一号)第一条第一項 粉粒状の物品は、目開きが二ミリメートルの網ふるいを回転させながら毎分百六十回の打振を与えてふるつた場合に、当該網ふるいを三十分間で通過するものが十パーセント以上のものとする。
粉粒状かどうかは、この網ふるいの通過率で機械的に決まります。
見た目の粒の粗さで判断するのではなく、2ミリメートルの網ふるいを毎分160回打振して、30分間で10パーセント以上通過するかどうかが基準です。
粉粒状に当たれば燃焼試験と落球式打撃感度試験、当たらなければ大量燃焼試験鉄管試験という、まったく別の試験に切り替わります。
大量燃焼試験は混合物を500グラムに増やして同じ手順で燃焼時間を比較し、鉄管試験は試験物品とセルロース粉との混合物を鉄管に詰めて起爆し、鉄管が完全に裂けるかどうかを見ます。
「粉粒状かどうか」を確認せずに試験を選ぶと、そもそも違う試験結果を根拠にしてしまう恐れがあります。

うちの物品は粒が粗いので、感覚的には粉粒状ではない気がします。

感覚ではなく網ふるいの通過率で確かめる必要がありますよ。
次は実務での確認手順を見てみましょう。

試験結果を実務でどう確認すればよいか

受付カウンターで書類を手渡す作業服姿の人物のイラスト
ここまで見てきた試験は、専用の器具と条件を必要とする技術的な試験です。
事業者が自己判断だけで結論を出すのは適切ではありません。
  • 取り扱う物品が粉粒状かどうかを、網ふるいの通過率の基準に照らして確認する
  • 粉粒状かどうかが分かったら、対応する試験の種類(燃焼試験・大量燃焼試験・落球式打撃感度試験・鉄管試験)を確認する
  • 自社で判断できない場合は、専門の試験機関に依頼して試験を行ってもらう
  • 判定結果は所轄の消防署に相談し、品名や指定数量の考え方をすり合わせておく

結局、粉粒状かどうかの確認が最初の分かれ道になるんですね。

はい。
粉粒状かどうかの確認から始めるのが最初の一歩です。

よくある質問

Q酸化性固体とはどんな危険物を指すのか?
A消防法別表第一備考第一号により、固体であって、酸化力の潜在的な危険性又は衝撃に対する敏感性を判断する政令で定める試験で、政令の定める性状を示すものをいいます。
Q酸化性固体はどんな試験で判定するのか?
A危険物の規制に関する政令第一条の三により、燃焼試験と落球式打撃感度試験の2つが基本の試験として指定されています。
Q燃焼試験はどんな条件で行われるのか?
A危険物の試験及び性状に関する省令別表第一により、温度20度・湿度50パーセントの無風の場所で、混合物を円錐形に積んでニクロム線で点火します。
Q物品が粉粒状かどうかはどう決まるのか?
A危険物の試験及び性状に関する省令第一条第一項により、2ミリメートルの網ふるいを毎分160回打振して30分間で10パーセント以上通過するかどうかで決まります。

まとめ

酸化性固体とは、固体であって酸化力の潜在的な危険性又は衝撃に対する敏感性を判断する政令で定める試験で性状を示すものをいいます。
その試験の名称そのものが政令に書かれており、燃焼試験と落球式打撃感度試験の2つが指定されています
粉粒状の物品かどうかは、2ミリメートルの網ふるいを毎分160回打振して30分間で10パーセント以上通過するかどうかで決まります。
燃焼試験は、標準物質と木粉との混合物を円錐形に積み、ニクロム線で点火して燃焼時間を測定します。
燃焼時間が試験物品のほうが標準物質と等しいか短ければ、酸化力の潜在的な危険性ありと判定されます
落球式打撃感度試験は、鋼球を落として爆発する確率が50パーセント以上かどうかで判定します。
粉粒状でない物品は、燃焼試験の代わりに大量燃焼試験、落球式打撃感度試験の代わりに鉄管試験で判定します。

燃焼試験も打撃感度試験も、粉粒状かどうかで変わることまでよく分かりました

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)別表第一備考第一号
  • 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第一条の三
  • 危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第一号)第一条・別表第一・別表第三

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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