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危険物の貯蔵所はなぜふだんの状態まで問われるのか|水抜口の閉鎖から積み替え禁止まで解説

危険物の貯蔵所はなぜふだんの状態まで問われるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

危険物の規制に関する政令が定める基準は、施設の構造や設備を作れば終わりではありません。
貯蔵している間も、その状態を保ち続けることまで条文は具体的に求めています。
弁を閉めておく、容器を積み替えない、温度を上げすぎない――どれも日常の管理そのものです。
危険物の規制に関する政令第二十六条が定める、ふだんの状態を保つための基準をわかりやすく解説します

うちのタンクや貯蔵所、設備さえ整えておけば基準は満たしていますよね。

いえ、ふだんの状態を保つことも基準に含まれています。

具体的にはどんなことを守ればいいんですか。

弁の閉鎖や積み替え禁止など、政令第二十六条が定める内容を見ていきましょう。

この記事の結論
  • 政令第二十六条は、貯蔵中もふだんの状態を保つことを求める基準です
  • 屋外貯蔵タンクの防油堤は、水抜口を通常は閉鎖しておく必要があります。
  • 移動貯蔵タンクの底弁は、使用時以外は完全に閉鎖しておかなければなりません。
  • 積載式以外の移動タンク貯蔵所は、危険物を積んだ状態でタンクを積み替えてはいけません
  • 屋内貯蔵所の危険物は五十五度を超えないよう、必要な措置を講じます。

危険物はふだんの状態も守る基準があることを水抜口の閉鎖と底弁の閉鎖と積み替え禁止と温度管理で示した図解

屋外貯蔵タンクの防油堤はなぜ水抜口を閉めておくのか

防油堤に囲まれた屋外貯蔵タンクと閉じられた水抜口
屋外貯蔵タンクの周囲には、油の流出を防ぐための防油堤が設けられています。
この防油堤にも、ふだんから守るべき基準があります。
危険物の規制に関する政令第二十六条第一項 六 屋外貯蔵タンクの周囲に防油堤がある場合は、その水抜口を通常は閉鎖しておくとともに、当該防油堤の内部に滞油し、又は滞水した場合は、遅滞なくこれを排出すること。
結論は、水抜口は開けっぱなしにできないということです
防油堤は、タンクから漏れた油が敷地外へ流出するのを防ぐための堰です。
水抜口を開けたままにすると、堤内に溜まった油もそのまま外へ流れ出てしまいます。
だから水抜口は普段は閉じておき、雨水などが堤内に溜まったときだけ点検して排出します。
排出が遅れて放置されると、次に何かあったときに油と雨水が一気に流出する事態になります。

水抜口を開けたままにしていても、油さえ漏れなければ大丈夫じゃないんですか。

いいえ、通常は閉鎖が原則です。
雨水が溜まったときだけ点検して排出してください。

移動貯蔵タンクの底弁と配管はどんな状態を保てばよいのか

移動貯蔵タンクの閉じた底弁とコイル状の注入ホース
移動貯蔵タンクは、走行中や積み替え時に配管への負担がかかりやすい設備です。
壊れや漏れを防ぐための基準を確認します。
危険物の規制に関する政令第二十六条第一項 七 移動貯蔵タンク及びその安全装置並びにその他の附属の配管は、裂け目、結合不良、極端な変形、注入ホースの切損等による漏れが起こらないようにするとともに、当該タンクの底弁は、使用時以外は完全に閉鎖しておくこと。
結論は、配管の状態を保つことと底弁を閉じておくことの両方が求められるということです
移動貯蔵タンクの安全装置や附属の配管は、裂け目や結合不良、極端な変形が無い状態を保ちます。
注入ホースの切損なども漏れの原因になるため、日常点検で確認が必要です。
底弁は使用時以外は完全に閉鎖しておくことが明記されており、半開きのままにはできません。
出発前と積み下ろし後、それぞれのタイミングで底弁の状態を確認する習慣が実務では有効です。

底弁は積み下ろしが終わったらすぐ閉めるようにしています。

それが正解です。
使用時以外は完全に閉鎖しておく必要があります。

積載式以外の移動タンク貯蔵所はなぜ積み替えができないのか

危険物を積んだままのタンクの積み替えを禁止する赤い印
移動タンク貯蔵所には、車体に固定されたタイプと箱枠ごと積み替えるタイプがあります。
このうち、積み替えができるのは限られた条件のときだけです。
危険物の規制に関する政令第二十六条第一項 八の二 積載式移動タンク貯蔵所以外の移動タンク貯蔵所にあつては、危険物を貯蔵した状態で移動貯蔵タンクの積替えを行わないこと。
結論は、危険物が入ったままのタンクを積み替えられるのは積載式に限られるということです
移動タンク貯蔵所のうち、積載式のものはタンクを箱枠に収めた状態で別の車両へ積み替える運用が想定されています。
それ以外の一般的な移動タンク貯蔵所は、車体に固定された状態で使う設計です。
危険物を貯蔵した状態のまま積み替えると、固定や配管の接続が想定外の負荷を受けます。
積み替えが必要になったときは、まず自分の車両が積載式に該当するかどうかを確認してください。

うちのタンクローリー、積み替えできるタイプかどうかよく分かりません。

車検証や設計図書で積載式かどうかを確認できます。
まずそこを確かめましょう。

屋内貯蔵所の危険物は温度をどこまで上げてよいのか

屋内貯蔵所の棚と壁の温度計と換気口
積み重ねの高さや容器の基準を守っていても、見落としやすいのが温度です。
屋内貯蔵所には、温度そのものを制限する基準もあります。
危険物の規制に関する政令第二十六条第一項 三の三 屋内貯蔵所においては、容器に収納して貯蔵する危険物の温度が五十五度を超えないように必要な措置を講ずること。
結論は、容器の中の危険物の温度が五十五度を超えないよう管理する義務があるということです
高さや区分といった置き方の基準を守っていても、温度の管理を怠れば基準違反になります。
夏場の倉庫内や、屋根に近い高い位置の棚は特に温度が上がりやすい場所です。
換気や遮熱、温度計による定期的な確認など、必要な措置の内容は現場ごとに異なります。
明日からできることとして、まずは倉庫内で温度が上がりやすい場所を洗い出すことから始めます。

積み方は基準どおりにしているので、それで十分だと思っていました。

温度の管理も別に必要です。
倉庫内の温度も定期的に確認してください。

硫黄を山積みで貯蔵する屋外貯蔵所ではシートをどう管理するのか

囲いの中で硫黄をシートで覆った屋外貯蔵所
塊状の硫黄などは、容器に入れず囲いの中で直接貯蔵することが認められています。
この場合も、ふだんの管理として欠かせない基準があります。
危険物の規制に関する政令第二十六条第一項 十二 第十六条第二項に規定する屋外貯蔵所においては、硫黄等を囲いの高さ以下に貯蔵するとともに、硫黄等があふれ、又は飛散しないように囲い全体を難燃性又は不燃性のシートで覆い、当該シートを囲いに固着しておくこと。
結論は、シートを固定する設備があるだけでは足りず実際に覆っておく必要があるということです
硫黄等は、囲いの高さ以下に収まる量に抑えて貯蔵します。
あふれや飛散を防ぐため、囲い全体を難燃性又は不燃性のシートで覆っておくことが求められます。
シートを固定する装置が備わっていても、実際にシートを掛けていなければ基準は満たせません。
強風の後などは、シートが外れていないか点検する習慣をつけると安心です。

シートを留める金具は付いているので、それで足りると思っていました。

金具があっても実際に覆っておくことが必要です。
強風の後は点検してください。

よくある質問

Q政令第二十六条が定める基準は指定数量未満の危険物にもかかるのですか?
Aいいえ。指定数量未満の危険物には、消防法第九条の四に基づき市町村の火災予防条例が適用されます。政令第二十六条は、許可や届出を受けた製造所等が対象です。
Q屋外貯蔵タンクの水抜口は鍵をかけて閉めておく必要がありますか?
A政令第二十六条第一項第六号は通常は閉鎖しておくことを求めており、施錠までは規定していません。ただし誤って開けられないよう管理する運用は現場の判断で行われています。
Q底弁を閉め忘れたまま走行してしまった場合はどうなりますか?
A底弁の閉鎖は貯蔵の基準そのものであり、閉め忘れは基準違反にあたります。漏えいが実際に生じていなくても、気づいた時点で速やかに閉鎖し、点検記録に残すことが望まれます。
Q硫黄を覆うシートが劣化していた場合はすぐに交換が必要ですか?
A破れや固定不良があれば、あふれ・飛散を防げない状態とみなされるおそれがあります。定期点検で劣化を確認し、必要に応じて早めに交換してください。

まとめ

政令第二十六条は、貯蔵中もふだんの状態を保つことを求める基準です
屋外貯蔵タンクの防油堤は、水抜口を通常は閉鎖しておきます
堤内に滞油・滞水した場合は、遅滞なく排出する必要があります
移動貯蔵タンクの底弁は、使用時以外は完全に閉鎖しておきます
積載式以外の移動タンク貯蔵所は、危険物を積んだ状態でタンクを積み替えられません
屋内貯蔵所の危険物は五十五度を超えないよう管理します
硫黄等を山積みで貯蔵するときは、囲いの高さ以下に抑えシートで覆っておく必要があります

水抜口や底弁の閉め忘れ、気をつけます。

日常の点検習慣が一番の予防です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第二十六条(貯蔵の基準)
  • 危険物の規制に関する政令第十六条第二項(屋外貯蔵所のうち塊状の硫黄等の貯蔵)
  • 消防法第十条第三項
  • 消防法第九条の四(指定数量未満の危険物に関する基準)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。実際の運用は施設の許可内容や所轄消防署の指導によって異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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