消防隊が到着してから消火活動が終わるまでの間、実は「公務員の職務執行」がずっと続いています。
その職務執行の途中でミスがあったら、あるいは市町村が管理する設備が壊れていたら、いったい誰が賠償するのでしょうか。
実はこの問いに答える一般法が、消防法とは別に存在します。
本記事では国家賠償法第一条と第二条が消防にまつわる賠償責任をどう分けているのかを解説します。
近所の消火栓が壊れているのを見つけたんですが、これって誰の責任なんでしょうか。
市町村に言えばいいんですか。
はい、まずは所轄の消防署か市町村へ連絡してください。
国家賠償法という法律が責任の所在を決めています。
消防法の中にそういう規定があるんですか。
いいえ、国家賠償法という別の法律です。
条文を見ながら順番に確認しましょう。
- 国家賠償法第一条は、公務員が故意又は過失によって違法に加えた損害についての国・公共団体の賠償責任を定めています。
- 消防隊による適法な処分(破壊消防など)の損失は、この法律ではなく消防法第二十九条の損失補償で救済されます。
- 消火栓や防火水槽など市町村が管理する消防水利は「公の営造物」にあたり、管理に瑕疵があれば第二条の対象になり得ます。
- 賠償を求められる期間には時効があり、いつまでも請求できるわけではありません。
- 賠償責任を負うのは国又は公共団体であり、担当した公務員個人に直接請求することはできません。
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目次
なぜ建物の管理者が国家賠償法を知っておく必要があるのか

そうした場面での賠償責任を定めているのが、消防法とは別の一般法です。
消防隊員の消火活動や、消防署員による立入検査も公権力の行使にあたるため、この条文の対象になり得ます。
ただし賠償の対象になるのは、職務行為が違法であり、かつ公務員に故意又は過失があった場合に限られます。
適法な職務執行そのものは、たとえ建物側に損害が出ても第一条の対象にはなりません。
次は、消火活動そのものでのミスがどう扱われるのかを見ていきましょう。
消防署員が来ただけで対象になるわけじゃないんですね。
てっきり何でも賠償してもらえるのかと思っていました。
はい、違法性が無いと対象になりません。
次は消火活動そのものを見てみましょう。
消防隊の消火活動によるミスはどんな場合に問えるのか

消防法自身が、その場合の扱いをあらかじめ定めているためです。
消防法第二十九条の処分は無過失でも時価で補償される仕組みで、公務員のミスを問う国家賠償法第一条とは前提が異なります。
国家賠償法第一条が働くのは、判断が著しく不合理だったなど、処分そのものが違法と評価される特別な場合に限られます。
「壊された」という事実だけを見て、どちらの制度が使えるかを早合点しないことが大切です。
次は、市町村が管理する設備そのものが壊れていた場合を見ていきましょう。
じゃあ、消防隊のミスを問える場面はほとんど無いんですか。
限られた場面ですが、ゼロではありません。
次は設備そのものの話に移ります。
消火栓や防火水槽が壊れていたらだれの責任になるのか

ここでは第一条ではなく別の条文が働きます。
第二条は公務員の故意・過失を問いません。管理に瑕疵があったかどうかだけが問われる点が第一条と大きく違います。
壊れた消火栓のせいで放水が遅れ延焼が広がった、といった因果関係が認められれば、市町村の責任を問える可能性があります。
ただし瑕疵とは「通常有すべき安全性を欠いていた」状態を指し、単に古いというだけでは足りません。
次は、この請求にはどんな落とし穴があるのかを見ていきましょう。
故意や過失を問わないなら、こっちのほうが請求しやすそうですね。
ただし瑕疵の立証は請求する側の役目です。
次は落とし穴を確認しましょう。
賠償を求めるときの落とし穴はどこにあるのか

請求できる期間そのものに制限がある点です。
民法第七百二十四条により、損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で請求権が消滅します。
気づいたときには対応が遅れていた、ということがないよう、被害に気づいた時点で早めに記録を残すことが重要です。
また第五条により、消防法のように別段の定めがある場合はそちらが優先されるため、適法な処分による損失補償と、違法な行為による損害賠償は請求の窓口も仕組みもまったく別だと理解しておく必要があります。
次は、実務として明日から何を確認すればよいかを整理します。
時効があるなら、被害に気づいたらすぐ動いたほうがよさそうですね。
はい、記録を残すことが第一歩です。
次に実務の手順を見ていきましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

確認すべきポイントを整理します。
異常を見つけたら、その日のうちに写真と発見日時を記録し、所轄消防署または市町村へ連絡してください。
管理者と費用負担者が異なる場合は両方に責任が及ぶことがあるため、連絡先を一本化せず両方へ伝えておくと確実です。
自衛消防隊が管理する設備と、市町村が管理する消防水利の境界を、今日のうちに図面で確認してみてください。
うちの周りの消火栓、一度確認してみます。
日頃の点検記録が一番の備えになります。
次によくある質問をまとめます。
よくある質問
まとめ
国家賠償法の仕組みがよく分かりました。
うちの消火栓の点検記録も見直してみます。
日頃の記録が一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 国家賠償法(昭和22年法律第125号)第1条・第2条・第3条・第4条
- 消防法(昭和23年法律第186号)第20条・第29条第3項
- 民法(明治29年法律第89号)第724条
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の被害や請求の可否についての判断は、弁護士または所轄消防署・市町村にご確認ください。





