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高層マンションに老人ホームが入っていると誘導灯は免除されるのか|区画による設置緩和の要件を解説

老人ホームが入っている高層マンションの外観の夜景

高層マンションの上層階を歩いていると、誘導灯が付いていない階に気づくことがあります。
これは故障や見落としではなく、消防法令が定める区画による免除の仕組みが働いている場合があります。
ただし免除には細かい要件があり、区画や防火戸の維持を怠ると免除の前提が崩れてしまいます。
この記事では誘導灯の設置が免除される条件と、防火管理者が確認すべきポイントを解説します。

うちのマンション、上の階に誘導灯が付いてない場所があるんですけど、大丈夫なんでしょうか。

区画の要件を満たしていれば、法令上問題ない場合がありますよ。

区画の要件って、具体的にどんな条件なんですか。

壁の構造や防火戸の性能など、5つの要件を順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 誘導灯は原則としてすべての階に設置する義務があります
  • 令別表第一(16)項イの高層マンションに一般住宅と老人ホーム等が混在する場合は例外規定があります
  • 免除の対象は地階・無窓階・11階以上を除く10階以下の一般住宅部分に限られます
  • 耐火構造の壁と床、内装の不燃化など5つの要件をすべて満たす必要があります
  • 老人ホーム等が入る階そのものは、区画をしても免除の対象になりません

誘導灯免除のしくみを示す4ステップの図解

マンションの誘導灯はどんな階にも必要なのが原則なのか

誘導灯が全ての階の窓際で点灯している高層マンション
誘導灯の設置義務には原則があり、まずそこを押さえておく必要があります。
例外の話は、この原則を踏まえたうえで初めて意味を持ちます。
誘導灯及び誘導標識は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める防火対象物又はその部分に設置するものとする。ただし、避難が容易であると認められるもので総務省令で定めるものについては、この限りでない。(消防法施行令第26条第1項)避難口誘導灯及び通路誘導灯の設置対象には、令別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物が含まれる。
原則はすべての階に設置する義務があります
避難口誘導灯・通路誘導灯は、令別表第一(16)項イなどに掲げる防火対象物に設置します。
共同住宅である(5)項ロだけの建物は本来対象外ですが、老人ホーム等の(6)項ロ・ハが混在すると(16)項イの複合用途として扱われ、設置義務が生じます。
条文の「ただし書き」が、今回取り上げる免除の入口になっています。
免除は自動的に受けられるものではなく、規則が定める要件を満たして初めて成立します。

うちは住宅がメインですけど、老人ホームが一部入っているので設置義務があるって聞きました。

その組み合わせだと(16)項イの複合用途になるので、原則は全部の階が対象になりますね。

老人ホームが入っている高層マンションではどの階が免除の対象になるのか

老人ホーム階だけ誘導灯が点灯し上層の住戸階は消灯している建物の断面
すべての階が対象外になるわけではなく、免除には範囲があります。
まずはどの階が候補になるのかを見ていきます。
前各号に掲げるもののほか、令別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物のうち、同表(五)項イ及びロ並びに(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途以外の用途に供される部分が存せず、かつ、次のイからホまでに定めるところにより、十階以下の階に設置される区画を有するものの同表(五)項イ並びに(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存する階以外の階(地階、無窓階及び十一階以上の階を除く。)(消防法施行規則第28条の2第1項第4号の2)
対象になるのは10階以下の一般住戸部分です
対象になる建物は、老人ホーム等の(6)項ロ・ハと一般住宅の(5)項イが混在する(16)項イの防火対象物です。
このうち老人ホーム等が入る階そのものではなく、それ以外の一般住戸部分の階が免除の候補になります。
地階・無窓階・11階以上の部分は、この免除の対象から最初から除かれています。
免除が成立するのは、次の見出しで説明する区画の要件をすべて満たした場合に限られます。

じゃあ、うちの11階の住戸フロアは対象にならないんですか。

そうですね、11階以上と地階・無窓階は最初から対象外です。
10階以下の住戸フロアだけが候補になります。

免除を受けるにはどんな区画が必要なのか

耐火構造の壁と自動閉鎖装置付きの防火戸で仕切られた区画
区画の要件は一つではなく、五つすべてを満たす必要があります。
順番に見ていきます。
イ 居室を耐火構造の壁及び床で区画したものであること。
ロ 壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを地上に通ずる主たる廊下その他の通路にあつては準不燃材料で、その他の部分にあつては難燃材料でしたものであること。
ハ 区画する壁及び床の開口部の面積の合計が八平方メートル以下であり、かつ、一の開口部の面積が四平方メートル以下であること。
ニ ハの開口部には、特定防火設備である防火戸(略)で、随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの(略)を設けたものであること。
ホ 令別表第一(五)項イ並びに(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供される部分の主たる出入口が、直接外気に開放され、かつ、当該部分における火災時に生ずる煙を有効に排出することができる廊下、階段その他の通路に面していること。(消防法施行規則第28条の2第1項第4号の2イ〜ホ)
区画の条件は5つ、すべて満たす必要があります
壁と床は耐火構造で仕切り、内装は不燃材料に近いものに仕上げます。
区画に設ける開口部は面積を小さく抑え、防火戸には自動的に閉まる自動閉鎖装置を備えます。
老人ホーム側の出入口は、煙を有効に排出できる廊下や階段に面していることも条件です。
どれか一つでも欠けると、その階の免除は成立しません。

防火戸って、ただ付いていればいいわけじゃないんですね。

はい、随時閉められて煙感知器と連動して閉まる自動閉鎖装置付きのものが条件です。

区画を満たしても誘導灯を省略できない部分はどこか

地階と最上部の階には誘導灯が残る建物の断面
免除される範囲を広く捉えすぎると、必要な誘導灯まで外してしまう危険があります。
対象外になる部分を確認しておきます。
同表(五)項イ並びに(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存する階以外の階(地階、無窓階及び十一階以上の階を除く。)(消防法施行規則第28条の2第1項第4号の2)
免除の対象外になる部分が3つあります
老人ホーム等が実際に入居している階そのものは、区画をしても免除の対象になりません
地階・無窓階・11階以上の部分も、区画の有無にかかわらず設置が必要です。
階段に設ける通路誘導灯は、建築基準法上の非常用の照明装置が設けられていれば、別の規定により作動時間の緩和が図られる場合があります。
免除の範囲を勘違いして誘導灯を撤去すると、法令違反になるおそれがあります。

うちの老人ホームのフロア自体は、誘導灯を外していいってことじゃないんですね。

そうです。
老人ホームが入っている階そのものは、区画をしても免除の対象にはなりません

防火管理者は免除の状態を保つために何を確認すればよいのか

点検員が防火戸の自動閉鎖装置を確認している様子
免除は一度成立すれば終わりではなく、状態を保ち続ける必要があります。
日常でどこを見ればよいかを整理します。
ハの開口部には、特定防火設備である防火戸(略)で、随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの若しくは次に定める構造のもの(略)を設けたものであること。(イ)随時閉鎖することができ、かつ、煙感知器の作動と連動して閉鎖すること。(消防法施行規則第28条の2第1項第4号の2ニ)
区画と防火戸の状態は定期的に確認します
防火戸の自動閉鎖装置が正常に作動するか、煙感知器と連動しているかを点検します。
区画の開口部をふさぐ工事や、防火戸を開放したままにする使い方は免除の前提を崩します。
維持管理の状況は、消防用設備等の点検報告にあわせて記録しておくと安心です。
疑問があれば、所轄消防署や専門業者に確認することをおすすめします。

防火戸を開けっぱなしにしてる住民がいたら、注意した方がよさそうですね。

そうですね。
区画と防火戸が機能して初めて免除が成り立つので、日常の維持管理が大切です。

よくある質問

Q免除の対象になるのはどんな建物ですか?
A令別表第一(16)項イの防火対象物のうち、一般住宅の(5)項イと老人ホーム等の(6)項ロ・ハが混在し、10階以下の階に規則が定める区画が設けられているものが対象です。
Q老人ホームが入っている階自体も誘導灯を省略できますか?
Aできません。老人ホーム等の用途に供される部分が存する階そのものは、区画の有無にかかわらず誘導灯の設置が必要です。
Q区画の防火戸はどんな種類でもよいですか?
A特定防火設備である防火戸で、随時閉鎖でき、かつ煙感知器の作動と連動して自動的に閉鎖するものに限られます。
Q免除を受けたあとに区画を変更してもよいですか?
A区画や防火戸の性能を損なう変更をすると免除の前提が崩れるため、変更前に所轄消防署への確認が必要です。

まとめ

誘導灯は原則として防火対象物のすべての階に設置する義務があります
令別表第一(16)項イの高層マンションに一般住宅と老人ホーム等が混在する場合は例外規定があります
免除の対象は地階・無窓階・11階以上を除く10階以下の一般住宅部分に限られます
耐火構造の壁と床、内装の不燃化など5つの要件をすべて満たす必要があります
防火戸は随時閉鎖でき煙感知器と連動する自動閉鎖装置付きのものに限られます
老人ホーム等が入る階そのものは区画をしても免除の対象になりません
区画と防火戸の維持管理を怠ると免除の前提が崩れるため、定期的な確認が欠かせません

免除される階とされない階がはっきり分かって、安心しました。

区画や防火戸の状態に不安があれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第26条
  • 消防法施行規則第28条の2第1項第4号の2
  • 消防法施行規則等の一部を改正する省令等の参考資料の送付について(平成30年6月1日事務連絡)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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