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可燃性液体類等はなぜ火花や高温体から離すのか|例外の要件と屋外の空地基準を解説

作業着姿の点検員が可燃性液体類等の保管容器の間隔を巻尺で測っているイメージ

灯油や食用油などの可燃性液体類等は、容器の基準や積み重ねの高さだけでなく、日々の取扱いそのものにも技術上の基準が定められています。
火花や高温体に近づけてはいけない、蒸気をみだりに発生させてはいけない、といった具体的な行動の基準です。
では、通常の作業でこの基準どおりにできないときはどうすればよいのか、屋外で保管するときの周囲の空地はどれだけ必要なのか。
今回は火災予防条例(例)第三十三条が定める取扱いの基準と屋外の空地基準を、消防法令に沿って解説します。

うちの倉庫、食用油の缶とか灯油缶を並べて置いてるだけなんですけど、それにも決まりがあるんですか。

はい、容器や積み重ねの基準とは別に、置き方や扱い方そのものを定めた基準があります。
火花や高温から離すこと、そして屋外なら周りに空地を保つことが柱になります。

空地って言われても、うちの敷地、そんなに広くないんですけど大丈夫でしょうか。

空地の幅は保管する量によって変わりますし、動植物油類のように1メートル以上と決まっているものもあります。
まずは条文の中身から一緒に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 可燃性液体類等は容器や積み重ねの基準だけでなく取扱いそのものにも基準がある
  • 炎、火花、高温体への接近と過熱を避ける
  • 通常の作業でこの基準によれない場合は十分な措置を講じれば適用が除外される
  • 屋外で保管する場所の周囲には、数量に応じた空地か防火上有効な塀が必要になる
  • 動植物油類は1メートル以上の空地が明文で定められている

可燃性液体類等は火花や高温体を避け空地を確保するという取扱いの基準を示した図解

可燃性液体類等の保管は容器や積み重ね以外にも基準があるのか

パレットに並べた可燃性液体類等の容器と棚
食用油や灯油などの可燃性液体類等は、指定可燃物や少量危険物として容器の基準や積み重ねの高さがすでに定められています。
けれども、火災予防条例(例)第三十三条にはこれとは別に、日々の取扱いの仕方そのものを縛る基準も置かれています。
第三十三条 (略)可燃性液体類等の貯蔵及び取扱いは、次の各号に掲げる技術上の基準によらなければならない。
取扱いそのものにも柱書きで基準がかかります。
第三十三条は指定可燃物のうち可燃性固体類・可燃性液体類、そして少量危険物の動植物油類をまとめて「可燃性液体類等」と呼び、貯蔵と取扱いの両方に技術上の基準を課しています。
容器や積み重ねの基準はすでに別記事で確認していますが、取扱いの最中に何を避けるかという基準はまだ見ていません。
次の項からは、この柱書きの下にある各号の中身を具体的に見ていきます。

容器の基準はうちも守ってますけど、扱い方にまで基準があるとは知りませんでした。

容器だけ守っていても、扱い方が基準から外れていれば違反になり得ます。
次の項で具体的に何を避けるべきか確認しましょう。

取扱いの最中に何を避けなければならないのか

火気に近づけてはいけない可燃性液体類等の容器
可燃性液体類等を実際に扱う場面では、避けるべき行為が条文にはっきり書かれています。
第三十三条第一項第三号がその中身です。
第三十三条 (略)三 可燃性液体類等は、炎、火花若しくは高温体との接近又は過熱を避けるとともに、みだりに蒸気を発生させないこと。
避けるべき行為は四つに整理できます。
炎への接近、火花への接近、高温体への接近、そして過熱を避けることに加えて、みだりに蒸気を発生させないことも求められます。
たとえば給油作業の近くで溶接をしたり、ヒーターのそばに容器を置きっぱなしにしたりする行為は、この号に触れるおそれがあります。
容器の密封や積み重ねを守っていても、置き場所や扱い方が基準から外れていれば意味がありません。

倉庫の近くで溶接作業をすることがあるんですけど、それも気をつけないといけないんですね。

はい、可燃性液体類等の近くでの火花や高温は特に注意が必要です。
作業前に置き場所を見直すだけでもリスクは下げられます。

基準どおりにできない通常の作業ではどうするのか

遮熱板を備えたタンクと圧力計
三号の基準は絶対的なものではなく、例外があらかじめ条文に用意されています。
第三十三条第一項第四号を見てみましょう。
第三十三条 (略)四 前号の基準は、可燃性液体類等を貯蔵し、又は取り扱うにあたつて、同号の基準によらないことが通常である場合においては、適用しない。この場合において、当該貯蔵又は取扱いについては、災害の発生を防止するため十分な措置を講ずること。
例外には条件が付きます。
高温での加工工程など、三号の基準によらないことが業務として通常である場合には、三号は適用されません。
ただし免除されるわけではなく、災害の発生を防止するための十分な措置を講じることが条件になります。
遮熱板や防護壁、監視体制の強化など、現場に応じた代替策を用意しているかどうかがポイントです。

うちの工程だと、どうしても高温に近づける作業があるんですけど、それでも違反になりますか。

通常の作業でやむを得ない場合は、十分な措置を講じれば基準の適用から外れます。
その措置の内容を記録しておくことをおすすめします。

屋外で保管するときの空地基準を見落としていないか

距離をあけた屋外の可燃性液体類等の保管場所
取扱いの基準に加えて、屋外で保管する場所そのものにも基準があります。
第三十三条第二項第一号です。
第三十三条 (略)2 可燃性液体類等を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備は、次の各号に掲げる技術上の基準によらなければならない。一 可燃性液体類等を貯蔵し、又は取り扱う屋外の場所の周囲には、可燃性固体類及び可燃性液体類(以下「可燃性固体類等」という。)にあつては容器等の種類及び可燃性固体類等の数量の倍数に応じ次の表に掲げる幅の空地を、指定数量の5分の1以上指定数量未満の第四類の危険物のうち動植物油類にあつては1メートル以上の幅の空地をそれぞれ保有するか、又は防火上有効な塀を設けること。
空地の幅は物によって変わります。
可燃性固体類等は数量の倍数に応じて幅が変わる表に基づいて決まりますが、動植物油類は1メートル以上という具体的な数値が条文そのものに明記されています。
空地の代わりに防火上有効な塀を設ければ足りるという選択肢も用意されています。
敷地が狭い場合は、空地の実測と塀の設置基準の両方を確認しておくと安心です。

うちは食用油しか置いてないんですけど、それでも空地は要りますか。

動植物油類なら1メートル以上の空地か、有効な塀のどちらかで足ります。
まずは現状の距離を測ってみましょう。

点検までに何を確認しておけばよいのか

空地を巻尺で確認する点検員
最後に、点検までに確認しておきたいポイントを整理します。
条文を実際の現場に落とし込む作業です。
  • 可燃性液体類等の保管場所に、火花や高温体に近づく作業がないか確認する
  • みだりな蒸気の発生がないか、容器の密閉状態を点検する
  • 通常の作業で三号の基準によれない場合は、講じている措置を書面で残しておく
  • 屋外保管場所の空地の幅を実測し、数量の倍数に応じた基準を満たしているか確認する
  • 空地が確保できない場合は、防火上有効な塀があるかを確認する
点検までにできることは五つに絞れます。
まず火花や高温への接近がないか、次に容器の密閉と蒸気の発生がないかを見ます。
通常の作業でやむを得ない場合は、講じている措置を書面に残しておくと点検の際にも説明しやすくなります。
最後に屋外保管場所の空地を実測し、足りなければ塀の設置を検討しましょう。

点検の前に、うちで確認しておくことを教えてもらえますか。

はい、火花や高温との距離、蒸気の発生、そして空地の幅の三点を重点的に見ておきましょう。
気になる点があれば点検の前にご相談ください。

よくある質問

Q食用油や灯油を家庭用に少量置いているだけでも、この基準の対象になりますか?
A指定可燃物または少量危険物としての数量に達していなければ対象外です。数量が基準を超えて初めてこの条例の技術上の基準がかかります。
Q三号の「高温体」とは、具体的にどんなものを指しますか?
A条文に個別の例示はありませんが、ヒーターや加熱炉、溶接の火花のように可燃性液体類等の温度を上げたり引火させたりするおそれのある熱源全般が該当すると考えられます。
Q空地の代わりに塀を設ければ、幅を測らなくてもよいのですか?
A条文は空地か塀かどちらか一方を満たせばよいとしています。ただし塀は防火上有効な構造であることが前提なので、所轄消防署に確認しておくと確実です。
Q十分な措置とは、具体的に何をすればよいですか?
A条文には措置の内容までは書かれていません。現場の実情に応じて、遮熱・防護壁・監視体制の強化などを組み合わせ、所轄消防署と相談しながら決めることになります。

まとめ

可燃性液体類等には、容器・積み重ねとは別に取扱いそのものの基準がある
炎、火花、高温体への接近と過熱を避ける
みだりな蒸気の発生を防ぐ
通常の作業でこの基準によれないときは、十分な措置を講じれば適用が除外される
屋外保管場所の周囲には数量に応じた空地が必要
動植物油類は1メートル以上の空地が明文の基準
空地が確保できなければ防火上有効な塀でも足りる

取扱いの基準まで含めて確認できたので、次の点検までにしっかり見直しておきます!

空地の幅や取扱いの基準は現場ごとに事情が異なりますので、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 火災予防条例(例)第三十三条(昭和三十六年十一月二十二日 自消甲予発第七十三号 消防庁長官通知)
  • 消防法第九条の四

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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