BLOG

有機過酸化物はなぜ含有量だけでは危険物から除外できないのか|規則第1条の3第8項が定める5パターンの混合物基準を解説

有機過酸化物は含有量だけでは危険物から除外できない理由 アイキャッチ

化学メーカーや研究施設のSDSで「有機過酸化物」という表示を見て、含有量のパーセンテージだけを確認して安心していないでしょうか。
有機過酸化物は自己反応性物質(第五類)の代表格で、これを含有するものは条文上ひとくくりに危険物として扱われます。
ただし条文には、含有量が一定未満でかつ特定の不活性の固体と混合されたものに限り品名から除外するという規定もあります。
今回はこの除外の条文を、規則の条文からたどっておきます

有機過酸化物も含有量が低ければ危険物じゃないですよね。

含有量が低いだけでは決まりません
規則が定める除外の条文を見ていきましょう。

塗料類やアルコール類の除外と同じ考え方ですか。

実は混合する相手まで指定された条件です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防法別表第一備考第十九号は、第五類の項第十一号(有機過酸化物を含有するもの)のうち、条件に合うものを品名から除外すると定めています
  • その基準は危険物の規制に関する規則第1条の3第8項が定めています
  • 除外されるのは含有量が基準未満であり、かつ指定された不活性の固体と混合されたものに限られます
  • 規則が定める組み合わせは5パターンで、物質名と含有量の上限がそれぞれ固定されています
  • 含有量だけが基準未満でも、混合する相手が条文の指定と違えば除外は使えません

有機過酸化物が含有量の基準と不活性の固体との混合の両方を満たして危険物から除外されることを示す図解

有機過酸化物はなぜ原則としてすべて危険物になるのか

warning-diamond付きの薬品容器が並ぶ棚を確認する人物
有機過酸化物は消防法別表第一の第五類(自己反応性物質)第一号に掲げられている物品です。
まずはこれを含有するものがどう扱われるか、条文の定義を確認します。
消防法別表第一備考第十九号 第五類の項第十一号の物品にあつては、有機過酸化物を含有するもののうち不活性の固体を含有するもので、総務省令で定めるものを除く。
第五類の項第十一号は「前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの」を指し、有機過酸化物そのものだけでなくこれを含む混合物も対象にします
つまり有機過酸化物を薄めたり他の物質と混ぜたりしても、原則として危険物としての扱いは変わりません。
ただし備考第十九号には「総務省令で定めるものを除く」という限定が付いています。
除外の中身は危険物の規制に関する規則が定めており、含有量混合する相手の両方を条件にしています。
まずはその条件がどこまで具体的に決まっているのかを見ていきます。

混ぜて薄めれば危険物じゃなくなると思っていました。

いいえ、条文が定めた組み合わせだけが対象です。
次はその中身を確認しましょう。

除外されるのはどの有機過酸化物なのか

5種類の薬品容器を並べて見比べる人物
備考第十九号を受けて、総務省令は具体的な物質名と含有量を条文で列挙しています。
条文を確認します。
危険物の規制に関する規則第1条の3第8項 法別表第一備考第十九号の総務省令で定めるものは、次のものとする。 一 過酸化ベンゾイルの含有量が35.5パーセント未満のもので、でんぷん粉、硫酸カルシウム二水和物又はりん酸一水素カルシウム二水和物との混合物 二 ビス(四―クロロベンゾイル)パーオキサイドの含有量が30パーセント未満のもので、不活性の固体との混合物 三 過酸化ジクミルの含有量が40パーセント未満のもので、不活性の固体との混合物 四 一・四―ビス(二―ターシャリブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンの含有量が40パーセント未満のもので、不活性の固体との混合物 五 シクロヘキサノンパーオキサイドの含有量が30パーセント未満のもので、不活性の固体との混合物
除外されるのは、この条文が名指しした5種類の有機過酸化物だけです
過酸化ベンゾイルなど物質名そのものが条文に書かれており、名前が違えばこの除外は使えません。
含有量の上限も物質ごとに30パーセント・35.5パーセント・40パーセントと異なります。
一号だけはでんぷん粉など混合する相手の物質名も具体的に指定されており、二号から五号は「不活性の固体」という表現にとどまります。
自社が扱う物品の物質名がこの5パターンのどれかに一致するかを、まず確認する必要があります。

含有量の上限は物質ごとに違うんですね。

はい、30から40パーセントの範囲でばらつきます。
次はなぜ混合の相手まで決まっているのかを見てみましょう。

なぜ混合する相手の物質まで条文で決まっているのか

不活性の固体を有機過酸化物に混ぜて確認する人物
含有量の基準だけを見ると、単純に薄めれば除外できるように見えてしまいます。
一号を例に、条文の限定をもう一度確認します。
危険物の規制に関する規則第1条の3第8項(再掲)一 過酸化ベンゾイルの含有量が35.5パーセント未満のもので、でんぷん粉、硫酸カルシウム二水和物又はりん酸一水素カルシウム二水和物との混合物
条文が求めているのは含有量の低さだけでなく、指定された不活性の固体と混合されていることです
有機過酸化物は分解のしやすさが危険性の中心であり、不活性の固体に均一に分散させることで分解の連鎖が起きにくくなります。
可燃性の液体や粉じんと混ぜても、含有量の数値だけ基準未満にすることはできますが、この条文の対象にはなりません。
つまり除外は「薄めること」ではなく「決められた方法で分解しにくくすること」を条件にしています。
この違いを取り違えると、条文の対象外の混合物まで除外できると誤解してしまいます。

薄めるだけじゃ駄目な理由がよく分かりました。

分解しにくくする方法まで条文が決めています。
次はここで見落としやすい点を確認しましょう。

含有量が基準未満なら安全と思い込むと何を見落とすのか

別の容器を手で断る人物
含有量の数値だけに気を取られると、2つの見落としが起こりやすくなります。
順番に整理します。
危険物の規制に関する規則第1条の3第8項(再掲)法別表第一備考第十九号の総務省令で定めるものは、次のものとする。(一号から五号は前掲のとおり)
この除外は条文が名指しした5種類の物質にしか使えません
条文に無い有機過酸化物を、同じ考え方で含有量だけ薄めて除外扱いにすることはできません。
また混合する相手が条文の指定と違えば、含有量が基準未満でも除外は成立しません。
自己反応性物質に該当するかどうかを判定する試験(爆発の危険性や加熱分解の激しさを判断する試験)とも別の話であり、試験結果が基準未満でもこの除外の要件を自動的に満たすわけではありません。
名前・含有量・混合する相手の3点をそろえて初めて除外が成立します。

含有量さえ低ければ何でも除外できると思っていました。

物質名・含有量・混合相手の3点セットが必要です。
最後に現場での確認手順を見ましょう。

現場ではどう確認すればよいのか

左に書類を手渡す人物 右に受け取る人物
現品が除外に当たるかどうかは、3つの項目を段階的に確認するのが出発点です。
確認する項目を整理します。
  • まずSDSや成分表で物質名が条文の5パターンのいずれかに一致するかを確認する
  • 一致する場合は含有量が物質ごとの上限(30〜40パーセント)未満かどうかを確認する
  • 混合されている相手が条文の指定する不活性の固体(一号はでんぷん粉等の指定物質)かどうかを確認する
  • いずれか一つでも当てはまらなければ、除外されず危険物としての基準がそのまま適用される
除外の判断には、物質名・含有量・混合する相手の3つをそろえて確認する必要があります
これらは製造元のSDSや試験成績書に記載されていることが多い情報です。
自社で確認できない場合は試験機関や仕入先に問い合わせて確認します。
除外に該当しなければ、指定数量や貯蔵・取扱いの基準を確認する段階に進みます。
判断に迷ったときは、所轄消防署に相談すれば適切な対応が分かります。

まずは手元のSDSで物質名から確認します。

物質名が一致すれば判断もスムーズです。
分からなければ先に試験機関へ確認しておいてください。

よくある質問

Q有機過酸化物は含有量が低ければすべて危険物から除外されますか?
Aいいえ。危険物の規制に関する規則第1条の3第8項が定める5パターンの物質名・含有量・混合相手のすべてに当てはまる場合に限られます。
Q含有量の基準を満たせば混合する相手はなんでもよいですか?
Aいいえ。条文は不活性の固体との混合物に限定しており、指定と異なる物質と混合したものには除外は適用されません。
Qこの除外は自己反応性物質と判定する試験と同じ話ですか?
Aいいえ。自己反応性物質に当たるかどうかを判定する試験とは別に、物質名・含有量・混合相手で品名から除外するかどうかを判断する規定です。
Q該当するかどうかはどこで確認すればよいですか?
A製造元のSDSや試験成績書で物質名・含有量・混合されている物質を確認し、不明な場合は試験機関や所轄消防署に相談します。

まとめ

有機過酸化物を含有するものは、混合物も含めて原則として危険物として扱われます
除外の基準は危険物の規制に関する規則第1条の3第8項が定めています
除外されるのは含有量が基準未満であり、かつ指定された不活性の固体と混合されたものに限られます
規則が定める組み合わせは5パターンで、物質名と含有量の上限がそれぞれ固定されています
含有量だけが基準未満でも、混合する相手が条文の指定と違えば除外は使えません
確認するのは物質名・含有量・混合する相手の3点です
判断に迷ったときは所轄消防署に相談すれば適切な対応が分かります

まずは手元の物質名が5パターンに当たるか確認します!

含有量と混合相手まで分かれば判断も早く済みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)別表第一備考第十九号
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第1条の3第8項
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。実際の取扱いは製品ごとの成分や試験結果によって異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
有機過酸化物は含有量だけでは危険物から除外できない理由 アイキャッチ
化学メーカーや研究施設のSDSで「有機過酸化物」という表示を見て、含有量のパーセンテージだけを確認して安心していないでしょうか。 有機過酸化物は自己反応性物質(第五類)の代表格で、これを含有するものは条文上ひとくくりに危...