移動タンク貯蔵所に乗って危険物を運ぶとき、免状を車に忘れてきてしまうことは誰にでも起こり得ます。
わざと持ってこなかったわけではないのだから、罰せられることはないだろうと考える人もいるかもしれません。
実はこの疑問と同じ構造の争いが、運転免許証の携帯義務を巡ってすでに裁判で決着しています。
うっかり忘れただけの不携帯も、法律は処罰の対象として扱っています。
移動タンク貯蔵所に免状を忘れて乗ってしまったんですが、わざとじゃなければ大丈夫ですよね。
実は、うっかり忘れただけでも罰則の対象になるとされているんです。
運転免許証を巡る判例と同じ考え方が使われています。
そうなんですか。
免許証の話が、どうして危険物取扱者の免状にも関係するんでしょう。
携帯義務という仕組みそのものが共通しているからです。
今日はその判例を一緒に見ていきましょう。
- 移動タンク貯蔵所に乗車する危険物取扱者は、消防法第16条の2第3項により危険物取扱者免状の携帯が義務付けられています
- 違反すると第44条第6号により30万円以下の罰金又は拘留の対象になります
- 判例は、運転免許証の携帯義務違反について過失による不携帯であっても処罰する法意だと判断しました
- わざとではなかったという言い分は、それだけでは処罰を免れる理由になりません
- 移動タンク貯蔵所に乗る前は、出発前に免状の所在を確認することが実務上の対策になります
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目次
移動タンク貯蔵所に免状を携帯せず乗車したのはどんな事案だったのか

消防の免状とは別の法律の話ですが、争われた構造はそのまま今回の疑問に重なります。
- 運転免許証を携帯しないまま自動車を運転していたところ、検問で不携帯が発覚した
- 運転者は「うっかり車に忘れてきただけで、わざと持たなかったわけではない」と主張した
- 事件は広島高等裁判所に持ち込まれ、携帯義務規定の解釈そのものが争われた
運転者側は、携帯していなかったことに変わりはなくても、わざとではなかったのだから処罰の対象にはならないはずだと考えていました。
この考え方が認められるかどうかは、携帯義務という規定の目的をどう理解するかにかかっていました。
まずは、この裁判で何が争点になったのかを見ていきましょう。
検問で免許証を忘れていることに気づいたら、素直に認めるしかないんでしょうか。
正直に事情を話すのが基本ですが、わざとかどうかは関係なく違反自体は成立してしまいます。
携帯義務違反はうっかり忘れただけでも成立するのか

どちらの理屈が通るかで、結論はまったく違うものになります。
運転者側は、故意が無ければ処罰の対象にならないという一般的な刑事責任の考え方を持ち出しました。
これに対し行政側は、携帯義務はその場で本人確認をするための制度であり、主観的な事情とは切り離して考えるべきだと反論しました。
この対立が、広島高等裁判所でどう決着したのかを次に見ていきます。
わざとじゃなければ、罪にはならない気もするんですが。
そこがこの裁判で争われた核心なんです。
携帯義務という規定の性質から判断されました。
裁判所はなぜ過失による不携帯も処罰されると判断したのか

その理由づけは、消防の免状にもそのまま当てはまる考え方です。
携帯義務規定が成立するかどうかは、携帯していないという客観的な事実の有無で決まり、うっかりかわざとかという主観的な事情は問われないとされました。
この考え方は、消防法第16条の2第3項に基づく危険物取扱者免状の携帯義務にも同じ構造で当てはまるとされています。
つまり移動タンク貯蔵所に乗車する際も、免状を忘れたことに悪意が無くても、携帯義務違反そのものは成立し得るということです。
客観的な事実だけで決まるんですね。
そうです。
うっかりかどうかは問わないという考え方が示されました。
わざとではなかったという言い分はなぜ通らなかったのか

しかし、この言い分は次の理由で退けられています。
「わざとではなかった」という説明は、道義的な事情としては理解されても、携帯義務違反の成立を否定する理由にはなりません。
これは危険物取扱者免状についても同じで、うっかり車に置き忘れた、自宅に忘れてきたといった事情があっても、携帯していないという事実自体は動きません。
言い訳の有無ではなく、その場で免状を提示できる状態にあったかどうかが問われる、という点を押さえておく必要があります。
わざとじゃなかったのに、と思ってしまいます。
気持ちは分かりますが、言い訳の有無では判断が変わらないとされたんです。
移動タンク貯蔵所に乗るときは何を確認すればよいのか

出発前にひとつだけ確認しておけば、不携帯そのものを防げます。
乗車の直前に免状入れの中身を確認し、車内に置いたままにせず必ず携行することが基本になります。
複数の車両を掛け持ちする場合は、免状を車両に置きっぱなしにせず、自分の身に着けて持ち歩く運用にしておくと取り違えを防げます。
うっかり忘れたことに気づいた時点で、業務を中断してでも免状を取りに戻る判断が安全です。
忘れないためにできることはありますか。
出発前に免状の所在を確認する習慣をつけておくのがいちばん確実です。
よくある質問
まとめ
携帯義務の考え方がよく分かりました、気をつけます。
出発前の確認でお困りのことがあれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 広島高等裁判所 昭和30年6月21日判決
- 消防法第16条の2第3項・第44条第6号
※本記事は確定した判決の内容を要約したものです。判決当時の法令に基づく判断であり、条文番号も当時のものです。その後の改正により現在の規定とは異なる場合があります。個別の事案についての法的な判断は弁護士に、消防法令の適用は所轄消防署にご確認ください。





