第二種住居地域を歩いていると、住宅の合間に劇場や映画館のような大きな建物を見かけることがあります。
ところが同じ場所に、ダンスと飲食を売りにした店を出そうとすると、思いがけず用途地域の壁にぶつかることがあります。
建築基準法は、劇場や映画館だけでなくナイトクラブその他これに類する施設も、第二種住居地域では原則建てられないと定めています。
「これに類する」の中身は政令が決めており、しかもナイトクラブそのものは政令の対象から外れているという分かりにくい構造になっています
知り合いが第二種住居地域でダンス飲食店を開きたいと相談してきたのですが、住居地域でも大丈夫でしょうか。
実は劇場やナイトクラブには建築の可否そのものを決める規制があるんです。
まず条文で仕組みを確認しましょう。
飲食店なら建てられる地域ですよね。
ダンスをさせる飲食店は別扱いになる場合があります。
順番に見ていきましょう。
- 第二種住居地域では、建築基準法第48条第6項により別表第二(へ)項に掲げる建築物は原則建てることができません。
- 劇場、映画館、演芸場、観覧場、ナイトクラブは、別表第二(へ)項第三号に条文で直接列挙された用途です。
- 施行令第百三十条の七の三により、客にダンスと飲食をさせる施設(客の接待をするものを除く)も政令で追加指定されています。
- この政令の定義はナイトクラブそのものを除いており、法律本体がすでに指定済みのものを重ねて定義しない作りになっています。
- 建てられない場合でも、特定行政庁の特例許可(意見聴取と建築審査会の同意)を得れば例外的に建てられる道が残されています。
▼

目次
第二種住居地域に劇場やナイトクラブは建てられないのか

ところが劇場やナイトクラブなど、娯楽性の強い一部の用途だけは、別枠で建築そのものが原則できません。
これらは第二種住居地域の別表第二(へ)項に列挙された建築物の一つで、第48条第6項の本文により原則として建築が認められません。
条文の末尾には「その他これに類する政令で定めるもの」という一文が続いており、対象はここで終わりではありません。
まずは、この「政令で定めるもの」がどんな施設を指すのかを見ていきましょう。
ナイトクラブと名乗っていなければ、この規制の対象外になるんでしょうか。
いいえ、名称ではなく実態で判断されます。
次は政令の定義を見てみましょう。
政令が定めるナイトクラブに類する施設とは何を指すのか

ここには、対象になる施設の条件が具体的に書かれています。
条件は2つあり、ダンスをさせることと飲食をさせることの両方を満たす必要があります。
客の接待をする施設は、この政令の対象から除かれています。
つまり、店名に「ナイトクラブ」と付けているかどうかではなく、営業の実態がこの2条件に当てはまるかどうかで判断されます。
次は、条文の末尾にある「(ナイトクラブを除く。)」という一文の意味を見ていきましょう。
この条文、最後に「ナイトクラブを除く」と書いてあるのが気になります。
実は条文どうしの役割分担を示しているんです。
次はその理由を見てみましょう。
なぜナイトクラブそのものは政令の対象から外れているのか

理由は、対象がすでに法律の条文で名指しされているかどうかにあります。
- ナイトクラブそのものは、別表第二(へ)項第三号の条文本文にすでに名前が挙がっています
- 政令が同じものをもう一度定義し直すと、条文が二重に規定することになり無駄が生じます
- そこで政令は、ナイトクラブと呼ばれていないが実態が同じ施設を捕捉する役割に限定されています
法律の条文が直接名指しするのは劇場、映画館、演芸場、観覧場、ナイトクラブの5つ。
政令が追加で捕捉するのは、ダンスと飲食を伴う施設のうちナイトクラブと呼ばれないもの、たとえば店名の異なるダンスホールのような施設です。
どちらの経路で該当しても、第二種住居地域では建築が原則できないという結論は同じです。
次は、風営法の許可を得ていれば建築基準法もクリアしたことになるのかを見ていきましょう。
知り合いは風営法の許可さえ取れば大丈夫だと思っていたようです。
それは別の法律の許可です。
次はその違いを見てみましょう。
風営法の許可があれば建築基準法もクリアしたことになるのか

ただし、これは建築基準法とはまったく別の法律です。
- 風営法の許可は、営業の内容を審査する公安委員会の所管です
- 建築基準法の用途地域規制は、建物そのものを審査する特定行政庁の所管で、風営法の許可とは別に判断されます
- 風営法の許可が下りても、その建物が第二種住居地域にあり別表第二(へ)項第三号または施行令第百三十条の七の三に該当すれば、建築基準法上は建てられません
一方の許可が下りたからといって、もう一方が自動的にクリアされるわけではありません。
物件を借りたり建てたりする前に、建築基準法上その用途地域で建てられる用途かどうかを必ず確認する必要があります。
この二重規制の見落としが、開業直前になってのトラブルにつながることがあります。
次は、それでも建てたい場合にどんな手続きがあるのかを見ていきましょう。
両方の許可を別々に確認しないといけないんですね。
そのとおりです。
次は建築基準法側に残された道を見てみましょう。
それでも建てたいときはどんな手続きが必要か

これが、劇場やナイトクラブに類する施設を第二種住居地域に建てるための唯一の道です。
ただし、この許可は自動的に得られるものではありません。
許可の前には、周辺の利害関係者を集めた公開の意見聴取と、建築審査会の同意という2段階の手続きが必要です。
風営法の許可申請と並行して進めようとすると、想定より時間がかかることも踏まえておく必要があります。
次は、実際に確認しておきたい手順を整理します。
思っていたより先に確認すべきことが多そうです。
開業前の確認が何より大切です。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
知り合いに建築基準法側の確認も必要だと伝えてみます!
用途地域と特例許可の確認も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第48条第6項・第15項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法別表第二(へ)項第三号(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第百三十条の七の三(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。建物の用途区分や特例許可の可否は個別の内容によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。





