危険物施設の中には、ガソリンや溶剤のような可燃性の蒸気が知らないうちに滞留する場所があります。
そうした場所で使う電気設備は、火花で蒸気に引火しないよう防爆構造にする必要があります。
国際規格の改訂をきっかけに、消防庁は危険区域の設定方法を見直すガイドラインを示しました。
あわせて事業所ごとの自主行動計画を作るよう求められています。
うちの施設に、そんな危険な場所があるかどうか分かりません。
可燃性蒸気が滞留するおそれのある場所は危険区域と呼ばれています。
ガイドラインに沿って設定を見直すことができます。
危険区域が分かったら、次に何をすればいいんですか。
事業所ごとに自主行動計画を作り、消防機関に提出する流れです。
まずは対象の設備を洗い出しましょう。
- 危険物施設では可燃性蒸気が滞留するおそれのある場所(危険区域)で使う電気設備を防爆構造にする必要があります
- 根拠は危険物の規制に関する政令第9条第1項第17号・第24条第1項第13号です
- 国際規格IEC60079-10の改訂を受け、経済産業省の検討会に消防庁も参画してガイドラインを取りまとめました
- 危険区域の設定にはガイドラインに沿った精緻な方法を使うことができます
- 事業所は自主行動計画を作り予防規程の関連文書として位置づけることが求められています
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目次
危険物施設の防爆構造はなぜ国際規格の改訂で見直されたのか

その規格が準拠する国際規格が改訂されたことで、消防庁も国内対応の検討に加わりました。
これまで危険区域の設定は、国際電気標準会議規格(IEC)60079-10に準拠した日本工業規格(JIS)C60079-10にもとづいて運用されてきました。
そのIEC60079-10が改訂されたため、経済産業省は有識者による検討会を開き、消防庁も検討に参画して国内での取り扱いを整理しました。
その結果としてまとめられたのが、危険区域の設定方法を示すガイドラインと、事業所向けの自主行動計画の例です。
つまり事故がきっかけではなく、国際規格の更新にあわせて国内の運用を整えた通知だといえます。
うちは何十年も同じやり方で危険区域を決めてきました。
今回は事故対応ではなく、国際規格の改訂に合わせた見直しです。
やり方自体が変わったわけではありません。
通知が対象にする可燃性蒸気が滞留するおそれのある場所とはどこか

この場所は「危険区域」と呼ばれ、政令の複数の条文が根拠になっています。
製造所や貯蔵所全体が対象になるのではなく、可燃性蒸気が漏れたり滞留したりするおそれのある設備や配管の周囲だけが危険区域として区切られます。
政令第24条第1項第13号は、そうした場所では電線と電気器具を完全に接続し、火花を発する工具や履物を使わないことを求めています。
政令第9条第1項第17号は、電気設備そのものを電気工作物に係る法令の規定によることを求めており、この2つが防爆構造を義務づける根拠になっています。
つまりどこからどこまでが危険区域かを先に決めないと、防爆構造にすべき範囲も決まりません。
建物全体を防爆構造にしないといけないと思っていました。
対象は設備や配管の周囲だけです。
まず危険区域の範囲を確認しましょう。
ガイドラインと自主行動計画はそれぞれ何を求めているのか

あわせて事業所ごとの自主行動計画を作ることも求められています。
これまでのJISC60079-10による設定方法をやめる必要はなく、ガイドラインに沿って危険区域を設定し直しても差し支えないという位置づけです。
あわせて示された自主行動計画は、事業所が危険区域の管理方法をあらかじめ文書化しておくためのものです。
どの設備を危険区域に含めるか、非防爆機器を置く場合にどんな対策を取るかを、自分の事業所の言葉でまとめておく書類になります。
次の章では、この自主行動計画に実際にどんな中身を書けばよいかを見ていきます。
ガイドラインに変えないといけないのかと思っていました。
変える義務ではありません。
使いたい事業所が選べる方法です。
危険区域の外に置く電気設備で見落としやすいのはどこか

区域のすぐ外に置く設備や、持ち運ぶ機器にも注意点があります。
危険区域の外に固定式の非防爆機器を置く場合でも、危険物が漏れて蒸気が広がったときに備え、緊急遮断装置やインターロックを設けることが求められています。
タブレットなど持ち運ぶ非防爆機器についても、予期せぬ場所に蒸気が滞留しているおそれがあるため、ガス検知器などで安全を確認してから使うよう注意されています。
機器を新しく設置する工事そのものは、この通知とは別の消防危第49号が定める変更工事の手続にしたがって進める必要があります。
危険区域の内と外、固定式と可搬式をそれぞれ分けて確認するのが、見落としを防ぐコツです。
危険区域の中にさえ気をつければ大丈夫だと思っていました。
区域の外側や持ち運ぶ機器にも注意が要ります。
ガス検知器の準備も確認しておきましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

書類の位置づけを決めることが、最初の一歩になります。
予防規程がある事業所は、巡視・点検や災害時の措置を定めた関連文書として自主行動計画を位置づけます。
予防規程を作る義務がない小規模な施設でも、社内の安全管理規定やマニュアルに自主行動計画を組み込み、消防機関へ資料を提出することが求められています。
センサーやタブレットを使った点検も、この巡視・点検の一部として扱われるため、記録の残し方もあわせて決めておくと安心です。
まずは自社の危険区域を洗い出し、予防規程かマニュアルのどちらに位置づけるかを決めるところから始めましょう。
予防規程が無いうちの施設は、何もしなくていいんでしょうか。
いいえ、社内のマニュアル等に位置づければ大丈夫です。
消防機関への資料提出も忘れないでください。
よくある質問
まとめ
危険区域の外まで気を配る必要があるとは知りませんでした!
危険物施設の電気設備の点検もお気軽にご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「危険物施設における可燃性蒸気の滞留するおそれのある場所に関する運用について」(平成31年4月24日 消防危第84号 消防庁危険物保安室長/改正令和2年1月23日 消防危第21号)
- 危険物の規制に関する政令第9条第1項第17号(製造所の基準・電気設備)
- 危険物の規制に関する政令第24条第1項第13号(貯蔵及び取扱いの通則・可燃性蒸気等が滞留するおそれのある場所)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





