防火対象物の非常電源として設置する蓄電池設備は、これまで使える種類が限られていました。
消防庁の告示改正により、その扱いが大きく変わっています。
なぜ蓄電池の種類を問わず常用と非常用を兼ねられるようになったのか、防火管理者が知っておきたい変更点をまとめました。
令和7年の告示改正で、リチウムイオン蓄電池も直交変換装置を使った兼用運転の対象になりました
うちのビルの非常用発電機の更新の話で、蓄電池の種類がどうとか聞いたんですが。
はい、非常電源の蓄電池設備に関する告示が令和7年に改正されています。
今までと何が変わったんですか。
蓄電池の種類を限定せず、常用と非常用を兼ねる設備として使いやすくなりました。
- 令和7年7月30日の告示改正で、蓄電池設備の種類を限定しない基準に見直された
- 従来はナトリウム・硫黄電池とレドックスフロー電池だけが常用・非常用を兼ねられた
- 今後は直交変換装置を持つ蓄電池であれば種類を問わず兼用運転ができる
- 一般負荷に電力を回しても非常用に必要な電力量は常時確保しなければならない
- 負荷回路を自動的に切り離す機能など、自家発電設備と同じ要件が蓄電池設備にも適用される
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目次
非常用の蓄電池はなぜリチウムイオン電池でも常用と兼用できるようになったのか

その技術基準の運用が、令和7年に大きく見直されました。
これまで、消防用設備等の非常電源を常用の電力供給と兼ねて使える蓄電池は、ナトリウム・硫黄電池とレドックスフロー電池の2種類に限られていました。
どちらも容量が大きく、電気料金の安い夜間に充電し昼間に放電する運転(電力負荷平準化運転)に向いていたためです。
近年はリチウムイオン蓄電池の性能が向上し、同じような使い方ができる製品が増えてきました。
そこで消防庁は、直交変換装置を持つ蓄電池であれば種類を限定しない基準に改め、リチウムイオン蓄電池を含めて常用と非常用を兼ねる設備として使えるようにしました。
電池の種類なんて意識したことなかったです。
そうですよね、これまでは種類が限定されていましたが範囲が広がりました。
どんな蓄電池のどんな設置が対象になるのか

どんな仕組みで一般負荷と非常用負荷の両方に電力を供給しているのかを見ていきます。
常時は施設の照明や空調といった一般負荷にも電力を回しながら、停電時には自動で非常用負荷への供給に切り替わる仕組みになっています。
従来型の鉛蓄電池やアルカリ蓄電池は容量が小さく、非常用専用としてしか使われていないものが多いため、この兼用の対象にはなりにくいと考えられます。
新設だけでなく、既存の非常電源設備を更新する場面でも関係してくる話です。
自分の建物の設備がどちらのタイプか、点検報告書や設備図面で確認できます。
うちの蓄電池がどのタイプか、図面を見ればわかりますか。
はい、点検報告書か設備図面に記載がありますので確認できます。
兼用の蓄電池は何を満たせば設置できるのか

中心になるのは、停電が起きた瞬間に非常用の電力を確保できる状態を保つことです。
停電が発生すると遮断器が自動的に開き、蓄電池からの直流電流が直交変換装置で交流に変換され、非常用負荷へ優先的に供給されます。
非常電源が一時的に使えなくなる場合に備え、巡回の強化や代替電源の用意といった措置も、自家発電設備と同じ考え方で求められます。
これらの要件は、蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)と燃料電池設備の基準(平成18年消防庁告示第8号)の両方に共通しています。
つまり、電源の種類が違っても、非常時に頼れる電力を切らさない考え方は同じということです。
停電した瞬間にちゃんと切り替わるのか心配です。
遮断器が自動で開いて非常用に優先供給される仕組みになっています。
兼用の蓄電池で見落としやすいのはどこか

気をつけたいポイントを整理します。
電力負荷平準化運転は、電気料金の安い夜間に充電し昼間に放電する使い方なので、放電が進んだ状態で停電が起きる可能性があります。
そのときに非常用負荷が必要とする電力量まで使い切ってしまっていては、兼用にした意味がなくなってしまいます。
また、自家発電設備の基準にある「非常用負荷以外の負荷を自動的に切り離す機能」は、蓄電池設備にも同じ考え方で適用されます。
兼用運転を行う場合は、この切り離し機能が確実に働くかどうかも、点検の対象として意識しておく必要があります。
夜間に充電して昼間に使うなら、電池が減ってる時間もありますよね。
そのとおりです、非常用の分は常に残しておく必要があります。
明日から何を確認しておけばよいのか

新設か更新かで、確認する相手や資料が少し変わってきます。
自家発電設備だけなのか、蓄電池設備や燃料電池設備を併用しているのか、点検報告書や設備図面で確かめておきましょう。
蓄電池設備がある場合は、直交変換装置を使った常用・非常用兼用型かどうかも確認しておくと、更新時の相談がスムーズになります。
兼用型であれば、非常用に必要な電力量が常時確保されているか、負荷回路の切り離し機能が働いているかを、点検業者に確認してもらいましょう。
更新を検討する際は、令和7年消防庁告示第6号にもとづく最新の基準で計画されているかを、施工業者に確認することをおすすめします。
まずは設備の種類を確認するところからですね。
はい、それが更新の相談を進める第一歩になります。
よくある質問
まとめ
次の点検のときに設備の種類を確認してみます!
非常電源の設備更新もお任せください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「自家発電設備、蓄電池設備及び燃料電池設備に係る技術基準の運用について(通知)」(平成18年5月11日消防予第172号、令和7年7月30日消防予第333号改正)
- 「『自家発電設備、蓄電池設備及び燃料電池設備に係る技術基準の運用について(通知)』の一部改正について」(令和7年7月30日消防予第333号)
- 蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)
- 燃料電池設備の基準(平成18年消防庁告示第8号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





