BLOG

危険物施設の命令はなぜ標識で公示されるのか|緊急使用停止命令の解除要件と行政代執行への道筋を解説

危険物施設の門扉に設置された標識と貯蔵タンク

危険物施設に命令が出されると、現場には標識が立てられます。
命令を受けた本人だけでなく、周囲にもその状態を知らせるためです。
標識はいつ外れるのか、緊急使用停止命令はどうすれば解除されるのか、実務では判断に迷う場面があります。
平成14年の消防庁通知が定めた公示の仕組みと解除の要件を整理します

うちの施設で命令を受けたら、外からも見える形で何か掲示されるんでしょうか。

平成14年の消防庁通知で、命令を出したときの公示のしかたと、緊急使用停止命令の解除要件が整理されています。
まず全体の流れを確認しましょう。

標識が立ったままだと、近所や取引先の目にも触れそうで心配です。

はい、命令の内容を周囲に知らせるのが公示の目的です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成14年の消防法改正を受け、命令を出したときは標識等で公示することが義務付けられた
  • 公示の対象は法第12条の3の緊急使用停止命令など8つの命令に限られる
  • 公示の目的は、施設の利用者や近隣住民など第三者を不測の損害から守ることにある
  • 緊急使用停止命令の解除は災害防除措置・法令遵守状況・再発防止策の3点を勘案して判断される
  • 命令に従わない場合は行政代執行法に基づき消防機関が代わって措置をとることができる

危険物施設への命令が標識で公示される仕組みと緊急使用停止命令の解除要件を示した図解

危険物施設への命令はなぜ標識で公示されることになったのか

危険物施設の漏えいを示す標識と点検する担当者
危険物施設の事故が増える中、命令を出しただけでは足りないと考えられるようになりました。
きっかけは平成14年の消防法改正です。
近年、危険物施設の事故件数が増加傾向にあること等から、消防庁では危険物施設の事故防止対策を推進しており、その一環として効果的、重点的な立入検査及び違反処理のあり方について検討を行ってきた。また、本年4月26日に公布された「消防法の一部を改正する法律」(平成14年法律第30号)では、措置命令等を発した場合の公示の義務付け、行政代執行に係る規定の整備など、危険物施設の違反処理に関する規定の整備充実が図られた。(危険物施設における立入検査及び違反是正の推進について 平成14年10月23日 消防危第503号)
命令を出すだけでは、周囲に危険な状態を知らせる手段がありませんでした
そこで平成14年法律第30号による消防法改正で、命令を出した事実そのものを標識などで示す公示制度が整えられました。
同じ改正では、命令に従わない相手に対して消防機関が代わって措置をとる行政代執行の規定も整理されています。
これを受けて消防庁は同年10月、危険物施設立入検査マニュアルと危険物施設違反処理マニュアルを定めた通知を発出しました。
命令は出して終わりではなく、公示と行政代執行までを見据えた一連の仕組みとして設計されています。

命令と一緒に何か掲示されるのは知っていましたが、そんな改正が背景にあったんですね。

はい、平成14年の法改正がきっかけです。
まずは対象になる命令を確認しましょう。

公示の対象になるのはどの命令なのか

移動タンク貯蔵所の標識と施設の門扉に取り付けられた標識
公示の対象になる命令は法律で決まっています。
まずはどの命令が当てはまるのか確認します。
命令を行ったときの標識等による公示・公示が必要な命令 法第11条の5第1項及び第2項、第12条第2項、第12条の2第1項及び第2項、第12条の3第1項、第13条の24第1項、第14条の2第3項、第16条の3第3項及び第4項、第16条の6第1項の命令(危険物施設における立入検査及び違反是正の推進について 平成14年10月23日 消防危第503号 別添 危険物施設違反処理マニュアル)
市町村長等は、公共の安全の維持又は災害の発生の防止のため緊急の必要があると認めるときは、製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者に対し、当該製造所、貯蔵所若しくは取扱所の使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限することができる。(消防法第12条の3第1項)
公示の対象になるのは全部で8つの命令です
維持命令(第12条第2項)や許可取消・使用停止命令(第12条の2)のような日常的な違反是正から、緊急使用停止命令(第12条の3第1項)のような即時性の高いものまで幅広く含まれます。
固定された施設だけでなく、移動タンク貯蔵所(タンクローリー)への応急措置命令(第16条の3第4項)も対象です。
自分の施設に出た命令が公示の対象かどうかは、条文番号を確認すればすぐに判断できます。

うちの施設だと、どの命令が当てはまるか一目では分かりませんね。

命令書に書かれた条文番号を見れば、公示の対象かどうか判断できます。
迷ったら所轄に確認してください。

標識による公示はどんな方法で行われるのか

門扉の標識と官報掲示のイメージを示す掲示板
公示の方法は一つではありません。
通達は具体的な選び方まで示しています。
命令を行ったときは、速やかに公示し、命令事項が履行された時等、命令が効力を失うまでの間、維持する必要がある。公示の方法は、標識の設置、官報又は公報への掲載その他市町村長等が定める方法によるものとし、標識は当該危険物施設に出入りする人々が見えやすい場所に設置する。(略)危険物施設について命令を行ったときの公示は、危険物施設に火災予防上の危険があることや、消防法令違反があり、市町村長等によって措置命令が発せられて、履行される前の状態にあることを周知することで、当該危険物施設の利用者や近隣住民等の第三者が、不測の損害を被ることを防ぐために必要な措置を講じることが可能になるようにするものである。(危険物施設における立入検査及び違反是正の推進について 平成14年10月23日 消防危第503号 別添 危険物施設違反処理マニュアル)
公示の目的は第三者を守ることにあります
標識の設置のほか、官報や公報への掲載、市町村のホームページ掲載でも公示にあたり、複数の方法を組み合わせることもできます。
標識を設置する場所は、正門や受付付近など第三者の目に触れやすい場所が選ばれ、移動タンク貯蔵所では車両の前後や側面に掲げます。
命令が即時に履行された場合は、公示そのものが不要になる点も押さえておきましょう。

標識を立てるだけでなく、ホームページに載せる方法もあるんですね。

はい、市町村長等が定める方法であればホームページでもかまいません。
ただし他の方法とあわせて行うことになっています。

緊急使用停止命令の解除で見落としやすいのはどこか

復旧工事の書類を確認する担当者と危険物施設
命令を解除すればすぐに営業を再開できるとは限りません。
解除の手順を誤ると、二度手間になることがあります。
緊急使用停止命令は、次の事項を勘案し、公共の安全の維持及び災害の発生の防止が確保されている場合に解除する。ア 火災の鎮火、漏えい危険物の回収など災害防除措置の状況 イ 当該危険物施設における消防法令の遵守状況 ウ 事故原因を踏まえた再発防止策の内容 当該危険物施設の使用再開に当たり、復旧工事に係る変更許可(法第11条第1項)、予防規程変更の認可(法第14条の2第1項)等が必要となる場合には、原則として緊急使用停止命令の解除前にこれらの事務処理を行い、イ及びウの関連事項に係る確認を併せて行う。(危険物施設における立入検査及び違反是正の推進について 平成14年10月23日 消防危第503号 別添 危険物施設違反処理マニュアル)
解除より先に済ませておく手続きがあります
復旧工事に変更許可(第11条第1項)や予防規程変更の認可(第14条の2第1項)が必要な場合は、原則として命令の解除より前にこれらの事務処理を終える必要があります。
命令が私権を制限する性格の強いものであることから、解除は危険物保安上必要な範囲にとどめられます。
標識を壊した場合は公文書毀棄罪、設置を実力で拒んだ場合は公務執行妨害罪にあたることも実務では見落としがちです。

火が消えて片づけも終わったら、そのまま解除してもらえるものだと思っていました。

変更許可や予防規程の認可が必要な場合は、解除の前にそちらを済ませておく必要があります。
順番を間違えると再開が遅れます。

明日からなにを確認すればよいのか

門扉の標識を撤去する担当者
最後に、明日から確認しておきたいことを整理します。
標識が立った施設に関わるときの実務上のチェックポイントです。
命令事項の履行等によって命令の効力が消滅した場合には、公示の撤去を行う。(危険物施設における立入検査及び違反是正の推進について 平成14年10月23日 消防危第503号 別添 危険物施設違反処理マニュアル)
確認は3つの手順で足ります
まず自分の施設に出た命令が、公示の対象になる8つの命令のどれに当たるかを確認します。
次に、営業再開に変更許可や予防規程変更の認可が必要かどうかを所轄消防署に確認します。
最後に、命令が履行されて効力を失ったら、標識などの公示物が撤去されているかを確かめてください。
公示が残ったままだと、既に解決した問題があるように見えてしまいます。

まずは条文番号を確認するところから始めればいいんですね。

条文番号と手続きの順番を押さえておけば迷いません。
不明な点があれば所轄に相談してください。

よくある質問

Q危険物施設のすべての命令が公示の対象になるのか?
Aいいえ。公示の対象になるのは法第11条の5や第12条の3など8つの命令に限られ、それ以外の指導や助言は対象になりません。
Q緊急使用停止命令はどうすれば解除されるのか?
A災害防除措置の状況・消防法令の遵守状況・再発防止策の内容の3点を勘案し、公共の安全の維持と災害の発生の防止が確保されていると認められた場合に解除されます。
Q命令が履行される前に公示を外してもよいのか?
A命令の効力が消滅していない間は公示を維持する必要があります。命令事項の履行等によって効力が消滅した場合に、はじめて公示の撤去を行います。
Q標識を勝手に外すとどうなるのか?
A標識を損壊した場合は公文書毀棄罪、設置を実力で拒んだり妨げたりした場合は公務執行妨害罪が適用されるおそれがあります。

まとめ

平成14年の消防法改正を受け、命令を出したときは標識等で公示することが義務付けられた
公示の対象は法第12条の3の緊急使用停止命令など8つの命令に限られる
公示の方法は標識の設置のほか、官報・公報への掲載や自治体のホームページ掲載でもよい
公示の目的は施設の利用者や近隣住民など第三者を不測の損害から守ることにある
緊急使用停止命令の解除は災害防除措置・法令遵守状況・再発防止策の3点を勘案して判断される
復旧に変更許可や予防規程変更の認可が必要な場合は解除より前に済ませておく
命令に従わない場合は行政代執行法に基づき消防機関が代わって措置をとることができる

標識の意味や解除の要件まですっきりわかりました!

お力になれてよかったです
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「危険物施設における立入検査及び違反是正の推進について」(平成14年10月23日 消防危第503号 消防庁危険物保安室長)別添2 危険物施設違反処理マニュアル
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第11条の5、第12条、第12条の2、第12条の3、第13条の24、第14条の2、第16条の3、第16条の6
  • 消防法の一部を改正する法律(平成14年法律第30号)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
危険物施設の門扉に設置された標識と貯蔵タンク
危険物施設に命令が出されると、現場には標識が立てられます。 命令を受けた本人だけでなく、周囲にもその状態を知らせるためです。 標識はいつ外れるのか、緊急使用停止命令はどうすれば解除されるのか、実務では判断に迷う場面があり...