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ガソリンが缶詰で売られていたのはなぜ問題になったのか|コンビニ販売への消防庁の指導を解説

コンビニの店内を背景にしたガソリン缶詰の販売指導に関する記事のアイキャッチ画像

コンビニやドラッグストアの店頭に立つと、危険物を扱っているという意識は薄れがちです。
かつて兵庫県のあるコンビニでは、ガソリンを1リットルずつ缶詰にした商品が、食料品や日用品と同じ棚に並んで販売されていました。
容器も貯蔵量も消防法令の基準は満たしていましたが、消防庁はこの売り方そのものに強い懸念を示しました。
基準を満たしていても、売り方を誤れば火災につながると示した指導です。

うちのビルにもコンビニが入ってますけど、ガソリンなんて売ってましたっけ?

実際に缶詰のガソリンが食品と同じ棚に並んでいた例があるんです。

危険物なのに、そんな売り方をしていいんですか。

基準は満たしていても売り方には注意義務があると指導されました。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成12年、兵庫県のコンビニでガソリン1リットル入りの缶詰が食料品と同じように陳列販売されていたことを受け、消防庁が指導を行いました
  • 容器も貯蔵量も消防法令や火災予防条例には違反していませんでしたが、それでも指導の対象になりました。
  • 対象になるのは、コンビニエンスストア等でガソリン缶詰を販売しようとする者及び販売している者です。
  • 販売する際は購入者に使用目的を確認し、取扱い上の注意喚起を必ず行うことが求められています。
  • 貯蔵についても消防法令及び火災予防条例に違反しないよう適正な管理を行う必要があります。

ガソリン缶詰の販売に注意義務が生じる流れを示す図解

ガソリンが缶詰で売られていたのはなぜ問題になったのか

コンビニの棚に食品と並んでガソリンの缶詰が置かれている様子を示す図
平成12年、兵庫県豊岡市のコンビニで見つかったのは、ガソリンを缶詰にした商品でした。
食料品や日用品と同じ棚に、当たり前のように並べられていたのです。
兵庫県豊岡市にある24時間営業のコンビニエンスストアにおいて、ガソリン缶詰(ガソリン1リットル入りの缶詰)が、店内に食料品や一般雑貨等と同じように陳列され、一般の顧客に販売されています。(略)取扱いを誤れば火災を発生させる危険性を有しているガソリン缶詰が、コンビニエンスストアにおいて、食料品等と同様の認識で購入される可能性があり、また、興味本位に購入し、不適切な取扱いによる火災等の事故の発生も危惧されます。(ガソリン缶詰の取扱い等に関する指導について 平成12年10月6日付け消防危第102号)
ガソリンは常温でも遠くの火気に引火するほど引火点が低い危険物です。
その缶詰が、飲料水や缶詰食品と見分けがつかない並べ方で売られていたことが、そもそもの問題でした。
消防庁は、興味本位や誤った認識で購入されることへの懸念から、この売り方に注意を促しました。
店主に法令違反の意図があったわけではなく、震災時の備蓄用燃料としての流通が背景にありました。

缶詰と同じ棚に並んでたら、気づかず手に取ってしまいそうです。

だから売り方そのものが指導の対象になったんです。

対象になるのはどんな販売の仕方なのか

赤いガソリン缶詰と危険物の警告表示が並んでいる様子を示す図
対象は、この店だけの特別な話ではありません。
同じ売り方をする販売者すべてに向けられた指導です。
ガソリン缶詰の容器は、消防法令に定める運搬基準等に適合しており、当該コンビニエンスストアにおけるガソリンの貯蔵量についても地元消防本部の指導等により、火災予防条例等に違反するものではありません。(略)さらに、今後、当該地域以外においても、ガソリン缶詰が販売されることも予想されます。(同前)
危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量(以下「指定数量」という。)未満の危険物(略)の貯蔵及び取扱いの技術上の基準は、市町村条例でこれを定める。(消防法第9条の4)
容器も貯蔵量も、法令上は問題がなかったという点がこの通達の特徴です。
指定数量未満の危険物は市町村の火災予防条例が基準になり、この店はその基準を満たしていました。
それでも消防庁は、コンビニ等でガソリン缶詰を販売しようとする者・販売している者すべてを対象に指導を求めました。
つまり対象は、特定の店舗ではなく「ガソリン缶詰を扱う」という行為そのものです。

法令違反じゃないのに、指導の対象になるんですね。

はい。
基準の充足安全な運用は別の話なんです。

通達は売る側に何を求めているのか

店員がガソリン缶詰を手に客へ用途を確認している様子を示す図
求めていることは、大きく分けて2つだけです。
どちらも、店側の一手間でできることです。
コンビニエンスストア等において、ガソリン缶詰を販売しようとする者及び販売している者に対し、次の事項の指導を行うこと。1 ガソリン缶詰の貯蔵は、消防法令及び火災予防条例に違反しないよう適正な管理を行うこと。2 ガソリン缶詰を販売する際は、購入者に対し、使用目的を確認するとともに、ガソリン缶詰の取扱い時の注意喚起を必ず行うこと。(同前)
1つ目は貯蔵の管理で、これは他の危険物と同じく法令や条例を守るという話です。
2つ目の「使用目的の確認」と「注意喚起」が、この通達の核心です。
レジで一言、何に使うのかを尋ね、取扱いを誤ると火災になることを伝えるだけで、事故のリスクは大きく下がります。
食料品のように無言で会計を済ませてはいけない商品だということです。

レジで一言声をかけるだけなら、うちでも今日からできそうです。

はい。
確認と注意喚起はセットで行ってください。

実務で見落としやすいのはどこか

消防法令の書類とガソリン缶詰が並んでいる様子を示す図
一番の見落としは、「違反していないから安全」と考えてしまうことです。
この通達は、まさにその思い込みへの警鐘でした。
店主によれば、ガソリン缶詰が都道府県等に震災時等の備蓄用燃料として納入されていることを知り、当該地域は最も近い24時間営業の営業用給油取扱所まで約40分もかかる地域であることから、夜間における自動車等の燃料切れ対策としての需要が見込めるのではないかと考え、本年3月から販売しているとのことです。(同前)
店主の動機は、地域の不便を補うという善意に近いものでした。
法令違反の意図がなくても、危険物の売り方次第で事故につながる点が見落とされがちです。
備蓄用や非常用として流通している危険物ほど、一般客の目に触れたときの取扱いまで想定しておく必要があります。
テナントや売店を抱える施設では、こうした商品が持ち込まれていないかも点検の視野に入れてください。

善意で始めた販売でも、指導の対象になるんですね。

動機と結果は別だと考えてください。

明日から何を確認すればよいのか

チェックリストとガソリン缶詰を照らし合わせる様子を示す図
確認することは、実はそう多くありません。
順番に見ていけば、今日中にできる内容です。
コンビニエンスストア等において、ガソリン缶詰が販売されているとの情報を得た場合、消防庁危険物規制課まで連絡下さい。(同前)
まず、自分が管理する施設内の売店やテナントに、ガソリンを含む危険物入りの商品が食品と同じように並んでいないかを確認してください。
見つかった場合は、貯蔵量が火災予防条例の基準内かを確認し、販売時に使用目的を確認する運用になっているかも聞き取ります。
該当する商品を見つけたときは、所轄消防署に一報を入れておくと、その後の指導が円滑に進みます。
危険物は、法令違反の有無だけでなく、売り方まで含めて安全性を判断する視点を持ちましょう。

今日、テナントの売店を一通り見て回ってみます。

はい。
その一回りが事故を防ぎます。

よくある質問

Qガソリン缶詰は消防法令の運搬基準に違反していたのですか?
Aいいえ。容器は消防法令に定める運搬基準に適合しており、貯蔵量も火災予防条例に違反するものではありませんでした。
Qこの指導はガソリン缶詰以外の危険物にも当てはまりますか?
A通達自体はガソリン缶詰を対象としたものですが、「基準を満たしていても売り方に注意義務がある」という考え方は他の危険物の販売にも通じます。
Q指定数量未満の危険物はどこで規制されるのですか?
A消防法第9条の4に基づき、貯蔵及び取扱いの技術上の基準は市町村条例で定められます。
Q似た商品を見つけたらどこに連絡すればよいですか?
Aまずは所轄消防署に相談してください。通達では消防庁危険物規制課への情報提供も求められています。

まとめ

兵庫県のコンビニでガソリン1リットル入りの缶詰が食品と同様に陳列販売されていたことを受け、消防庁が指導を行いました
容器も貯蔵量も消防法令や火災予防条例には違反していませんでした。
対象はガソリン缶詰を販売しようとする者及び販売している者全般です。
求められているのは貯蔵の適正管理と、購入者への使用目的の確認・注意喚起です。
店主の動機は震災時の備蓄用燃料の流通という善意に近いものでした。
法令違反がなくても、危険物の売り方次第で事故につながる点が見落とされがちです。
似た商品を見つけたら、所轄消防署への相談から始めてください。

売店の棚を、今日中に見て回ります!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「ガソリン缶詰の取扱い等に関する指導について」(平成12年10月6日付け消防危第102号 消防庁危険物規制課長)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第9条の4

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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