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特定屋外タンク貯蔵所の新基準適合はなぜ休止で先送りできるのか|標識掲示と再開前の届出が条件になる仕組みを解説

㈱防災屋の担当者が経年劣化した屋外貯蔵タンクを確認している様子

屋外貯蔵タンクの技術基準は、過去の流出事故のたびに見直され、年々厳しくなってきました。
ただ、古いタンクほど新基準に合わせる改修工事の負担は重く、すぐには手が回らない施設も少なくありません。
そこで消防庁は、危険物の貯蔵及び取扱いを休止しているタンクに限り、新基準への適合を待ってもらえる仕組みを用意しました。
ただし休止と認められるには、届出と標識の掲示という条件が付きます。

うちのタンク、古くて新基準に合わせる改修が大変なんです。
壊すしかないんでしょうか。

いいえ、いま使用を休止していれば、新基準への適合を先送りできる制度があります。

それなら、なにもしなくていいってことですか。

いいえ、届出と標識の掲示が条件になります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 危険物の貯蔵及び取扱いを休止している特定屋外タンク貯蔵所等は、市町村長等の確認を受ければ新基準適合期限を再開する日の前日まで延長できる
  • 根拠は「危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令等の一部を改正する政令等の公布について」(平成21年10月16日 消防危第188号)
  • 対象は特定屋外タンク貯蔵所・準特定屋外タンク貯蔵所・浮き屋根を有する特定屋外タンク貯蔵所の3種類
  • 確認を受けるには申請書のほか、幅0.3メートル以上・長さ0.6メートル以上の「休止中」標識の掲示が必要
  • 再開しようとするときはあらかじめ市町村長等への届出が必要で、怠ると確認を取り消されることがある

休止中の特定屋外タンク貯蔵所は標識の掲示と再開前の届出を条件に新基準適合期限を延長できることを示す図解

特定屋外タンク貯蔵所の新基準適合はなぜ休止で先送りできるのか

経年劣化で赤さびが浮いた屋外貯蔵タンクと放置された工具
屋外貯蔵タンクの技術基準は、昭和52年・平成6年・平成11年・平成17年と、繰り返し強化されてきました。
ところが古いタンクほど、新基準に合わせる改修工事の費用と手間は大きくなります。
「危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令等の一部を改正する政令等の公布について」(平成21年10月16日 消防危第188号 消防庁次長) (略)今回の改正は、危険物の貯蔵及び取扱いを休止している特定屋外タンク貯蔵所等についての新基準適合を延長すること等を主な内容とするものです。
この通知は、休止中のタンクにまで無理な改修を迫らないための仕組みを定めたものです。
新基準に適合させるための改修工事には、大規模な足場や板厚測定、場合によっては解体新設に近い工事が必要になることもあります。
しかし、すでに危険物の貯蔵及び取扱いを止めているタンクに対して、期限までの改修を一律に義務付けるのは現実的ではありません。
そこで休止の旨を市町村長等に確認してもらえれば、新基準適合期限を再開する日の前日まで延長できることになりました。
延長は自動ではなく、休止の確認という手続きを経て初めて認められます。

うちのタンク、もう何年も使っていないんですが、それでも改修しないと違反になりますか。

いいえ、休止の確認を受ければ、新基準に合わせる期限を先送りできます。

どのタンクが新基準適合期限の延長を受けられるのか

大きさの異なる3種類の屋外貯蔵タンクが並ぶようす
延長の対象になるタンクは、適合すべき新基準の種類によって3つに分かれます。
どの基準に基づく休止かによって、根拠になる附則の条文も変わります。
(同通知)第1 特定屋外タンク貯蔵所等の新基準適合期限の延長 1 特定屋外タンク貯蔵所が適合させるべき(略)新基準の適合期限において危険物の貯蔵及び取扱いを休止している特定屋外タンク貯蔵所について、休止の旨の確認を市町村長等から受け、(略)新基準適合期限を、危険物の貯蔵及び取扱いを再開する日の前日まで延長することができるとされたこと(平成6年政令附則第7項第1号)。2 準特定屋外タンク貯蔵所(略)(平成11年政令附則第2項第1号)。3 浮き屋根を有する特定屋外タンク貯蔵所(略)(平成17年規則附則第3条第1項第1号)。
対象は、特定屋外タンク貯蔵所・準特定屋外タンク貯蔵所・浮き屋根を有する特定屋外タンク貯蔵所の3種類です。
特定屋外タンク貯蔵所は昭和52年政令の基準、準特定屋外タンク貯蔵所は平成11年政令の基準、浮き屋根を有する特定屋外タンク貯蔵所は平成17年規則の浮き屋根基準と、それぞれ適合すべき新基準が導入された時期が異なります。
どの区分に当たるかで、延長の根拠になる附則の条項番号が変わる点に注意してください。
いずれの区分でも、延長を受けられるのは休止の旨の確認を受けた後に限られ、確認を受けずに放置しているだけでは延長になりません。

うちのタンクが、この3つのどれに当たるか自分で分かるものですか。

容量や設置年、屋根の構造で区分が変わりますので、所轄消防署に確認するのが確実です。

休止の確認を受けるにはどんな手続きが必要なのか

市町村長等への申請書提出とタンクに掲示された休止中の標識
休止の確認は、届け出るだけで自動的に認められるものではありません。
申請書の提出と、いくつかの要件を満たすことが必要です。
(同通知)5 (略)市町村長等による休止の旨の確認等について、その手続き等を、次の(1)から(4)までのように定めたこと(改正規則附則第3条)。(1) 市町村長等の確認を受けようとする者は、申請書と、講じられた休止措置その他参考となるべき事項を記載した書類を市町村長等に提出しなければならない。(2) 市町村長等は、申請に係る特定屋外タンク貯蔵所等が次のいずれにも該当すると認められる場合に限り、確認をするものとする。ア 危険物(略)の除去。イ 誤って危険物が流入するおそれがないようにするための措置を講ずること。ウ 見やすい箇所に幅0.3メートル以上、長さ0.6メートル以上の、地が白色の板に赤色の文字で「休止中」と表示した標識を掲示すること。
確認を受けるには、危険物の除去・流入防止・標識の掲示という3つの要件をクリアする必要があります。
標識の大きさは幅0.3メートル以上、長さ0.6メートル以上と具体的に決められており、白地の板に赤い文字で「休止中」と書いて見やすい箇所に掲げます。
残っている危険物を除去し、誤って危険物が流入しないようにする措置も、確認を受けるための前提条件です。
これらが揃って初めて、市町村長等は休止の確認をすることになります。

標識さえ立てれば、それで休止として認めてもらえるんですか。

いいえ、危険物の除去や流入防止の措置もあわせて必要です。

実務で見落としやすいのはどこか

再開を届け出て確認を受ける対応と無届けのまま再開してしまう対応の対比
見落としやすいのは、休止の確認を受けたあとの対応です。
確認を受けて終わりではなく、再開するときにもやるべきことがあります。
(同通知)(3) 確認を受けている特定屋外タンク貯蔵所等の所有者等は、危険物の貯蔵及び取扱いを再開しようとするときは、あらかじめ、その旨を市町村長等に届け出なければならない。それまでの間に、(1)の申請書又は書類に記載された事項に変更が生じる場合には、あらかじめ、その旨を市町村長等に届け出なければならない。(4) 上記(3)における再開前に上記(2)における措置が講じられていないと市町村長等が認めるに至ったときは当該休止の確認を取り消すことができる
再開しようとするときは、あらかじめ市町村長等への届出が必要です。
標識を外して黙って営業を再開してしまうと、この届出義務を果たしていないことになります。
また、標識の撤去や流入防止措置の解除など休止措置が保たれていないと市町村長等が判断すれば、休止の確認そのものを取り消されることがあります。
確認が取り消されれば、延長されていた新基準適合期限も当然に失われます。
なお、休止中の保安検査・内部点検の時期を先送りできる制度は、これとは別に定められています。

再開するときも、いちいち届け出ないといけないんですか。

はい。
届け出を忘れると確認を取り消されるおそれがあります。

明日からなにを確認すればよいのか

休止中の標識と流入防止措置を確認する点検員
すでに休止しているタンク、あるいはこれから休止を検討しているタンクがあれば、次の点を確認してください。
確認を受けたあとも、標識と措置が維持されているかを定期的に見ておく必要があります。
(同通知) 貴職におかれましては、下記事項に十分留意の上、その運用に配慮されるとともに、各都道府県知事におかれましては、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨周知されるようお願いします
まず、休止しているタンクについて休止の旨の確認を受けているかどうかを確認します。
確認を受けていなければ、新基準適合期限が延長されないまま期限を過ぎてしまう危険があります。
確認を受けている場合は、標識の掲示と流入防止措置が今も保たれているかを現地で確かめます。
再開の計画がある場合は、工事や検査の日程よりも先に、市町村長等への事前の届出を予定に組み込んでおきます。
判断に迷う点は、早めに所轄消防署へ相談しておくと手戻りがありません。

今度の点検で、うちのタンクの標識も確認してみます。

標識と流入防止の措置、あわせてチェックしてみてください。

よくある質問

Q休止しているタンクは新基準に適合させなくてもよいのですか?
A休止の旨の確認を受ければ、新基準適合期限を再開する日の前日まで延長できます。確認を受けなければ延長にはなりません。
Q休止の確認を受けるにはどんな標識が必要ですか?
A幅0.3メートル以上、長さ0.6メートル以上の、白地の板に赤色の文字で「休止中」と表示した標識を見やすい箇所に掲示します。
Q再開するときはどうすればよいですか?
Aあらかじめ市町村長等に届け出る必要があります。届出を怠ると休止の確認を取り消されることがあります。
Q対象になるのはどんなタンクですか?
A特定屋外タンク貯蔵所・準特定屋外タンク貯蔵所・浮き屋根を有する特定屋外タンク貯蔵所の3種類です。

まとめ

危険物の貯蔵及び取扱いを休止しているタンクは、市町村長等の確認を受ければ新基準適合期限を延長できる。
根拠は「危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令等の一部を改正する政令等の公布について」(平成21年10月16日 消防危第188号)
対象は特定屋外タンク貯蔵所・準特定屋外タンク貯蔵所・浮き屋根を有する特定屋外タンク貯蔵所の3種類。
延長される期限は、危険物の貯蔵及び取扱いを再開する日の前日まで
確認を受けるには、危険物の除去・流入防止の措置に加えて幅0.3メートル以上・長さ0.6メートル以上の「休止中」標識の掲示が必要。
再開しようとするときはあらかじめ市町村長等への届出が必要で、怠ると確認を取り消されることがある。
休止中の保安検査・内部点検の時期を先送りできる制度は、これとは別に定められている

標識と届出、次の点検で必ず確認します!

それがいちばんの近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令等の一部を改正する政令等の公布について」(平成21年10月16日 消防危第188号 消防庁次長)
  • 根拠条文 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第62条の2・第62条の5・第62条の8
  • 危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令(平成6年政令第214号)附則第7項第1号/危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令(平成11年政令第3号)附則第2項第1号/危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(平成17年総務省令第3号)附則第3条第1項第1号

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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