非常用の照明装置の定期検査は、告示の検査結果表に並ぶ項目を順番にこなすだけの作業ではありません。
検査の対象範囲は誰がどう決まるのか、消防法や電気事業法に基づく点検記録は使い回せるのか、腐食やき裂の判定はどこまで感覚に頼ってよいのか——実務では制度そのものへの疑問も少なくありません。
これらを知らずに検査に臨むと、対象範囲を取り違えたり、活用できる記録を見落として余計な検査をしてしまったりすることがあります。
この記事では、検査対象の決まり方から自主点検記録の活用、判定に迷う項目の考え方、検査前の準備から当日の手順まで非常用照明装置定期検査の基本ルールを整理して解説します。
うちのビル、非常用照明の検査で「対象になるのは特定行政庁が指定するものだけ」と言われました。
普通の検査と何が違うんでしょうか。
はい、非常用照明装置の検査は特定行政庁が指定する範囲に限られます。
認定を受けた設備は、また別の方法で検査することになっています。
点検業者さんが持ってきた消防法の記録をそのまま検査に使えるって聞いたんですが、本当でしょうか。
はい、使える項目とそうでない項目がはっきり決まっています。
対象の決まり方から検査当日の手順まで順番に見ていきましょう。
- 検査対象となる非常用の照明装置は「特定行政庁が指定するもの」とされ、国土交通大臣の認定を受けた設備は申請時提出図書の方法で検査する
- 消防法に基づく点検記録は蓄電池・自家用発電装置に関する項目で、電気事業法に基づく点検記録はさらに限られた項目で活用できる
- 他法令による検査記録は3ヵ月以内、自主点検の記録は1ヵ月以内に実施されたものが望ましい
- 著しい腐食は巻末の参考資料、き裂・異常な音や振動は普段の状態との違いや性能への影響で判定する
- 検査前には設計図書・前回の指摘・保守管理状況を確認し、総合的な維持保全計画書の策定を求める
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目次
非常用の照明装置の検査はどこまでを対象にしているのか

まずは検査に入る前に押さえておきたい対象の考え方を確認します。
検査対象となるのは、特定建築物に設けられた非常用の照明器具・蓄電池・自家用発電装置のうち特定行政庁が指定するものに限られます。
自分の建物のどの設備が対象かは、まず所管の特定行政庁の担当課に確認する必要があります。
また国土交通大臣の認定を受けた非常用の照明装置等は、告示の検査方法ではなく認定申請時に提出した図書に記載の方法で検査します。
自分の建物がどの指定・認定に該当するかわからないときは、検査を依頼する建築設備等検査員にまず相談するのが確実です。
対象になるのは「特定行政庁が指定するもの」ってどこで確認できるんでしょうか。
うちのビルだと何を見ればいいですか。
所管の特定行政庁の窓口か、検査を依頼する建築設備等検査員に確認するのが確実です。
建築確認済証や完成図書も手元に用意しておきましょう。
自主点検の記録はどこまで検査に活用できるのか

その記録をそのまま活用できる項目があるのかを確認しましょう。
蓄電池室の換気・設置の状況や蓄電池の性能に関する項目は、消防法に基づく点検の記録を活用できます。
自家用発電装置の状況に関する項目の一部は、電気事業法に基づく点検の記録でも活用できますが、対象になる項目は消防法の記録より狭くなっています。
記録にあっては、他の法令による検査記録は3ヵ月以内、自主点検の記録は1ヵ月以内に実施されたものが望ましいとされています。
検査を依頼する前に、直近の点検記録が手元にあるかを確認しておくと、当日の検査がスムーズになります。
うちは自家用発電機の点検を電気事業法でも受けているので、その記録が使えるなら助かります。
古い記録でも大丈夫でしょうか。
直近1ヵ月以内の記録が望ましいとされています。
古い記録しかない項目は、あらためて検査することになります。
著しい腐食やき裂はどう判定すればよいのか

判定に迷ったときの考え方を確認しましょう。
著しい腐食かどうかは巻末の参考資料「腐食状況の判定基準」と見比べて判定します。
き裂や異常な音・振動は、機器の性能への影響や普段の状態との違いがあるかどうかで要是正を判断します。
要是正の判定が出た場合は「要是正(法不適合)」の指摘を行いますが、建築着工時の法令に適合すると判断される場合は「既存不適格」を併せて指摘します。
検査は全数検査で行い、隠蔽・埋設された配線等は原則として検査対象外ですが、点検口等から目視できる範囲は検査の対象になります。
「著しい」とか「異常な」とか、感覚で判断されているみたいで不安です。
基準はちゃんとあるんでしょうか。
はい、巻末の参考資料や機器ごとの特性を踏まえた基準があります。
感覚だけで判定しているわけではありませんのでご安心ください。
検査に入る前にどんな準備をしておくべきか

基準書は検査実施前に確認すべき事項を、事前準備と設計図書等の確認の2つに整理しています。
非常用の照明装置関係図書を閲覧し、予備電源・切替方式・配線系統・機器位置等の設備の概要と、建築物の構造・規模・部屋の用途をあらかじめ把握しておくことで、現地での確認がスムーズになります。
前回の検査記録の指摘事項が改善されているかも忘れずに確認し、保守管理の状態は所有者等からの聴取と保守日誌等の資料閲覧の両方で把握します。
検査内容や必要な人員は他法令による検査記録の有無によって変わるため、あらかじめ建築物の所有者等と打合せておく必要があります。
常用の電源と自家用発電機の切替え検査等は例外的な扱いになるため、事前の打合せで日程を調整しておきましょう。
検査当日に慌てないためには何を準備しておけばいいんでしょうか。
設計図書と前回の指摘事項を先に確認しておくことが大切です。
使用時間内に検査できるよう所有者様との日程調整もお願いします。
保守管理の確認と検査はどんな手順で進むのか

検査に入る前後で保守管理の状態を確認することも、基準書が求める大切な工程です。
保守管理がどのように行われているかは所有者等からの聴取と保守日誌等の閲覧で把握し、全ての検査が終わったあとに保守管理体制全体が適切かどうかを確認します。
総合的な維持保全計画書が策定されていない場合は、建築物の規模や用途を勘案して策定を求めることも検査員の役割です。
検査当日は、最初に変更や設備の改修等の有無を調査し、書類による検査対象物の確認、外観検査から性能検査という順序で進めます。
検査終了後は、全てを元の正常状態に戻したことを確認し、その旨を所有者等の責任者に報告して初めて一連の検査が完了します。
維持保全計画書というものを作った覚えがありません。
作っていないと検査に通らないんでしょうか。
検査項目そのものではなく、策定を促す対象という位置づけです。
この機会に建物の規模に応じて整えておきましょう。
よくある質問
まとめ
対象の決め方から検査当日の流れまで、これで一通り整理できました!
それが確実な備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条第3項・第68条の25第1項
- 建築基準法施行規則第6条第1項・第2項
- 平成20年国土交通省告示第285号 別表第三 非常用の照明装置
※本記事は建築基準法及び関係告示の現行規定にもとづき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。個別の建物における検査対象の指定や検査方法の適用については、所管の特定行政庁又は検査を担当する建築設備等検査員に必ずご確認ください。





