老舗の旅館や料亭では、冬になると火鉢や置ごたつを客間に出すことがあります。
見た目はどちらも昔ながらの暖房器具ですが、実は火災予防条例に専用の取扱い基準が定められています。
灯油ストーブなど液体燃料の器具とは違う理由で、火鉢や置ごたつには独自の決まりが置かれています。
この記事では、火鉢と置ごたつに特有の基準と、その基準がなぜ液体燃料の器具と異なるのかを整理します。
うちの旅館でも冬に火鉢を出すことがあるんですが、消防の決まりって何かあるんでしょうか。
火鉢や置ごたつには専用の基準があります。
まず結論から確認しましょう。
灯油ストーブと同じ基準が当てはまるということですか。
いいえ、固体燃料の器具には別の基準が定められています。
順番に見ていきましょう。
- 火鉢や置ごたつのような固体燃料を使用する器具には、火災予防条例(例)第19条が専用の取扱い基準を定めています。
- 火鉢は底部に遮熱のための空間を設けるか、砂等を入れて使用しなければなりません。
- 置ごたつの火入容器は、金属以外の不燃材料で造った台の上に置いて使用しなければなりません。
- 距離や転倒防止等の共通基準は準用されますが、燃料漏れの確認や点検整備者の基準は準用されません。
- 器具の周囲は常に整理・清掃し、破損した器具や本来の用途以外での使用は避ける必要があります。
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目次
火鉢はなぜ底に空間や砂の対策が必要なのか

何も対策をせずに畳や床の上へ直接置くと、思わぬ形で火災につながることがあります。
炭火は表面温度が非常に高くなり、その熱は容器の底を通じてじわじわと下の畳や床材へ伝わっていきます。
空間を設けて熱をこもらせずに逃がすか、砂等を敷いて熱を吸収・分散させることで、炎が上がらないまま底面がくすぶり出す事態を防ぐ趣旨です。
自分の施設で使う火鉢に、この対策のどちらかが講じられているかを一度確認しておくとよいでしょう。
炎が出ていなくても、底からくすぶって火が出ることがあるんですね。
そのとおりです。
次は置ごたつの決まりを見てみましょう。
なぜ置ごたつの火入容器は金属の台に乗せてはいけないのか

その台の材質にも、条例ははっきりとした線引きを置いています。
金属は燃えない材料ですが、熱を伝えやすいという性質があります。
金属の台に火入容器を置くと、金属自体は燃えなくても、その熱がそのまま台を通じて床やこたつ布団に伝わり、周囲の可燃物をじわじわと焦がすおそれがあります。
陶器や石材のように熱を伝えにくい不燃材料であれば、こうした熱の伝わりを抑えられるため、条例は不燃であることに加えて金属を除くという二重の条件を置いています。
燃えない材料でも駄目な場合があるというのは意外でした。
熱の伝わり方まで考えられた基準です。
次は共通する基準を見てみましょう。
火鉢や置ごたつにも距離や転倒防止の共通基準はあるのか

液体燃料の器具について定められた基準の一部が、そのまま当てはまる形です。
準用されるのは、消防長(消防署長)が認める距離を保つこと、地震等により容易に転倒又は落下しない状態で使用すること、不燃性の床又は台上で使用することなどです。
屏風や座卓のような可燃物のすぐそばに置かず、十分な距離をとって設置することが基本になります。
これらの共通基準そのものの詳しい中身は、対象火気器具等の全体像を扱った記事であわせて確認してください。
距離や転倒防止は、ほかのストーブと同じ考え方なんですね。
そのとおりです。
次は逆に当てはまらない基準を見てみましょう。
なぜ火鉢や置ごたつには燃料補給や点検整備者の基準が当てはまらないのか

逆に、液体燃料の器具にある基準のうち、固体燃料の器具には準用されないものもあります。
19条第2項が準用するのは第1号から第9号の2までに限られており、燃料漏れの確認や燃料を受ける皿、点検整備者による点検といった項目は含まれていません。
灯油等の液体燃料には、給油中や使用中にこぼれる、漏れるといった液体特有のリスクがありますが、炭や薪といった固体燃料にはそもそもそのような場面が想定されないためです。
同じ対象火気器具等でも、燃料の性質によって必要な基準が変わってくることがわかります。
燃料の種類が違うだけで、当てはまる号がこんなに変わるんですね。
燃料の性質まで踏まえた線引きです。
最後に日々の管理を確認しましょう。
火鉢や置ごたつを店舗で使うときはどんな管理を続ければよいか

準用される共通基準のうち、管理に関わる部分を確認しておきましょう。
ひびの入った陶器や、灰がたまったままの火鉢を使い続けることは、この基準に照らして避けるべきです。
本来は暖房として使う器具を調理や別の目的に流用するといった不適当な使用も認められていません。
季節ごとに出し入れする器具だからこそ、使い始める前にひび割れや汚れがないかを確認する習慣をつけておくと安心です。
今年出す前に、うちの火鉢もひび割れがないか見ておきます。
それが一番の予防になります。
最後によくある質問を見てみましょう。
よくある質問
まとめ
今年の冬から出す前の点検を必ずやります!
ひび割れがないかもしっかり見ておきます。
固体燃料の器具特有の基準を押さえておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第9条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第5条の2(対象火気器具等の取扱いに関する条例の基準)
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号 消防庁長官)第18条・第19条
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





