通信機器室や電算機室には、水や泡ではなくガス状の薬剤で火を消す消火設備が使われています。
その代表格がハロゲン化物消火設備ですが、近ごろは違う種類の消火剤を使う設備に置き換わっている建物があります。
なぜ従来のハロゲン化物消火設備に加えて、環境性能に優れた消火剤まで選べるようになったのでしょうか。
本記事ではドデカフルオロ-二-メチルペンタン-三-オンを消火剤とする消火設備の性能基準と、代替として使う際に必要な手続きを解説します。
うちのサーバー室の消火設備を更新するとき、業者さんから聞き慣れない消火剤の名前が出てきました。
ハロゲン化物消火設備とは別物だと言われたんです。
それはおそらくドデカフルオロ-二-メチルペンタン-三-オンを消火剤とする消火設備ですね。
ハロゲン化物消火設備の代わりに使える設備として、国の認定を受けたものです。
消火剤を変えるだけで、そんなに大きな違いがあるんでしょうか。
はい、環境性能と消火のしくみの両方に違いがあるんです。
くわしく見ていきましょう。
- ドデカフルオロ-二-メチルペンタン-三-オンを消火剤とする消火設備は、ハロゲン化物消火設備に代えて使う特殊消防用設備等で、総務大臣の認定を受けたものだけが使えます。
- 通信機器室など消防法施行令第13条で消火設備の設置が義務づけられた部分が主な対象です。
- 燃焼連鎖反応の抑制などにより消火する設備で、オゾン層破壊係数が0であるなど環境性能に優れています。
- 建物側の判断だけで自己判断で設置することはできません。
- 導入後は設備等設置維持計画に従った維持管理を続ける必要があります。
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目次
ハロゲン化物消火設備は環境に配慮した消火剤に置き換えられるのか

この消火剤の部分は、条件を満たせば別の消火剤に置き換えることが認められています。
ポイントは「同等以上の性能」を持つと国が認めたものに限られるという点です。
ドデカフルオロ-二-メチルペンタン-三-オンを消火剤とする設備は、従来のハロゲン化物消火設備に似た構造を持ちながら、燃焼を止める仕組みそのものに工夫があります。
この置き換えは消防法第17条第3項にもとづく特殊消防用設備等の制度によるもので、建物ごとに個別の認定が必要です。
つまり同じ「ハロゲン化物消火設備の代わり」という名目でも、認定を受けていない設備を自己判断で設置することはできません。
業者さんが見せてくれた容器も、消防用設備等の一種ということですね。
その理解で合っています。
見た目は似ていても、法律上はハロゲン化物消火設備の代わりとして認められた設備です。
この消火剤はどんな仕組みで火災の拡大を抑えるのか

消火剤そのものの性質に特徴があります。
噴射ヘッドから放出する構造はハロゲン化物消火設備とよく似ていますが、消火剤の働き方が異なります。
オゾン層破壊係数が0で地球温暖化係数も小さいなど、環境性能に優れている点が大きな利点です。
消火剤放出後の水損がなく、消火剤自体の人体に対する安全性が高いともされています。
消火実験等により性能が確認された無人の電算機室等に有効な設備、という位置づけです。
消し方だけじゃなくて、環境への配慮も理由になっているんですね。
はい、環境特性と消火性能の両立がこの設備の狙いです。
次は、具体的な性能基準を見ていきましょう。
設備にはどんな性能基準が求められるのか

容器の中身から排出の仕組みまで、基準は多岐にわたります。
放出された消火剤が防護区画の全域に速やかに拡散できるよう、開口部の自動閉鎖や換気装置の停止といった措置も欠かせません。
貯蔵容器には性能評価を受けた容器弁と安全装置を設ける必要があります。
放出後の消火剤や燃焼ガスは、排出ファンなどを使って安全な場所へ排出する措置が求められます。
起動や停止を担う制御盤も、性能評価を受けた設備でなければなりません。
容器の中身の量にまで基準があるとは知りませんでした。
充てん比まで細かく決まっている点が、この設備の性能評価の厳しさを表しています。
次は、そもそもどこに設置義務があるかを見ていきましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

見落としやすいのは、設置して終わりではないという点です。
ドデカフルオロ-二-メチルペンタン-三-オンを消火剤とする設備は、この義務を代替する手段であり、建物の関係者が任意に選べる標準仕様ではありません。
導入するには総務大臣の認定と、あらかじめ作成した設備等設置維持計画への適合が前提になります。
認定を受けた後も、計画にない改修や仕様変更を無断で行うと認定の前提が崩れてしまいます。
つまり設置後の点検や維持管理も、計画に記載された内容どおりに続ける必要があります。
うちの通信機器室も、レイアウト変更のときにラックの配置を変えたことがあります。
その場合も届出とか必要になるんでしょうか。
認定を受けた設備である以上、勝手な変更はできません。
変更を検討する際は、必ず事前に所轄消防と相談してください。
明日からなにを確認すればよいか

新築でも改修でも、早い段階で押さえておきたい手順です。
- その設備が総務大臣の認定を受けたドデカフルオロ-二-メチルペンタン-三-オンを消火剤とする消火設備かどうかを、認定書や設計図書で確認する
- 設備等設置維持計画に記載された点検項目と周期を把握する
- 改修や模様替えを行う前に所轄消防署に事前相談する
- 貯蔵容器の充てん比や制御盤が正常な状態かを日常点検で見る
認定書や設計図書に設備等設置維持計画への適合が明記されているかを、まず確認してください。
次に計画に定められた点検項目と周期を把握し、日常点検の中に組み込みます。
貯蔵容器の充てん比や制御盤が正常に作動する状態にあるかは、この設備の性能を左右する基本的な確認事項です。
改修を検討する段階になったら、着手前に所轄消防署へ相談することが遠回りに見えて一番確実です。
まずは認定書があるかどうかを確認してみます。
点検の記録もあわせて見ておきます。
それがいちばん確実な確認方法です。
何か気になる点があれば、いつでもお声がけください。
よくある質問
まとめ
更新工事で使う消火剤の意味がやっと分かりました!
認定書から確認してみます!
お力になれてなによりです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条第1項・第3項
- 消防法施行令第13条
- 消防法施行令第17条
- 平成18年11月30日消防予第500号(問66)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





