天井に設置された自動火災報知設備の感知器は、煙の濃度や熱を検知して火災を知らせます。
ところがこの感知器を、火災による温度上昇の速さそのものを見るタイプに置き換えている建物があります。
なぜ従来の感知方法に加えて、温度が上がる速度まで見る必要があるのでしょうか。
本記事では温度上昇速度を感知する火災報知設備の性能基準と、代替として使う際に必要な手続きを解説します。
うちのビルの受信機の横に、見慣れない箱がついていると言われました。
温度の上がり方を見ている機器らしいんです。
それはおそらく温度上昇速度を感知する感知器を用いた火災報知設備ですね。
自動火災報知設備の代わりに使える設備として、国の認定を受けたものです。
温度を見るだけで、火災の感知が早くなるものなんでしょうか。
はい、早期の警報と連動制御につながる仕組みなんです。
くわしく見ていきましょう。
- 温度上昇速度を感知する感知器を用いた火災報知設備は、自動火災報知設備に代えて使う特殊消防用設備等で、総務大臣の認定を受けたものだけが使えます。
- 従来の煙濃度・熱検知に加えて温度上昇速度そのものを監視し、火災の進展が想定より早いと判断するとフェイズ進展警報を発します。
- フェイズ進展警報は通常の火災確定条件とは独立して放送設備など他の消防用設備等を連動制御できます。
- 建物側の判断だけで自動火災報知設備を勝手に置き換えることはできません。
- 導入後は設備等設置維持計画に従った維持管理を続ける必要があります。
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目次
自動火災報知設備は温度上昇速度を感知する感知器に置き換えられるのか

この感知器の部分は、条件を満たせば別の設備に置き換えることが認められています。
ポイントは「同等以上の性能」を持つと国が認めたものに限られるという点です。
自動火災報知設備は煙濃度や熱を検知しますが、温度上昇速度を感知する感知器を用いた火災報知設備はこれに加えて、温度が上がる速さそのものを監視します。
この置き換えは消防法第17条第3項にもとづく特殊消防用設備等の制度によるもので、建物ごとに個別の認定が必要です。
つまり同じ「自動火災報知設備の代わり」という名目でも、認定を受けていない設備を自己判断で設置することはできません。
うちの受信機の横についていた箱も、これも消防用設備等の一種ということですね。
その理解で合っています。
見た目は追加の機器でも、法律上は自動火災報知設備の代わりとして認められた設備です。
この設備はどんな仕組みで火災を早く感知するのか

警報を出すまでの判断の仕組みそのものが変わっています。
外部処理装置は自動火災報知設備からの情報をもとに、火災の進展状況をリアルタイムで予測します。
そのうえで初期火災段階の温度上昇に応じて、フェイズ進展警報という専用の警報を発します。
このフェイズ進展警報が、避難誘導や防火区画の形成といった対応を早める起点になります。
つまり感知器そのものより、後段の判断ロジックに置き換えの核心があります。
感知器を変えるだけじゃなくて、判断する装置ごと追加するんですね。
はい、外部処理装置がリアルタイムで進展を予測するところがこの設備の心臓部です。
次は、その警報がどう他の設備につながるかを見ていきましょう。
フェイズ進展警報はどのように他の設備と連動するのか

ほかの消防用設備等や防火設備と連動してはじめて、早期避難につながります。
感知器ごとに設置環境に応じた「フェイズ進展基準時間」を事前に設定し、実際の温度上昇にかかった時間と比べます。
基準より早く温度が上がっていれば、通常の火災確定を待たずにフェイズ進展警報を発報します。
この警報は通常の火災確定条件とは独立した経路で、放送設備の火災放送を鳴動させることができます。
つまり感知器が火災信号レベルに達するのを待たず、より早い段階で避難放送を始められる点が最大の特徴です。
普通の警報より早く放送が鳴るなら、避難の判断も早くできそうですね。
早く動き出せる分だけ、避難の安全性が高まります。
ただし設置には条件があるので、次はそこを見ていきましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

見落としやすいのは、設置して終わりではないという点です。
温度上昇速度を感知する感知器を用いた火災報知設備は、この義務を代替する手段であり、建物の関係者が任意に選べる標準仕様ではありません。
導入するには総務大臣の認定と、あらかじめ作成した設備等設置維持計画への適合が前提になります。
認定を受けた後も、計画にない改修や仕様変更を無断で行うと認定の前提が崩れてしまいます。
つまり設置後の点検や維持管理も、計画に記載された内容どおりに続ける必要があります。
うちの建物も改修のときに感知器の配置を変えたことがあります。
その場合も届出とか必要になるんでしょうか。
認定を受けた設備である以上、勝手な変更はできません。
変更を検討する際は、必ず事前に所轄消防と相談してください。
明日からなにを確認すればよいか

新築でも改修でも、早い段階で押さえておきたい手順です。
- その設備が総務大臣の認定を受けた温度上昇速度感知タイプの火災報知設備かどうかを、認定書や設計図書で確認する
- 設備等設置維持計画に記載された点検項目と周期を把握する
- 改修や模様替えを行う前に所轄消防署に事前相談する
- フェイズ進展警報と連動する放送設備や防火設備が正常に作動する状態かを日常点検で見る
認定書や設計図書に設備等設置維持計画への適合が明記されているかを、まず確認してください。
次に計画に定められた点検項目と周期を把握し、日常点検の中に組み込みます。
フェイズ進展警報と連動する設備が正常に作動する状態にあるかは、この設備の性能を左右する基本的な確認事項です。
改修を検討する段階になったら、着手前に所轄消防署へ相談することが遠回りに見えて一番確実です。
まずは認定書があるかどうかを確認してみます。
点検の記録もあわせて見ておきます。
それがいちばん確実な確認方法です。
何か気になる点があれば、いつでもお声がけください。
よくある質問
まとめ
受信機の横の箱の意味がやっと分かりました!
点検の記録から確認してみます!
お力になれてなによりです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条第1項・第3項
- 消防法施行令第21条
- 平成18年11月30日消防予第500号(問68)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





