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屋外タンク貯蔵所の不等沈下点検はなぜ毎年でなくてよいことがあるのか|沈下率が示す測定間隔とレベル計を使う場面を解説

屋外タンクの点検はなぜ毎年でなくてよいのか

屋外タンク貯蔵所の定期点検は、法令で「1年に1回以上」と決まっています。
ですが実際には、2年に1回や3年に1回で足りるタンクもあります。
違いを生むのは「不等沈下率」という、タンクの傾きや沈み方を数値化した指標です。
過去3年間の沈下の記録をどう読むかで、次の測定時期が変わります。

うちのタンク、去年の点検で少し傾きが気になると言われました。

それは不等沈下ですね。
実は毎年測定しなくていい場合もあるんです。

え、点検の間隔を延ばせるんですか。

はい。
沈下率の記録次第で、2年や3年に延ばせます。

この記事の結論
  • 屋外タンク貯蔵所の不等沈下点検は原則1年に1回行う
  • 液体危険物1,000キロリットル以上のタンクは特定屋外タンク貯蔵所として区分される
  • 沈下率が300分の1未満で3年続けば測定間隔を延ばせる
  • 間隔を延ばしても目視点検は毎年必要
  • 地震や近隣工事があれば予定を待たず測定する

屋外タンク貯蔵所の不等沈下点検の流れを示す図解

屋外タンク貯蔵所の不等沈下点検はなぜ必要なのか

屋外タンクの傾きとレベル計による測定
屋外の貯蔵タンクは、地面の上に置かれているだけの構造物です。
地盤が均等に沈まないと、タンクの底板や側板に無理な力がかかります。
消防法第14条の3の2 政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、これらの製造所、貯蔵所又は取扱所について、総務省令で定めるところにより、定期に点検し、その点検記録を作成し、これを保存しなければならない。
危険物の規制に関する規則第62条の4 法第14条の3の2の規定による定期点検は、1年(告示で定める構造又は設備にあつては告示で定める期間)に1回以上行わなければならない。
定期点検の間隔は、原則として1年に1回です。
不等沈下点検は、この定期点検の中でタンクの傾きを数値で確認する項目です。
沈下が進むと、配管の接続部や溶接部に亀裂が生じるおそれがあります。
そこで総務省令は、告示で別の間隔を定められる余地を残しました。
この告示の運用を具体化したのが、消防庁の通達です。

うちのタンクも定期点検、年1回でやっています。

その点検の中に、沈下を数値で確認する項目があるんですよ。

どの屋外タンク貯蔵所がこの点検の対象になるのか

規模の異なる屋外タンクと完成検査済証
この緩和ルールは、屋外タンク貯蔵所全体に及びます。
ただし対象を2つに分けて、それぞれ別の基準を置いています。
危険物の規制に関する政令第8条の2の3第3項 法第11条の3第2号の政令で定める屋外タンク貯蔵所は、屋外タンク貯蔵所で、その貯蔵し、又は取り扱う液体の危険物の最大数量が1,000キロリットル以上のもの(以下「特定屋外タンク貯蔵所」という。)とする。
液体危険物の最大数量が1,000キロリットル以上なら特定屋外タンク貯蔵所です。
それ未満のタンクは、規模を問わずもう一方の区分に入ります。
消防庁の通達は、この2つの区分ごとに別の沈下率のものさしを設けました。
対象から除かれるのは、岩盤タンクと海上タンクの2種類だけです。
自分のタンクがどちらの区分か分からないときは、完成検査済証で確認できます。

うちのタンクがどっちの区分か分かりません。

完成検査済証を見れば、貯蔵できる数量が書いてあります。

沈下率に応じて測定の間隔はどう変わるのか

3年分の沈下率記録とカレンダー
間隔を決めるのは「不等沈下率」という数値です。
タンクの直径に対して、沈下量がどれだけの割合かで表します。
総務省消防庁「屋外タンク貯蔵所の不等沈下の点検方法に係る運用について」(消防危第28号) 不等沈下率(屋外貯蔵タンクの直径に対する当該屋外貯蔵タンクの不等沈下量の割合をいう。)が、3年間継続して300分の1未満であったもののうち、直近における不等沈下率が600分の1以上300分の1未満のものは2年に1回以上、600分の1未満のものは3年に1回以上とする(特定屋外タンク貯蔵所の場合。略)。
基準になるのは、直近3年間の沈下率の推移です。
特定屋外タンク貯蔵所は、300分の1未満の状態が3年続けば間隔を延ばせます。
直近の値が600分の1以上300分の1未満なら2年に1回、600分の1未満ならさらに3年に1回まで延ばせます。
特定屋外タンク貯蔵所以外は、基準の分母が150分の1と300分の1に変わるだけで、考え方は同じです。
数値が悪化すれば、当然この緩和は使えません。

過去の記録、3年分そろっているか確認してみます。

それが揃っていれば、間隔を延ばせるか判断できますよ。

測定を延ばしても目視点検まで省略できるのか

タンク基礎を目視点検する様子と近隣の工事現場
間隔を延ばせるのは、レベル計等を使った精密な測定だけです。
現場の点検そのものが年に1回で足りるという意味ではありません。
総務省消防庁「屋外タンク貯蔵所の不等沈下の点検方法に係る運用について」(消防危第28号) 不等沈下量の測定による点検を行わない期間においては、1年に1回以上の目視による点検を行うものであること。ただし、次回測定時期までの間に目視による点検等において異常が認められた場合、屋外タンク貯蔵所の周囲でタンクの基礎・地盤に影響を与えるおそれのある工事が行われた場合又は屋外貯蔵タンクに影響を与えるおそれのある地震等が発生した場合には、レベル計等を用いた不等沈下量の測定を実施すること。
測定を省ける年でも、目視点検は毎年欠かせません。
目視点検で少しでも異常が見つかれば、その時点でレベル計による測定に戻ります。
近くで基礎や地盤に影響しそうな工事があったときも同様です。
地震で揺れが大きかった場合も、次の予定を待たずに測定が必要です。
「今年は測定不要」という記録だけを見て、目視点検まで飛ばすのが典型的な見落としです。

測定を延ばした年は何もしなくていいんですよね。

いいえ、目視点検だけは毎年必要です。
誤解が多いところですね。

明日からなにを確認すればよいのか

点検記録のチェックリストと消防署への相談
緩和を受けられるかどうかは、記録を見ればすぐに分かります。
3年ぶんの点検記録を並べて、数字の推移を確認しましょう。
  • 過去3年間の点検記録から不等沈下率の推移を確認する
  • 自分のタンクが特定屋外タンク貯蔵所かどうかを完成検査済証で確認する
  • 間隔を延ばせる条件に当てはまるかを所轄消防署に相談する
  • 測定を省く年でも目視点検の実施記録を必ず残す
記録が3年分そろっていなければ、まずは今年の測定から始めるしかありません。
判断に迷うときは、所轄消防署の危険物担当に記録を持って相談するのが早道です。
間隔の緩和は自動的には決まりません
消防長または消防署長が個別に運用するものだと理解しておきましょう。

まずは記録を持って消防署に相談してみます。

それが一番早いです。
区分ごとに運用が違うので確認しておきましょう。

よくある質問

Q不等沈下率はどうやって測定するのですか?
Aレベル計等の測定機材を使い、タンクの外周の複数の点の高さを測って算出します。
Q岩盤タンクや海上タンクにもこの緩和は使えますか?
Aいいえ、通達の対象から明確に除かれています。従来どおりの点検方法によります。
Q間隔を延ばした後に沈下率が悪化したらどうなりますか?
A次の測定でそのタンクの区分の基準を満たさなければ、通常の間隔に戻ります
Q地震があった場合は次の測定時期まで待ってよいですか?
A待てません。タンクに影響を与えるおそれのある地震が起きたときは、その都度レベル計による測定を行う必要があります。

まとめ

屋外タンク貯蔵所の定期点検は原則として1年に1回行う
液体危険物が1,000キロリットル以上なら特定屋外タンク貯蔵所になる
特定屋外タンク貯蔵所は300分の1未満が3年続けば間隔を延ばせる
それ以外のタンクは150分の1が基準になる
間隔を延ばせるのはレベル計による測定だけで目視点検は毎年必要
近隣工事や地震があれば予定を待たず測定する
判断に迷ったら所轄消防署に記録を持って相談する

記録の見方が分かって助かりました、さっそく3年分の記録を確認します!

㈱防災屋でもご相談を承っております

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第14条の3の2(e-Gov法令検索)
  • 危険物の規制に関する規則第62条の4(e-Gov法令検索)
  • 危険物の規制に関する政令第8条の2の3(e-Gov法令検索)
  • 総務省消防庁「屋外タンク貯蔵所の不等沈下の点検方法に係る運用について」(消防危第28号、平成8年2月13日)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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