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エアゾール式簡易消火具はなぜ検定でなく自主表示の対象になったのか|消火できる4つの火災と使用期限の落とし穴を解説

エアゾール式簡易消火具はなぜ検定でなく自主表示なのかを示すアイキャッチ

ホームセンターやカー用品店の棚には、スプレー缶のような小さな消火具が並んでいます。
これはエアゾール式簡易消火具と呼ばれる器具で、平成25年の消防法施行令改正によって、初めて全国共通の技術基準ができました。
基準ができる前は、対応できる火災の種類も性能も製品ごとにばらばらで、消費者が良し悪しを判断する手立てがありませんでした。
本記事では、この器具がなぜ検定でなく自主表示の対象になったのか、消火できる火災の範囲と使用期限の落とし穴を解説します。

うちのテナントの厨房に、スプレー缶みたいな消火具を置きたいて相談されたんです。
これって消防法上どういう扱いなんですか。

エアゾール式簡易消火具ですね。
消防用の機械器具のうち「自主表示対象」に区分されるものです。

消火器と同じ「検定」の対象じゃないんですか。

違います、自主表示という別の仕組みです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • エアゾール式簡易消火具は消防法施行令第41条により自主表示対象機械器具等に指定されています
  • 平成25年に制定された専用省令が、初めて全国共通の技術基準を定めました
  • 消火できるのは小規模普通火災・天ぷら油火災・ストーブ灯油火災・自動車用クッション火災のうちいずれか1つ以上です
  • 標準使用期間は最長5年で、期限を超えると内部の腐食が進むおそれがあります
  • 自動車に設置する製品は、耐熱性・耐振動性の追加試験に合格したものに限られます

エアゾール式簡易消火具が自主表示対象になった流れと確認すべき表示事項を示す図解

エアゾール式簡易消火具はなぜ検定でなく自主表示の対象になったのか

スプレー缶型の消火具と自主表示のマークが並ぶイラスト
家庭用・車載用のスプレー缶型消火具は、以前から市販されていましたが、全国共通の技術基準はありませんでした。
平成25年の改正で、この器具に初めて専用の区分と規格が設けられました。
「消防法施行令の一部を改正する政令等の公布について」(平成25年3月27日消防予第120号・消防危第46号・消防庁次長) 消防法施行令の一部を改正する政令(平成25年政令第88号)等により、自主表示対象機械器具等に、従来、検定対象機械器具等であった「消防用ホース」「結合金具」「漏電火災警報器」を追加し、新たに「エアゾール式簡易消火具」を追加した。あわせてエアゾール式簡易消火具の技術上の規格を定める省令(平成25年総務省令第26号)を制定した。
消防法施行令第41条第1項 法第二十一条の十六の二の政令で定める消防の用に供する機械器具等は、次に掲げるものとする。五 エアゾール式簡易消火具
基準ができるまでは、良し悪しを判断する物差しがありませんでした。
消火器は事前に国のチェックを受ける「検定」の対象ですが、エアゾール式簡易消火具は購入前の検定ではなく、自主表示という仕組みに位置づけられました。
自主表示とは、製造者や輸入業者が自ら基準への適合を確認し、その旨を製品に表示する仕組みです。
検定より手続きが軽い一方で、規格そのものは初めて全国統一で定められたため、以前より判断材料は増えました。
どんな器具が対象になるのか、次に見ていきます。

自主表示やと基準がゆるいってことですか。

いいえ、規格の中身はかなり細かく決まっています。
まずは対象の定義から確認しましょう。

どんな消火具がエアゾール式簡易消火具に当てはまるのか

一リットル以下の缶とキッチンの消火器を比べるイラスト
規格が対象にするのは、内容積1リットル以下の小さな容器に限られます。
一般的な業務用消火器より、ひとまわり小さい器具だとイメージすると分かりやすいです。
エアゾール式簡易消火具の技術上の規格を定める省令第2条 エアゾール式簡易消火具 水その他消火剤を圧力により放射して消火を行う器具で人が操作するもののうち、内容積一リットル以下のものをいう。同令第3条 エアゾール式簡易消火具の構造は、次の各号に適合するものでなければならない。二 充塡ガス及び消火剤を再充塡できないものであること。三 充塡ガス及び消火剤を充塡する容器は、内容積一リットル以下であること。五 容器の材質は、鋼又は軽金属であること。
使い切りの小型器具であることが前提です。
充填ガスや消火剤の圧力で放射する仕組みは消火器と同じですが、再充填はできません
容器は鋼または軽金属製で、粉末や液体の消火剤(液化二酸化炭素を除く)は容器内容積の90パーセント以下と定められています。
バルブが突き出た形のものは、損傷を防ぐ措置も必要です。
つまり、内容積1リットルを超える大きな器具や、詰め替えて繰り返し使う設計のものは対象になりません。

詰め替えて使うタイプは対象外なんですね。

そのとおりです、使い切りの小型器具だけが対象です。
次は肝心の消火性能を見てみましょう。

規格省令は消火具にどんな消火性能を求めているのか

くずかご、天ぷら鍋、ストーブ、自動車の座席が並ぶイラスト
規格は、想定される火災を4種類に分け、そのうちどれか1つ以上に対応できることを求めています。
すべてに対応する必要はありません。
エアゾール式簡易消火具の技術上の規格を定める省令第4条 エアゾール式簡易消火具は、次の各号に掲げる消火性能のうちいずれか一以上の消火性能を有するものでなければならない。一 小規模普通火災に対する消火性能 二 天ぷら油火災に対する消火性能 (略)自動車用クッション火災及び電気火災に対する消火性能についても、それぞれ試験方法及び試験適合条件を定める。
対応できる火災は製品ごとに違います。
規格が挙げる火災は、くずかごや吸いがらなどの小規模普通火災、天ぷら鍋の油火災、ストーブの灯油火災、自動車内のクッションの火災の4種類です。
天ぷら油火災の試験は、放射中に著しい火炎の拡大や油の飛散が生じないことまで確かめる内容になっています。
電気機具の火災に使う製品は、消火剤が粉末または液化二酸化炭素であるか、感電を防ぐ絶縁性能試験に適合している必要があります。
操作面でも、押しボタンを押す、レバーを握るといった1動作で確実に放射を開始できることが条件です。

厨房に置くなら天ぷら油火災に対応した製品を選ばなあかんのですね。

はい、表示を見て選ぶことが大切です。
次は実務で見落としやすい点を確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

さびて変形した古いエアゾール式簡易消火具とカレンダーのイラスト
見落としやすい点は大きく2つあります。
消火器の代わりにはならないことと、使用期限の管理です。
エアゾール式簡易消火具の技術上の規格を定める省令第2条第1項第4号 標準使用期間 標準的な使用条件の下で使用した場合に安全上支障がなく使用することができる標準的な期間又は期限として設計上設定される期間又は期限(五年を限度とする)をいう。同令第22条第1項第10号 (表示事項として)標準使用期間、使用時及び廃棄時の安全な取扱いに関する事項、温度が四十度以上となる場所に置かない旨、一度放射したものは再使用しない旨、容器にさび、傷、変形等が生じた場合は速やかに交換する旨を記載する。
使い切りサイズの手軽さが、油断につながります。
規格が想定する使用期間は最長5年で、これを超えると内部の腐食が進み、液漏れや破裂につながるおそれがあります。
また、この器具はあくまで小規模な火災を想定した補助的な用具であり、消火器の代替品ではありません。
天ぷら油火災に対応していない製品を油火災に使う、といった用途違いの使用も、規格上の性能保証の範囲外になります。
容器にさびや変形が見られたら、期限内であっても交換するのが基準どおりの扱いです。

うちの倉庫にも古そうなスプレー缶がありました、確認せなあかんですね。

製造年月を見れば期限が分かります。
最後に確認すべきことをまとめます。

明日から何を確認すればよいのか

エアゾール式簡易消火具のラベルを虫眼鏡で確認するイラスト
まずは手元にある製品の表示を確認するところから始めます。
表示には、確認すべき事項がまとまっています。
  • 製造年月と標準使用期間から、交換の時期が来ていないか確認する
  • 使用方法・使用温度範囲・放射時間・放射距離の表示を確認する
  • 対応できる火災の種類(小規模普通火災・天ぷら油火災・ストーブ灯油火災・自動車用クッション火災)を用途と照らし合わせる
  • 容器にさび・傷・変形が無いかを目視で確認する
  • 自動車に設置する場合は、自動車用クッション火災に対応した製品かどうかを確認する
確認は表示を読むだけで始められます。
名称・使用方法・使用温度範囲・放射時間・放射距離・製造年月・製造者及び販売者名・届出番号・充填ガス及び消火剤の名称や容量が、見やすい位置に記載されています。
届出番号があることは、自主表示の手続きを経た製品である目安になります。
消火器のように定期点検の制度は無いため、点検は表示の確認という形で自分たちが担うことになります。
用途に合わない製品を置いていないか、この機会に見直しておきます。

今日にでもテナントの厨房と倉庫の表示を見てきます。

それが一番確実な確認方法です。
よくある質問もあわせてご覧ください。

よくある質問

Qエアゾール式簡易消火具は消火器の代わりになりますか?
Aいいえ。消火器の代替品ではなく、小規模な火災を想定した補助的な初期消火用具です。用途に合った製品を選んだうえで、消火器の設置義務がある場合はそちらも別途必要です。
Qどんな火災にでも使えるのですか?
Aいいえ。規格が定める4種類の火災のうち、その製品が試験に合格した種類にしか対応できません。表示を確認したうえで用途に合ったものを選びます。
Q古いものでも使えますか?
A規格上の標準使用期間は最長5年です。期限を超えたものは内部の腐食が進むおそれがあるため、製造年月を確認して交換します。
Q車に積んでおいてよいですか?
A自動車に設置する製品は、自動車用クッション火災への対応に加え、高温や振動に耐える追加試験に合格したものに限られます。家庭用をそのまま車載しないようにします。

まとめ

エアゾール式簡易消火具は平成25年の消防法施行令改正で自主表示対象に加わりました
対象は内容積1リットル以下で圧力により放射する使い切りの器具です
消火できるのは小規模普通火災・天ぷら油火災・ストーブ灯油火災・自動車用クッション火災のいずれかです
消火器の代わりにはならず、あくまで補助的な初期消火用具です
標準使用期間は最長5年で、経年劣化による液漏れや破裂に注意が必要です
自動車に設置する製品は耐熱性・耐振動性の追加試験に合格したものに限られます
まずは手元の製品の表示を確認することから始めます

まず表示の確認から始めればいいんですね、スッキリしました。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「消防法施行令の一部を改正する政令等の公布について」(平成25年3月27日消防予第120号・消防危第46号・消防庁次長)
  • 消防法施行令第41条第1項第5号(自主表示対象機械器具等の範囲)
  • エアゾール式簡易消火具の技術上の規格を定める省令(平成25年3月27日総務省令第26号)第2条・第3条・第4条・第20条・第21条・第22条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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