二酸化炭素消火設備やハロゲン化物消火設備などのガス系消火設備は、部屋いっぱいにガスを充満させることで火を消す仕組みです。
どれほど優れた設備でも、肝心の部屋に隙間があれば消火剤はそこから漏れ、狙った濃度に届かないまま消えてしまいます。
消防庁は平成10年の通知で、この「防護区画をどう作るか」という部分にまで踏み込んで留意事項を示しました。
本記事では、開口部の自動閉鎖装置と空調設備との連動制御を中心に、防護区画づくりの要点を解説します。
うちの電気室、ガス系の消火設備が入ってるんですけど、ドアが開けっ放しでも大丈夫なんでしょうか。
開口部の塞ぎ方が大きく関わります。
まずは通知の考え方を確認しましょう。
開口部というと、ドアや窓だけの話じゃないんですか。
空調のダクトも含まれます。
順番に見ていきましょう。
- ガス系消火設備の防護区画づくりは平成10年の消防予第116号で留意事項が示されました
- 消火剤の濃度を保つため、常時開いたままの開口部は原則として設けられません
- やむを得ず開口部を残す場合は自動閉鎖装置で消火剤放射前に閉じる必要があります
- シャッターなど大きい開口部は必要最小限の寸法とし速やかに降下できるものを選びます
- 空調や換気の設備はガス系消火設備の作動と連動して制御する必要があります
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目次
ガス系消火設備の防護区画はなぜ気密性が問われるのか

どこかに隙間があれば、その分だけ濃度は上がりきらず、火が消えないまま薬剤だけを使い切ってしまいます。
どれだけ多くの消火剤を放出しても、濃度を維持できなければ火は消えません。
起動方式や薬剤の量を整えても、部屋そのものに隙間が残っていては意味がないため、平成10年の消防予第116号は防護区画の作り方そのものにまで踏み込みました。
ここからは、どんな防護区画が対象になり、通知が何を求めているのかを順に見ていきます。
消火剤の量さえ足りていれば安心だと思っていました。
部屋の隙間も同じくらい大事です。
次は対象になる開口部を見ていきましょう。
どの防護区画の開口部が対象になるのか

ドアや窓だけでなく、換気口やダクトの取り合い部分も含まれます。
自動閉鎖装置が付いているか、漏れる分を上回る量の消火剤を追加放出できる場合を除いて、開けっ放しの開口部は認められません。
法令のうえでも、床面から階高のおよそ三分の二以下という低い位置にある開口部は、消火効果を減らしたり保安上危険になったりするおそれがあるとして、自動閉鎖装置の設置が求められています。
「ドアを閉め忘れなければ大丈夫」ではなく、閉め忘れても自動で閉まる仕組みを備えることが前提になっています。
次は、その自動閉鎖装置に具体的に何が求められるのかを見ていきます。
換気口みたいな小さい開口部にも、いちいち自動閉鎖装置が要るんでしょうか。
位置や面積の合計によっては省ける場合もあります。
次で詳しく見ていきましょう。
通知は防護区画の形成に何を求めているのか

通知は、開口部の大きさや種類に応じた具体的な留意点も示しています。
人の出入りや換気に必要な最小限の大きさにとどめ、シャッターのように大きくできる開口部ほど、寸法を必要以上に広げないことが大切です。
自動閉鎖装置が付いていても、速やかに降下できるものを選ばなければ、消火剤の放出に閉鎖が間に合わないおそれがあります。
どうしても自動閉鎖装置を設けない開口部を残す場合は、面積の合計を囲壁面積の一パーセント以下などに抑えることが法令で定められています。
次は、実務でとくに見落とされやすい空調設備との関係を確認します。
うちのシャッター、開口部が広い分だけ降りるのに時間がかかりそうです。
降下速度は点検で確かめられます。
次は見落としやすい落とし穴を見ていきましょう。
防護区画づくりで見落としやすいのはどこか

天井の高い区画と、空調・換気設備との関係です。
立体駐車場のように天井の高い防護区画で、空気より重いガス系消火剤を使う場合、上部にガラリなどの開口部があると外気が流れ込み、下にたまるはずの消火剤が薄まってしまいます。
また、防護区画に空調設備や換気設備、火気を使う設備がある場合、これらをガス系消火設備の作動と連動させて止める仕組みが必要です。
ガスタービンのように急に止めるのが難しい設備は、給排気だけ専用のダクトで区画外へ逃がす、急停止しても壊れない構造にするなど、個別の配慮が欠かせません。
最後に、これらを踏まえて明日から確認しておきたいことをまとめます。
空調が消火設備と連動しているかなんて、意識したことがありませんでした。
連動制御の有無は点検記録で確認できます。
最後に確認事項をまとめます。
明日から何を確認すればよいのか

順番に照らし合わせてみてください。
- 防護区画のドアや窓、換気口に自動閉鎖装置が付いているか、点検記録で確認する
- シャッターなど大きい開口部があれば、必要以上に寸法が大きくなっていないか、速やかに降下するかを確認する
- 天井の高い区画(立体駐車場等)の上部に、ガラリなど外気が流入する開口部が無いかを確認する
- 空調設備・換気設備・火気使用設備がガス系消火設備の作動と連動して停止することを点検で確かめる
- 急停止が難しい設備(ガスタービン等)があれば、専用ダクトなどの対策が講じられているかを設備業者に確認する
ドアや窓だけでなく、換気口やダクトの取り合い部分まで含めて、自動閉鎖装置の有無を点検記録と照らし合わせます。
空調や換気の設備がある区画では、連動制御が実際に作動するかを設備業者や消防設備士に確認しておくと安心です。
立体駐車場のような天井の高い区画は、上部の開口部の有無を見落としやすいので、あらためて図面から確認することをおすすめします。
防護区画の作りが実情に合っているかどうかは、所轄消防署への相談でも確かめられます。
うちも今日、電気室の開口部と空調の連動を点検記録で確認してみます。
それが一番確実な確認です。
よくある質問もあわせてご覧ください。
よくある質問
まとめ
開口部ひとつでも、こんなに細かく決まっているんですね。
濃度を保つための仕組みです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防庁「ガス系消火設備等の設置及び維持に係る留意事項について」(消防予第116号・平成10年7月17日・消防庁予防課長)
- 消防法施行令第13条第1項(不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備の設置対象)
- 消防法施行規則第19条第5項第4号イ(ロ)・(ハ)(開口部の自動閉鎖装置と面積上限の基準)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





