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不活性ガス消火設備の容器弁はなぜ5つの試験に合格しなければならないのか|耐圧試験の圧力差と表示7項目を解説

容器弁がなぜ5つもの試験に合格しなければならないのかを示すアイキャッチ

不活性ガス消火設備や粉末消火設備の貯蔵容器には、必ず容器弁という部品が取り付けられています。
容器の中には高圧のガスが閉じ込められているため、容器弁が壊れれば重大な事故につながりかねません。
そこで消防庁の告示は、容器弁の構造や材質から試験、表示に至るまで細かな基準を定めています。
今回は容器弁になぜここまで細かい基準があるのか、5つの試験と表示の中身から解説します。

容器弁ってただのだと思っていました。

いえ、高圧のガスを閉じ込める重要な部品なんですよ。

それなら壊れたときの被害も大きそうですね。

はい、だから専用の基準があります。
まずはなぜ厳しい基準があるのかから見ていきましょう。

この記事の結論
  • 容器弁は高圧のガスを扱うため専用の技術基準が定められています
  • 弁箱の材質はJIS等の基準に適合するものでなければなりません
  • 容器弁は耐圧試験や気密試験など5つの試験に合格しなければなりません
  • 高圧式貯蔵容器等の耐圧試験圧力は24.5メガパスカルと固定で定められています
  • 容器弁には製造年月など7項目の表示が義務付けられています

容器弁の基準が高圧ガスを閉じ込めることから材質構造試験表示の確認へ進むことを示した図解

不活性ガス消火設備の容器弁はなぜこれほど細かい基準があるのか

単独で立つガス貯蔵容器と壁に取り付けられた圧力計のイメージ
不活性ガス消火設備や粉末消火設備の貯蔵容器には、放出のたびに開閉する容器弁が付いています。
容器の中には常時高い圧力のガスが閉じ込められているため、容器弁の不具合はそのまま重大な事故につながります。
消防法施行規則第十九条第五項第六号の二、第八号、第九号ニ、第十二号及び第十三号ハ、第二十条第四項第四号イ、第六号の二、第八号及び第十一号並びに第二十一条第四項第三号ロ及びハ、第五号の二並びに第十二号に規定する不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備及び粉末消火設備の容器弁、安全装置及び破壊板の基準を定めるものとする。(不活性ガス消火設備等の容器弁、安全装置及び破壊板の基準 第一)
容器弁は高圧のガスを閉じ込める部品なので専用の告示で基準が定められています。
不活性ガス消火設備だけでなく、ハロゲン化物消火設備や粉末消火設備の貯蔵容器・加圧用ガス容器の弁も同じ告示の対象です。
容器弁の基準は構造・材質から試験、表示まで一つの告示に一括して定められています。
点検で容器弁を確認するときは、この告示がどんな観点で作られているのかを知っておくと理解が早くなります。

粉末消火設備の弁も同じ告示で決まっているんですね。

はい、高圧ガスを扱う点が共通しています。
次は容器弁そのものの構造の基準を見てみましょう。

容器弁の構造と材質はどんな基準を満たさなければならないのか

作業台に置かれた滑らかな弁箱と材質サンプルのイメージ
容器弁の本体は弁箱と呼ばれています。
弁箱の表面と材質には、それぞれ守らなければならない基準があります。
(一) 弁箱の外表面は、なめらかで、使用上支障のある腐食、割れ、きず又はしわがないものであること。(不活性ガス消火設備等の容器弁、安全装置及び破壊板の基準 第三、一、(一))
弁箱の外表面はなめらかで使用上支障のある腐食や割れきずしわがあってはなりません。
材質についても、日本産業規格(JIS)に定める規格に適合するもの、またはこれと同一・類似の成分や機械的性質を持つものでなければならないと定められています。
弁箱はさらに常時閉止状態にあって、電気式やガス圧式の開放装置または手動により容易に開放できる構造であることも求められます。
点検で弁箱を確認するときは、まず表面に腐食やきずがないかを目で確かめることが第一歩になります。

表面がなめらかというのも、ちゃんと基準になっているんですね。

はい、見た目の状態も基準の一部です。
次は容器弁が受ける試験の中身を見てみましょう。

容器弁はどんな試験に合格しなければならないのか

水圧試験装置に接続された容器弁と大きな圧力計のイメージ
弁箱の構造や材質の基準を満たすだけでは足りません。
容器弁は出荷前に、いくつもの試験に合格しなければならないと定められています。
容器弁の弁箱は、当該容器弁を設ける容器等の種別に応じ、次の(一)及び(二)に定める圧力値の水圧力を二分間加えた場合、漏れ又は変形を生じないものでなければならない。(不活性ガス消火設備等の容器弁、安全装置及び破壊板の基準 第三、二)
試験の名称試験の中身
耐圧試験定められた圧力の水圧力を2分間加え漏れや変形が無いこと
気密試験最高使用圧力相当の窒素ガス圧力等を5分間加え漏れが無いこと
衝撃試験容器等に取り付け任意の方向に3回転倒させても気密試験に合格すること
振動試験常用圧力相当の圧力で振動を与えても漏れが無く気密試験に合格すること
温度試験零下二十度から四十度までの間で漏れず確実に開閉できること
容器弁は耐圧気密衝撃振動温度という5つの試験に合格しなければなりません。
耐圧試験は水圧力を用いるのに対し、気密試験や振動試験は窒素ガス圧力又は空気圧力を用いる点が異なります。
衝撃試験は転倒させたあとにもう一度気密試験の基準を満たす必要があり、単発の耐久ではなく組み合わせで確認する設計になっています。
これらの試験はいずれも製造段階で行われるもので、現場の点検で再現するものではありませんが、容器弁がどれだけの負荷を想定して作られているかを知る手がかりになります。

転倒させてから気密を確かめる試験まであるんですね。

はい、輸送中の衝撃まで想定しています。
次は耐圧試験の圧力の決まり方を見てみましょう。

容器弁の耐圧試験の圧力はなぜ設備の種類で変わるのか

大きさの異なる2本の貯蔵容器にそれぞれ異なる圧力計が付いているイメージ
耐圧試験の圧力は、すべての容器弁で同じ数値が使われるわけではありません。
設備の種類や使う消火剤によって、基準となる圧力の決め方が分かれています。
不活性ガス消火設備の高圧式貯蔵容器(消火剤として使用される二酸化炭素を常温で貯蔵する容器をいう。以下同じ。)若しくは起動用ガス容器、HFC―二三を放射するハロゲン化物消火設備の貯蔵容器等又は粉末消火設備の加圧用ガス容器(加圧用ガスに二酸化炭素を用いるものに限る。)にあっては、二十四・五メガパスカル(不活性ガス消火設備等の容器弁、安全装置及び破壊板の基準 第三、二、(一))
高圧式貯蔵容器等の耐圧試験の圧力は24.5メガパスカルと固定で定められています。
一方でそれ以外の容器等では、容器等ごとの耐圧試験圧力値という個別の数値が基準になり、一律の値は使いません。
同じ「容器弁の耐圧試験」という言葉でも、扱う容器の種類が変わればあてはめる圧力の考え方そのものが変わるということです。
点検記録に耐圧試験の圧力値が出てきたら、まずその容器弁がどの設備・どの容器に使われているものかを確認することが欠かせません。

圧力の数字だけ見ても、意味が違うことがあるんですね。

はい、容器の種類とあわせて見る必要があります。
最後に容器弁の表示を見てみましょう。

容器弁にはどんな表示が義務付けられているのか

弁箱の側面に小さな銘板が取り付けられたクローズアップのイメージ
構造や試験の基準を満たしていても、それを外から確認できなければ点検の役に立ちません。
そこで容器弁には、弁箱の見やすい箇所に表示すべき事項が定められています。
容器弁には、次に掲げる事項をその弁箱((二)については、弁箱並びに作動封板、安全装置の封板及び安全装置用ナット)の見やすい箇所に容易に消えないように表示するものとする。(一)製造年月(二)製造者又は商標(三)型式番号(四)質量(五)耐圧試験圧力値(六)充てんガスの種別(七)再検査年月(不活性ガス消火設備等の容器弁、安全装置及び破壊板の基準 第六、一)
容器弁には製造年月から再検査年月まで7項目の表示が義務付けられています。
製造年月・製造者又は商標・型式番号・質量・耐圧試験圧力値・充てんガスの種別・再検査年月の7つで、いずれも弁箱の見やすい箇所に消えないように表示されています。
このうち再検査年月と耐圧試験圧力値は、点検のたびに容器弁が基準を満たしているかを確認するための手がかりになります。
点検の際は、まずこの7項目の表示が弁箱にそろっているか、文字が消えかけていないかを確認することから始めるとよいでしょう。

再検査年月まで表示されているとは知りませんでした。

はい、弁箱の表示を見れば分かります。
最後によくある質問を見てみましょう。

よくある質問

Q容器弁の耐圧試験はすべての設備で同じ圧力を使いますか?
Aいいえ。不活性ガス消火設備の高圧式貯蔵容器等では24.5メガパスカルと固定で定められていますが、それ以外の容器等では容器等ごとの耐圧試験圧力値を使います。
Q容器弁の衝撃試験や振動試験は現場の点検でも行うものですか?
Aいいえ。これらは製造段階で行われる試験で、現場の点検で再現するものではありません。点検では表示や外観の状態を確認します。
Q容器弁の材質はどんな基準を満たす必要がありますか?
AJISに定める規格に適合するもの、またはこれと同一・類似の成分や機械的性質を持つもの、もしくは同等以上の強度・耐食性を持つものでなければなりません。
Q容器弁の表示のうち点検で特に確認すべき項目はどれですか?
A特に再検査年月と耐圧試験圧力値です。7項目のうちこの2つは、容器弁が基準を満たしているかを継続して確認するための手がかりになります。

まとめ

容器弁は高圧のガスを閉じ込める部品のため専用の技術基準が定められている
弁箱の外表面はなめらかで使用上支障のある腐食や割れきずしわがあってはならない
容器弁は耐圧気密衝撃振動温度という5つの試験に合格しなければならない
衝撃試験は容器等を3回転倒させたあとに気密試験の基準を満たす必要がある
高圧式貯蔵容器等の耐圧試験の圧力は24.5メガパスカルと固定で定められている
それ以外の容器等では容器等ごとの耐圧試験圧力値を用いる
容器弁には製造年月から再検査年月まで7項目の表示が義務付けられている

容器弁がここまで細かく決められているとは驚きました!
今度は表示の7項目を確認してみます。

5つの試験と7項目の表示を覚えておけば十分です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第19条第5項、第20条第4項、第21条第4項
  • 不活性ガス消火設備等の容器弁、安全装置及び破壊板の基準(昭和51年8月26日消防庁告示第9号)第一、第二、第三、第六

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。運用は所轄消防署ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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