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自家発電設備の保安装置はなぜ原動機によって種類が変わるのか|作動試験が確かめる設定値どおりの動きを解説

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自家発電設備の試験結果報告書を見て、見慣れない数値がずらりと並んでいて戸惑った経験はありませんか。
消防法施行規則第十二条第一項第四号ロは、屋内消火栓設備等の非常電源になる自家発電設備について「常用電源が停電したときに自動的に切り替わること」などの技術上の基準を定めています。
この基準を実際に確かめるのが、工事完了後に行う保安装置作動試験と切替試験です。
この記事では、原動機の種類によって保安装置がどう変わり、試験の合否がなにを基準に判定されるのかを解説します。

自家発電設備の試験結果報告書に、回転数や温度の実測値がたくさん書いてありました。
これは全部基準値と比べるものなんでしょうか。

実はほとんどの数値は、法令が定めた共通の基準値ではありません。
その機械固有の設定値どおりに動いたかを見ているんです。

設定値どおりというのが、どういう意味かよく分かっていませんでした。

唯一「四十秒以内」という共通の数値基準を持つ試験もあります。
今日は条文と試験基準を順番に確認しましょう。

この記事の結論
  • 自家発電設備は消防法施行規則第十二条第一項第四号ロにより、常用電源停電時に自動的に非常電源へ切り替えられるものでなければなりません
  • 備える保安装置は原動機の種類(水冷式・ガスタービン・電気始動式・空気始動式)によって組み合わせが変わり、すべての機械が同じ装置一式を持つわけではありません
  • 保安装置作動試験の合否はその機械固有の設定値どおりに動作したかで判定され、回転数や温度の実測値自体に法令共通の合格ラインがあるわけではありません
  • 始動試験・切替試験だけは「四十秒以内」という数値そのものの上限が定められており、保安装置作動試験とは判定の性格が異なります
  • 試験結果報告書を確認するときは、原動機の種類に対応する保安装置の試験結果が漏れなく揃っているかを見ることが実務の第一歩です

自家発電設備の保安装置が原動機の種類によって変わり作動試験は設定値どおりの動作を確かめる仕組みを示した図解

自家発電設備の保安装置とはなにを守るためにあるのか

自家発電設備の発電機と原動機に保護装置を収めた操作盤が付属しているイメージ
自家発電設備は、火災で常用電源が止まっても消防用設備等を動かし続けるための非常電源です。
だからこそ、機械そのものにも異常を見張る仕組みが求められています。
消防法施行規則第十二条第一項第四号ロ 自家発電設備は、イ((ホ)及び(ト)を除く。)の規定の例によるほか、次の(イ)から(ニ)までに定めるところによること。 (ロ)常用電源が停電したときは、自動的に常用電源から非常電源に切り替えられるものであること。 (ハ)キュービクル式以外の自家発電設備にあつては、次の(1)から(3)までに定めるところによること。(略)(3)運転制御装置、保護装置、励磁装置その他これらに類する装置を収納する操作盤(自家発電装置に組み込まれたものを除く。)は、鋼板製の箱に収納するとともに、当該箱の前面に一メートル以上の幅の空地を有すること。
自家発電設備には、自動切替の機能だけでなく保護装置を収めた操作盤の設置まで条文で義務づけられています。
条文が触れている保護装置とは、過電流や過回転など機械に異常が起きたときに自動で止めたり警報を出したりする装置のことです。
消防庁長官が定める基準(自家発電設備の基準)はこの保護装置の構造・性能をさらに具体的に定めており、工事完了後の試験ではこの基準どおりに動くかを確かめます。
つまり保安装置は、非常電源としての性能を守るための「もう一段の安全装置」という位置づけです。
次の章では、この保安装置が実際にどんな種類に分かれているのかを確認します。

操作盤の中に保護装置が入っているというのは知りませんでした。
具体的にはどんな装置があるんでしょうか。

実は原動機の種類によって装置の組み合わせが変わります。
次の章で見てみましょう。

原動機の種類によって保安装置はどう変わるのか

水冷式エンジンとガスタービンの自家発電装置を並べて保安装置の違いを示すイメージ
自家発電設備の原動機には、水冷式のディーゼルエンジンやガスタービン、始動方式に電気式・空気式があります。
消防庁長官が定める試験基準は、この原動機の違いに応じて保安装置を書き分けています。
非常電源(自家発電設備)試験基準 イ 機能試験 保護装置作動試験 過電流遮断器(すべての自家発電設備)/過回転停止装置(すべての自家発電設備)/断水又は水温上昇停止装置(水冷式機関のみ)/ガス温度上昇停止装置(ガスタービンのみ)/減液警報装置(電気始動式で必要とする場合のみ)/始動空気圧低下警報装置(空気始動式のみ)/始動空気圧自動充気装置(空気始動式のみ)/手動停止装置(すべての自家発電設備)
過電流遮断器・過回転停止装置・手動停止装置はすべての自家発電設備に共通ですが、残りは原動機の種類ごとに要否が変わります。
水を使って冷やす水冷式機関には断水又は水温上昇停止装置が、ガスタービンにはガス温度上昇停止装置が付きます。
電気の力で始動する機械には減液警報装置、圧縮空気で始動する機械には始動空気圧低下警報装置と始動空気圧自動充気装置が加わります。
つまり試験結果報告書に並ぶ装置の数は機械によって違って当然で、装置が少ないからといって手抜きの試験とは限りません。
自分の建物の自家発電設備がどの原動機に当たるかを知ることが、報告書を正しく読む第一歩です。

うちの発電機は水冷式なので、断水又は水温上昇停止装置の欄があるのが正しいということですね。

そのとおりです。
ガス温度上昇停止装置の欄が空欄でも水冷式なら問題ありません

保安装置作動試験はなにをもって合格とするのか

発電機の操作盤に測定器をつないで保安装置作動試験を行うイメージ
装置の種類が分かったところで、試験そのものがなにを確認しているのかを見ていきます。
合否の判定基準の言葉づかいに注目します。
非常電源(自家発電設備)試験基準 過電流遮断器・過回転停止装置・断水又は水温上昇停止装置(水冷式機関のみ)・ガス温度上昇停止装置(ガスタービンのみ) 模擬試験装置又は回路により機能を確認する。正常に作動し、遮断器開放表示、警報及び機械自動停止(過電流を除く。)の動作が設定値どおり正常に行われること。 減液警報装置(電気始動式で必要とする場合のみ) 正常に動作し、設定値において警報が行われること。
保安装置作動試験の合否は「設定値どおりに動いたか」で決まり、回転数や温度そのものの絶対値に法令共通のラインがあるわけではありません。
過回転停止装置であれば、その機械にあらかじめ設定された回転数(たとえば毎分千九百五十回転)で確実に止まれば合格です。
別の機械の設定値が毎分二千回転であっても、それぞれが自分の設定値どおりに動作していれば、どちらも同じように合格になります。
つまり試験結果報告書の実測値は、他の建物の数値と比べて優劣を判断するものではありません。
この「設定値どおりかどうか」という判定の性格を踏まえて、次の章では例外にあたる試験を確認します。

では試験の数値には、法令が定めた合格ラインはまったく無いということでしょうか。

一つだけ例外があります。
始動試験と切替試験だけは数値そのものに上限があります。

試験結果報告書の実測値はなにと比べて読めばよいのか

試験結果報告書の数値欄と四十秒以内を示す時計を並べたイメージ
保安装置作動試験は機械ごとの設定値どおりかを見る試験でした。
これに対して、常用電源からの切替えにかかわる試験だけは違う性格を持っています。
非常電源(自家発電設備)試験基準 切替試験 始動試験 常用電源を切替装置の一次側で遮断するか又は同等な動作をする回路により試験する。a 正常に動作し四十秒以内に電圧が確立すること。b 運転中において異常音又は異常振動がないこと。 切替試験 a 四十秒以内に電源切替装置が切り替わるか又は切替信号が送出されること。b 運転中において、異常音又は異常振動がないこと。
始動試験・切替試験だけは「四十秒以内」という共通の数値そのものが合否の基準です。
保安装置作動試験の実測値(回転数や温度)はその機械固有の設定値と一致していれば足りますが、四十秒以内という数値は機械の種類にかかわらず共通のラインです。
実務では、電圧確立や切替えにかかった秒数が四十秒より大きく短くても、それ自体は問題ではありません。
逆に取り違えやすいのは、保安装置の実測値(たとえば回転数や温度)を四十秒のような固定の合格ラインと同じ発想で「基準値と比べて余裕があるか」と読んでしまうことです。
実測値の性格が試験項目ごとに違うと分かっていれば、報告書のどの欄を根拠に合否が決まっているのかを取り違えずに済みます。

数字が並んでいると、つい全部同じ物差しで比べたくなってしまいます。

四十秒以内だけが共通の物差しです。
他は機械ごとの設定値と照らし合わせます。

試験結果報告書を確認するとき明日から何を見ればよいか

自家発電設備の試験結果報告書とチェックリストを照らし合わせるイメージ
保安装置の種類と判定の性格が分かったところで、実務での確認手順をまとめます。
報告書を受け取ったときの見るべき順番です。 今日から確認すべきことは、自分の建物の原動機の種類と、それに対応する保安装置の欄が揃っているかです。
まず自家発電設備が水冷式・ガスタービン・電気始動式・空気始動式のどれに当たるかを確認します。
そのうえで、対応する保安装置(断水又は水温上昇停止装置、ガス温度上昇停止装置、減液警報装置、始動空気圧低下警報装置・自動充気装置のいずれか)の試験結果が記入漏れなく揃っているかを見ます。
保安装置の実測値は基準値と比べるのではなく、設計値・設定値の欄と一致しているかを確認し、始動試験・切替試験だけは四十秒以内かどうかを見ます。
不明な点は施工業者や消防設備士に確認するのが確実です。
  • 自家発電設備の原動機の種類(水冷式・ガスタービン・電気始動式・空気始動式)を確認する
  • 原動機の種類に対応する保安装置の試験結果が漏れなく記入されているか確認する
  • 保安装置の実測値は基準値ではなく設計値・設定値の欄と一致しているかを確認する
  • 始動試験・切替試験は四十秒以内で電圧確立・切替えができているかを確認する

原動機の種類を先に確認すれば、報告書の欄が正しいかどうか自分でも見当がつきそうです。

原動機の種類の確認が第一歩です。
迷ったらいつでもご相談ください。

よくある質問

Q保安装置作動試験の実測値に法令が定めた合格ラインはありませんか?
Aはい。回転数や温度などの実測値そのものに法令共通のラインはなく、その機械にあらかじめ設定された値どおりに動作したかで合否が決まります。例外は始動試験・切替試験の四十秒以内という基準だけです。
Q電気始動式なのに減液警報装置の試験結果が無いのは問題ですか?
A減液警報装置は電気始動式で必要とする場合のみの装置です。液面の管理方法によっては必要とされないこともあるため、無いこと自体が直ちに問題とは限りません。施工業者に確認しましょう。
Q始動試験の電圧確立時間は短ければ短いほどよいのですか?
A基準は四十秒以内という上限であり、短いこと自体を競うものではありません。あわせて運転中に異常音や異常振動が無いことも合否の条件に含まれています。
Qキュービクル式なら保安装置作動試験は省略できますか?
A自家発電設備の基準(消防庁長官が定める基準)に適合し、指定認定機関の認定表示が貼付されているものは一部の試験を省略できます。表示の有無は設備の銘板で確認できます。

まとめ

自家発電設備は消防法施行規則第十二条第一項第四号ロにより自動切替と保護装置を収めた操作盤が求められます
保安装置は原動機の種類(水冷式・ガスタービン・電気始動式・空気始動式)によって組み合わせが変わります
過電流遮断器・過回転停止装置・手動停止装置はすべての機械に共通の装置です
保安装置作動試験の合否は機械固有の設定値どおりに動いたかで決まります
始動試験・切替試験だけは四十秒以内という共通の数値基準があります
報告書を見るときは原動機の種類に対応する試験結果が揃っているかをまず確認しましょう
不明な点は施工業者や消防設備士に相談しましょう

試験結果報告書の数字の意味がよく分かりました!
次は原動機の種類から確認してみます。

原動機の種類の見落としは点検のやり直しにつながります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第十二条第一項第四号
  • 自家発電設備の基準(昭和四十八年消防庁告示第一号)
  • 非常電源(自家発電設備)試験基準(消防庁通知、別記様式第二十六附属)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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