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燃料電池設備はなぜ電力を常時供給していても非常電源になれるのか|自動切替の条件とガス漏れ検知器の設置基準を解説

燃料電池設備が常時供給していても自動切替で非常電源になる仕組みを示す写真

燃料電池設備には、火災のときだけ動く非常用タイプと、ふだんから電力を供給し続けるタイプの2種類があります。
後者は、常時供給用の燃料が断たれたときに、非常電源用の燃料へ自動的に切り替わる仕組みを備えていなければなりません。
外箱の中では燃料電池や改質器が発熱するため、収納位置や断熱処理、ガス漏れ検知器の設置まで細かく定められています。
今回は燃料電池設備の常時供給型に課される自動切替の要件・外箱内部の安全対策・冷却水タンクと手動停止装置の保有義務を解説します。

燃料電池設備というと、火災のときだけ動く非常用のバックアップ電源だと思っていました。

実は電力を常時供給するタイプもあり、こちらには追加の要件が課されるんですよ。

常時供給していたら、火災で燃料が止まったときに困りませんか。

自動切替の仕組みが備わっています。
まずは2つのタイプの違いから見ていきましょう。

この記事の結論
  • 燃料電池設備には「非常用のみ」と「電力を常時供給する」の2タイプがあります
  • 常時供給型は燃料の供給が断たれたとき自動的に非常電源用の燃料へ切り替わる構造が必要です
  • 外箱の内部は燃料電池・改質器を底面から十センチメートル以上の位置に収納するなどの防水措置が要ります
  • 機器・配線は熱の影響を受けないよう断熱処理しガス漏れ検知器及び警報装置を設けます
  • 定格負荷の連続運転可能時間分の冷却水タンクと、手動で止められる手動停止装置の両方を備えます

燃料電池設備の常時供給型に課される自動切替とガス漏れ検知の仕組みを示す図解

燃料電池設備にはなぜ2つのタイプがあるのか

キュービクル式の燃料電池設備から建物へ電力が送られる様子を示す図
燃料電池設備は、非常電源としての動きかたによって2つのタイプに分かれます。
どちらのタイプかによって、備えるべき構造・性能の基準も変わってきます。
燃料電池設備の構造及び性能は、次に定めるところによる。(略)二 電力を常時供給する燃料電池設備の構造及び性能は、前号の規定によるほか、電力を常時供給するための燃料の供給が断たれたときに、自動的に非常電源用の燃料が供給されるものであること。(燃料電池設備の基準=平成18年消防庁告示第8号 第二 構造及び性能 一柱書・二)
燃料電池設備は「非常用のみ」のタイプと「電力を常時供給する」タイプの2つに分かれます。
前者は火災などで常用電源が停電したときだけ動く、他の非常電源と同じ位置づけの設備です。
後者はふだんから電力を供給し続けるタイプで、いわゆるコージェネレーションの仕組みに近いものです。
このタイプは、非常用のタイプが満たすべき基準に加えて、燃料の供給が断たれたときの備えという追加の要件が課されます。
つまり常時供給していても、いざというときは非常電源としてきちんと機能する仕組みが求められているということです。

うちの建物に置くなら、どちらのタイプか最初に確認したほうがよさそうですね。

そのとおりです。
次は自動切替の具体的な仕組みを見てみましょう。

常時供給型はなぜ燃料が断たれても自動で切り替わるのか

ガス供給管と予備の燃料タンクがバルブを介して燃料電池設備につながる図
常時供給型は、日常使う燃料と非常用の燃料が別々に用意されているわけではありません。
供給が止まったときにどう動くかが、基準の中心になっています。
電力を常時供給する燃料電池設備の構造及び性能は、前号の規定によるほか、電力を常時供給するための燃料の供給が断たれたときに、自動的に非常電源用の燃料が供給されるものであること。ただし、前号(七)ロに定める方法により燃料が安定して供給されるものにあっては、この限りでない。(燃料電池設備の基準=平成18年消防庁告示第8号 第二 構造及び性能 二)
常時供給用の燃料が断たれたときは、自動的に非常電源用の燃料へ切り替わることが求められます。
ふだん使っている燃料と、非常時のために確保している燃料は別系統として備えられているということです。
ただしガス事業者から供給されるガスを燃料とし、地震動後も安定して供給される方式のものは、この自動切替が無くてもよいという例外があります。
これは、そもそも供給が安定していて途切れる心配が少ないタイプには、別系統への切替えを求める必要が薄いためと考えられます。
自分の建物の燃料電池設備がどちらの方式かは、設置業者に確認しておくと安心です。

例外があるタイプとないタイプがあるんですね。

供給の安定性によって求められる備えが変わるんです。
次は外箱の中の安全対策を見てみましょう。

外箱の中はどうやって安全に保たれているのか

外箱の内部で燃料電池が底面から離れた台の上に収納されガス漏れ検知器が設置された図
燃料電池や改質器は運転中に熱を発するため、外箱の内部にも安全対策が求められます。
特に水と熱、そしてガス漏れへの備えが中心になっています。
外箱の内部の構造は、次に定めるところによること。イ 燃料電池、改質器及び制御装置等は、外箱の底面から十センチメートル以上の位置に収納されているか、又はこれと同等以上の防水措置が講じられたものであること。ロ 機器及び配線類は、燃料電池及び改質器等から発生する熱の影響を受けないように断熱処理され、かつ、堅固に固定されていること。ハ ガス漏れ検知器及び警報装置が設けられていること。(燃料電池設備の基準=平成18年消防庁告示第8号 第二 構造及び性能 一(十))
外箱の内部では、水・熱・ガス漏れという3つの危険にそれぞれ対策が講じられています。
燃料電池や改質器は底面から十センチメートル以上の位置に収納するか、同等以上の防水措置を講じることが必要です。
機器や配線は発生する熱の影響を受けないよう断熱処理を施し、しっかりと固定することも求められます。
そして万一ガスが漏れた場合に備えて、ガス漏れ検知器及び警報装置の設置も基準に含まれています。
外箱を開けて中を見る機会は少ないですが、こうした対策があるからこそ屋内や建物のすぐそばに設置できるということです。

水・熱・ガス漏れの3つを別々に対策しているとは知りませんでした。

どれも見えない部分だからこそ基準が細かいんです。
次は冷却水の備えを見てみましょう。

冷却水が足りなくなったら燃料電池設備はどうなるのか

冷却水タンクが配管で燃料電池設備につながっている図
燃料電池は発電の過程で熱を発生し続けるため、冷やし続ける仕組みが欠かせません。
その冷却の水源についても、あらかじめ基準が定められています。
定格負荷における連続運転可能時間以上出力するために必要な量の冷却水を保有する冷却水タンク又はこれと同等以上の性能を有する冷却塔、熱交換器その他これらに類するものを設けること。(燃料電池設備の基準=平成18年消防庁告示第8号 第二 構造及び性能 一(十二))
冷却水は、定格負荷で連続運転できる時間ぶんの量をあらかじめタンクに保有しておく必要があります。
途中で水道の給水が途切れても、運転可能時間の間は冷却が続けられる量を確保しておくということです。
冷却塔熱交換器など、タンクと同等以上の性能を持つ設備で代えることも認められています。
非常電源として動いている間に冷却が追いつかず自動停止してしまっては本末転倒なので、燃料と同じくらい冷却水の管理も重要だということです。

燃料だけでなく、冷却水まで気にしないといけないんですね。

そのとおりです。
最後に、人の手で止める仕組みと実務のチェックを見てみましょう。

自動で切り替わるだけでなく人の手で止める備えはあるのか

制御装置の赤い手動停止ボタンとチェックリストを示す図
ここまで見てきた自動切替や自動停止の仕組みは、いずれも制御装置による自動の対応です。
しかし、非常時には人の手で止められる備えも欠かせません。
制御装置には、手動により燃料電池設備を停止させる装置が設けられていること。発電出力を監視できる電圧計及び電流計を設けること。定格負荷における連続運転可能時間以上出力できるものであること。(燃料電池設備の基準=平成18年消防庁告示第8号 第二 構造及び性能 一(十四)・(四)・(五))
制御装置には、手動で燃料電池設備を止められる手動停止装置の設置が義務づけられています。
自動切替や自動停止だけに頼らず、異常を感じたときに人の判断で止められる手段が確保されているということです。
発電出力は電圧計及び電流計で常時監視できるようになっており、現場でも数値の異常に気づける仕組みです。
実務では、点検の際に手動停止装置の位置と、電圧計・電流計の表示が正常な範囲かをあわせて確認しておくとよいでしょう。
定格負荷における連続運転可能時間以上出力できるかどうかも、設置業者による定期的な確認が欠かせません。

手動停止装置の場所は、あらかじめ確認しておいたほうがよさそうですね。

そのとおりです。
これで燃料電池設備の自動と手動、両方の備えがつながりましたね。

よくある質問

Q電力を常時供給する燃料電池設備は必ず自動切替が必要ですか?
Aいいえ、必ずではありません。ガス事業者から供給されるガスを燃料とし、地震動後も安定して供給される方式のものは、この自動切替が無くてもよいという例外があります。
Q外箱の底面から十センチメートル以上離すのはなぜですか?
A水が浸入した場合でも燃料電池や改質器が浸水しないようにするためです。同等以上の防水措置が講じられていれば、この高さによらなくてもかまいません。
Q冷却水タンクの代わりに冷却塔を使ってもよいですか?
A使えます。冷却水タンクと同等以上の性能を有する冷却塔、熱交換器その他これらに類するものであれば認められています。
Q手動停止装置はどこに設けられていますか?
A基準では制御装置に設けることとされています。具体的な位置は設備ごとに異なるため、設置業者に確認しておくと安心です。

まとめ

燃料電池設備には「非常用のみ」と「電力を常時供給する」の2タイプがある
常時供給型は燃料が断たれたとき自動的に非常電源用の燃料に切り替わる
ガス事業者供給で地震動後も安定するものは自動切替が無くてもよい例外がある
外箱内部は底面から十センチメートル以上の収納・断熱処理・ガス漏れ検知器を備える
冷却水は連続運転可能時間以上出力できる量をタンク等に保有する
制御装置には手動停止装置と電圧計・電流計が設けられている
点検では手動停止装置の位置と電圧計・電流計の表示をあわせて確認する

常時供給していても自動と手動の両方で備えているとは知りませんでした!

点検や手動停止装置の確認までお手伝いできます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第12条第1項第4号ニ(燃料電池設備の設置基準)
  • 燃料電池設備の基準(平成18年消防庁告示第8号)第二 構造及び性能

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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