非常用発電設備は、停電したときに消防用設備等や避難のための設備へ電気を送り続けるための重要な装置です。
実はこの発電設備が満たすべき基準は、消防法だけでなく建築基準法にもまたがって定められています。
機種を選ぶときにどちらか一方の基準だけを見ていると、必要な性能を見落としてしまうことがあります。
今回は非常用発電設備にかかる消防法と建築基準法それぞれの基準の違いを解説します。
停電のときに動く非常用発電機ですが、消防法の基準さえ満たしていれば十分なのでしょうか。
実は建築基準法にも別の基準があり、両方の確認が必要なんです。
消防法と建築基準法で、それぞれどの設備が対象になるのでしょうか。
対象になる設備を一つずつ整理していきましょう。
今日はその全体像を一緒に確認していきましょう。
- 非常用発電設備には消防法が定める非常電源と建築基準法が定める予備電源という2つの基準がかかります
- 消防法の対象は屋内消火栓設備や自動火災報知設備などの消防用設備等です
- 建築基準法の対象は排煙設備・非常用の照明装置・非常用エレベーターなどの避難関連設備です
- 一台の発電機で両方をまかなう場合はそれぞれの基準を満たす容量と配線の独立性を両方確保しなければなりません
- 機種の選定前には所轄消防署との事前協議が欠かせません
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目次
非常用発電設備はなぜ二つの法律の基準を同時に満たさなければならないのか

実はこの発電設備がどの基準に従うかは、電気を送る先の設備がどちらの法律に属するかで変わります。
排煙設備や非常用の照明装置、非常用エレベーターのように避難や消防隊の活動を支える設備は建築基準法が規律します。
スプリンクラー設備や自動火災報知設備のように火災を感知し消火する設備は消防法が規律します。
どちらの系統も停電時には電源が要るため、建築基準法は「予備電源」、消防法は「非常電源」という別の呼び名で電源の基準を定めています。
次は、建築基準法がどの設備に予備電源を義務付けているのかを見ていきます。
同じ「非常用の電源」なのに、法律によって呼び方が違うのですね。
はい、予備電源と非常電源は別の制度なんです。
次は、それぞれの対象設備を確認しましょう。
建築基準法はどの設備に予備電源を義務付けているのか

代表的な3つの設備を確認します。
排煙設備は施行令第百二十六条の三第1項第十号で、電源を必要とする排煙設備に予備電源を設けることが定められています。
非常用の照明装置は施行令第百二十六条の五第1項第一号ハで、停電時でも床面で1ルクス以上の照度を確保できることが求められます。
非常用エレベーターは施行令第百二十九条の十三の三第10項で、火災時に消防隊が活動できるよう予備電源の設置が義務付けられています。
次は、消防法が非常電源を義務付けている設備を確認します。
どれも避難や消防隊の活動に直結する設備ばかりですね。
そのとおりです。
次は消防法側の対象設備を見ていきましょう。
消防法はどの設備に非常電源を義務付けているのか

代表例として屋内消火栓設備の基準を確認します。
容量は設備ごとに定められており、屋内消火栓設備であれば三十分間以上作動できることが必要です。
スプリンクラー設備や自動火災報知設備など他の消防用設備等も、それぞれの設置基準の中でこの非常電源の規定を準用しています。
常用電源が停電したとき自動的に切り替わることも共通の要件です。
次は、この非常電源と建築基準法の予備電源を1台の発電機でまかなうときの注意点を確認します。
消防法だけでもこんなに細かく決まっているのですね。
はい、そのうえで建築基準法側の基準も別に満たす必要があります。
次は両方を1台でまかなうときの注意点です。
発電機を共用すると容量計算をなぜ誤りやすいのか

このとき容量の考え方を誤ると、いざというときに電源が不足しかねません。
容量は、消防用設備等の非常電源分と建築基準法上の予備電源分を合算して算定しなければなりません。
配線についても、消防用設備等の回路が他の回路による障害を受けないよう独立した保護が求められます。
どちらか一方の基準だけを満たす発電機を選ぶと、火災時に想定した容量や保護性能が不足するおそれがあります。
次は、発電機を選ぶ前に確認すべき手順を整理します。
容量だけでなく、配線の独立性まで考えなければならないのですね。
そうなんです。
次は選定前に確認すべき手順を整理しましょう。
発電機を選ぶ前に何を確認しておけばよいか

消防法と建築基準法の両方にまたがる設備だからこそ、事前の整理が欠かせません。
- 電気を送る先が消防用設備等か建築基準法上の避難関連設備かをそれぞれ洗い出す
- 両方に電気を送る場合は非常電源と予備電源の容量を合算して発電機の出力を決める
- 消防用設備等の回路は他の回路から独立させ、耐熱電線や耐火ケーブルを使用する
- 設置場所が屋内か屋外かで不燃区画や離隔距離の基準が変わるため事前に確認する
- 計画段階で所轄消防署と事前協議を行い、必要な届出を確認する
消防用設備等と建築基準法上の設備の両方があるかを確認し、容量を合算して機種を選定します。
配線・区画・離隔距離などの設置基準は設置場所によって変わるため、計画段階での確認が欠かせません。
所轄消防署との事前協議を早い段階で行うと、後戻りの少ない計画になります。
これらを踏まえておけば、非常用発電設備の計画で基準を見落とすことを防げます。
事前に確認することが多いのですね。
覚えておくべき点がよく分かりました。
そうですね。
次は仕上げに全体を振り返ってみましょう。
よくある質問
まとめ
2つの基準の違いがよく分かりました。
次の発電機更新の計画に早速活かします!
両方の基準を踏まえた計画が安心につながります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第12条第1項第4号
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第126条の3第1項第10号
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第126条の5第1項第1号
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第129条の13の3第10項
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





