焼肉店などの厨房で使う排気ダクトは、油の蓄積が原因の火災を繰り返してきました。
消防庁は令和8年7月、火災予防条例(例)を改正し、この「上引き排気ダクト」の点検・清掃の基準を初めて具体的に示しました。
グリス除去装置の有無で点検の頻度も清掃の判断基準も変わるため、思い込みで対応すると見落としが生まれます。
通知が示す基準と、明日から確認すべき手順を㈱防災屋が解説します
うちの店も焼肉なんですが、排気ダクトの掃除ってどのくらいの頻度でやればいいんでしょうか。
実は令和8年7月に、消防庁が上引き排気ダクトの点検頻度の目安を初めて示しました。
グリス除去装置があるかどうかで基準が変わります。
グリス除去装置は付けているんですが、具体的に何をすればいいんでしょうか。
装置の有無で点検の周期も清掃の判断基準も変わってきます。
順番に見ていきましょう。
- 消防庁は令和8年7月、火災予防条例(例)を改正し上引き排気ダクトの管理規定を新設した。
- 対象は熱源を問わず、調理に用いる器具の周囲で使う排気ダクトとグリス除去装置等である。
- グリス除去装置と火炎伝送防止装置がある場合、火源に近い部分は営業日毎に点検する。
- 装置から先の部分は6か月に1回程度の点検で、厚さ0.4ミリメートル程度の油脂付着で清掃する。
- 条例(例)の施行日は令和9年4月1日だが、対策は先取りして始めるべきである。
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目次
焼肉店の排気ダクト火災はなぜ点検基準まで通知が出たのか

きっかけは焼肉店などの厨房で繰り返されてきた、排気ダクトの油汚れが原因の火災でした。
焼肉店のように大量の油煙が出る厨房では排気ダクトの内側に油脂が層になって付着し、火炎伝送防止装置が無いダクトでは火が一気に上階まで届く事例がありました。
消防庁は令和7年度に「厨房設備等の基準に関する検討部会」を開き、専門家の議論を経て火災予防条例(例)の改正にまとめました。
この通知の位置づけは消防組織法第37条に基づく助言であり、命令ではありません。
ただし全国の消防本部宛てに出された助言であり、次に見る対象と中身がそのまま各市町村の条例改正につながっていきます。
うちの店は油をよく使うので、ちょっと心配になってきました。
対象になる範囲を先に確認しておきましょう。
思ったより広い設備が含まれています。
対象になるのはどんな排気ダクトなのか

対象は熱源の種類を問わず、調理器具の周囲で使う排気ダクト全般です。
固体燃料は第19条第3項、気体燃料は第20条第3項、電気を熱源とする器具は第21条第3項が同じ内容を準用しており、熱源の種類を問わず対象になります。
条例(例)はあくまで市町村が自らの条例を改正するときの手本で、施行日は令和9年4月1日とされました。
施行までまだ間がありますが、運用の中身を示す通知はすでに発出されているため、飲食店側は先取りして確認しておくのが賢明です。
うちはガス台なので関係ないと思っていましたが、気体燃料も対象なんですね。
はい、熱源に関わらず調理に使う器具の周囲のダクトはすべて対象です。
点検と清掃はどのように分かれているのか

グリス除去装置と火炎伝送防止装置があるかどうかで、区画ごとに基準が変わります。
グリス除去装置と火炎伝送防止装置がある区画では、火源に近い部分は営業日毎、装置から先の部分は6か月に1回程度の点検でよいとされました。
一方、装置が無いダクト単体の場合は基準が厳しくなり、火源からおおむね1メートルの範囲は同じく営業日毎ですが、それより先の部分も1か月に1回程度の点検が必要です。
清掃するかどうかの判断基準は油脂の厚さで、目視のほか専用ゲージを使って厚さ0.4ミリメートル程度を目安にはかります。
「時間が経ったら掃除する」ではなく、装置の有無で決まる頻度と、実測した厚さの両方で判断する仕組みだと理解してください。
装置が無いお店のほうが、かえって点検の手間が増えるんですね。
そのとおりです。
装置を付けるほど点検の周期を延ばせる仕組みになっています。
実務で見落としやすいのはどこか

見落としやすいのは、施行日と改修の位置づけです。
既存の上引き排気ダクトに点検口やグリス除去装置を新設することは、あくまで望ましいという努力目標にとどまり、義務として明記されているのは点検・清掃そのものです。
条例(例)の施行日は令和9年4月1日で、各市町村が実際に条例を改正して初めて義務になります。
施行前だから何もしなくてよいと考えるのは早計で、通知はすでに具体的な運用と広報用リーフレットまで示しており、油脂による火災のリスクは施行日を待ってくれません。
点検口が無い構造のダクトは、外から油脂の付着状況を確認しにくい点も見落とされがちです。
施行はまだ先なんですね。
じゃあ今は様子見でいいんでしょうか。
義務化はこれからでも、油脂による火災のリスクは今すでにあります。
先に点検の仕組みを作っておくことをおすすめします。
明日からなにを確認すればよいか

自分の店の排気ダクトについて、次の順番で確認してください。
- 排気ダクトにグリス除去装置と火炎伝送防止装置が設置されているか、位置と個数を確認する。
- 装置がある場合は火源に近い部分を営業日毎に目視点検し、装置から先の部分は6か月に1回程度の点検周期を決める。
- 装置が無い場合は火源から1メートルの範囲を営業日毎、それ以外を1か月に1回程度の周期で点検する。
- 油脂の付着が厚さ0.4ミリメートル程度に達していないか、目視または専用ゲージで確認する体制を整える。
- 改修の機会があれば、点検口やグリス除去装置の新設を検討する。
営業日毎の点検は特別な資格がなくても実施できますが、誰がいつ点検したかを記録に残しておくと、施行後の運用にもそのまま使えます。
専用ゲージが無くても、目視で油の層の厚みに目安をつけられるようにしておけば十分です。
条例の施行は令和9年4月1日ですが、今日から点検の仕組みを作っておけば、施行時に慌てることはありません。
今日、装置の位置から確認してみます。
まずはそこからで十分です。
油脂の厚さを測る習慣がついてくると安心です。
よくある質問
まとめ
装置の有無で基準が変わることがよく分かりました。
施行前の今のうちに準備しておけば安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第279号「上引き排気ダクト等の適切な管理に関する運用について(通知)」(令和8年7月3日 消防庁予防課長)
- 消防予第278号「火災予防条例(例)の一部改正について(通知)」(令和8年7月3日 消防庁次長)
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日付け自消甲予発第73号)第18条・第19条・第20条・第21条
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





