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学校等特殊建築物はなぜ毎日点検が義務になるのか|昭和60年建設省告示第606号が定める対象範囲と固定禁止の基準を解説

学校等特殊建築物はなぜ毎日点検が義務になるのかを示すアイキャッチ画像

学校や幼稚園のような小規模な建物でも、維持保全計画の作成義務そのものは大きな劇場やホテルと同じです。
ところが延べ面積が小さい一部の学校等特殊建築物には、指針がさらに具体的な上乗せの留意事項を定めています。
その中身は、毎日の点検と、防火設備を開けたまま固定してはいけないという判断基準です。
この記事では、どの建物が対象になり、毎日何を確認すべきかを、条文に沿って整理します。

延べ面積が小さい学校でも、維持保全計画は大きな建物と同じように必要なんですか。

はい、作成義務自体は同じです。
ただし延べ面積が小さい一部の建物には、指針がさらに上乗せの留意事項を定めています。

上乗せというのは、具体的にどんな内容ですか。

毎日の点検と、防火設備を開けたまま固定してはいけないという基準です。
今日はその中身を見ていきましょう。

この記事の結論
  • 建築基準法第27条第1項第一号は、階数3・延べ面積200平方メートル未満の(一)項から(四)項の特殊建築物を、原則として耐火建築物等の義務から除外しています。
  • 昭和60年建設省告示第606号 第3 2は、この除外された範囲の学校等特殊建築物に、維持保全計画の上乗せ留意事項を課しています。
  • 上乗せの中身は、点検責任者を定めたうえで、廊下・階段の物品放置と防火設備の固定状況を毎日点検することです。
  • 防火設備を開放状態に固定することは、判断基準上そのまま不適合にあたります。
  • 点検結果は記録して責任者へ報告し、記録した図書の保管期限を明確に定める必要があります。

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学校等特殊建築物の毎日点検義務を示す図解

なぜ小規模な学校等特殊建築物にだけ毎日点検が求められるのか

小規模な学校等特殊建築物と大規模な建物を比べるイラスト
学校等特殊建築物の中でも、毎日点検が上乗せされる建物はごく一部です。
その線引きは、実は別の条文の除外規定と重なっています。
別表第一(ろ)欄に掲げる階を同表(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供するもの(階数が三で延べ面積が二百平方メートル未満のもの(同表(ろ)欄に掲げる階を同表(い)欄(二)項に掲げる用途で政令で定めるものに供するものにあつては、政令で定める技術的基準に従つて警報設備を設けたものに限る。)を除く。)(建築基準法第27条第1項第一号)。少なくとも、建築基準法施行令第13条の3第1項第一号に規定する特殊建築物のうち、三階を同号に規定する用途に供するもので、延べ面積が二百平方メートル未満のもの(法第27条第1項の規定に適合するものを除く。)についての計画の作成に当たっては、次に掲げる事項に留意するものとする(昭和60年建設省告示第606号 第3 2)。
階数3・延べ面積200平方メートル未満という同じ小さな建物が、2つの条文に共通して登場します。
建築基準法第27条第1項第一号は、(一)項から(四)項の特殊建築物のうち一定規模のものに耐火建築物等とする義務を課していますが、この小さな規模の建物は原則としてその対象から除かれています。
告示第3の2が毎日点検の上乗せを課す対象も、まさにこの除外された範囲と一致します。
条文に理由までは明記されていませんが、耐火建築物等としての構造的な備えを免れる小規模な建物だからこそ、日常の点検で安全を補っていると読むことができます。
次の章で、この対象範囲をもう少し正確に確認します。

延べ面積200平方メートル未満の学校が対象なら、うちの校舎も確認しないといけませんね。

はい、階数3で延べ面積200平方メートル未満に該当するかどうかがポイントです。
次の章で対象範囲を詳しく見ていきましょう。

どんな学校等特殊建築物がこの上乗せ規定の対象になるのか

床面積の図面と小規模な学校等特殊建築物のイラスト
上乗せ規定は、維持保全計画の対象となる特殊建築物すべてにかかるわけではありません。
対象はさらに絞り込まれた、ごく限られた範囲の建物です。
法第八条第二項第一号の政令で定める特殊建築物は、次に掲げるものとする。一 法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物でその用途に供する部分の床面積の合計が百平方メートルを超えるもの(当該床面積の合計が二百平方メートル以下のものにあつては、階数が三以上のものに限る。)(建築基準法施行令第13条の3第1項第一号)。少なくとも、同令第13条の3第1項第一号に規定する特殊建築物のうち、三階を同号に規定する用途に供するもので、延べ面積が二百平方メートル未満のもの(法第27条第1項の規定に適合するものを除く。)についての計画の作成に当たっては、次に掲げる事項に留意するものとする(昭和60年建設省告示第606号 第3 2)。
維持保全計画そのものの対象は幅が広く、毎日点検の上乗せ対象はその中のさらに狭い一部だけです。
施行令第13条の3第1項第一号の対象は、(一)項から(四)項の用途(劇場・病院・学校・百貨店等)に供する部分の床面積が100平方メートル超、または200平方メートル以下でも階数3以上の建物です。
告示第3の2が毎日点検を上乗せする対象は、この中でもさらに三階部分を対象用途に使い、延べ面積が200平方メートル未満という、規模の下限に近い建物に限られます。
延べ面積が200平方メートルを超える学校等特殊建築物は、この上乗せ規定の対象外です(維持保全計画そのものは別途必要です)。
自分の建物が当てはまるかどうかは、用途・階数・延べ面積の3つをあわせて確認する必要があります。

うちは延べ面積が250平方メートルくらいあるんですが、それでも対象になりますか。

200平方メートル未満が上乗せの条件なので、超えていれば対象外です。
ただし用途・階数・面積は必ずあわせて確認してください。

毎日の点検では具体的に何を確認するのか

廊下に置かれた物品と防火設備のイラスト
対象になる建物では、点検責任者を定めたうえで、毎日の点検が必要です。
点検の中身は、告示が判断基準までかなり具体的に定めています。
一 前項第二号に規定する維持保全を行うための組織に関する事項として、当該特殊建築物の点検に関する責任者を定めること。二 前項第五号に規定する点検時期に関する事項として、次号イ及びロに掲げる点検項目に係る点検は、原則として毎日実施することを定めること。三 前項第五号に規定する点検に当たっての判断基準に関する事項として、次のイ又はロに掲げる点検項目の区分に応じ、それぞれイ又はロに定める基準を定めること。イ 廊下及び階段における物品の放置の状況 避難に支障となる物品が放置されていること。ロ 常時閉鎖若しくは作動をした状態にある防火設備又は常時閉鎖した状態にある戸の固定の状況 開放状態に固定されていること(昭和60年建設省告示第606号 第3 2)。
点検すべき対象は2項目だけで、判断基準もあらかじめ条文が決めています。
一号で点検責任者を定め、二号でイ・ロの点検を原則毎日実施することを計画に書き込みます。
イは廊下・階段に避難の支障になる物品が放置されていないか、ロは常時閉鎖・作動する防火設備や戸が開放状態に固定されていないかを見ます。
どちらも「している・していない」を条文が示す状態と照らし合わせるだけなので、判断に迷いにくい基準です。
次の章で、ロの固定禁止がなぜ重要なのかを詳しく見ていきます。

毎日の点検って、正直かなり手間がかかりそうです。

確認する項目はイ・ロの2つだけなので、短時間の目視点検で足ります。
継続する仕組みを作ることが大切です。

防火設備を開けたまま固定してはいけないのはなぜか

開放状態で固定された防火戸に禁止マークが付いたイラスト
ロの基準は、一見地味に見えますが軽視できません。
防火設備が固定を禁じられる理由には、建築基準法のもう一つの規定が関わっています。
第一項、第四項、第五項、第十項又は前項の規定による区画に用いる特定防火設備(略)は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める構造のものとしなければならない。一 (略)イ 常時閉鎖若しくは作動をした状態にあるか、又は随時閉鎖若しくは作動をできるものであること(建築基準法施行令第112条第19項第一号イ)。
防火設備は「常に閉まっているか」「随時、自分で閉まれるか」のどちらかでなければならない、という構造上の条件があります。
開放状態に固定してしまうと、この随時閉鎖・作動できるという構造上の条件そのものが失われます。
告示第3の2ロの判断基準は、この構造条件が現場で守られているかどうかを、日常の点検で確かめるための規定と位置づけられます。
なお同じ告示が倉庫(第3の3)に課す上乗せは、防火シャッターとコンベヤー等の点検責任者や新設時の確認体制が中心で、学校等のように固定状況そのものを毎日の点検項目には指定していません。
対象用途によって上乗せの視点が異なる点を、あわせて押さえておく必要があります。

扉を開けっぱなしにしておくほうが、実は普段は便利なんですけどね。

気持ちは分かりますが、開放状態での固定は不適合です。
必要なら随時閉鎖式の器具に替えることも検討してください。

明日から何を確認すればよいのか

点検チェックリストと保管書類のイラスト
対象範囲と点検の中身が分かれば、あとは自分の建物に当てはめるだけです。
記録と保管についても、告示が具体的に定めています。
四 前項第五号に規定する結果の報告等に関する事項として、点検結果を適切に記録し、第一号に規定する責任者に報告することを定めること。五 前項第七号に規定する維持保全計画書、確認通知書、竣工図、設備仕様書等の作成、保管、廃棄等に関する事項として、点検結果を記録した図書その他維持保全に必要な図書の保管期限を明確に定めること(昭和60年建設省告示第606号 第3 2)。
次の順番で棚卸しをすると、上乗せ規定への対応が整理しやすくなります。
  • 自分の建物が延べ面積200平方メートル未満で三階を教室等の用途に使う学校等特殊建築物に当たらないかを確認する
  • 当たる場合は、点検責任者を定め、毎日点検を維持保全計画に書き込む
  • 廊下・階段の物品放置と、防火設備・戸の固定状況をイ・ロの判断基準で点検する
  • 点検結果を記録し、責任者へ報告する体制を整える
  • 点検結果を記録した図書の保管期限を明確に定める
点検責任者・記録・報告・保管の4つを仕組みにしておけば、毎日の点検は特別な負担にはなりません。
対象に当たるかどうかの確認だけは、最初に済ませておくべき最重要のステップです。
迷ったときは、建築確認を受けた特定行政庁の建築指導窓口に相談すると確実です。

点検結果は、どのくらいの期間残しておけばいいんですか。

告示は保管期限を明確に定めることまでしか求めていないので、まずは施設の実情にあわせて期限を決めましょう。
迷ったら特定行政庁にも相談してください。

よくある質問

Qなぜ延べ面積200平方メートル未満の学校等特殊建築物だけが対象になるのですか?
A建築基準法第27条第1項第一号が、この規模の建物を耐火建築物等の義務から原則除外しているためです。告示第3の2は、その除外された範囲にあわせて毎日点検の上乗せを定めています。
Q毎日点検の対象はイ・ロの2項目だけですか?
A告示が上乗せする毎日点検の項目はイとロの2つです。ただし維持保全計画そのものが定める10項目(点検・修繕・図書の保管等)は、これとは別に必要です。
Q防火設備を開けたまま固定してもよい場合はありますか?
A告示の判断基準は開放状態に固定されていること自体を不適合としています。常時閉鎖式・随時閉鎖式のいずれであっても、開放状態での固定は認められません。
Q倉庫の上乗せ規定と同じように考えてよいですか?
Aいいえ。倉庫(第3の3)は防火シャッターとコンベヤー等の点検責任者や新設時の確認体制が中心ですが、学校等(第3の2)は毎日の点検そのものが上乗せの中心です。用途によって視点が異なります。

まとめ

✔建築基準法第27条第1項第一号は、階数3・延べ面積200平方メートル未満の(一)項から(四)項の特殊建築物を、原則として耐火建築物等の義務から除外しています。
✔昭和60年建設省告示第606号 第3 2は、この除外された範囲の学校等特殊建築物に、維持保全計画の上乗せ留意事項を課しています。
✔対象は施行令第13条の3第1項第一号の特殊建築物のうち、三階を対象用途に供し延べ面積200平方メートル未満のものに限られます。
✔上乗せの中身は、点検責任者を定めたうえで、廊下・階段の物品放置と防火設備の固定状況を毎日点検することです。
✔防火設備を開放状態に固定することは、判断基準上そのまま不適合にあたります。
✔点検結果は記録して責任者へ報告し、記録した図書の保管期限を明確に定める必要があります。
✔倉庫(第3の3)の上乗せ規定とは中心となる視点が異なるため、用途ごとに確認しましょう。

自分の建物が対象かどうか、まずは延べ面積と階数を確認してみます!

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㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第8条(維持保全)・第27条(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)
  • 建築基準法施行令第13条の3(維持保全計画の対象となる特殊建築物等の指定)・第112条(防火区画)
  • 昭和60年建設省告示第606号(建築物の維持保全に関する準則又は計画の作成に関し必要な指針)

※この記事は建築基準法・建築基準法施行令・昭和60年建設省告示第606号(令和元年国土交通省告示第199号による改正後のもの)に基づき作成しています。個別の建物への当てはめや、特定行政庁の規則による付加事項の有無は、所在地の特定行政庁にご確認ください。

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