防火管理者として建物を任されていると、行政から「命令」という言葉だけでなく「代執行」という聞き慣れない言葉を耳にすることがあります。
建築基準法第九条には、命令を出したあとに相手が分からない場合や命令に従わない場合の備えまで用意されています。
工事中の建物や、誰が責任者か分からない建物に対して、行政はどこまで強制できるのでしょうか。
この記事では建築基準法第九条が定める緊急施工停止命令と代執行の仕組み、建築監視員の権限を解説します。
うちの現場、工事の途中で確認と違う変更をしてしまったんです。
もし見つかったらどうなるんでしょうか。
特定行政庁は工事中の建物にも命令を出せます。
ただし通常の手続きを飛ばせるのは緊急のときだけですよ。
もし現場の担当者が分からなくなっていたら、命令自体が出せないんじゃないですか。
相手が分からなくても行政は動けます。
最終的には代執行という仕組みで実行されますよ。
- 工事中の建物が明らかに違反しているときは、緊急の必要があれば通常の手続を経ずに施工停止を命じられます。
- 建築監視員も、緊急の使用禁止・使用制限命令と工事中建物への施工停止命令に限り同じ権限を行使できます。
- 過失なく相手方を確知できない場合でも、特定行政庁はその者の負担で自ら措置を行えます。
- 命令を受けた者が履行しないときは、行政代執行法に基づく代執行で行政が代わりに実行します。
- 代執行に要した費用は、あとから義務者に対して徴収されます。
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目次
工事中の建物が違反だとわかったとき行政はどう動くのか

ただし通常の手続を飛ばせるのは、限られた場合だけです。
対象になるのは建築主・工事の請負人・現場管理者で、下請人も含まれます。
これらの者が現場にいないときは、代わりに工事に従事する者に作業停止を命じることもできます。
命じられる条件は、違反が明らかであることと、緊急の必要があって通常の意見聴取の手続を使えないことの2つです。
つまり工事中だからといって、手続なしにいつでも止められるわけではありません。
契約書に現場管理者の名前をちゃんと書いていないと、まずいですか。
現場管理者が明確でないと、命令の相手が定まりません。
契約の段階で責任者を明記しておくことをおすすめします。
命令はだれが出せるのか

現場に近い立場の職員にも、一定の権限が与えられています。
任命されるのは市町村又は都道府県の職員のうちからで、政令で定める手続によります。
行使できるのは緊急の使用禁止・使用制限命令(第七項)と、工事中建物への緊急施工停止命令(第十項)の2つに限られます。
通常の手続を踏む第一項の措置命令そのものは、建築監視員の権限には含まれません。
つまり建築監視員は、緊急時に現場で即応するための仕組みです。
建築監視員って、特定行政庁とは別の役所の人なんですか。
いいえ、同じ市町村・都道府県の職員が任命されます。
権限は緊急のときの命令に限られていますよ。
命令を出しても相手が分からないときはどうなるのか

そんなときのために、代わりに行政が動く仕組みが用意されています。
条件は過失なく相手方を確知できないことと、放置が著しく公益に反することの2つです。
この場合、特定行政庁はその者の負担で自ら措置を行うか、命じた者・委任した者に行わせます。
いきなり実行するのではなく、相当の期限と実施予定をあらかじめ公告することが義務づけられています。
つまり所有者が名乗り出なくても、費用の負担そのものは免れません。
建物の持ち主が転居して連絡が取れなくなっていたら、そのままになるんですか。
いいえ、公告のうえで行政が代わりに実施します。
費用はあとから所有者に請求される仕組みです。
命令を受けた側が履行しないときはどうなるのか

そのときは、行政代執行法という別の法律の出番になります。
特定行政庁は行政代執行法に基づき、みずから義務者のなすべき行為を行うか、第三者に行わせます。
行政代執行法では、実施前に相当の履行期限を定めて戒告し、それでも履行がなければ代執行令書で時期や執行責任者を通知する手順が定められています。
代執行にかかった費用は、行政代執行法第二条の規定により義務者から徴収されます。
つまり代執行は最後の手段であって、そこに至るまでに複数の予告の機会があります。
代執行までいくと、費用はかなり高くなりそうで心配です。
費用は義務者から徴収されます。
命令の段階でしっかり対応するのが、結局いちばん負担が少ない方法です。
明日から何を確認すればよいのか

特に工事中の建物では、確認しておきたい点がいくつかあります。
標識の設置を拒んだり妨げたりすることは、法律上できません。
工事現場では、契約書で請負人や現場管理者の連絡先を明確にしておくと、命令の相手が定まりやすくなります。
所有者が分からない・履行しないという事態を避けるためにも、日頃の点検と早めの是正が結局いちばん負担が少なくなります。
標識を見かけたら剥がさず、まず特定行政庁の窓口に確認するようにしましょう。
- 契約書に請負人・現場管理者の氏名と連絡先を明記する
- 工事現場に責任者が常駐しているか定期的に確認する
- 標識が貼られたら根拠条項(第一項か第十項か)を確認する
- 標識の設置を拒んだり妨げたりしない(第九条第十四項)
- 疑問点は特定行政庁の窓口に直接問い合わせる
標識が貼られても、勝手に外したりしなければいいんですね。
はい、標識の設置は拒んだり妨げたりできません。
気になる点があれば特定行政庁に確認してみてください。
よくある質問
まとめ
命令に従わなかった場合の流れも、費用のことも分かって安心しました。
工事現場の連絡先もきちんと確認します。
ご不明な点があれば、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第九条(違反建築物に対する措置)
- 建築基準法第九条の二(建築監視員)
- 行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)
- e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。実際の運用や判断は特定行政庁ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。





