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防火区画はなぜ1,500平方メートルごとに必要なのか|建築基準法施行令が定めるスプリンクラー緩和と除外用途を解説

防火区画は1,500平方メートルごとに必要なのかのアイキャッチ

延べ面積が広い建物には、建築基準法施行令第112条第1項により、一定の面積ごとに防火区画で区切ることが義務づけられています。
区画は一時間準耐火基準に適合する壁や床、または特定防火設備で作りますが、スプリンクラー設備等があると計算上の面積が小さくなる緩和があります。
さらに劇場の客席や工場のように、用途上どうしても区画できない部分は例外として除外されています。
防火区画は延べ面積の実測だけでなく、スプリンクラーの設置範囲と用途上の除外規定まで確認しないと正しく判断できません。

自分のビルは延べ面積が3,000平方メートルくらいあるんですが、防火区画は必要になるんでしょうか。
面積が大きいと必要になるとは聞いています。

建築基準法施行令第112条第1項が、防火区画の基本ルールを定めています。
ただしスプリンクラー設備等があると、計算上の面積が小さくなる緩和があります。

緩和があるとは知りませんでした。
うちは建物全体にスプリンクラーを設置しているので、区画が要らなくなることもあるんでしょうか。

条件次第ではそうなる場合もあります。
基本のルールと緩和の計算、それに区画をしなくてよい例外の用途を順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 建築基準法施行令第112条第1項は、延べ面積が1,500平方メートルを超える建物に、1,500平方メートルごとの防火区画を義務づけています。
  • 区画は一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床・壁、または特定防火設備で作ります。
  • スプリンクラー設備等(自動式のもの)を設けた部分は、床面積を2分の1として計算する緩和があります。
  • 劇場の客席や体育館、工場など用途上やむを得ない部分と、区画済みの階段室等は区画義務の対象外です。
  • スプリンクラーの停止や用途変更で緩和・除外の前提が崩れると、区画義務が復活するおそれがあります。

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1,500平方メートルごとの防火区画とスプリンクラー緩和と除外用途を示した図解

防火区画はなぜ1,500平方メートルごとに必要なのか

大きな建物の内部を壁で区切る様子
建築基準法施行令第112条は、建物の内部を火災の広がりに応じて区切る防火区画を定めた条文です。
第1項は、区画が必要になる基本の場面を定めています。
(建築基準法施行令第112条第1項・抜粋)法第二条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当する建築物(特定主要構造部を耐火構造とした建築物を含む。)(略)で、延べ面積(略)が千五百平方メートルを超えるものは、床面積の合計(略)千五百平方メートル以内ごとに一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画しなければならない。
延べ面積が1,500平方メートルを超える準耐火建築物等は、内部を一定面積ごとに区切らなければなりません。
これは火災が発生しても、被害を建物全体ではなく一区画にとどめるための仕組みです。
対象になるのは、耐火建築物や準耐火建築物として建てられた建物のうち、延べ面積が1,500平方メートルを超えるものです。
区画の間隔は1,500平方メートル以内ごとで、これを超える広さの一体空間を作ることはできません。
延べ面積が1,500平方メートル以下であれば、この第1項による区画義務そのものが生じません。

1,500平方メートルという数字は、建物のどの面積で見ればいいんですか。
延べ面積で合っていますか。

はい、延べ面積で判断します。
ただし後ほど説明するスプリンクラーの緩和で、計算に使う面積が変わることがあります。

区画にはどんな構造が求められるのか

一時間の耐火性能を示す壁と防火戸
区画をどう作るかも条文で細かく決まっています。
壁や床そのものを頑丈にするか、開口部を防火設備でふさぐか、いずれかの方法を選びます。
(建築基準法施行令第112条第2項・抜粋)前項の「一時間準耐火基準」とは、主要構造部である壁、柱、床、はり及び屋根の軒裏の構造が、次に掲げる基準に適合するものであることとする。次の表の上欄に掲げる建築物の部分にあつては、当該部分に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後それぞれ同表の下欄に掲げる時間において構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること(壁・柱・床・はり いずれも一時間)。
一時間準耐火基準は名前のとおり、火熱を一時間受けても壊れない性能を壁・柱・床・はり・屋根の軒裏に求める基準です。
区画を作る方法は二つあり、床や壁そのものをこの基準に適合させるか、開口部に特定防火設備を使うかを選べます。
特定防火設備とは、加熱開始後一時間、反対側の面に火炎を出さない性能を持つ防火設備のことです。
どちらの方法でも、区画された空間の外へ一時間は火や熱を出さないという到達点は同じです。
日常点検で確認するのは、この区画を構成する防火戸や壁に、後付けの開口部ができていないかという点です。

壁を厚くする方法と防火設備を使う方法、どちらが多いんですか。
混ぜて使ってもいいんでしょうか。

実際の建物では、壁の部分は準耐火構造、扉の部分は特定防火設備という組み合わせが一般的です。
境界の全周でどちらかの基準が途切れていないかを確認します。

スプリンクラー設備があると区画はどこまで広げられるのか

天井のスプリンクラーヘッドと縮小する面積の枠
延べ面積の数え方には、スプリンクラー設備等による緩和があります。
自動式の消火設備を設けた部分は、実際の面積より小さく計算してよいことになっています。
(建築基準法施行令第112条第1項・抜粋)延べ面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。)が千五百平方メートルを超えるものは、床面積の合計(同様に二分の一を除く。)千五百平方メートル以内ごとに区画しなければならない。
スプリンクラー設備等を設けた部分は、実際の床面積の2分の1を延べ面積の計算から差し引くことができます。
例えば実面積が3,000平方メートルの建物でも、その全体にスプリンクラー設備を設置すれば、計算上の延べ面積は2分の1にあたる1,500平方メートルになります。
この数値は「1,500平方メートルを超える」という条件に当てはまらないため、この建物にはそもそも第1項の区画義務が生じません。
区画の間隔を数えるときの床面積の合計にも、同じ2分の1の控除が使えます。
ただしこの緩和は自動式の設備が前提のため、手動起動のみの設備や、設置範囲の外にある部分には適用されません。

実面積の半分で計算できるなら、区画が要らない建物はかなり増えそうですね。
建物全体に設置していないと使えないんでしょうか。

いいえ、設置した部分だけを2分の1で計算するので、部分的な設置でも緩和は使えます。
設置範囲の図面を確認して、どこまでが緩和対象かを把握しておきましょう。

劇場の客席や工場はなぜ区画をしなくてよいのか

劇場の客席と壁で囲まれた階段室
区画にはただし書きによる除外があります。
ただし、用途に該当すれば自動的に除外されるわけではありません。
(建築基準法施行令第112条第1項ただし書・第一号・第二号)ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむを得ないものについては、この限りでない。一 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の客席、体育館、工場その他これらに類する用途に供する建築物の部分 二 階段室の部分等(階段室の部分又は昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。))で一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されたもの
除外されるのは、区画すると本来の使い方ができなくなる部分に限られます。
第一号が挙げる劇場の客席や体育館、工場は、途中に壁を作ると座席や作業の連続性が失われるため、用途上やむを得ないと扱われます。
同じ劇場でも、事務室やロビーのように区画しても機能に支障がない部分は、この除外の対象になりません。
第二号の階段室や昇降路の部分は、それ自体がすでに一時間準耐火基準の壁や特定防火設備で囲われていることが条件で除外されます。
つまり除外は用途の名前だけでなく、区画できない事情と、すでに保護されている構造の両方を確認して判断します。
防火区画は建築時点の計画だけでなく、その後の使い方でも成立条件が変わる点に注意が必要です。
緩和も除外も「今その条件を満たしているか」を問う仕組みなので、後から状況が変わると成立しなくなることがあります。
スプリンクラー設備を撤去したり長期間停止させたりすると、控除の前提だった自動式の設備が実質的に存在しなくなり、計算上の延べ面積が元の実面積に戻ります。
劇場の客席を後から事務室に用途変更すると、用途上やむを得ないという除外の理由そのものが失われます。
階段室の除外も、防火戸を開放したまま固定するなど区画の構造が保たれていなければ前提が崩れます。
増改築や用途変更の計画があるときは、緩和と除外の前提が今も成立しているかを区画の要否とあわせて確認します。

設計時に緩和を使っていたことなんて、日常の管理では忘れてしまいそうです。
どこで確認すればいいんでしょうか。

確認申請時の図面や検査済証には、スプリンクラーの設置範囲や区画の位置が記録されています。
増改築や用途変更を検討するときは、その図面を確認申請の窓口とあわせて見直しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを持つクリップボードと建物と図面
区画の要否は、次の順番で確認しておくと見落としを防げます。
延べ面積とスプリンクラーの設置範囲、両方を図面から拾い出すのがポイントです。
  • 建物の延べ面積が1,500平方メートルを超えるか確認する
  • スプリンクラー設備等(自動式のもの)の設置範囲を図面で確認し、2分の1控除後の計算上の延べ面積を出す
  • 区画が必要な場合、区画の床・壁が一時間準耐火基準または特定防火設備の性能を保っているか確認する
  • 劇場の客席や体育館、工場のように区画を除外している部分が、今も同じ用途で使われているか確認する
  • スプリンクラーの撤去や用途変更の計画があれば、緩和・除外の前提が崩れないか事前に確認する
区画の要否は建築時点だけで決まるものではなく、設備の維持と用途の継続が前提になっています。
増改築や用途変更を検討する際は、早めに設計担当者や確認申請の窓口へ相談すると安全です。

延べ面積だけでなく、スプリンクラーの範囲まで一緒に確認するんですね。
今度の点検であわせて図面を見直してみます。

はい、面積と設備の両方を確認しておくと安心です。
迷ったときは早めに専門家へ相談しましょう。

よくある質問

Q防火区画は必ず耐火構造で作らなければならないのか?
Aいいえ。施行令第112条第1項が求めるのは一時間準耐火基準に適合する準耐火構造で、より厳しい耐火構造までは求めていません。開口部には、加熱後一時間反対側に火炎を出さない特定防火設備を使う方法もあります。
Qスプリンクラー設備の緩和はどの消火設備でも使えるのか?
Aいいえ。条文が挙げているのはスプリンクラー設備・水噴霧消火設備・泡消火設備その他これらに類する自動式のものに限られます。手動起動のみの消火設備は緩和の対象になりません。
Q劇場のロビーや事務室も客席と同じように区画を免除されるのか?
Aされません。ただし書が除外するのは用途上やむを得ない部分に限られ、区画しても機能に支障がないロビーや事務室は通常どおり区画の対象です。
Q延べ面積が1,500平方メートルちょうどの建物は区画が必要か?
A必要ありません。条文は「1,500平方メートルを超えるもの」としているため、ちょうど1,500平方メートルの建物はこの第1項の区画義務の対象外です。

まとめ

✔施行令第112条第1項は、延べ面積が1,500平方メートルを超える準耐火建築物等に、1,500平方メートルごとの防火区画を義務づけています。
✔区画は一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床・壁、または特定防火設備で作ります。
✔スプリンクラー設備等(自動式のもの)を設けた部分は、床面積を2分の1として計算できる緩和があります。
✔建物全体にスプリンクラー設備を設置すれば、実面積が大きくても計算上1,500平方メートル以下になり区画義務が生じない場合があります。
✔劇場の客席や体育館、工場など用途上やむを得ない部分は区画の対象から除外されます。
✔階段室等の除外は、その部分自体が一時間準耐火基準の構造で区画されていることが条件です。
✔スプリンクラーの停止や用途変更で緩和・除外の前提が崩れると、区画義務が復活するおそれがあります。

面積の実測だけでなく、スプリンクラーの範囲や用途まで確認する必要があるとよく分かりました。
ありがとうございました!

こちらこそご相談ありがとうございます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第1項・第2項

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物への適用や特定行政庁の運用は異なる場合があります。個別の判断は建築主事または指定確認検査機関にご確認ください。

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