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二酸化炭素消火設備はなぜ点検資格者による点検が義務化されたのか|死亡事故を受けて追加された緊急停止装置と点検票の変更点を解説

二酸化炭素消火設備の点検はなぜ資格者が必要なのか

駐車場や電気室に設置された二酸化炭素消火設備で、点検や工事の作業員が消火剤にまかれて死亡する事故が相次ぎました。
消防庁はこの事故を教訓に、設備の技術基準と点検の基準を見直し、その内容を点検票の様式にも反映させています。
その結果、これまで自主点検で済んでいた建物でも、この設備があるだけで点検資格者に頼む対象に変わりました。
この記事ではなぜ点検資格者による点検が義務づけられ、点検票に何が加わったのかを解説します。

うちの駐車場、二酸化炭素の消火設備が付いてると言われたんです。

その設備があるだけで、面積に関係なく点検資格者にお願いする対象になりますよ。

うちは面積が小さいので、今まで自分たちで点検してきました。

令和5年の基準改正で、それが通用しなくなったんです。

この記事の結論
  • 全域放出方式の二酸化炭素消火設備がある建物は、面積を問わず点検資格者による点検が必要になりました
  • 死亡事故を受けて緊急停止装置や二つの信号で起動する仕組みが新しく義務づけられました
  • 常時人がいない建物でも自動で起動する設備は音声の警報装置にしなければなりません
  • 点検票の様式には、標識・AND回路制御機能・緊急停止装置を確認する項目が加わっています
  • 既に設置されている設備にも、一部の基準は遡って適用されます

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二酸化炭素消火設備の点検はなぜ変わったのかを示す図解

二酸化炭素消火設備はなぜ点検資格者による点検が義務づけられたのか

二酸化炭素消火設備の警告標識と立入禁止のイメージ
きっかけは、防護区画の中に人がいる状態で消火剤が放出された死亡事故でした。
消防庁は事故のあと、設備の基準そのものを見直し、その中身を点検票にも反映させています。
消防予第46号(令和5年1月23日) 「消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式の一部を改正する件」(令和5年消防庁告示第1号)及び「消防用設備等試験結果報告書の様式の一部を改正する件」(令和5年消防庁告示第2号)が公布された。消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式の一部を改正する件(令和4年消防庁告示第5号)により、全域放出方式の二酸化炭素を消火剤とする不活性ガス消火設備(以下「二酸化炭素消火設備」という。)の点検の基準について、標識、AND回路制御機能及び緊急停止装置の点検項目が追加されたことや、閉止弁の点検項目が外見と機能に細分化されたことを踏まえ、消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式にこれらの項目を追加することとした。
点検票の様式変更は、事故の教訓を点検の現場でも確認できるようにするための追随策です。
消防庁はまず令和4年の告示・省令改正で設備そのものの技術基準を見直しました。
そこで標識・緊急停止装置・AND回路制御機能などが新しく設けられ、閉止弁の点検も外見と機能の2つに分かれました。
今回の消防予第46号は、その見直しを点検票と試験結果報告書の様式に反映させたものです。
施行期日は令和5年4月1日で、この日以降に実施する点検からは新しい様式が使われます。

点検票が変わっただけなら、うちには関係ない気もします。

いいえ、設備そのものの基準が変わったので、誰に点検を頼むかまで変わっています。

どの建物のどの設備が対象になるのか

小規模な建物と大規模な建物の二酸化炭素消火設備の対比
点検資格者に頼まなければならない建物は、これまでは延べ面積や用途で決まっていました。
今回の対象はそれと別枠で、設備の種類だけで決まります。
消防法施行令第三十六条第二項 法第十七条の三の三の消防用設備等又は特殊消防用設備等について消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検をさせなければならない防火対象物は、次に掲げる防火対象物とする。(中略)四 前三号に掲げるもののほか、消防用設備等又は特殊消防用設備等の防火安全性能を確保するために、消防設備士等による点検が特に必要であるものとして総務省令で定める防火対象物/消防法施行規則第三十一条の六の二 令第三十六条第二項第四号の総務省令で定める防火対象物は、全域放出方式の不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するものに限る。)が設置されているものとする。
用途も延べ面積も問わず、設備があるという事実だけで対象になります。
駐車場や電気室、通信機器室のような常時人のいない部分に置かれることが多い設備です。
これまで自主点検で済んでいた小規模なビルでも、地下駐車場にこの設備があれば点検資格者が必要です。
逆にいえば、この設備さえなければ、面積基準による従来の判定がそのまま使えます。
まずは自社の設備台帳で二酸化炭素消火設備の有無を確認することが出発点になります。

面積じゃなくて、設備そのもので決まるんですね。

はい、設備の有無だけで判定される珍しい区分です。

点検票にはどんな安全対策の項目が加わったのか

制御盤とAND回路と緊急停止装置と標識のイメージ
点検票に加わった項目は、事故を防ぐために新設された技術基準と対応しています。
名前だけでは中身が伝わりにくいので、ひとつずつ見ていきます。
消防法施行規則第十九条第五項 十四 起動装置は、次のイ又はロに定めるところによること。イ (イ)手動式とすること。(ロ)全域放出方式のものには、消火剤の放射を停止する旨の信号を制御盤へ発信するための緊急停止装置を設けること。十六 自動式の起動装置は、次のイからニまでに定めるところによること。イ(ロ)全域放出方式の不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するものに限る。)に設ける起動装置は、二以上の火災信号により起動するものであること。十七 ハ 全域放出方式の不活性ガス消火設備に設ける音響警報装置は、音声による警報装置とすること。十九 イ(ホ)(略)標識を設けること。
加わった項目は、誤って人がいる区画に放出させないための二重三重の備えです。
緊急停止装置は、起動してしまってからでも放出を止められる信号を制御盤へ送る装置です。
AND回路制御機能は、自動起動を「二以上の火災信号」がそろわないと作動させない仕組みで、一つの感知器の誤作動では放出しません。
常時人のいない場所でも自動起動を使うなら、警報は音声でなければならず、放送を聞いた人が避難の意味を理解できるようにする決まりです。
標識は防護区画の出入口と貯蔵容器の場所に置き、二酸化炭素の危険性と立入禁止を示します。

AND回路って、ひとつのセンサーだけじゃ動かないってことですか。

そうです、二つの信号がそろって初めて放出されます。

実務で見落としやすいのはどこか

自主点検を続ける建物と点検資格者に依頼する建物の対比
見落としやすいのは、既に設置されている古い設備の扱いです。
「新しい基準は新設の設備だけ」と思い込むと、対応が漏れます。
消防予第46号(令和5年1月23日) (略)閉止弁の点検項目が外見と機能に細分化されたこと(略)/消防法施行規則第十九条の二 全域放出方式の不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するものに限る。)の維持に関する技術上の基準は、前条に定めるもののほか、次のとおりとする。一 閉止弁は、次のイ及びロに定めるところにより維持すること。イ 工事、整備、点検その他の特別の事情により防護区画内に人が立ち入る場合は、閉止された状態であること。ロ イに掲げる場合以外の場合は、開放された状態であること。
閉止弁と標識・立入禁止の維持管理は、既に設置されている設備にも及びます。
起動用ガス容器や緊急停止装置そのものの新設は新規設置の設備が中心ですが、閉止弁の開閉状態の維持や標識の設置は既存の設備にも求められます。
「面積が小さいから点検は自分たちでやってきた」という運用は、この設備がある限り通用しません。
点検資格者に依頼していないまま点検票を自己流で作成していた建物は、報告書自体が基準を満たさなくなります。
まずは点検を委託している業者に、資格者による点検へ切り替わっているかを確認してください。

古い設備だから関係ないと思っていました。

閉止弁の維持管理だけは、古い設備にもそのまま適用されますよ。

明日からなにを確認すればよいのか

点検資格者が点検票にチェックを入れる様子
やることは大きく分けて三つです。
順番に確認していきましょう。
消防予第46号(令和5年1月23日) 第三 施行期日に関する事項 令和5年4月1日から施行することとしたこと。(改正告示1号附則及び改正告示2号附則関係)
  • 設備台帳を確認する 自社の建物に全域放出方式の二酸化炭素消火設備があるかを洗い出します
  • 点検資格者への切替えを確認する 自主点検のままなら、消防設備士か消防設備点検資格者への委託に切り替えます
  • 点検票の様式を確認する 標識・AND回路制御機能・緊急停止装置・閉止弁の項目が反映された新しい様式かを点検業者に確かめます
令和5年4月1日以降に実施する点検からは、新しい点検票で報告する義務があります。
自主点検を続けてきた建物は、まず設備台帳と現地確認で対象設備の有無を洗い出してください。
対象であれば、委託先が消防設備士か消防設備点検資格者かをあらためて確認します。
既存の設備でも閉止弁の開閉維持と標識の設置は必須なので、次回点検までに整えておきます。
迷ったときは、点検票そのものを所轄消防署に見せて確認するのが確実です。

まずは設備台帳から確認してみます。

それが一番確実です、次の点検票で様式が変わっているか見てみましょう。

よくある質問

Q延べ面積が小さい建物でも点検資格者が必要ですか?
Aはい、必要です。全域放出方式の二酸化炭素消火設備が設置されていれば、消防法施行規則第三十一条の六の二により延べ面積や用途を問わず点検資格者による点検の対象になります。
QAND回路制御機能とはどんな仕組みですか?
A自動式の起動装置が二以上の火災信号がそろわないと作動しない仕組みです。一つの感知器の誤作動だけでは消火剤が放出されません。
Q既に設置されている古い設備にも新基準は適用されますか?
A起動用ガス容器などの新設は新規設置の設備が中心ですが、閉止弁の維持管理や標識の設置は既存の設備にも及びます。委託先に確認してください。
Q新しい点検票はいつから使われますか?
A令和5年4月1日以降に実施する点検からです。それより前の点検票は従来の様式のままで構いません。

まとめ

✔全域放出方式の二酸化炭素消火設備がある建物は、面積を問わず点検資格者による点検が必要です
✔きっかけは令和2年から令和3年にかけて相次いだ死亡事故でした
✔新しく設けられた基準は緊急停止装置・AND回路制御機能・音声警報・標識です
✔点検資格者に頼まなければならない対象は設備の有無だけで決まる珍しい区分です
✔既存設備でも閉止弁の維持管理と標識の設置は避けられません
✔新しい点検票が使われるのは令和5年4月1日以降に実施する点検からです
✔まずは設備台帳を確認し、委託先が消防設備士か消防設備点検資格者かを確かめましょう

設備の有無から確認すればいいんですね、やってみます!

点検票の切替えでご不安があれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防予第46号(令和5年1月23日)「消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式の一部を改正する件」及び「消防用設備等試験結果報告書の様式の一部を改正する件」の公布について
  • 消防法施行令第三十六条第二項第四号
  • 消防法施行規則第三十一条の六の二・第十九条第五項・第十九条の二

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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