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泡消火薬剤はなぜ水溶性液体用だけ検定を受けなくてよいのか|検定の技術基準そのものが対象外にしている理由を解説

泡消火薬剤はなぜ水溶性液体用だけ検定を受けなくてよいのか

消防用設備等の検定制度では、泡消火薬剤も検定対象機械器具等の一つに数えられています。
ところが同じ泡消火薬剤の中でも、水溶性液体用と呼ばれる種類だけは検定を受けなくてよいことになっています。
これは規制がゆるいという意味ではなく、検定の物差しとなる技術基準そのものが、この薬剤だけを最初から対象外にしているためです。
今回は水溶性液体用の泡消火薬剤はなぜ検定を受けなくてよいのか、検定を受ける他の泡消火薬剤との違いもあわせて解説します。

泡消火薬剤にも検定があるんですね。

はい、総務省令で外れる薬剤もあるんです。

水溶性液体用だけ検定が無いのはなぜですか。

はい、規格を定める省令自体が対象外なんです。

この記事の結論
  • 泡消火薬剤は検定対象機械器具等の一つに数えられている(消防法施行令第37条第3号)
  • 水溶性液体用泡消火薬剤だけは、総務省令によって検定対象から除かれている(消防法施行規則第34条の3)
  • 除かれる理由は、検定の技術基準を定める省令自体が水溶性液体用を対象外としているため
  • 検定を受ける泡消火薬剤にはたん白泡・合成界面活性剤泡・水成膜泡・大容量泡放水砲用泡の4種類がある
  • 検定対象外でも泡消火設備そのものは消防検査の対象から外れない

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泡消火薬剤の検定はどこで対象から外れるのか

泡消火薬剤はなぜ検定対象機械器具等に含まれているのか

認証タグの付いたドラム缶
消防用設備等の中には、設置してから点検するだけでなく、製造・販売の段階で国の検定を受けなければならない機械器具等があります。
泡消火薬剤も、このあらかじめ型式の検定を受ける対象の一つに数えられています。
問1 消防法第21条の2第1項の政令で定める消防の用に供する機械器具等には、どのようなものが含まれるか。
答1 消火器、消火器用消火薬剤(二酸化炭素を除く。)、泡消火薬剤(総務省令で定めるものを除く。)のほか、火災報知設備の感知器又は発信機等が含まれる。(消防法施行令第三十七条第一号から第三号まで)
泡消火薬剤は、消火器や消火器用消火薬剤と並んで検定対象機械器具等に指定されています。
条文では「泡消火薬剤(総務省令で定めるものを除く。)」という括弧書きが付けられており、泡消火薬剤の全てが検定対象になるわけではないことが読み取れます。
この括弧書きの中身を定めているのが、次に見る消防法施行規則の規定です。

括弧書きがあるということは、例外があるんですね。

はい、総務省令に委ねられた例外です。

水溶性液体用泡消火薬剤だけを対象から外す仕組み

虫眼鏡で照らす開いた規格書
施行令が「総務省令で定めるものを除く」と委ねた中身は、消防法施行規則に具体的に書かれています。
そこで名指しされているのが、水溶性液体用泡消火薬剤です。
問2 施行令第37条第3号の総務省令で定める泡消火薬剤とは何か。
答2 水溶性液体用泡消火薬剤とする。(消防法施行規則第34条の3)
検定対象から除かれる泡消火薬剤は、水溶性液体用泡消火薬剤に限定されています。
アルコール類やアセトンのように水に溶けやすい液体(水溶性液体)の火災に使うための泡消火薬剤だけが、名指しで対象外にされているということです。
一般的な油火災用の泡消火薬剤は、この規定には該当せず、検定を受ける側に残ります。

アルコール火災用の薬剤だけが特別扱いなんですね。

はい、水溶性液体用だけという限定です。

なぜこの薬剤だけ検定の技術基準そのものが存在しないのか

禁止マークの付いた2つの薬剤缶
除外の理由をたどっていくと、検定そのものの物差しになる技術基準の省令に行き当たります。
この省令が、そもそも自分の対象範囲を水溶性液体用まで広げていないのです。
問3 泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令は、どの範囲の泡消火薬剤について規格を定めているか。
答3 泡消火薬剤(水溶性液体用泡消火薬剤を除く。)の技術上の規格を定めるものとする。(泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令〈昭和50年自治省令第26号〉第1条)
検定に合格したかどうかを判定する物差しである技術基準の省令自体が、最初から水溶性液体用を対象外にしています。
検定は「決められた規格に適合しているか」を確認する制度なので、その規格が及ばない薬剤には検定のしようがないという構造です。
つまり水溶性液体用泡消火薬剤は、規制が甘いから外れているのではなく、規格の対象範囲そのものに含まれていないために検定を受けられないのです。

規格そのものが対象外だから検定もできない、ということですね。

はい、物差しが無いという理由です。

検定を受ける泡消火薬剤にはどんな種類があるのか

液面と炎が見える貯蔵タンク
水溶性液体用と対比する意味で、検定を受ける側の泡消火薬剤にどんな種類があるのかも見ておきます。
同じ技術基準の省令が、その種類を定義しています。
問4 泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令が定義する泡消火薬剤の種類にはどのようなものがあるか。
答4 たん白泡消火薬剤、合成界面活性剤泡消火薬剤、水成膜泡消火薬剤、大容量泡放水砲用泡消火薬剤の4種類が定義されている。(泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令第2条第2号から第5号まで)
検定を受ける泡消火薬剤には、基剤の違いで4つの種類が定義されています。
たん白質を加水分解したものを基剤とするたん白泡消火薬剤、合成界面活性剤を基剤とする合成界面活性剤泡消火薬剤、そのうち油面上に水の膜を作る水成膜泡消火薬剤、そして石油コンビナート等で使う大容量泡放水砲専用の泡消火薬剤の4種類です。
これらはいずれも油火災を主な対象とした薬剤で、水溶性液体用とは基剤も用途も別のグループとして扱われています。

薬剤の名前だけでも種類がいろいろあるんですね。

はい、基剤の違いで分かれています。

検定対象外でも泡消火設備そのものは消防検査を免れないのか

チェックリストと放射ノズル
ここまでの話は、あくまで薬剤という「モノ」に対する検定の話です。
薬剤が検定対象外だからといって、それを使う泡消火設備自体が消防検査から外れるわけではありません。
問5 消防用設備等の設置に係る工事が完了した場合、防火対象物の関係者はどのように届け出なければならないか。
答5 工事が完了した日から四日以内に消防長又は消防署長に別記様式第一号の二の三の届出書に、消防用設備等試験結果報告書等を添えて届け出なければならない。(消防法施行規則第31条の3第1項)
泡消火設備は、消防法施行令が定める消火設備の一つとして、他の消火設備と同じ届出・検査の仕組みに組み込まれています。
水溶性液体用泡消火薬剤を使う泡消火設備であっても、工事完了後4日以内に試験結果報告書を添えた届出が必要で、消防長又は消防署長による検査を受けます。(消防法施行令第7条第2項第5号)
薬剤そのものの検定と、設備を設置したあとの消防検査は、別の制度として並行して働いているのです。

検定と消防検査は別の話だったんですね。

はい、設備の届出と検査は別に続きます。

よくある質問

Q泡消火薬剤はすべて検定を受けなければなりませんか?
Aいいえ。水溶性液体用泡消火薬剤だけは、消防法施行規則第34条の3により検定対象から除かれています。
Qなぜ水溶性液体用だけ検定を受けなくてよいのですか?
A検定の物差しとなる技術基準の省令自体が、水溶性液体用泡消火薬剤を対象外としているためです。
Q検定を受ける泡消火薬剤にはどんな種類がありますか?
Aたん白泡・合成界面活性剤泡・水成膜泡・大容量泡放水砲用泡の4種類が定義されています。
Q水溶性液体用泡消火薬剤を使う設備は消防検査を受けなくてよいのですか?
Aいいえ。泡消火設備そのものは他の消火設備と同じ届出・検査の対象で、消防検査を受ける必要があります。

まとめ

✔泡消火薬剤は検定対象機械器具等の一つに数えられている
✔水溶性液体用泡消火薬剤だけは消防法施行規則第34条の3により検定対象から除かれる
✔除かれる理由は検定の技術基準を定める省令自体が対象外としているため
✔検定を受ける泡消火薬剤にはたん白泡・合成界面活性剤泡・水成膜泡・大容量泡放水砲用泡の4種類がある
✔検定対象外の水溶性液体用でも、泡消火設備は消防法施行令が定める消火設備の一つである
✔工事完了後は4日以内に試験結果報告書を添えて届出をしなければならない
✔薬剤の検定と設備の消防検査は別の制度として並行して働いている

検定と消防検査の違いがよく分かりました。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第21条の2第1項、消防法施行令第37条第3号(検定対象機械器具等・泡消火薬剤)
  • 消防法施行規則第34条の3(検定対象機械器具等の範囲から除かれる泡消火薬剤)
  • 泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令(昭和50年自治省令第26号)第1条・第2条第2号から第5号まで
  • 消防法施行令第7条第2項第5号(泡消火設備)
  • 消防法施行規則第31条の3第1項・第2項(消防用設備等の届出及び検査)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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