共同住宅等の消防用設備等には、消防法施行令第32条の特例規定に基づき、通常の基準とは別に共住特例という専用の設置基準が用意されています。
ただしこの共住特例(平成7年10月5日消防予第220号)で設置が認められている設備の中には、試験基準及び点検要領(平成10年3月31日消防予第45号及び第46号)に個別の定めがない事項も残っています。
例えば共同住宅用自動火災報知設備の差動式分布型感知器のように、設置は認められていても専用の試験方法が示されていない場合、現場ではどの基準で試験すればよいか迷う場面が出てきます。
今回は共住特例の設備に試験基準の定めがないときの考え方と、試験結果報告書の書き方から消防検査までの流れをあわせて解説します。
共同住宅の自動火災報知設備を工事したのですが、感知器の種類によっては試験基準が見当たりません。
それは共住特例で認められた設備かもしれません。
共住特例で設置は認められているのに、なぜ試験基準が無いのでしょうか。
実は試験基準の整備が後から追いついた設備なんです。
- 共同住宅等には消防法施行令第32条の特例規定に基づく共住特例(平成7年10月5日消防予第220号)がある
- 試験基準及び点検要領は平成10年3月31日消防予第45号及び第46号により後から整備された
- 共住特例で設置が認められていても試験基準及び点検要領に定めがない事項が残っている
- 定めがない事項は共住特例の適用を受けない通常の試験基準及び点検要領の例による
- 試験結果は消防用設備等試験結果報告書に記載し消防検査に備える
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目次
なぜ共住特例で認められた設備なのに試験基準に定めがないことが起こるのか

まずはこの特例がどのように生まれたのかを確認します。
施行令第32条は、消防長又は消防署長が防火対象物の位置構造設備の状況から判断して、通常の基準によらなくても火災の発生延焼のおそれが著しく少ないと認めるときは、通常の基準を適用しないことができると定めています。
この規定を受けて平成7年10月5日消防予第220号により、共同住宅等に専用の共同住宅用自動火災報知設備等の設置基準が示されました。
ところがこの通知が出た時点では、これらの専用設備をどう試験しどう点検するかという具体的な基準はまだ用意されていませんでした。
試験基準及び点検要領が整うまでには、さらに2年半ほどの時間差があったのです。
設置基準はあるのに、試験のやり方が無かった時期があったんですね。
はい、試験基準は後から整備されました。
試験基準や点検要領に定めがない事項はどの基準で試験すればよいのか

それでも、すべての事項が網羅できたわけではありませんでした。
平成10年3月31日消防予第45号は消防用設備等試験基準を、同日付けの消防予第46号は点検要領を、それぞれ共同住宅用スプリンクラー設備等に対応させる形で改正しました。
それでも共住特例で認められている設置方法のすべてに専用の試験項目が用意されたわけではなく、抜け落ちる組み合わせが残りました。
平成10年5月1日消防予第67号の執務資料は、この抜け落ちについて通常の試験基準及び点検要領の例によるという運用を明確にしています。
つまり共住特例という特別な設置根拠があっても、試験のやり方自体は通常の設備の物差しに戻るということです。
特例で設置した設備でも、試験は普通の設備と同じやり方でいいんですね。
はい、試験の物差し自体は共通です。
差動式分布型感知器はなぜこの取扱いの対象になる例として挙げられるのか

なぜこの感知器が例として選ばれているのかを見ていきます。
共同住宅用自動火災報知設備の設置基準は共住特例の中で定められていますが、感知器の種別ごとの試験方法まで共住特例専用に用意されているわけではありません。
差動式分布型感知器は通常の自動火災報知設備でも使われる感知器の一種で、天井に沿わせた空気管などを用いて熱を感知する仕組みを持ちます。
共住特例の設置基準に沿って共同住宅用自動火災報知設備の一部として差動式分布型感知器を選んだ場合、その試験方法は通常の自動火災報知設備における差動式分布型感知器の試験基準をそのまま使うことになります。
設置の根拠が共住特例であっても、感知器そのものの試験方法まで特例扱いにはならない、という線引きだと整理できます。
感知器の種類によっては、特例のほうに試験方法が用意されていないんですね。
はい、感知器の試験方法は共通のままです。
試験結果報告書の記入欄が合わないときはどう書けばよいのか

共同住宅用の設備専用の様式が用意されているわけではないためです。
消防用設備等試験結果報告書は平成元年消防庁告示第4号が定める共通の様式を使うことになっており、共同住宅用スプリンクラー設備等もこの様式で作成します。
共同住宅用の設備は通常の設備と項目立てが異なる部分があるため、様式の記入欄がそのまま当てはまらない場面が出てきます。
そうした記入欄の過不足は、備考欄の利用や記入欄の一部修正といった方法で、実態に合わせて対処してよいとされています。
つまり様式を新しく作る必要はなく、今ある様式の枠内で実測値や確認結果を漏れなく書き残すことが求められているのです。
様式の欄が足りないときは、勝手に判断してよいのか不安でした。
備考欄の活用で対応できます。
消防検査では共住特例の設備のどこが確認されるのか

共住特例の設備であっても、検査で確認される基本の枠組みは変わりません。
届出を受けた消防長又は消防署長は、消防用設備等試験結果報告書などの書類をもとに、共同住宅用自動火災報知設備等が定められた技術上の基準に適合しているかを検査します。
差動式分布型感知器のように試験基準を共住特例の外から借りてきた場合であっても、検査そのものは共住特例の設置基準と借用した試験基準の両方を満たしているかという視点で行われます。
検査の結果、技術上の基準に適合していると認められれば、通常の設備と同じように消防用設備等検査済証が交付されます。
共住特例は設置のハードルを実情に合わせて調整する仕組みであって、検査の合否を左右する別枠の基準を作るものではないという点を押さえておくとよいでしょう。
特例で設置しても、検査で見られることは普通の設備と同じなんですね。
はい、基準への適合がすべてです。
よくある質問
まとめ
共住特例の設備の試験の考え方がよく分かりました。
共同住宅の試験や点検のご依頼もお受けしています。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第32条(特例)
- 共同住宅等に係る消防用設備等の技術上の基準の特例について(平成7年10月5日消防予第220号)
- 消防用設備等試験基準の一部改正について(平成10年3月31日消防予第45号)
- 消防用設備等の点検要領の一部改正について(平成10年3月31日消防予第46号)
- 消防用設備等に係る執務資料の送付について(平成10年5月1日消防予第67号)問19
- 消防法施行規則第31条の3(消防用設備等の届出及び検査)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





