防火管理者として高さのある建物や大規模な建物を管理していると、増築の計画が出たときに主要構造部の耐火性能が今のままでよいのか気になる場面があります。
建築基準法第21条は、地階を除く階数が4以上、高さが16メートルを超える、または一定の特殊建築物で高さが13メートルを超える建物の主要構造部について、通常の火災に耐えられる性能を求めています。
既存不適格としてこの規定の適用を受けていない建物でも、増築や改築をすると原則としてこの基準が及びます。
この記事では、建築基準法施行令第137条の2の2が定める、増築等をしても現行基準を免れられる範囲を整理します。
うちのビル、高さが16メートルを超えているんですが、増築するとなると主要構造部を今の耐火基準に合わせないといけないんでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
増築や改築に係る部分が一定の要件を満たせば、それ以外の部分は現行基準に合わせずに済む場合があります。
その要件って、どんな内容なんですか。
施行令第137条の2の2が2つのルートを定めています。
順番に確認していきましょう。
- 既存不適格建築物が法第21条の適用を受けない場合でも、増築等をすると原則この基準が及びますが、施行令第137条の2の2が定める要件を満たせば増築等をする部分以外は現行基準を免れます(法第86条の7第1項)。
- 対象になるのは地階を除く階数が4以上、高さが16メートル超、または別表第一(5)項若しくは(6)項の特殊建築物で高さが13メートル超の建築物です。
- ルートは2つ。増築等に係る部分を火熱遮断壁等で区画し特定主要構造部の性能確認を受けるか、対象床面積の合計を延べ面積の20分の1(50平方メートル上限)以内に収め他の部分の危険性を増大させないかのいずれかです。
- 法第21条第1項向けは施行令第109条の5、第2項向けは施行令第109条の7が技術的基準を定めています。
- 対象床面積は階段室や機械室など火災発生のおそれが少ない部分の床面積を除いたものです。
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目次
建築基準法第21条が求める大規模建築物の主要構造部の基準とは何か

対象になるのは、建物の高さや階数、用途で区分される3つの類型です。
地階を除く4階以上、高さ16メートル超、または劇場や病院等(別表第一(5)項・(6)項)で高さ13メートル超の特殊建築物が該当します。
これらの建物は、主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根・階段)に木材等の可燃材料を使っている場合、通常火災終了時間が経過するまで倒壊・延焼を防がなければなりません。
第21条には第1項と第2項があり、それぞれ別の技術的基準を参照します。
既存不適格としてこの規定の適用を受けていない建物が増築等をする場合の緩和が、次章からの主題です。
高さや階数だけじゃなく、用途でも対象になるんですね。
うちの建物は今のところ既存不適格なんですが、増築したらどうなりますか。
増築の範囲によっては、対象になる部分とならない部分を分けて考えられます。
次の章で確認しましょう。
どんな既存不適格建築物が施行令第137条の2の2の対象になるのか

第1項向けと第2項向けとで、条文が分かれています。
第1項の建物は法第21条第1項(階数・高さ・用途による大規模建築物)、第2項の建物は法第21条第2項(延べ面積3,000平方メートル超)の適用を受けていない建物です。
どちらも増築又は改築だけが対象で、移転や大規模の修繕・模様替はこの条文の範囲外です(別の条文が担当します)。
自分の建物がどちらの項の既存不適格に当たるのかを、まず特定する必要があります。
次章で、増築等をする部分に求められる具体的な要件を見ていきます。
うちは延べ面積が3,000平方メートルを超えているので第2項のほうですね。
増築するときはどうすればいいんでしょうか。
増築に係る部分が一定の要件を満たせば、それ以外の部分は現行基準を免れます。
その要件を次に説明します。
増築や改築をする部分はどんな要件を満たせば現行基準を免れるのか

どちらのルートも、増築等に係る部分以外への影響を抑える考え方です。
第一号は、増築等に係る部分を火熱遮断壁等で区画したうえで、その特定主要構造部が施行令第109条の5の基準(通常火災終了時間の性能確認)に適合することを求めます。
第二号は区画を求めない代わりに、増築等に係る部分の対象床面積の合計を基準時における延べ面積の20分の1(上限50平方メートル)以内に収め、かつ他の部分の倒壊・延焼の危険性を増大させないことを求めます。
第2項(延べ面積3,000平方メートル超の建物)も同じ構造で、性能基準の参照先だけが施行令第109条の7に変わります。
どちらのルートを選ぶかは、増築の規模と建物の構造次第で判断します。
区画するか、床面積を抑えるか、どちらか選べばいいんですね。
第1項と第2項で気をつけることはありますか。
はい、参照する基準が違うので混同しやすい点があります。
次の章で見落としやすいポイントを説明します。
第1項と第2項で要件が変わる点はどこを見落としやすいのか

取り違えると、確認申請の段階で指摘を受けることになります。
つまり第109条の5の基準(通常火災終了時間の性能確認)は、第2項の建物でも満たせば足りる選択肢のひとつです。
一方で第2項の建物には周辺高火熱面積という、第1項には無い独自の基準(袖壁や塀を含めた延焼影響の範囲を一定規模以下に抑える基準)も用意されています。
どちらの項の建物か、どちらの基準で確認を取るのかを、増築計画の初期段階で特定行政庁または指定確認検査機関に確認しておくことが重要です。
思い込みで進めると、確認申請の審査段階で構造方法の選定からやり直す事態になりかねません。
第1項と第2項、どちらの建物か分からないまま計画を進めるのは危ないですね。
最後に確認の手順を教えてください。
最後に増築計画を立てるときの確認手順をまとめます。
増築等を計画するときはなにを確認すればよいか

判断に迷う部分は、早めに特定行政庁や専門家へ相談するのが安全です。
- 自分の建物が法第21条第1項(階数・高さ・用途)と第2項(延べ面積3,000平方メートル超)のどちらの既存不適格に当たるかを確認する
- 増築等に係る部分を火熱遮断壁等で区画して性能確認を受けるか、対象床面積の合計を延べ面積の20分の1(50平方メートル上限)以内に収めるか、どちらのルートを選ぶかを決める
- 対象床面積の計算では階段室・機械室等の面積を除いてよいことを踏まえて増築の規模を検討する
- 第1項向けの施行令第109条の5と第2項向けの施行令第109条の7を取り違えないよう、自分の建物がどちらの項に当たるかを先に特定する
- 増築等の着工前に特定行政庁または指定確認検査機関へ構造方法の選定について相談する
着工後に要件を満たさないと分かると、構造方法の再検討や工期の見直しが必要になります。
ルートを先に決めて、必要な性能確認を早めに進めます。
次はよくある質問も見てみます。
はい、あわせてご確認ください。
次によくある質問をまとめました。
よくある質問
まとめ
増築を計画するときは、法第21条第1項と第2項のどちらに当たるかを先に確認します!
建築物の増築や改築をお考えの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第3条・第21条・第86条の7
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第109条の5・第109条の7・第137条の2の2
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における該当性は、構造や規模、周辺の状況によって異なります。具体的な判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。





