屋外タンク貯蔵所で硫黄を貯蔵するタンクには、消火設備の種類そのものに制限がかかっています。
理由は、硫黄が高温で溶けたまま貯蔵されているという性質にあります。
一般的な消火栓やスプリンクラー設備とは別の区分の消火設備を用意しなければなりません。
この記事では平成元年の通達が定めた水蒸気消火設備の適用範囲と基準を解説します
うちの屋外タンク貯蔵所では硫黄を扱っているのですが、消火設備は普通の水系設備でよいのでしょうか。
硫黄を溶かした状態で貯蔵するタンクには、水蒸気消火設備か水噴霧消火設備が定められています。
まずはその理由から確認しましょう。
水をそのままかける消火栓ではだめなんですか。
はい、高温で貯蔵されているという硫黄の性質が理由です。
順番に見ていきましょう。
- 硫黄を溶かした状態で貯蔵する屋外タンク貯蔵所等には水蒸気消火設備又は水噴霧消火設備の設置が定められています
- 水蒸気消火設備が使えるのは硫黄等の溶融物又は引火点100℃以上の第四類危険物を貯蔵するタンクに限られます
- 高温で貯蔵されているという性質を考慮し、水を直接かける設備ではなく蒸気や水噴霧が選ばれています
- 水蒸気発生装置には内容積1立方メートルにつき三・五キログラム毎時以上、〇・七メガパスカル以上という能力基準があります
- 予備動力源は屋内消火栓設備より長い1時間30分以上の容量が求められます
▼
目次
硫黄を貯蔵するタンクはなぜ水をそのままかける消火設備を使えないのか

この性質が、消火設備の種類を絞り込む理由になっています。
硫黄は溶融点を超えた高温の液体として貯蔵されており、大量の水を急に浴びせると水蒸気の急激な発生や飛び散りを招くおそれがあります。
そこで通達は、危険物の性状を考慮したうえで、水を霧状に分散して放射する水噴霧消火設備か、水そのものではなく蒸気を送り込む水蒸気消火設備のどちらかを設けることとしました。
どちらも「大量の水を直接かけない」という発想は共通しています。
なるほど、溶けた硫黄に大量の水をかけると危ないということですね。
そのとおりです。
だから蒸気や細かい水噴霧が選ばれています。
水蒸気消火設備はどのタンクに設置できるのか

対象になるのは屋外タンク貯蔵所と屋内タンク貯蔵所の両方です。
一般的な第四類危険物(ガソリンや軽油など引火点の低いもの)を貯蔵するタンクは対象になりません。
自社のタンクが対象かどうかは、貯蔵している危険物の品名と引火点を危険物確認証や許可申請書類で確かめれば分かります。
引火点70℃以上の第四類危険物のタンクは、別区分(水噴霧消火設備又は固定式泡消火設備)が定められているため、水蒸気消火設備の対象とは別に考える必要があります。
うちのタンクが対象になるかどうかはどう見分ければいいですか。
貯蔵している危険物が硫黄等か、引火点100℃以上の第四類かで判断します。
許可申請書類の危険物の種類を確認してみてください。
水蒸気消火設備の基準は何を求めているのか

条文と通達の両方を確認しておく必要があります。
条文(規則第32条の4)は水蒸気発生装置そのものの能力(毎時三・五キログラム以上、〇・七メガパスカル以上、一時間以上の連続放射)を定めています。
通達の別紙は、それだけでは決まらない周辺設備の細目(予備動力源の容量、配管の材質、設置場所、耐震措置)を補っています。
点検のときは、この2つを合わせて確認する必要があります。
水蒸気発生装置にも細かい能力の基準があるんですね。
はい、内容積1立方メートルあたり毎時三・五キログラム以上という基準です。
点検記録に載っているはずです。
水蒸気消火設備の運用で見落としやすいのはどこか

特に予備動力源の容量は取り違えやすいポイントです。
別紙は「屋内消火栓設備の基準の例による」としながらも、容量そのものは屋内消火栓設備の45分より長い1時間30分以上と別に定めています。
配管についても、高温の蒸気を送るための金属製等耐熱性のある材質という指定を見落としやすいところです。
また、水蒸気消火設備が使えるのは硫黄等の溶融物か引火点100℃以上の第四類危険物のタンクに限られるため、対象外の危険物のタンクに設けようとする誤りにも注意が必要です。
予備動力源の容量、屋内消火栓設備と同じだと思っていました。
水蒸気消火設備は1時間30分以上と、屋内消火栓設備の45分より長い基準です。
点検記録を見直してみてください。
水蒸気消火設備がある施設は明日から何を確認すればよいのか

次の4点を順番に見ていくと分かりやすくなります。
- 貯蔵している危険物が硫黄等の溶融物か引火点100℃以上の第四類危険物かを許可申請書類で確認する
- 設置されている設備が水蒸気消火設備か水噴霧消火設備かを設計図書で確認する
- 予備動力源の容量表示が1時間30分以上になっているかを点検記録で確認する
- 配管の材質が金属製等耐熱性のあるものになっているかを確認する
特に予備動力源の容量は数字だけを見て安心せず、「屋内消火栓設備と同じ45分」になっていないかを必ず確かめてください。
不明な点があれば、設計図書を作成した業者か所轄消防署に確認するのが確実です。
確認することが分かりました、さっそく図面を見てみます。
危険物の種類・設備の種類・予備動力源の容量・配管材質の4点を順番に見ていくとよいです。
不明な点があれば教えてください。
よくある質問
まとめ
屋外タンク貯蔵所の硫黄について、水蒸気消火設備の位置づけがよく分かりました。
屋外タンク貯蔵所の消火設備は種類の選び方が特に分かりにくい分野です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消火設備及び警報設備に係る危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令の運用について(平成元年3月22日 消防危第24号 消防庁危険物規制課長)第1 消火設備に関する事項
- 同通達 別紙 消火設備及び警報設備に関する運用指針 第1・第5
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第32条の4(水蒸気消火設備の基準)
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第33条第2項の表(著しく消火困難な製造所等及びその消火設備)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





