危険物を貯蔵し、又は取り扱う施設は、周囲の建物との間に一定の距離=保安距離を保たなければなりません。
令和7年9月30日、消防庁はこの保安距離の対象施設に新しい福祉施設を加える改正を通知しました(消防危第212号)。
加わったのは、障害者総合支援法の改正で創設された「就労選択支援」という障害福祉サービスの施設です。
危険物の規制に関する規則第11条第4号リの障害福祉サービス事業のリストに、就労選択支援が新たに加わりました。
近くに新しい福祉施設ができるようなのですが、うちの危険物施設と関係ありますか。
その施設が就労選択支援なら、保安距離の対象になる可能性があります。
まずは制度の背景から確認しましょう。
就労選択支援という言葉自体、今日はじめて聞きました。
令和7年10月に始まったばかりの新しい障害福祉サービスです。
順番に見ていきます。
- 就労選択支援の用に供する施設が、危険物の規制に関する規則第11条第4号リの対象に新たに加わりました。
- 根拠は消防危第212号(令和7年9月30日)による省令改正です。
- 対象になるのは収容人員20人以上の施設で、危険物施設から30メートルの保安距離が必要になります。
- 就労選択支援は、働き方を選ぶ前の適性評価を行う新しい障害福祉サービスです。
- 施行日は令和7年10月1日で、障害者総合支援法の改正と同日にそろえられました。
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目次
就労選択支援はなぜ保安距離の対象施設に加わったのか

きっかけは、障害者総合支援法の改正で「就労選択支援」という新しい障害福祉サービスが創設されたことです。
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)が令和4年に改正され、この新サービスが創設されました。
危険物施設から一定の距離を保つべき施設の一覧は総務省令(危険物の規制に関する規則)に委任されており、新しいサービスが生まれるたびにこの一覧を更新する必要があります。
消防危第212号は、就労選択支援という新設サービスの施設を、既存の障害福祉サービス事業と同じ扱いにする改正です。
次は、具体的にどの条文のどの部分が対象になるのかを見ていきます。
施設の種類が増えるたびに、消防の規則も変わるものなんですね。
新しい福祉サービスができるたびに一覧が更新されます。
次は対象になる条文を確認しましょう。
就労選択支援のどの施設が保安距離の対象になるのか

就労選択支援は、この条文のどの号に加わったのでしょうか。
リ号は、生活介護・自立訓練・就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援という5種類の障害福祉サービスを行う施設をまとめて対象にしています。
条件は収容人員20人以上で、これは老人福祉施設や児童福祉施設など他の号と同じ基準です。
対象になるのは製造所だけでなく、屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所・一般取扱所などにも準用されるため、危険物施設の種類を問わず確認が必要です。
次は、就労選択支援そのものがどんな支援を行うサービスなのかを見ていきます。
グループホームだけでなく、こんな施設も対象になるんですね。
収容人員20人以上かどうかがポイントです。
次は就労選択支援の中身を見ましょう。
就労選択支援とはどんな支援を行うサービスなのか

就労移行支援や就労継続支援とは何が違うのかを確認します。
短期間の作業体験を通じて本人の適性・知識・能力を評価し、就労移行支援や就労継続支援、一般就労のどれが合っているかを一緒に整理します。
就労移行支援や就労継続支援が実際に働く場を提供するのに対し、就労選択支援はその手前の選択を支援する点が異なります。
根拠となる改正法は令和4年法律第104号で、施行日は危険物規則の改正と同じ令和7年10月1日にそろえられました。
次は、この条文を読むときに見落としやすいポイントを確認します。
就労移行支援と何が違うのか分からなかったので助かります。
働く前の適性評価に特化したサービスです。
次は見落としやすい点を確認しましょう。
見落としやすいのはどこか

順番に確認していきます。
リ号の対象は20人以上を収容できる施設に限られるため、小規模な事業所は保安距離の対象になりません。
2つ目は、リ号には就労選択支援以外にも4種類のサービスが列挙されている点です。
生活介護や自立訓練、就労移行支援、就労継続支援の施設も同じリ号の対象なので、「就労選択支援だけ特別扱い」と誤解しないよう注意が必要です。
3つ目は、確認の義務を負うのは危険物施設を設置する側だという点です。福祉施設の運営者に距離確保の義務があるわけではありません。
次は、明日から何を確認すればよいかを整理します。
うちは危険物施設側なので、これは確認しておかないといけませんね。
危険物施設を新設・変更するときに確認が必要です。
次は具体的な手順を見ましょう。
明日から何を確認すればよいのか

就労選択支援施設を新たに開設する側にも、確認しておきたい点があります。
①危険物施設を新設・変更する場合は、周囲30メートルの範囲に就労選択支援施設を含む福祉施設が無いかを確認します。
②該当する施設があれば、収容人員20人以上かどうかをリ号のイからリまでと照らして確認します。
③逆に就労選択支援施設を新たに開設する事業者は、近隣に危険物施設が無いかを所轄消防署に相談しておくと計画が後戻りしません。
④この改正は令和7年10月1日からすでに施行されているため、現在計画中の施設にもそのまま適用されます。
施設を計画する段階で消防に相談しておけば安心ですね。
早めの相談がいちばんの近道です。
よくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
まとめ
就労選択支援と保安距離の関係がすっきり整理できました。
収容人員20人以上かどうかをまず確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令等の公布について」(令和7年9月30日 消防危第212号 消防庁次長)
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第11条
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第5条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





