住宅地や商業施設の敷地の境目で、コンクリートや石で組まれた擁壁を見かけることがあります。
擁壁は建物ではなく「工作物」ですが、一定の高さを超えると建築基準法の対象になります。
背後の土砂を支え続ける構造物である以上、見た目以上に厳しい基準が定められています。
対象になれば、材料の選び方から建物と同じ構造強度の規定まで、幅広い基準を満たさなければなりません。
うちの敷地の境目に高さ3メートルほどの擁壁があるんですが、あれも建築基準法の対象になるんですか。
高さ2メートルを超える擁壁なら、建築基準法施行令の対象になり、材料や構造にも基準がかかりますよ。
土を支えているだけの壁なのに、そんなに細かい基準があるんですね。
崩れれば背後の土砂ごと隣地や道路に流れ出すからです。
今日はその基準を一緒に確認しましょう。
- 高さ2メートルを超える擁壁は「工作物」として建築基準法施行令の対象になります。
- 主要な部分を鉄筋コンクリート造や石造等の腐食しない材料とし、石造では裏込めコンクリートで石を結合しなければなりません。
- 仕様どおりの構造方法を選ぶか、国土交通大臣が定める基準の構造計算で安全性を確かめるか、いずれかのルートを満たす必要があります。
- 対象になると、建物の基礎や鉄筋コンクリート造と同じ構造強度の規定が広く準用されます。
- 工事現場の危害防止に関する規定(第七章の8)も準用され、施工中の安全対策も求められます。
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目次
なぜ高さ2メートルを超える擁壁にも建物と同じ基準がかかるのか

擁壁もこの仕組みの対象で、根拠になっているのが建築基準法施行令第142条です。
政令(建築基準法施行令)が対象の種類と具体的な基準を定める仕組みは、他の工作物とまったく同じです。
条文が守ろうとしているのは擁壁の破壊及び転倒の防止で、背後の土砂を支え続けられなくなる事態を避けることが目的です。
根拠となる建築基準法第88条第1項は、擁壁を含む工作物ごとに個別の政令が対象と基準を定める仕組みそのものを支えています。
まずは自分の敷地にある擁壁がこの対象に入るかどうかを、次の章で確認しましょう。
うちの擁壁も、建築基準法が関係あるとは思ってもみませんでした。
高さの条件を満たせば対象になります。
次は具体的にどんな擁壁が対象かを見ていきましょう。
どんな擁壁が対象になるのか

他の工作物と比べても、境目になる高さはかなり低く設定されています。
煙突の6メートルや広告塔の4メートルと比べても、擁壁の境目は際立って低く、住宅の敷地にある擁壁でも対象になりやすい水準です。
高さは、擁壁の下端から上端までの垂直距離で測るのが基本で、盛土や地盤の高低差を含めた実際の高さで判断します。
自分の敷地にある擁壁の高さを、まず実測することから始めましょう。
他の工作物より対象になる高さがずいぶん低いんですね。
うちの擁壁も対象になりそうです。
高さを測るところが第一歩ですね。
対象に入ると分かったら、次は何を満たすかを見ましょう。
擁壁を新しく造るときは何を満たさなければならないのか

土を支えるだけの壁だからといって、簡易な扱いにはなりません。
石造にする場合は、コンクリートで裏込めして石と石を十分に結合しなければならず、石を積んだだけの構造は認められません。
さらに裏面の排水を良くするため水抜穴を設け、その周辺に砂利等を詰めることも条件のひとつです。
そして最後に、選んだ構造方法が国土交通大臣の定める基準に従った構造計算によって安全性を確かめられたものであることが求められます。
つまり材料・裏込め・水抜穴という仕様を満たしたうえで、さらに構造計算による安全性の裏付けまで必要になる二段構えの規定です。
石を積んだだけの塀のような擁壁は、そのままだと基準を満たさないということですか。
その通りです。
コンクリートによる裏込めと水抜穴が無いと、この基準を満たしません。
擁壁にも建物と同じ構造強度の規定が広く準用されるとはどういうことか

建物の構造強度に関する規定そのものが、そのまま擁壁にも及びます。
構造部材の耐久性(第37条)、地盤の変形に対する基礎の安全性(第38条)に加え、コンクリートの材料・鉄筋の継手及び定着・コンクリートの強度・養生・かぶり厚さ(第72条〜第75条・第79条)まで、建物の柱やはりと同じ水準の規定がそのまま準用されます。
無筋コンクリート造で造る場合には第80条が、木造など他の構造方法に関する補則として第80条の2が準用される点も見落としやすいところです。
さらに工事現場の危害の防止を定める第七章の8(第136条の6を除く)も準用されるため、施工中の擁壁にも仮囲いや落下物対策が求められます。
擁壁のコンクリートは、建物の柱やはりと同じ材料・施工基準で造らなければならないと理解しておくことが重要です。
擁壁専用の基準があるだけかと思っていましたが、建物の柱と同じ規定まで関わってくるんですね。
そうなんです。
最後に、明日からの確認手順をまとめますね。
擁壁を新設や改修するときは何を確認すればよいか

手元の擁壁に当てはめて、順番に確かめていきましょう。
- 擁壁の高さが2メートルを超えるかをまず実測する。
- 材料が鉄筋コンクリート造や石造等の腐食しない材料になっているか確認する。
- 石造の場合は裏込めコンクリートと水抜穴の有無を確認する。
- 確認申請書類や構造計算書に安全性を確かめた記録が残っているか確認する。
- 改修や増し積みを検討する際は、かぶり厚さ等の構造強度の規定まで満たせるか設計段階で確認する。
擁壁の水抜穴は経年で詰まりやすく、日常の点検記録を防火管理者としても把握しておくと、いざというときの説明に役立ちます。
まずは擁壁の高さを測るところから、施設の担当と確認してみます。
それが一番確実な第一歩です。
最後によくある質問をまとめておきますね。
よくある質問
まとめ
擁壁も建物の柱と同じ基準がかかるなんて、今日確認できてよかったです。
書類の確認や設計士への相談でお困りの際は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第88条第1項
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第138条第1項第5号(工作物の指定)
- 建築基準法施行令第142条(擁壁)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の擁壁が対象に当たるかどうかや確認申請の要否は、所轄の特定行政庁または指定確認検査機関にご確認ください。条例や運用は自治体ごとに異なる場合があります。





