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観覧車やコースターにも建物と同じ建築基準がかかるのか|建築基準法施行令第144条が定める遊戯施設の技術基準を解説

観覧車やコースターも建物と同じ安全基準を満たすことを示すアイキャッチ画像

遊園地や商業施設の屋上にある観覧車やコースターも、建築基準法の対象になることをご存知でしょうか。
これらは建築物ではなく「工作物」として指定され、建物とは別の条文で構造基準が定められています。
対象になる遊戯施設の範囲を誤ると、確認申請の段階で思わぬ差し戻しを受けることがあります。
この記事では建築基準法施行令第144条が定める遊戯施設の技術基準を、対象範囲と高さの切り口で整理します。

うちの商業施設の屋上に観覧車を設置する計画があるんですけど、これも建築基準法の対象になるんですか。
遊具というだけで確認とは関係ないと思っていました。

施行令第138条第2項の指定を受ける遊戯施設は、建物に準じる工作物として第144条の基準がかかります。
まずは対象になる範囲から確認しましょう。

遊戯施設の基準なんて考えたこともなかったです。
どんな内容なのか教えてください。

建築基準法施行令第144条に、支持部分や客席部分ごとの基準がまとめられています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 建築基準法施行令第138条第2項第2号・第3号が指定する遊戯施設(高架のコースター等、原動機を使う回転運動系)は、施行令第144条の技術基準の対象になります。
  • 観光用エレベーター・エスカレーター(同項第1号)は対象が別で、施行令第143条の基準に従います。
  • 主要な支持部分は、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるか、認定を受けたものでなければなりません。
  • 客席部分は脱落や衝撃で人を落下させない構造とし、定員を明示した標識を掲示しなければなりません。
  • 高さ60メートルを超える遊戯施設は国土交通大臣の認定を受けた構造方法が必須になります。

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遊戯施設が対象の種類・客席部分・非常止め装置・認定の要否を確認して建物と同じ安全基準を満たすことを示す図解

なぜ観覧車やコースターにも建築基準法の基準がかかるのか

低層の建物とその隣に立つ観覧車のような遊戯施設を示すイラスト
観覧車やコースターは、敷地内に建物と並んで設置されていても、建築基準法上は建築物本体とは別の「工作物」として扱われます。
建築物には法第20条の構造耐力に関する規定が直接適用されますが、遊戯施設のような工作物には別のルートで基準が及びます。
建築基準法施行令第百四十四条(抜粋) 第百三十八条第二項第二号又は第三号に掲げる遊戯施設(以下この条において単に「遊戯施設」という。)に関する法第八十八条第一項において読み替えて準用する法第二十条第一項の政令で定める技術的基準は、次のとおりとする。
遊戯施設の構造基準も、法第88条第1項が法第20条を読み替えて準用する形で定められています。
つまり観覧車やコースターは建築物そのものではなく、建築物に準じる工作物として構造耐力の基準を受け止める仕組みです。
この準用のしくみがあるため、遊戯施設固有の基準が施行令第144条にまとめて置かれています。
まずはどの遊戯施設が対象になるのかを次に確認します。

観覧車も工作物として扱われるんですね。
てっきり遊具というだけで、建築確認とは関係ないと思っていました。

法律上は工作物という区分になります。
次は対象の範囲を見てみましょう。

どんな遊戯施設が施行令第144条の対象になるのか

観光用エレベーターとコースターと観覧車を並べて対象の範囲を示すイラスト
すべての遊戯施設が施行令第144条の対象になるわけではありません。
まず施行令第138条第2項が、対象になる工作物の範囲を指定しています。
建築基準法施行令第百三十八条第二項 昇降機、ウオーターシユート、飛行塔その他これらに類する工作物で法第八十八条第一項の規定により政令で指定するものは、次の各号に掲げるものとする。一 乗用エレベーター又はエスカレーターで観光のためのもの(一般交通の用に供するものを除く。) 二 ウオーターシユート、コースターその他これらに類する高架の遊戯施設 三 メリーゴーラウンド、観覧車、オクトパス、飛行塔その他これらに類する回転運動をする遊戯施設で原動機を使用するもの
施行令第144条が対象とするのは、このうち第二号と第三号に掲げる遊戯施設だけです。
ウオーターシユートやコースターのような高架の遊戯施設(第二号)、メリーゴーラウンド・観覧車・オクトパス・飛行塔のような原動機を使う回転運動系の遊戯施設(第三号)が、第144条にいう「遊戯施設」にあたります。
第一号の観光用エレベーター・エスカレーターは、同じ第138条第2項の指定を受けながらも、施行令第143条という別の条文の基準に従います。
対象になったら、次は何を満たさなければならないかを確認していきます。

観光用のエレベーターも同じ遊戯施設に入るんですか。

いいえ、観光用エレベーター・エスカレーターは第143条という別の条文です。
次は第144条が定める中身を見ていきましょう。

対象になると遊戯施設は何を満たさなければならないのか

支持部分と客席部分と定員標識を示すイラスト
対象になった遊戯施設は、施行令第144条第1項が定める複数の基準を満たさなければなりません。
まず主要な支持部分の基準を確認します。
建築基準法施行令第百四十四条第一項第一号イ(抜粋) 籠、車両その他人を乗せる部分(以下この条において「客席部分」という。)を支え、又は吊つる構造上主要な部分(以下この条において「主要な支持部分」という。)のうち摩損又は疲労破壊が生ずるおそれのある部分以外の部分の構造は、構造耐力上安全なものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものであること。
主要な支持部分は、構造耐力上安全なものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものでなければなりません。
さらに客席部分の構造にも基準があります。
建築基準法施行令第百四十四条第一項第三号(抜粋) 遊戯施設の客席部分の構造は、次に掲げる基準に適合するものとすること。イ 走行又は回転時の衝撃及び非常止め装置の作動時の衝撃が加えられた場合に、客席にいる人を落下させないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。ロ 客席部分は、堅固で、かつ、客席にいる人が他の構造部分に触れることにより危害を受けるおそれのないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものであること。ハ 客席部分には、定員を明示した標識を見やすい場所に掲示すること。
客席部分は、走行・回転時の衝撃や非常止め装置作動時の衝撃で客席にいる人を落下させない構造とし、他の構造部分に触れて危害を受けるおそれのないものでなければなりません。
さらに客席部分には定員を明示した標識を見やすい場所に掲示することが義務付けられています。
次は動力が切れた場合などの安全装置を確認します。
建築基準法施行令第百四十四条第一項第四号 動力が切れた場合、駆動装置に故障が生じた場合その他客席にいる人が危害を受けるおそれのある事故が発生し、又は発生するおそれのある場合に自動的に作動する非常止め装置を設けること。
動力が切れた場合や駆動装置の故障などで事故が発生し、または発生するおそれがある場合に、自動的に作動する非常止め装置を設けなければなりません。
この非常止め装置は、自動的に作動し、かつ客席部分以外の遊戯施設の部分に衝突することなく制止できる構造とすることも求められています。

定員の標識まで法律で決まっているんですね。
うちの遊戯施設にも掲示があるか確認します。

支持部分・客席部分・非常止め装置の3点セットで押さえてください。
次は高さによる違いを見てみましょう。

高さ60メートルや工事中の扱いはどう変わるのか

組み立て途中の遊戯施設を仮設の柵で囲んだイラスト
遊戯施設には、高さによって求められる安全確認の方法が変わる境目があります。
建築基準法施行令第百四十四条第一項第一号ロ・ハ(抜粋) ロ 高さが六十メートルを超える遊戯施設にあつては、その用いる構造方法が、荷重及び外力によつて主要な支持部分に連続的に生ずる力及び変形を把握することその他の国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて安全性が確かめられたものとして国土交通大臣の認定を受けたものであること。 ハ 高さが六十メートル以下の遊戯施設にあつては、その用いる構造方法が、次の(1)又は(2)のいずれかに適合するものであること。(1)国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて確かめられる安全性を有すること。(2)ロの国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて安全性が確かめられたものとして国土交通大臣の認定を受けたものであること。
高さ60メートルを超える遊戯施設は、構造計算だけでは足りず、国土交通大臣の認定を受けた構造方法を用いることが必須です。
高さ60メートル以下であれば、構造計算のみで安全性を確かめる方法と、認定を受けた構造方法のどちらかを選べます。
さらに遊戯施設には、設置や解体の工事そのものにも安全確保の規定が及びます。
建築基準法施行令第百四十四条第二項(抜粋) 遊戯施設については第七章の八の規定を、その主要な支持部分のうち摩損又は疲労破壊が生ずるおそれのある部分については第百二十九条の四(第一項第一号イを除く。)及び第百二十九条の五第一項の規定を準用する。
遊戯施設には工事現場の危害の防止を定めた第七章の八の規定も準用されるため、完成後の構造だけでなく組立・解体の工事中の安全対策も求められます。
また摩損や疲労破壊のおそれがある主要な支持部分には、エレベーターの規定(施行令第129条の4・第129条の5)が「かご」を「客席部分」に読み替えて準用されます。

高さで基準が変わるのは知りませんでした。
うちの遊戯施設の高さも確認します。

60メートルを境に認定の要否が変わります。
最後に確認の手順をまとめます。

遊戯施設を設置・点検するときは何を確認すればよいか

チェックリストと遊戯施設の模型と巻尺を示すイラスト
遊戯施設を新設・改修するときは、次の点を順番に確認してください。
支持部分・客席部分・非常止め装置・高さの4つの視点で見ることが大切です。
  • 遊戯施設が施行令第138条第2項第2号(高架の遊戯施設)または第3号(原動機を使う回転運動系)のいずれかに当てはまるかを確認する
  • 主要な支持部分が国土交通大臣が定めた構造方法または認定を受けた構造方法によっているかを確認する
  • 客席部分の構造(脱落防止・定員標識の掲示)を確認する
  • 動力異常時に自動的に作動する非常止め装置が設けられているかを確認する
  • 高さが60メートルを超えるかどうかを確認し、超える場合は国土交通大臣の認定の有無を確認する
観光用エレベーター・エスカレーターは第143条の基準に従うため、遊戯施設と混同しないよう注意しましょう。
点検のたびに支持部分・客席部分・非常止め装置の状態をあわせて確認する習慣をつけましょう。

支持部分・客席部分・非常止め装置、順番に確認していきます。
今度の点検のときに見てみます。

その4つを押さえれば大丈夫です。
気になることがあれば早めに確認しましょう。

よくある質問

Q遊戯施設であれば種類を問わず施行令第144条の対象になりますか?
Aいいえ。対象になるのは施行令第138条第2項第2号(ウオーターシユート・コースター等の高架遊戯施設)と第3号(メリーゴーラウンド・観覧車・オクトパス・飛行塔等の原動機を使う回転運動系遊戯施設)に限られます。観光用エレベーター・エスカレーター(同項第1号)は第143条の基準に従います。
Q客席部分にはどんな基準がありますか?
A走行・回転時の衝撃や非常止め装置作動時の衝撃で人を落下させない構造とし、他の構造部分に触れて危害を受けないものであることが求められます。さらに定員を明示した標識を見やすい場所に掲示しなければなりません。
Q高さ60メートル以下の遊戯施設は構造計算だけで足りますか?
Aはい。高さ60メートル以下であれば、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって安全性を確かめる方法と、認定を受けた構造方法のどちらかを選べます。60メートルを超える場合は認定を受けた構造方法が必須です。
Q遊戯施設の設置工事や解体工事には何か規定がありますか?
Aあります。遊戯施設には工事現場の危害の防止を定めた第七章の八の規定が準用されるため、完成後の構造基準だけでなく組立・解体の工事中の安全対策も求められます。

まとめ

✔建築基準法施行令第144条は、施行令第138条第2項第2号・第3号が指定する遊戯施設(高架の遊戯施設、原動機を使う回転運動系遊戯施設)について、法第88条第1項が読み替えて準用する法第20条の技術的基準を定めています。
✔観光用エレベーター・エスカレーター(同項第1号)は対象が別で、第143条の基準に従います。
✔主要な支持部分は、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるか、認定を受けたものでなければなりません。
✔客席部分は、衝撃で人を落下させない構造とし、定員を明示した標識を掲示しなければなりません。
✔動力が切れた場合や故障などで事故が発生・発生するおそれがある場合に自動的に作動する非常止め装置を設けなければなりません。
✔高さ60メートルを超える遊戯施設は国土交通大臣の認定を受けた構造方法が必須です。60メートル以下は構造計算のみでも認められます。
✔遊戯施設には工事現場の危害の防止を定めた第七章の八の規定も準用され、組立・解体工事中の安全対策も求められます。

遊戯施設の支持部分と客席部分、今度の点検で確認してみます!

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第20条・第88条
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第138条・第143条・第144条

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の遊戯施設の構造や認定の要否についての判断は、必ず特定行政庁または指定確認検査機関にご確認ください。

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