BLOG

スプリンクラー設備の水損事案はなぜ相次いだのか|開放型と閉鎖型で消防庁が求める点検と工事の留意点を解説

スプリンクラー設備の水損事案が相次いだ理由を示す舞台のあるホールのアイキャッチ

劇場や文化センターの舞台で、火事でもないのにスプリンクラー設備が放水したら、客席も舞台も水浸しになります。
消防庁は令和4年11月24日、こうした水損事案が相次いでいるとして、防火対象物の関係者への注意喚起を都道府県などに依頼しました。
事務連絡が挙げた事案は、大阪市・横浜市・静岡県裾野市の3件で、開放型と閉鎖型の両方が含まれています。
この記事では、その事務連絡をもとに、点検や工事のときに何を確認すればよいかを解説します。

スプリンクラー設備は、火事のときだけ水が出るものだと思っていました。

消防庁が、水損事案の再発防止を求める事務連絡を出しました。

うちの建物にも舞台やホールがあるのですが、何に気をつければよいのでしょうか。

事務連絡は、点検と工事の2つの場面で確認する点を挙げています。
順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防庁予防課は令和4年11月24日付けの事務連絡で、スプリンクラー設備による水損事案の再発防止のため、防火対象物の関係者への注意喚起を依頼しました。
  • 挙げられた事案は、静岡県裾野市(9月24日)・横浜市(10月17日)・大阪市(11月15日)の3件で、原因はいずれも調査中と書かれています。
  • 開放型のうち、1つの感知器の信号で自動的に放水するものは、感知器への埃・水滴の付着や電気配線への漏水のおそれを重点的に確認するよう求められています。
  • 開放型では、配管の腐食や手動起動弁・電動弁・止水弁・自動排水弁の作動状況も確認し、減圧開放式の一斉開放弁は加圧開放式への変更を検討することが望ましいとされています。
  • 閉鎖型では、工事でヘッドを破損したり、熱源を近づけて加熱したりしないよう留意し、点検の徹底と不具合の早期改修が求められています。

▼

スプリンクラー設備の水損を防ぐ4つの確認点の概要図解

スプリンクラー設備の水損事案はなぜ消防庁の事務連絡になるまで相次いだのか

吹き抜けのホールと天井から落ちる水滴と水たまりのイラスト
この事務連絡は、水損事案が続いたことを受けて出されました。
9月から11月の間に、開放型と閉鎖型の両方で水が出る事案が報告されています。
事務連絡「スプリンクラー設備による水損事案について」(令和4年11月24日、消防庁予防課)には、今般、スプリンクラー設備による水損事案が相次いで発生していることから、別紙1のとおり情報提供します。つきましては、スプリンクラー設備による水損事案の再発防止を図るため、下記の事項について、防火対象物関係者への注意喚起をお願いします。と書かれています。
発生場所と施設作動した設備原因
令和4年9月24日静岡県裾野市の文化センター舞台部開放型スプリンクラー設備(手動式。加圧開放式の一斉開放弁を用いたもの)調査中
令和4年10月17日神奈川県横浜市の大ホール天井裏の照明室(照明テスト中)閉鎖型スプリンクラー設備(自動式)調査中
令和4年11月15日大阪府大阪市の複合施設の吹き抜け部開放型スプリンクラー設備(自動式)老朽化した感知器の誤作動の可能性(調査中)

※事務連絡の別紙1から作成。各消防本部への聞き取りによる速報で、今後変更される可能性があると注記されています。

9月から11月にかけて、3件の水損事案が報告されました。
静岡県裾野市の事案は舞台部の開放型で、横浜市の事案は照明テストの最中に閉鎖型が作動したものです。
大阪市の事案では、老朽化した感知器の誤作動の可能性が挙げられ、ほかの2件は原因が調査中とされています。
消防庁は、日本消防設備安全センターと日本消火装置工業会にも、点検の関係者への注意喚起を同じ日に依頼しました。

水が出た事故がきっかけになっているんですね。

はい。
原因はいずれも調査中と書かれています。

この事務連絡はどの種類のスプリンクラー設備を対象にしているのか

開放型ヘッドと閉鎖型ヘッドと感知器を並べたイラスト
事務連絡は、スプリンクラー設備を3つの場合に分けて、注意点を示しています。
開放型か閉鎖型か、開放型ならどう放水を始めるかで、見る場所が変わります。
  • 開放型のうち、1つの感知器の信号で自動的に放水を始めるもの(感知器と配線を重点確認)
  • 開放型スプリンクラー設備の配管と弁(腐食と作動状況を重点確認)
  • 閉鎖型スプリンクラー設備(工事のときのヘッドの破損と加熱に留意)
消防法施行令第12条第1項第2号
別表第一(一)項に掲げる防火対象物(略)で、舞台部(舞台並びにこれに接続して設けられた大道具室及び小道具室をいう。以下同じ。)の床面積が、当該舞台が、地階、無窓階又は四階以上の階にあるものにあつては三百平方メートル以上、その他の階にあるものにあつては五百平方メートル以上のもの
開放型は、水を出す仕組みが閉鎖型と違います。
劇場などの舞台部は、令第12条第1項第2号で、舞台が地階・無窓階・4階以上の階にあれば300平方メートル以上、その他の階なら500平方メートル以上の場合にスプリンクラー設備の設置対象です。
舞台部に設けるヘッドは、規則第13条の2第1項で開放型スプリンクラーヘッドと定められています。
開放型は、感知器の信号や手動操作で弁が開き、放水区域のヘッドから一斉に放水する型です。
自分の建物のヘッドがどちらの型かは、点検を頼んでいる業者に聞くと確実です。

うちのスプリンクラー設備は、開放型なのか閉鎖型なのか、どこで分かりますか。

事務連絡は開放型と閉鎖型で注意点を分けています。
まず、点検を頼んでいる業者に聞いてみましょう。

開放型のスプリンクラー設備は点検で何を重点的に確認するよう求められているのか

感知器と制御弁と開放型ヘッドを配管でつないだイラスト
開放型については、感知器まわりと、配管や弁まわりの2つが挙げられています。
どちらも、放水の引き金になる部分と、水を通す部分の劣化を見る内容です。
事務連絡の記の1には、開放型のうち1つの感知器からの信号により自動的に放水を開始するシステムについて、設備点検の機会に、非火災報の原因となる電気配線等の部分への漏水等のおそれや感知器への埃・水滴の付着(湿気による結露・外部からの漏水等)が生じてないかについて重点的に確認することとあります。また、改修工事等の機会を捉え、複数の信号(例えば、煙感知器からの信号と熱感知器からの信号)により放水するシステム(AND回路)への変更を検討することが望ましいと書かれています。
記の2には、開放型について、設備点検の機会に、配管等の部分に漏水等につながる著しい腐食などが生じていないかや手動起動弁・電動弁・止水弁・自動排水弁などの作動状況等について重点的に確認することとあります。また、減圧開放式の一斉開放弁が用いられたシステムとなっているものについては、改修工事等の機会を捉え、加圧開放式のものへの変更を検討することが望ましいと書かれています。
消防法施行規則第14条第1項第8号イ(イ)
開放型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備にあつては、自動火災報知設備の感知器の作動又は火災感知用ヘッドの作動若しくは開放による圧力検知装置の作動と連動して加圧送水装置及び一斉開放弁(略)を起動することができるものとすること。
確認の中心は、感知器の誤作動につながる湿気と、配管や弁の劣化です。
規則は、開放型の自動起動を「感知器の作動」などと連動させるよう定めていて、条文は感知器の数までは特定していません。
そのため事務連絡は、1つの感知器の信号だけで放水する仕組みのものを、埃・水滴・結露・漏水の面から重点確認するよう求めています。
改修の機会には、煙感知器と熱感知器の信号を組み合わせるAND回路への変更を検討するのが望ましいとされました。
配管では、漏水につながる著しい腐食と、各弁が作動するかの確認が求められています。

感知器が1つ誤作動しただけで、水が出てしまうこともあるのですか。

事務連絡は、1つの感知器の信号だけで放水するものを重点確認の対象にしています。
AND回路への変更は、改修の機会に検討が望ましいとされています。

閉鎖型のスプリンクラー設備は工事でなぜ水損につながるのか

閉鎖型ヘッドのそばに置かれた作業灯と禁止マークのイラスト
閉鎖型は、ヘッドの感熱部が熱で作動して水が出る型です。
事務連絡は、工事のときにこの感熱部を傷つけたり温めたりしないよう求めています。
記の3には、閉鎖型ヘッドを用いたスプリンクラー設備について、工事等に伴い、閉鎖型ヘッドを破損し、又は熱源を近接させるなどにより加熱することのないよう留意することとあります。
閉鎖型で気をつけるのは、工事でヘッドを壊したり温めたりしないことです。
横浜市の事案は、大ホール天井裏の照明室で照明テストをしていたときに閉鎖型が作動したものです。
ただし、原因は調査中とされているため、照明が原因だったと決めつけることはできません。
事務連絡が求めているのは、工事に伴うヘッドの破損と熱源の近接に留意することです。
天井裏や照明まわりで作業する業者にも、ヘッドの位置を事前に伝えておくと安心です。

閉鎖型は感知器がないので、工事のときは気にしなくてよいのでは。

事務連絡は、工事でヘッドを破損したり加熱したりしないよう求めています。
工事の前に、作業する業者へヘッドの位置を伝えておきましょう。

スプリンクラー設備の水損を防ぐために明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストとバルブと天井のヘッドのイラスト
最後の記の4は、すべてのスプリンクラー設備に共通する内容です。
点検を欠かさず、見つかった不具合を早く直すことが求められています。
記の4には、引き続き、スプリンクラー設備の点検の実施を徹底するとともに、点検で確認された不具合等の早期改修を図ることとあります。
消防法第17条の3の3
第十七条第一項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等(略)について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
  • 自分の建物のヘッドが開放型か閉鎖型かを、点検業者に確かめる
  • 開放型なら、感知器の埃・水滴と配線への漏水を点検で見てもらう
  • 開放型の配管の腐食と、手動起動弁・電動弁・止水弁・自動排水弁の作動状況を確かめる
  • 工事の前に、作業する業者へヘッドを傷つけたり加熱したりしないよう伝える
  • 点検で出た不具合は、改修の時期を決めて早めに直す
明日は、自分の建物のヘッドの型と、最後の点検結果を見比べてください。
点検は消防法第17条の3の3で定期に行うものとされ、結果は維持台帳に記録して消防長又は消防署長へ報告します(規則第31条の6第3項)。
点検結果に埃や結露、腐食などの記載があれば、事務連絡の重点項目に当たるかを業者と確かめましょう。
改修工事の予定があるときは、AND回路や加圧開放式への変更を検討する良い機会です。
ただし、変更は「検討することが望ましい」とされたもので、必ず変更するよう求められたものではありません。

まず点検のときに、業者へ何を伝えればよいですか。

事務連絡にある重点確認の項目を伝え、結果を記録に残してもらいましょう。
不具合が出たら、早めに改修を相談してください。

よくある質問

Qこの事務連絡は、設備の変更を義務づけるものですか?
A事務連絡は、防火対象物関係者への注意喚起を依頼する内容です。AND回路や加圧開放式への変更は「検討することが望ましい」とされ、必ず変更するよう求めたものではありません。
Q3件の事案の原因は分かっているのですか?
A事務連絡の別紙1では、大阪市の事案が老朽化した感知器の誤作動の可能性(調査中)とされ、横浜市と裾野市の事案は調査中です。速報で、今後変更される可能性もあるとされています。
Q閉鎖型のスプリンクラー設備も対象ですか?
Aはい。記の3で、閉鎖型についても、工事に伴うヘッドの破損と加熱に留意するよう求められています。
Q事務連絡は都道府県以外にも出されたのですか?
Aはい。各都道府県消防防災主管課と東京消防庁・各指定都市消防本部のほか、日本消防設備安全センターと日本消火装置工業会にも、別紙で通知されています。

まとめ

✔消防庁予防課は令和4年11月24日付けの事務連絡で、スプリンクラー設備の水損事案の再発防止を依頼した
✔挙げられた事案は3件で、裾野市・横浜市・大阪市のいずれも原因は調査中とされている
✔開放型のうち1つの感知器で放水するものは、感知器への埃・水滴と配線への漏水を重点確認する
✔開放型では、配管の腐食と各弁の作動状況を重点的に確認する
✔AND回路と加圧開放式への変更は、改修の機会に検討することが望ましいとされた
✔閉鎖型は、工事に伴うヘッドの破損と加熱に留意する
✔明日は、ヘッドの型と点検結果を見比べ、見つかった不具合を早めに改修する

点検と工事の確認項目を、業者と一緒に見直します!

スプリンクラー設備の点検結果の見方も、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • スプリンクラー設備による水損事案について(事務連絡 令和4年11月24日 消防庁予防課)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の3
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第13条の2・第14条・第31条の6

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
スプリンクラー設備の水損事案が相次いだ理由を示す舞台のあるホールのアイキャッチ
劇場や文化センターの舞台で、火事でもないのにスプリンクラー設備が放水したら、客席も舞台も水浸しになります。 消防庁は令和4年11月24日、こうした水損事案が相次いでいるとして、防火対象物の関係者への注意喚起を都道府県など...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →