階段が一つしかない建物には、消防が緊急で立入検査に入ることがあります。
消防庁は令和3年12月19日、大阪市北区のビル火災を受けた緊急点検を通知しました(消防予第600号)。
対象は特定一階段等防火対象物で、避難の支障になる物件は消防法第5条の3の命令などで直ちに除去させるとされました。
この記事では、通知の内容と対象になる建物、階段や防火戸の周りで日頃から確認したいことを解説します。
うちの建物は階段が一つしかないのですが、消防が緊急で点検に来ることがあるのでしょうか。
令和3年12月の通知は、階段が一つの特定一階段等防火対象物を緊急点検の対象にしました。
点検では、階段に置いてある物も見られるのですか。
避難の支障になる物件は、直ちに除去させるとされています。
階段や防火戸の周りは、日頃から空けておきたいところです。
- 消防予第600号は、令和3年12月19日に消防庁長官が都道府県知事へ出した通知で、大阪市北区のビル火災を受けた緊急点検を求めています。
- 対象は、消防法施行令第4条の2の2第2号に該当する特定一階段等防火対象物です。
- 防火管理や消防用設備等の設置状況に係る違反は、重点的に改善指導を図るとされています。
- 避難経路の階段等や防火戸の閉鎖の支障になる物件は、消防法第5条の3の命令などで直ちに除去させるとされています。
- 通知は消防組織法第37条に基づく助言で、実際の運用は消防本部ごとに異なることがあります。
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目次
大阪市北区のビル火災を受けて消防庁長官はなぜ緊急点検を求めたのか

まず、通知の冒頭部分を確認します。
令和3年12月17日に大阪市北区で発生したビル火災では、死者24名、負傷者4名を出す大きな被害が発生しました。総務省消防庁では、現地に職員を派遣し、関係機関とも協力の上、消防法(昭和23年法律第186号)第35条の3の2の規定に基づく消防庁長官の火災原因調査を行っているところです。現時点で出火原因は特定されていませんが、地上へ直通する階段が1の防火対象物で、当該階段付近の4階部分で出火し、建物内に煙や熱気が充満することで、多数の逃げ遅れが生じたものと考えられます。
なお、本通知は消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく助言として発出するものであることを申し添えます。
消防庁長官は、必要に応じ、消防に関する事項について都道府県又は市町村に対して助言を与え、勧告し、又は指導を行うことができる。
通知は、死者24名、負傷者4名という大きな被害が出たと書いています。
出火原因はその時点で特定されていませんが、地上へ直通する階段が1の防火対象物で階段付近の4階部分から出火し、煙や熱気が充満して多数の逃げ遅れが生じたと考えられる、としています。
このとき消防庁は、消防法第35条の3の2に基づく消防庁長官の火災原因調査を行っているところでした。
通知は消防組織法第37条に基づく助言ですので、実際の運用は各消防本部で異なることがあります。
出火原因は、もう分かっていたのですか。
通知の時点では、出火原因は特定されていないとされています。
階段が一つの建物で、階段付近の4階から出火したと考えられる状況が示されました。
緊急点検の対象になる特定一階段等防火対象物とはどんな建物か

通知の記載と、令の条文を順に確認します。
消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2の2第2号に該当する防火対象物(特定一階段等防火対象物)
法第八条の二の二第一項の政令で定める防火対象物は、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物であつて、次に掲げるものとする。
二 前号に掲げるもののほか、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階(略)以外の階(一階及び二階を除くものとし、(略))に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段(略)が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの
条文の第2号は、(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イの用途に使う部分が、避難階以外の階(1階と2階を除く)にある防火対象物を対象にしています。
そのうえで、その階から避難階か地上へ直通する階段が2以上設けられていないものが該当します。
階段が屋外に設けられている場合や、総務省令で定める避難上有効な構造の場合は、1でも足りるとされています。
令第4条の2の2は、法第8条の2の2第1項の防火対象物点検の対象を定める規定でもあります。
階段が一つなら、どの建物も対象になるのでしょうか。
いいえ。
条文は、特定の用途の部分が1階と2階を除く階にある建物を対象にしています。
緊急点検の立入検査では何が重点的に見られたのか

原文を確認します。
防火管理の実施状況や消防用設備等の設置状況に係る消防法令違反がある場合は、重点的に改善指導を図ること。特に、避難経路となる階段等の施設に避難の支障となる物件が置かれている場合や、防火戸の閉鎖の支障となる物件が置かれている場合は、火災発生時に被害が拡大することが予想されることから、消防法第5条の3の規定に基づく命令を行うことなどにより、直ちに物件の除去を行わせること。
通知は、防火管理の実施状況や消防用設備等の設置状況に係る消防法令違反がある場合は、重点的に改善指導を図るよう求めています。
特に、避難経路となる階段等に避難の支障となる物件が置かれている場合と、防火戸の閉鎖の支障となる物件が置かれている場合を挙げています。
理由は、火災発生時に被害が拡大することが予想されるからと書かれています。
また通知は、各都道府県に対し、管内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む)にも周知するよう求めています。
階段に少し荷物を置いているだけでも、対象になるのでしょうか。
通知は、避難の支障となる物件が置かれている場合を挙げています。
どこまでが支障になるかは個別の状況によるため、所轄消防署に確認します。
避難の支障になる物件を置いているとどんな命令を受けるのか

条文と、命令の内容を定める第3条を確認します。
消防長、消防署長その他の消防吏員は、防火対象物において火災の予防に危険であると認める行為者又は火災の予防に危険であると認める物件若しくは消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める物件の所有者、管理者若しくは占有者で権原を有する者(特に緊急の必要があると認める場合においては、当該物件の所有者、管理者若しくは占有者又は当該防火対象物の関係者。次項において同じ。)に対して、第三条第一項各号に掲げる必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(略)次に掲げる必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
三 危険物又は放置され、若しくはみだりに存置された燃焼のおそれのある物件の除去その他の処理
四 放置され、又はみだりに存置された物件(前号の物件を除く。)の整理又は除去
消防長又は消防署長は、第一項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又はその措置の履行について期限が付されている場合にあつては履行しても当該期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、当該消防職員又は第三者にその措置をとらせることができる。
| 比べる点 | 法第3条第1項 | 法第5条の3第1項 |
|---|---|---|
| どこにある物件か | 屋外 | 防火対象物 |
| 命令できる人 | 消防長、消防署長その他の消防吏員 | 消防長、消防署長その他の消防吏員 |
| 命令を受ける人 | 物件の所有者、管理者若しくは占有者で権原を有する者 | 同左。特に緊急の必要があると認める場合は、当該物件の所有者、管理者若しくは占有者又は当該防火対象物の関係者 |
| 命じる措置 | 同項各号に掲げる必要な措置 | 第3条第1項各号に掲げる必要な措置 |
命じられるのは消防長、消防署長その他の消防吏員で、対象は消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める物件の所有者、管理者又は占有者で権原を有する者です。
命じる措置は法第3条第1項各号のもので、物件の整理又は除去などが含まれます。
特に緊急の必要があると認める場合は、権原を有する者に限らず、関係者にも命じられると条文に書かれています。
命令に従わないときの行政代執行は、法第3条第4項の規定が法第5条の3第5項で準用されています。
命令が出たら、すぐ片づけないといけませんか。
通知は、命令などによって直ちに物件の除去を行わせるとしています。
命令に従わないときは、行政代執行の定めもあります。
明日から階段と防火戸の周りでなにを確認すればよいのか

建物の側で確認したいことを、条文の根拠と合わせて整理します。
防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。
- 自分の建物が特定一階段等防火対象物に当たるか、階段の数と構造を確認する
- 階段や廊下などの避難経路に、物を置いていないか
- 防火戸の周りに、閉鎖の支障になる物がないか
- 防火管理の実施状況と消防用設備等の設置状況に、違反がないか
- 立入検査で指摘があれば、直ちに片づけ、所轄消防署へ確認する
通知が挙げたのは避難の支障と防火戸の閉鎖の支障の2点で、どちらも火災発生時に被害が拡大することが予想されるからとされています。
防火管理者の業務には、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理が含まれます(令第3条の2第2項)。
自分の建物が対象に当たるかどうかは階段の数と構造で決まるため、迷うときは所轄消防署に確認します。
通知は一度限りの緊急点検の要請ですが、階段や防火戸の周りを空けておく備えは、日頃から続けたいところです。
明日から、まず何を確認すればよいでしょうか。
まず階段の踊り場と防火戸の周りに、物が置かれていないか見て回ります。
置いてあれば、その場で片づけます。
よくある質問
まとめ
階段と防火戸の周りは、日頃から物を置かないようにします!
緊急点検への備えも、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市北区で発生した火災を受けた緊急点検について(令和3年12月19日 消防予第600号 消防庁長官)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第3条・第5条の3
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第3条の2・第4条の2の2
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は消防本部ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





