住宅が多い建物は、都市計画で定められた容積率より大きく建てられる場合があります。
建築基準法第52条第8項が、その扱いを定めています。
どんな建物が対象で、上限がどう決まるのかが気になります。
今回は建築基準法第52条第8項が定める住宅部分の割合による容積率の緩和について、対象と算出方法と敷地の条件を、防火管理者が押さえておきたい点とあわせて解説します。
住宅が多い建物は、容積率を上乗せできると聞きました。
どんな仕組みなのでしょうか。
建築基準法第52条第8項に、住宅の割合に応じた緩和が定められています。
まず、どこまで上乗せできるのかから見ていきましょう。
使うのに条件はあるのでしょうか。
どの地域でも使えるのですか。
地域と敷地について、条件があります。
順に確かめていきましょう。
- 第8項は、住宅の用途に供する部分がある建築物が条件に該当するとき、都市計画で定められた容積率の数値の1.5倍以下で、住宅部分の割合に応じて算出した数値を、その容積率の数値とみなすと定めています。
- 算出方法は施行令第135条の14の式で、住宅部分が延べ面積に占める割合が高いほど上限も高くなります。
- 使えるのは、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域、商業地域で、高層住居誘導地区等は除かれます。
- 敷地内に政令で定める規模以上の空地があり、敷地面積も政令で定める規模以上であることが必要です。
- この条文は建築基準法の容積率の話で、消防法令の基準を緩めるものではありません。
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目次
住宅が多い建物の容積率はどこまで引き上げられるのか

ところが、住宅が多い建物には、その数値を引き上げて扱う規定があります。
それが、第52条第8項です。
まず、条文を確認しましょう。
(同項ただし書)ただし、当該建築物が第三項の規定により建築物の延べ面積の算定に当たりその床面積が当該建築物の延べ面積に算入されない部分を有するときは、当該部分の床面積を含む当該建築物の容積率は、当該建築物がある地域に関する都市計画において定められた第一項第二号又は第三号に定める数値の一・五倍以下でなければならない。
第1項第二号は、中高層住居専用地域や、第一種住居地域から準工業地域までの容積率を定めています。
第3号は、商業地域の容積率を定めています。
この二つの数値が、住宅部分の割合に応じて算出した数値に置き換わります。
置き換わった数値は、第1項だけでなく、第3項から第7項までの規定を適用するときにも使われます。 条文には、括弧書きがあります。
特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内では、都市計画の数値から算出した数値までの範囲で、特定行政庁が別に定めた数値になります。
この指定区域の内容は、特定行政庁ごとに異なります。
都市計画の数値の1.5倍が上限なのですね。
どの地域で使えるのでしょうか。
使える地域は、条文の第一号に書かれています。
次に、その中身を見ていきましょう。
第8項を使えるのはどの地域なのか

一つ目は地域で、第一号が定めています。
二つ目は敷地で、第二号が定めています。
ここでは、地域から見ていきます。
前の五つの地域では、高層住居誘導地区と、特定行政庁が指定する区域が除かれます。
商業地域では、特定行政庁が指定する区域が除かれます。
第一種低層住居専用地域や中高層住居専用地域、工業地域などは、第一号に挙がっていないので、この第8項の対象ではありません。 また、第8項の冒頭の括弧書きは、居住環境向上用途誘導地区や特定用途誘導地区の建築物で、都市計画で定める誘導すべき用途に一部を供するものを除いています。
該当するかどうかは、都市計画の内容によって決まります。
地域は六つに限られているのですね。
上限はどう計算されるのでしょうか。
計算の方法は、施行令に定められています。
次に、その式を見ていきましょう。
住宅部分の割合が高いと上限はどう決まるのか

その方法を定めているのが、建築基準法施行令第135条の14です。
Vr=3Vc/(3-R)
(この式において、Vr、Vc及びRは、それぞれ次の数値を表すものとする。
Vr 法第五十二条第一項第五号又は第八項の政令で定める方法により算出した数値
Vc 建築物がある用途地域に関する都市計画において定められた容積率の数値
R 建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計のその延べ面積に対する割合)
Rは、住宅の用途に供する部分の床面積の合計を、延べ面積で割った割合です。
この式に数字を入れて、上限の動きを確かめましょう。 都市計画で定められた容積率が200パーセントの地域で、条件を満たす建物を考えます。
住宅部分の割合Rが2分の1なら、Vr=3×200÷(3−0.5)で、240パーセントです。
建物の全部が住宅でRが1なら、Vr=3×200÷(3−1)で、300パーセントです。
300パーセントは、200パーセントの1.5倍で、条文の上限と同じです。
住宅部分が無いなら、Rは0で、Vrは200パーセントのままです。 敷地面積が2,000平方メートルなら、延べ面積の限度は、Rが2分の1で4,800平方メートル、Rが1で6,000平方メートルです。
緩和のない200パーセントの4,000平方メートルと比べると、住宅の割合が高いほど上乗せが大きくなります。
ただし、実際の計算は建築士が行うので、数値は読み方の例として見てください。 ただし書にも注意が必要です。
地階の住宅部分などを第3項で延べ面積に算入しない場合は、その部分を含めた容積率も、都市計画の数値の1.5倍以下でなければなりません。
住宅の割合が高いほど、上限も高くなるのですね。
敷地の条件はどうなっていますか。
第二号が、敷地の条件を定めています。
空地と敷地面積の二つを見ていきましょう。
敷地内の空地と敷地面積にはどんな条件があるのか

条文を確認しましょう。
空地は、道路に接して有効な部分が、政令で定める規模以上であるものに限られます。
その規模を定めているのが、施行令第135条の17です。
(同条第二項)法第五十二条第八項第二号の政令で定める道路に接して有効な部分の規模は、前項の規定による空地の規模に二分の一を乗じて得たものとする。
(同条第三項)法第五十二条第八項第二号の政令で定める敷地面積の規模は、次の表(い)欄に掲げる区分に応じて、同表(ろ)欄に掲げる数値とする。(略)
建蔽率の最高限度が十分の五・五を超える場合の空地の規模は、敷地面積に、一から建蔽率の最高限度を減じた数値に十分の二を加えた数値を乗じた面積です。
建蔽率の最高限度が十分の六なら、敷地面積の十分の六が空地の規模になります。
敷地面積が2,000平方メートルなら、空地は1,200平方メートルで、道路に接して有効な部分は600平方メートルです。 敷地面積の規模は、地域ごとに決まっています。
第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、準工業地域では2,000平方メートル、近隣商業地域と商業地域では1,000平方メートルです。
地方公共団体は、条例で、表が定める範囲内で別の規模を定めることができます。
範囲は、前の四つの地域で500平方メートル以上4,000平方メートル未満、後の二つの地域で500平方メートル以上2,000平方メートル未満です。
ただし、これは施行令の表の内容の一部で、建築士や特定行政庁の確認が要ります。
敷地にも、空地と面積の条件があるのですね。
防火管理者は、なにを確かめればよいでしょうか。
第8項は、建築基準法の容積率の話です。
確かめたい点を、五つにまとめます。
住宅の割合による緩和を踏まえて防火管理者はなにを確かめておくとよいのか

防火管理者の義務を直接に決めるものではありません。
ただし、建物の用途や敷地の使い方を変えるときには、関係する場面があります。 第8項は建築基準法の容積率の規定であり、消防法令の基準を緩めるものではありません
住宅が多い建物では、住宅以外の部分を用途変更したり、敷地内の空地の使い方を変えたりする場面があります。
その変更が、住宅部分の割合や空地の条件に影響しないかは、建築士や特定行政庁に確かめる必要があります。
消防用設備等の判断は別なので、所轄消防署への相談も欠かせません。
明日から次の点を確認してください。
- 建物が、第8項の緩和を使って建てられているかを、建築確認の図面等や建築士で確認して記録する。
- 住宅部分の割合が変わる用途変更や改修の予定がないかを、事前に確認する。
- 敷地内の空地に、物を置いたり使い方を変えたりするときは、第8項の条件に影響しないかを、建築士や特定行政庁に事前に相談する。
- 都市計画の容積率や、特定行政庁の指定区域の有無を、市町村や特定行政庁に確認する。
- 消防用設備等の判断は、所轄消防署へ相談する。
容積率の話と消防の話を混同しないように、それぞれの窓口へ確かめておきましょう。
緩和を使っている建物か、まず確認します。
用途変更や空地の使い方を変える前に、相談してみます。
図面や確認の記録が分かれば、改修のときの相談も早くなります。
相談は、建築の窓口と消防の両方の窓口にしておくと安心です。
よくある質問
まとめ
住宅の割合や空地の条件があるんですね。
この記事の内容を管理者にも共有します!
緩和の有無が分かれば、改修や用途変更の相談も進めやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第五十二条(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第百三十五条の十四・第百三十五条の十七(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。容積率の緩和の適用や条例で定める規模は特定行政庁や地方公共団体ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





