前面道路が狭いと、建築物の容積率の限度は、道路の幅員に応じて下がります。
ところが、壁面線の指定がある敷地では、建築物を道路から後退させると、その計算が変わる場合があります。
特定行政庁の許可を受けなくても使える規定なのかが気になります。
今回は建築基準法第52条第12項と第13項が定める壁面線の特例について、対象と上限と敷地面積の扱いを、防火管理者が押さえておきたい点とあわせて解説します。
前面道路が狭いと、容積率の限度が下がると聞きます。
壁面線があると、その計算が変わるのでしょうか。
建築基準法第52条第12項に、壁面線の特例が定められています。
まず、どんな扱いになるのかから見ていきましょう。
特例を使えば、容積率はいくらでも増やせるのですか。
敷地の面積の扱いも気になります。
条文には、上限と面積の扱いも書かれています。
順に確かめていきましょう。
- 第12項は、前面道路の境界線が壁面線等にあるとみなして、第2項から第7項まで及び第9項の規定を適用することができると定めています。
- 対象は、第2項各号で前面道路の幅員に乗ずる数値が十分の四とされている建築物で、壁面線等を越えないものです。
- 特例を使った場合でも、容積率は、前面道路の幅員のメートルの数値に十分の六を乗じたもの以下でなければなりません。
- 前面道路と壁面線等との間の部分の面積は、第13項により、敷地面積に算入しません。
- この条文は建築基準法の容積率の話で、消防法令の基準を緩めるものではありません。
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目次
壁面線があると前面道路の境界線はどう扱われるのか

まず、条文を確認しましょう。
第2項は、前面道路の幅員による容積率の限度を定める規定です。
道路の境界線が壁面線の位置にあると扱われるので、その規定の計算は、壁面線までの後退の分だけ広い道路を前提にして進められます。
ここで大事なのは、条文が「適用することができる」と書いていて、許可を条件としていない点です。
第11項は、特定行政庁が許可したものを対象にしています。
許可を受けなくても、この扱いを使えるのですね。
どんな建築物が対象になるのでしょうか。
対象は、いくつかの条件で決まっています。
次に、壁面線等の意味とあわせて見ていきましょう。
第12項の特例を使えるのはどんな建築物か

三つとは、幅員に乗ずる数値、壁面線等の存在、壁面線等を越えないこと、です。 第12項の対象は、第2項各号で前面道路の幅員に乗ずる数値が十分の四とされている建築物で、壁面線等を越えないものです
十分の四とされる区域は、第2項の各号で決まります。
壁面線等とは、二つのものを合わせた呼び方です。
一つは、壁面線です。
第46条第1項は、特定行政庁が、建築審査会の同意を得て、街区内における建築物の位置を整えるために壁面線を指定できると定めています。
もう一つは、第68条の2第1項に基づく条例で定める、道路に面する壁や柱の位置と、道路に面する高さ2メートルを超える門又は塀の位置の制限です。 条文の後半には、「ひさしその他の建築物の部分で政令で定めるものを除く」とあります。
壁面線等を越えているかどうかを見るときに、政令が定める部分は、判断から除かれます。
その政令が、建築基準法施行令第135条の19です。
(第百三十五条の十九第一号)ひさしその他これに類する建築物の部分で、次に掲げる要件に該当するもの
(第百三十五条の十九第一号イ)高さが五メートル以下であること。
(第百三十五条の十九第一号ロ)当該部分の水平投影の前面道路に面する長さを敷地の前面道路に接する部分の水平投影の長さで除した数値が五分の一以下であること。
(第百三十五条の十九第一号ハ)当該部分から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のものが一メートル以上であること。
(第百三十五条の十九第二号)建築物の地盤面下の部分
(第百三十五条の十九第三号)道路に沿つて設けられる高さが二メートル以下の門又は塀(高さが一・二メートルを超えるものにあつては、当該一・二メートルを超える部分が網状その他これに類する形状であるものに限る。)
(第百三十五条の十九第四号)隣地境界線に沿つて設けられる高さが二メートル以下の門又は塀
(第百三十五条の十九第五号)歩廊、渡り廊下その他これらに類する建築物の部分で、特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況を考慮して規則で定めたもの
ひさし等は、高さが5メートル以下、道路に面する長さが敷地の前面道路に接する長さの5分の1以下、道路の境界線までの最小の水平距離が1メートル以上という三つの要件をすべて満たす必要があります。
門や塀は、道路に沿うものも隣地境界線に沿うものも、高さが2メートル以下のものです。
道路に沿うもので高さが1.2メートルを超えるものは、超える部分が網状などの形状のものに限られます。
壁面線から出てもよいのは、限られた部分だけなんですね。
特例を使ったときの上限はどうなりますか。
特例を使っても、容積率には上限があります。
ただし書を見ていきましょう。
特例を使うと容積率はなぜ前面道路の幅員の十分の六までになるのか

ただし、第12項には、上限を定めたただし書があります。
この「前面道路の幅員」は、実際の前面道路の幅員のことです。
壁面線までの後退分を足した数値ではありません。 例を挙げます。
前面道路の幅員が4メートルで、第2項の数値が十分の四の区域とします。
特例を使わなければ、4メートルに十分の四を乗じて、容積率の限度は160パーセントです。
道路の境界線から3メートル後退した壁面線があり、特例を使うと、道路の幅員を7メートルとして計算するので、280パーセントになります。
ところが、ただし書の上限は、4メートルに十分の六を乗じた240パーセントです。
この場合の限度は、240パーセントになります。 また、第12項がみなしの対象にしているのは、第2項から第7項まで及び第9項です。
第1項の、用途地域ごとに都市計画で定める容積率は、対象に入っていません。
そのため、都市計画で定める容積率が240パーセントより低ければ、そちらの限度が別に働きます。
後退した分がそのまま増えるわけではないのですね。
次に、敷地面積の扱いはどうなりますか。
第13項に、敷地面積の扱いが書かれています。
道路と壁面線の間の部分に注目しましょう。
前面道路と壁面線の間の部分は敷地面積に入るのか

第13項が定めています。
第12項は「適用することができる」という書き方でしたが、第13項は「算入しないものとする」と書いています。
特例を使うなら、この扱いは選べません。 先ほどの例に、敷地の面積を加えます。
間口が15メートル、奥行が20メートルの敷地で、面積は300平方メートルです。
前面道路の境界線から3メートル後退した壁面線があるので、その間の部分は15メートルに3メートルを乗じた45平方メートルです。
この部分を除くと、敷地面積は255平方メートルとして扱います。 都市計画で定める容積率が240パーセント以上とすると、特例を使ったときの延べ面積の限度は、255平方メートルに240パーセントを乗じた612平方メートルです。
特例を使わない場合は、300平方メートルに160パーセントを乗じた480平方メートルです。
ただし、実際の計算は建築士が行うので、数値は読み方の例として見てください。
敷地面積が減る分と、道路が広く扱われる分の両方が動くのですね。
防火管理者は、なにを確かめればよいでしょうか。
特例の話は、建築基準法の話です。
防火管理者が確かめたい点を、五つにまとめます。
壁面線の特例を踏まえて防火管理者はなにを確かめておくとよいのか

防火管理者の義務を直接に決めるものではありません。
ただし、建物の位置や外構を変えるときには、関係する場面があります。 壁面線の特例は、建築基準法の容積率と敷地面積の算定の規定であり、消防法令の基準を緩めるものではありません
建物が壁面線から後退して建っている場合、その外側の部分に、外構やひさし、門、塀が設けられていることがあります。
それらが壁面線等の判断でどう扱われるのかは、令第135条の19の要件で決まります。
増築や改修の計画があるときは、建築士や特定行政庁に確かめる必要があります。
消防用設備等の判断は別なので、所轄消防署への相談も欠かせません。
明日から次の点を確認してください。
- 敷地に壁面線の指定や、地区計画等の条例による壁面の位置の制限があるかを、特定行政庁や市町村に確認して記録する。
- 建物の容積率の計算で、第12項の特例が使われているかを、建築士に確認する。
- 壁面線等より道路側に、ひさしや門や塀などが設けられていないかを、現地で確認する。
- 外構の工事や増築をするときは、壁面線等を越えないか、第12項の計算に影響しないかを、事前に建築士へ相談する。
- 消防用設備等の判断は、所轄消防署へ相談する。
容積率の話と消防の話を混同しないように、それぞれの窓口へ確かめておきましょう。
壁面線の指定があるかと、外構が越えていないかを確かめるのですね。
まず、敷地の指定の有無を調べます。
位置や外構が分かれば、増築や改修のときの相談も早くなります。
相談は、特定行政庁と消防の両方の窓口にしておくと安心です。
よくある質問
まとめ
壁面線の特例には、上限と面積の扱いがあるんですね。
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壁面線の指定の有無が分かれば、増築や改修の相談も進めやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第五十二条・第四十六条第一項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第百三十五条の十九(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。壁面線の指定や運用は特定行政庁や地区計画ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





