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壁面線の指定がある敷地では容積率の計算はなぜ許可で変わるのか|建築基準法第52条第11項が定める壁面線の許可を解説

建物が道路から後退し街路樹のある広い歩道状の空間が続く街並みの写真

都市計画で壁面線が指定されている街区では、建物を道路から少し下げて建てる決まりがあります。
その敷地で容積率を計算するとき、下げた分の空きが計算にどう関わるのかが気になります。
建築基準法には、この場合の取り扱いを、特定行政庁の許可を条件に定めた規定があります。
今回は建築基準法第52条第11項が定める壁面線の許可について、許可の基準と、許可を受けたときの容積率の計算の変わり方を、防火管理者が押さえておきたい点とあわせて解説します。

うちの敷地には、壁面線の指定があります。
道路から下げた部分は、容積率の計算でどうなるのでしょうか。

建築基準法第52条第11項に、壁面線の許可の取り扱いが定められています。
まず、対象になる敷地から見ていきましょう。

壁面線の指定があれば、自動的に計算が変わるのですか。
防火の面で気にしておく点もありますか。

条文は、特定行政庁の許可を条件にしています。
防火管理の面で確かめたい点もお伝えします。

この記事の結論
  • 第52条第11項は、前面道路の境界線から後退して壁面線の指定がある場合に、特定行政庁が基準に適合すると認めて許可した建築物について定めています。
  • 許可を受けると、前面道路の境界線は壁面線にあるものとみなして、容積率の規定を適用します。
  • 前面道路と壁面線との間の部分の面積は、敷地面積に算入しません。
  • 許可の基準は、街区内で前面道路と壁面線の間が有効な空地として確保されることと、交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないことです。
  • この条文は建築基準法の容積率の話で、消防法令の基準を緩めるものではありません。

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壁面線の指定がある敷地で特定行政庁の許可を受けると前面道路の境界線を壁面線にあるものとみなして容積率を計算する仕組みを示す図解

壁面線の指定がある敷地はどんな場合に第11項の対象になるのか

敷地の道路側に一本の点線が引かれた区画を上から見たイラスト
壁面線は、街区内で建築物の位置をそろえるために特定行政庁が指定する線です。
第11項は、その指定がある場合の取り扱いを書いています。
(建築基準法第四十六条第一項)特定行政庁は、街区内における建築物の位置を整えその環境の向上を図るために必要があると認める場合においては、建築審査会の同意を得て、壁面線を指定することができる。
この場合においては、あらかじめ、その指定に利害関係を有する者の出頭を求めて公開による意見の聴取を行わなければならない。
壁面線は、特定行政庁が建築審査会の同意を得て、街区内における建築物の位置を整えるために指定します。
第11項が対象にするのは、前面道路の境界線か、その反対側の境界線からそれぞれ後退して壁面線の指定がある場合です。
つまり、壁面線が道路の境界線より敷地の内側に引かれている場合です。
この指定があるだけでは、容積率の計算は変わらず、次に見る許可が別に要ります。

壁面線の指定がある敷地なら、いつでも対象になるんですね。
その次は、何が必要なのでしょうか。

条文に、基準に適合することと許可が要ると書いてあります。
次に、その許可の中身を見ましょう。

第11項の許可は誰がどんな基準で出すのか

巻いた都市計画図と虫眼鏡のイラスト
第11項は、壁面線の指定がある敷地でも、許可を受けた建築物だけに適用されます。
許可を出すのは特定行政庁で、その基準を条文が二つ挙げています。
(建築基準法第五十二条第十一項第一号)当該建築物がある街区内における土地利用の状況等からみて、その街区内において、前面道路と壁面線との間の敷地の部分が当該前面道路と一体的かつ連続的に有効な空地として確保されており、又は確保されることが確実と見込まれること。
(同項第二号)交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないこと。
第1号は、その街区で、前面道路と壁面線との間の敷地の部分が、前面道路と一体的かつ連続的な有効な空地になっていることです。
今その状態でなくても、そうなることが確実と見込まれるなら、基準に当たります。
第2号は、交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないことです。
第15項は、第44条第2項を準用しています。
そのため、特定行政庁は、許可をする場合には、あらかじめ建築審査会の同意を得なければなりません。
(建築基準法第五十二条第十五項)第四十四条第二項の規定は、第十項、第十一項又は前項の規定による許可をする場合に準用する。
(建築基準法第四十四条第二項)特定行政庁は、前項第四号の規定による許可をする場合においては、あらかじめ、建築審査会の同意を得なければならない。
許可の申請と判断は、建築士や特定行政庁の窓口で進める手続なので、申請者が自分で許可の可否を決められるものではありません。

許可には、街区での空地の見込みと、建築審査会の同意もいるんですね。
許可を受けると、容積率の計算はどう変わるのでしょうか。

許可を受けると、前面道路の境界線の扱いが変わります。
条文に沿って、その中身を見ましょう。

許可を受けると前面道路の境界線はどのように扱われるのか

印鑑と書類と鉢植えの木を並べたイラスト
許可を受けた建築物には、道路の境界線を壁面線にあるものとみなす取り扱いが働きます。
読み替えの範囲は、第2項から第7項までと第9項です。 許可を受けた建築物は、前面道路の境界線又はその反対側の境界線が、それぞれ壁面線にあるものとみなして、第2項から第7項まで及び第9項の規定を適用します。
第2項は、前面道路の幅員が12メートル未満のときの容積率を、幅員に応じた数値で頭打ちにする規定です。
前面道路が二以上あるときは、幅員が最大のものを使うと第2項に書かれています。
第9項は、特定道路の近くで幅員に数値を加える特例です。
境界線が壁面線にあるとみなされるので、その分だけ前面道路の幅員が広がったものとして計算する、という考え方になります。 たとえば、第一種住居地域で、第2項第2号の数値が十分の四だとします。
前面道路の幅員が6メートルで、道路の境界線から2メートル後退した壁面線の指定があり、許可を受けたとします。
次の数値は、計算のしかたを示すための例です。
  • 許可を受けないとき、容積率の限度は6×十分の四=十分の二十四で、240パーセントです。
  • 許可を受け、境界線が壁面線にあるとみなすと、幅員は6+2=8メートルの扱いになり、8×十分の四=十分の三十二で、320パーセントになります。
この数値は、第2項の限度の例です。
第1項の都市計画で定めた容積率との両方を満たす必要があります。

許可を受けると、壁面線の位置で計算するんですね。
敷地の広さの扱いは、どうなるのでしょうか。

敷地面積の扱いも、第11項の後段に書かれています。
次に、その中身を見ましょう。

道路と壁面線との間の部分は敷地面積に含めないのか

道路沿いの細長い帯を切り分けた敷地の図と電卓のイラスト
第11項の後段は、敷地面積の扱いを決めています。
道路の境界線を壁面線とみなす代わりに、その間の部分は敷地から外します。
(建築基準法第五十二条第十一項 後段)この場合においては、当該建築物の敷地のうち前面道路と壁面線との間の部分の面積は、敷地面積又は敷地の部分の面積に算入しないものとする。
敷地のうち前面道路と壁面線との間の部分の面積は、敷地面積にも敷地の部分の面積にも算入しません。
前の例の敷地が400平方メートルで、間口が20メートル、後退が2メートルだとします。
前面道路と壁面線との間の部分は、20×2=40平方メートルです。
この場合、容積率の計算に使う敷地面積は、360平方メートルです。
320パーセントで計算すると、延べ面積の限度は、360×320パーセント=1152平方メートルになります。
許可を受けないときの、400×240パーセント=960平方メートルとは、計算の前提が変わります。
数値は説明のための例で、実際の限度は、他の規定とあわせて特定行政庁の窓口で確かめます。

許可を受けると、敷地面積は小さくなるんですね。
実務で確かめておくことはありますか。

壁面線の位置と、敷地との重なりを図面で確かめます。
あわせて、防火管理の面で確かめておきたい点も見ましょう。

壁面線の許可を踏まえて防火管理者はなにを確かめておくとよいのか

印鑑と書類ばさみとチェックシートのイラスト
この許可は、壁面線の位置と敷地の関係で決まります。
条文が決めているのは建築基準法の容積率の話で、消防法令の基準の話ではありません。 壁面線の許可は、建築基準法の容積率と敷地面積の算定に関する取り扱いです。
許可の基準には、防火上支障がないことも入っています。
ただし、許可を受けた建物でも、消防用設備等の設置や防火管理の義務は、消防法令の条文で決まります。
壁面線の指定がある敷地に建物がある場合は、許可の有無と内容を建築士や特定行政庁に確かめる必要があります。
消防法令の判断は別なので、所轄消防署への相談も欠かせません。
明日から次の点を確認してください。
  • 敷地に、特定行政庁が指定した壁面線がかかっているかを、図面や特定行政庁の窓口で確認する。
  • 壁面線の許可を受けているかを、確認済証や許可書などの書類で確認して記録する。
  • 許可を受けている場合は、容積率の計算で壁面線を境界として扱った内容を、建築士に確認する。
  • 増築や用途変更で延べ面積が変わるときは、許可の範囲に収まるかを特定行政庁に相談する。
  • 消防用設備等の判断は、所轄消防署へ相談する。
建築基準法と消防法は別々の法律です。
容積率の話と消防の話を混同しないように、それぞれの窓口へ確かめておきましょう。

容積率の話と消防の話は、分けて確かめるんですね。
まず、敷地に壁面線の指定がないかを確認します。

許可の有無が分かれば、増築のときの相談も早くなります。
相談は、特定行政庁と消防の両方の窓口にしておくと安心です。

よくある質問

Q壁面線の指定があれば、許可を受けなくても境界線が壁面線にあるものとみなされますか?
A第11項は、特定行政庁が基準に適合すると認めて許可した建築物について、境界線を壁面線にあるものとみなすと定めています。
Q壁面線の許可には、建築審査会の同意が必要ですか?
A第15項が第44条第2項を準用しているので、特定行政庁は、あらかじめ建築審査会の同意を得なければなりません。
Q道路と壁面線との間の部分も、容積率の計算では敷地面積に入りますか?
A許可を受けた場合は、前面道路と壁面線との間の部分の面積は、敷地面積に算入しません。
Q許可を受けずに壁面線を使う容積率の規定もありますか?
A第12項は、第2項各号の数値が十分の四の建築物で壁面線等を越えないものについて、許可を条件とせず、境界線を壁面線等にあるものとみなして適用することができると定めています。ただし書で、幅員に十分の六を乗じた数値以下という上限も設けています。

まとめ

✔建築基準法第52条第11項は、前面道路の境界線から後退して壁面線の指定がある場合に、特定行政庁が基準に適合すると認めて許可した建築物の容積率の取り扱いを定めています。
✔壁面線は、特定行政庁が建築審査会の同意を得て、街区内の建築物の位置を整えるために指定します。
✔許可を受けた建築物は、前面道路の境界線を壁面線にあるものとみなして、第2項から第7項まで及び第9項の規定を適用します。
✔前面道路と壁面線との間の部分の面積は、敷地面積に算入しません。
✔許可の基準は、道路との間が有効な空地として確保されることと、交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないことです。
✔この条文が定めるのは建築基準法の容積率の話であって、消防法令の基準を緩めるものではありません。
✔防火管理者は、壁面線の有無と許可の内容を確認して記録し、消防法令の判断は所轄消防署に相談します。

壁面線の許可を受けると、容積率の計算が変わるんですね。
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許可の有無が分かれば、増築の相談も進めやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第五十二条(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法第四十六条・第四十四条第二項(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。許可の可否や運用は特定行政庁ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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