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敷地が防火地域の内外にまたがると建蔽率の緩和はなぜ建物が耐火建築物等かどうかで決まるのか|建築基準法第53条第7項と第8項が定める敷地のみなしを解説

防火地域と住宅地の境に建つ耐火造の建物の写真

防火地域とそれ以外の区域の境に、敷地がまたがっている建物があります。
建蔽率の緩和を受けられるのかが気になります。
建築基準法第53条第7項と第8項が、その場合の敷地の扱いを定めています。
決め手になるのは、建物が耐火建築物等かどうかです。
今回は建築基準法第53条第7項と第8項が定める防火地域や準防火地域の内外にわたる敷地の建蔽率の扱いについて、計算例と防火管理者が押さえておきたい点をあわせて解説します。

敷地が防火地域の境にかかっています。
建蔽率の緩和は、受けられるのでしょうか。

建築基準法第53条第7項に、敷地を全て防火地域内とみなす規定があります。
まず、条文から見ていきましょう。

建物にも条件があるのでしょうか。
準防火地域の場合も、同じですか。

準防火地域の場合は、第8項が定めています。
計算例も、あとで示しますね。

この記事の結論
  • 第7項は、敷地が防火地域の内外にわたる場合に、敷地内の建築物の全部が耐火建築物等であるときは、敷地を全て防火地域内にあるものとみなして第3項第一号又は第6項第一号を適用すると定めています。
  • 第3項第一号は、防火地域内の耐火建築物等の建蔽率の限度に十分の一を加え、第6項第一号は、限度が十分の八とされている地域の防火地域内の耐火建築物等に建蔽率の制限を適用しません。
  • たとえば、近隣商業地域で建蔽率が60パーセントの300平方メートルの敷地なら、みなしが働くと建築面積の限度は180平方メートルから210平方メートルになります。
  • 第8項は、準防火地域と防火地域及び準防火地域以外の区域にわたる敷地で、建築物の全部が耐火建築物等又は準耐火建築物等なら、敷地を全て準防火地域内とみなして第3項第一号を適用します。
  • 二つの項は、みなす地域も対象の建築物も違います。建築基準法の話であり、消防法令の基準は別に判断します。

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敷地が防火地域の内外にまたがっても建築物の全部が耐火建築物等なら敷地を全て防火地域内とみなすことと消防法令の基準は別に判断することを示す図解

敷地が防火地域の内外にわたるとき第7項は敷地をどう扱うのか

境界線で二つに分かれた敷地に建物が立つイラスト
建築物の敷地が、防火地域とそれ以外の区域の境にまたがることがあります。
その場合の建蔽率の扱いは、第53条第7項に書かれています。
条文を確認しましょう。
(建築基準法第五十三条第七項)建築物の敷地が防火地域の内外にわたる場合において、その敷地内の建築物の全部が耐火建築物等であるときは、その敷地は、全て防火地域内にあるものとみなして、第三項第一号又は前項第一号の規定を適用する。
第7項は、敷地が防火地域の内外にわたり、その敷地内の建築物の全部が耐火建築物等であるときは、敷地を全て防火地域内にあるものとみなすと定めています
条件は二つです。
一つ目は、敷地が防火地域の内外にわたることです。
二つ目は、敷地内の建築物の全部が耐火建築物等であることです。
一棟でも耐火建築物等でない建築物があれば、この条件には当たりません。 耐火建築物等の意味は、第3項第一号のイに書かれています。
(建築基準法第五十三条第三項第一号)イ 耐火建築物又はこれと同等以上の延焼防止性能(通常の火災による周囲への延焼を防止するために壁、柱、床その他の建築物の部分及び防火戸その他の政令で定める防火設備に必要とされる性能をいう。ロにおいて同じ。)を有するものとして政令で定める建築物(以下この条及び第六十七条第一項において「耐火建築物等」という。)
耐火建築物と同等以上の延焼防止性能を有する建築物の要件は、施行令第135条の20に定められています。
(建築基準法施行令第百三十五条の二十第一項)法第五十三条第三項第一号イの政令で定める建築物は、次に掲げる要件に該当する建築物とする。
一 外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火設備が設けられていること。
二 壁、柱、床その他の建築物の部分及び前号の防火設備が第百三十六条の二第一号ロに掲げる基準に適合し、かつ、法第六十一条第一項に規定する構造方法を用いるもの又は同項の規定による認定を受けたものであること。
耐火建築物等とは、耐火建築物又はこれと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物です
政令で定める建築物の要件は、二つあります。
一つ目は、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火設備が設けられていることです。
二つ目は、壁や柱などと防火設備が、施行令第136条の2第一号ロの基準に適合し、法第61条第1項の構造方法を用いるか同項の認定を受けたものであることです。

耐火建築物等の全部が条件なのですね。
建蔽率は、具体的にどう変わるのでしょうか。

第7項は、みなした先の規定を二つ挙げています。
次に、第3項第一号と第6項第一号を見ていきましょう。

みなした敷地に適用される第3項第一号と第6項第一号は建蔽率をどう変えるのか

敷地に薄い板が一枚加わる様子のイラスト
第7項は、みなした敷地に、第3項第一号又は前項の第一号を適用するとしています。
前項とは、第6項のことです。
それぞれの中身を見ましょう。
(建築基準法第五十三条第三項)前二項の規定の適用については、第一号又は第二号のいずれかに該当する建築物にあつては第一項各号に定める数値に十分の一を加えたものをもつて当該各号に定める数値とし、(略)
一 防火地域(第一項第二号から第四号までの規定により建蔽率の限度が十分の八とされている地域を除く。)内にあるイに該当する建築物又は準防火地域内にあるイ若しくはロのいずれかに該当する建築物
第3項第一号は、防火地域内にある耐火建築物等の建蔽率の限度に、十分の一を加えます
加算の対象になるのは、防火地域内にある耐火建築物等です。
ただし、第1項第二号から第四号までの規定で建蔽率の限度が十分の八とされている地域は、この号から除かれています。
その地域を扱うのが、次の第6項第一号です。
(建築基準法第五十三条第六項)前各項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 防火地域(第一項第二号から第四号までの規定により建蔽率の限度が十分の八とされている地域に限る。)内にある耐火建築物等
第6項第一号は、建蔽率の限度が十分の八とされている地域の防火地域内にある耐火建築物等に、建蔽率の制限を適用しないと定めています
対象は、限度が十分の八とされている地域の、防火地域内の耐火建築物等です。
該当すれば、第1項から第5項までの建蔽率の規定は適用されません。 計算例を二つ示します。
例Aは、近隣商業地域で、都市計画の建蔽率が60パーセント、敷地面積が300平方メートルの場合です。
加算がなければ、建築面積の限度は、300×0.6=180平方メートルです。
第7項のみなしが働き、第3項第一号の加算を受けると、建蔽率は70パーセントになります。
建築面積の限度は、300×0.7=210平方メートルです。 例Bは、商業地域の場合です。
商業地域の建蔽率の限度は、第1項第四号で十分の八です。
みなしが働いて第6項第一号に当たれば、建蔽率の制限は適用されません。 数値は読み方の例で、実際の計算は建築士が行います。
敷地が接する地域の指定も、都市計画の図面で確かめる必要があります。

近隣商業地域の例では、限度が210平方メートルに増えるのですね。
準防火地域の場合は、どうなりますか。

準防火地域を含む敷地は、第8項が定めています。
次に、準耐火建築物等の場合を見ましょう。

準防火地域と防火地域及び準防火地域以外の区域にわたる敷地は第8項でどう扱われるのか

二つの区域にまたがる敷地と壁のパネルのイラスト
第7項は、防火地域の内外にわたる敷地の規定でした。
準防火地域を含む敷地について定めているのが、第8項です。
(建築基準法第五十三条第八項)建築物の敷地が準防火地域と防火地域及び準防火地域以外の区域とにわたる場合において、その敷地内の建築物の全部が耐火建築物等又は準耐火建築物等であるときは、その敷地は、全て準防火地域内にあるものとみなして、第三項第一号の規定を適用する。
第8項は、敷地が準防火地域と防火地域及び準防火地域以外の区域とにわたり、その敷地内の建築物の全部が耐火建築物等又は準耐火建築物等であるときは、敷地を全て準防火地域内にあるものとみなして第3項第一号を適用すると定めています
第7項との違いは、二つあります。
一つ目は、建築物の全部が準耐火建築物等でもよいことです。
二つ目は、適用されるのが第3項第一号だけで、第6項第一号は入っていないことです。 準耐火建築物等の意味は、第3項第一号のロに書かれています。
(建築基準法第五十三条第三項第一号)ロ 準耐火建築物又はこれと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物(耐火建築物等を除く。第八項及び第六十七条第一項において「準耐火建築物等」という。)
計算例を示します。
例Cは、第一種住居地域で、都市計画の建蔽率が60パーセント、敷地面積が200平方メートルの場合です。
敷地が準防火地域と防火地域及び準防火地域以外の区域にわたり、建築物の全部が準耐火建築物等なら、敷地は全て準防火地域内とみなされます。
第3項第一号のロの加算を受けると、建蔽率は70パーセントになり、200×0.7=140平方メートルまで建築できます。
加算がない場合の、200×0.6=120平方メートルより、20平方メートル広がります。

準耐火建築物等でも、第8項なら条件に当たるのですね。
第7項との違いを、整理したいです。

対象の敷地も適用先も、項ごとに違います。
次に、二つの項の違いを表にします。

第7項と第8項では対象の敷地と建築物と適用先がどう違うのか

共通の土台に並ぶ二つの建物のイラスト
二つの項は、似ていても、違う点があります。
違いを表にまとめます。
項目第7項第8項
対象の敷地防火地域の内外にわたる敷地準防火地域と、防火地域及び準防火地域以外の区域とにわたる敷地
建築物の条件敷地内の建築物の全部が耐火建築物等敷地内の建築物の全部が耐火建築物等又は準耐火建築物等
みなす地域全て防火地域内全て準防火地域内
適用する規定第3項第一号又は第6項第一号第3項第一号だけ
この二つの項は、敷地に着目した建蔽率の規定です。
建築物そのものが地域の内外にわたる場合は、第65条が別に定めています。
(建築基準法第六十五条第一項)建築物が防火地域又は準防火地域とこれらの地域として指定されていない区域にわたる場合においては、その全部についてそれぞれ防火地域又は準防火地域内の建築物に関する規定を適用する。
第7項と第8項は建蔽率の限度を決めるための規定で、建築物が地域の内外にわたるときの防火上の扱いは第65条が別に定めています
建蔽率の話と、建築物の防火上の構造の話は、別々に見る必要があります。
建築物の防火上の構造の基準は、第61条と第65条が定めています。

敷地の話と建物の話は、別々に見るのですね。
防火管理者は、なにを確かめればよいでしょうか。

建蔽率は建築基準法の話ですが、増築のときに関係します。
確かめたい点を、五つにまとめます。

敷地が地域の境にかかる建物で防火管理者はなにを確かめておくとよいのか

書類ばさみと敷地の地図のイラスト
第7項と第8項は、建蔽率の計算に関する規定です。
防火管理者の義務を直接に決めるものではありません。
ただし、増築や別棟の建築を考えるときには、関係する場面があります。 第7項と第8項は建築基準法の建蔽率の規定であり、消防法令の基準を緩めるものではありません
建蔽率の緩和を受けられても、消防用設備等の設置基準は別に判断します。
判断に迷うときは、所轄消防署への相談も欠かせません。
明日から次の点を確認してください。
  • 敷地が防火地域や準防火地域の境にかかっているかを、都市計画の資料や建築確認の図面等で確認して記録する。
  • 敷地内の建築物が、全て耐火建築物等か準耐火建築物等かを、確認済証や検査済証、建築士の資料などで確かめて控えておく。
  • 増築や別棟の追加のときは、敷地内の建築物の全部が条件に当たるかが変わらないかを、建築士や特定行政庁に事前に相談する。
  • 建蔽率の限度の算定の根拠を、建築士に確認して控えておく。
  • 消防用設備等の判断は、所轄消防署へ相談する。
建築基準法と消防法は別々の法律です。
建蔽率の話と消防の話を混同しないように、それぞれの窓口へ確かめておきましょう。

敷地と建物の状況を、まず図面で確認します。
増築の前に、相談してみます。

状況が分かれば、改修のときの相談も早くなります。
相談は、建築の窓口と消防の両方の窓口にしておくと安心です。

よくある質問

Q第7項は、準耐火建築物等でも使えますか?
A第7項は、建築物の全部が耐火建築物等であるときの規定です。準耐火建築物等が条件に入っているのは、第8項です。
Q敷地内に耐火建築物等でない建築物が一棟あると、どうなりますか?
A第7項は、敷地内の建築物の全部が耐火建築物等であるときと書いています。一棟でも当たらなければ、条件に当たりません。
Q第8項でも、建蔽率の制限が適用されない扱いになりますか?
A第8項が適用するのは、第3項第一号だけです。第6項第一号は入っていません。
Q防火地域の外側が準防火地域でも、第7項は使えますか?
A第7項の条文は、敷地が防火地域の内外にわたる場合とだけ書いています。外側の区域の種類は限定されていません。個別の判断は、建築士や特定行政庁に確認しましょう。

まとめ

✔建築基準法第53条第7項は、敷地が防火地域の内外にわたる場合に、敷地内の建築物の全部が耐火建築物等であるときは、敷地を全て防火地域内にあるものとみなすと定めています。
✔みなした敷地には、第3項第一号又は第6項第一号が適用され、第3項第一号では建蔽率の限度に十分の一が加わります。
✔第6項第一号は、限度が十分の八とされている地域の防火地域内にある耐火建築物等に、建蔽率の制限を適用しないと定めています。
✔計算例では、近隣商業地域で建蔽率60パーセントの300平方メートルの敷地は、限度が180平方メートルから210平方メートルになります。
✔第8項は、準防火地域と防火地域及び準防火地域以外の区域とにわたる敷地で、建築物の全部が耐火建築物等又は準耐火建築物等なら、敷地を全て準防火地域内とみなして第3項第一号を適用します。
✔二つの項は、みなす地域も、対象の建築物も、適用される規定も違います。
✔この条文が定めるのは建築基準法の話であって、消防法令の基準を緩めるものではありません。防火管理者は、敷地と建築物の状況を確認して記録します。

敷地と建物の状況を、確認しておく必要があるんですね。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第五十三条・第六十五条・建築基準法施行令第百三十五条の二十(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。敷地が地域の境にかかる場合の扱いは特定行政庁ごとに確認が必要な場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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