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敷地が二つの地域にまたがると容積率の限度はなぜ面積で按分するのか|建築基準法第52条第7項が定める二以上の地域にわたる敷地の扱いを解説

中高層の商業建築と低層の住宅が並ぶ街路の写真

敷地の中を、用途地域の境界線が通っている建物があります。
容積率の限度は、地域ごとに違う数値が定められています。
建築基準法第52条第7項が、その場合の限度を定めています。
どちらの数値を使うのかが気になります。
今回は建築基準法第52条第7項が定める敷地が二つの地域にまたがる場合の容積率の限度について、面積による按分の考え方と計算例を、防火管理者が押さえておきたい点とあわせて解説します。

敷地が二つの地域にまたがる建物があります。
容積率は、どちらの数値を使えばよいのでしょうか。

建築基準法第52条第7項に、面積で按分する考え方が定められています。
まず、条文から見ていきましょう。

按分というと、割合で計算するのですか。
計算の手順が気になります。

手順は、条文の書き方のとおりに進めます。
計算例も、あとで示しますね。

この記事の結論
  • 第7項は、敷地が二以上の地域、地区又は区域にわたる場合、各地域等の容積率の限度に、敷地内の各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下と定めています。
  • 按分に使う割合は、敷地のうち各地域等にある部分の面積を、敷地面積で割った数値です。延べ面積の割合ではありません。
  • たとえば、商業地域600平方メートルで400パーセント、第一種住居地域400平方メートルで200パーセントなら、敷地全体の限度は320パーセントです。
  • 前面道路の幅員による限度があるときは、地域ごとに限度を出してから按分します。
  • この条文は建築基準法の容積率の話で、消防法令の基準を緩めるものではありません。

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敷地が二つの地域にまたがるときに地域ごとの限度に面積の割合を掛けて合計する流れと消防法令の基準は別に判断することを示す図解

敷地が二つの地域にまたがると容積率の限度はどう決まるのか

敷地の区画を横切る境界線とその上に建つ建物のイラスト
用途地域は、道路や区画に沿って定められます。
ひとつの敷地の中を、地域の境界線が通ることがあります。
その場合の容積率の限度を、第7項が定めています。
まず、条文を確認しましょう。
(建築基準法第五十二条第七項)建築物の敷地が第一項及び第二項の規定による建築物の容積率に関する制限を受ける地域、地区又は区域の二以上にわたる場合においては、当該建築物の容積率は、第一項及び第二項の規定による当該各地域、地区又は区域内の建築物の容積率の限度にその敷地の当該地域、地区又は区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下でなければならない。
第7項は、敷地が二以上の地域、地区又は区域にわたる場合、各地域等の容積率の限度に、敷地内の各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて、合計した数値以下と定めています
対象になるのは、第1項と第2項の規定による容積率の制限を受ける地域、地区又は区域です。
そうした地域等にわたる敷地では、一つの数値で決めるのではなく、地域ごとの限度を出します。
そのうえで、敷地のなかの面積の割合を掛けて、合計します。
条文の「以下」は、その合計を超えてはならないという意味です。

地域ごとの限度を、面積の割合で足し合わせるのですね。
割合は、どう数えるのでしょうか。

割合の数え方も、条文に書かれています。
次に、分母と分子を見ていきましょう。

地域ごとの限度に掛ける面積の割合はどう数えるのか

二つの区画に分かれた敷地に二本の測定矢印を描いたイラスト
条文は、割合の数え方を、言葉で具体的に書いています。
分子と分母に、なにを置くのかを見ていきます。 割合の分子は、敷地のうち、その地域等の中にある部分の面積です。分母は、敷地全体の面積です
建物の延べ面積ではなく、敷地の面積で割ります。
すべての地域等の割合を足すと、1になります。 計算は、次の順で進めます。
一つ目に、地域ごとに、第1項と第2項の規定による容積率の限度を出します。
二つ目に、地域ごとに、敷地の部分の面積を敷地面積で割って、割合を出します。
三つ目に、限度に割合を掛けて、地域ごとの数値を出します。
四つ目に、その数値を全部足します。合計が、敷地全体の容積率の限度です。 条文は、建物がどちらの地域に寄って建っているかを、計算の要素にしていません。
敷地が二つの地域にわたっていれば、敷地全体で按分します。 建蔽率にも、第53条第2項に、同じ考え方の規定があります。
ただし、容積率と建蔽率は別の制限なので、それぞれの条文で別々に計算します。

限度の按分は、面積の割合で計算するのですね。
具体的な数字で確かめたいです。

数字を入れて、計算してみましょう。
まず、道路の影響がない場合からです。

計算例では容積率の限度はどれだけになるのか

高さの違う三つの積み木の山と真ん中の矢印のイラスト
敷地面積が1,000平方メートルの敷地を考えます。
600平方メートルが商業地域で、都市計画の容積率は400パーセントです。
400平方メートルが第一種住居地域で、都市計画の容積率は200パーセントです。
ここでは、前面道路の幅員による限度は考えません。 割合は、商業地域が600÷1,000で0.6、第一種住居地域が400÷1,000で0.4です
商業地域の分は、400×0.6=240パーセントです。
第一種住居地域の分は、200×0.4=80パーセントです。
合計は、240+80=320パーセントで、これが敷地全体の容積率の限度です。 延べ面積の限度は、1,000×3.2=3,200平方メートルです。
全部が商業地域なら4,000平方メートル、全部が第一種住居地域なら2,000平方メートルなので、その間の値になります。
面積の割合が変われば、限度も連動して変わります。 ただし、実際の計算は建築士が行うので、数値は読み方の例として見てください。
地域の境界線の位置は、都市計画図や特定行政庁で確かめる必要があります。

合計は320パーセントで、間の値になるのですね。
前面道路が狭いときは、どうなりますか。

前面道路の幅員による限度は、第2項が定めています。
地域ごとに、その限度を先に出します。

前面道路の幅員による限度があるときはどう按分するのか

二つの区画に分かれた敷地の前に広い道路と測定矢印を描いたイラスト
第7項が対象にするのは、第1項と第2項の規定による限度です。
第2項は、前面道路の幅員が12メートル未満の建築物の容積率を、幅員に係数を掛けた数値以下と定めています。
その条文を確認しましょう。
(建築基準法第五十二条第二項 抜粋)前項に定めるもののほか、前面道路(前面道路が二以上あるときは、その幅員の最大のもの。以下この項及び第十二項において同じ。)の幅員が十二メートル未満である建築物の容積率は、当該前面道路の幅員のメートルの数値に、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を乗じたもの以下でなければならない。
(同項第二号 抜粋)第一種中高層住居専用地域若しくは第二種中高層住居専用地域内の建築物又は第一種住居地域、第二種住居地域若しくは準住居地域内の建築物(略)十分の四(略)
(同項第三号 抜粋)その他の建築物十分の六(略)
第2項の係数は、第一種住居地域などでは十分の四、その他の建築物では十分の六です
前面道路が二以上あるときは、幅員が最大のものを使います。
特定行政庁が指定する区域では、別の係数になります。
ここでは、指定区域ではないものとして計算します。 前の計算例の敷地で、前面道路の幅員が6メートルの場合を考えます。
商業地域は、6×0.6=3.6で、360パーセントです。
都市計画の400パーセントより小さいので、360パーセントが限度です。
第一種住居地域は、6×0.4=2.4で、240パーセントです。
都市計画の200パーセントのほうが小さいので、200パーセントが限度です。 第1項と第2項は、どちらも上限なので、地域ごとの限度は小さいほうになります。
按分は、360×0.6=216と、200×0.4=80を足して、296パーセントです。
延べ面積の限度は、1,000×2.96=2,960平方メートルです。 順番には、注意が必要です。
都市計画の数値を先に按分すると320パーセント、道路の数値を先に按分すると312パーセントになります。
その小さいほうの312パーセントを取っても、296パーセントとは一致しません。
条文は、地域ごとの限度を出してから按分する書き方なので、その順で計算します。

地域ごとに限度を出してから、按分するのですね。
防火管理者は、なにを確かめればよいでしょうか。

第7項は、建築基準法の容積率の話です。
確かめたい点を、五つにまとめます。

敷地が二つの地域にまたがる建物で防火管理者はなにを確かめておくとよいのか

書類ばさみとチェックシートと建物の外形図のイラスト
第7項は、容積率の限度の計算に関する規定です。
防火管理者の義務を直接に決めるものではありません。
ただし、増築や用途変更を考えるときには、関係する場面があります。 第7項は建築基準法の容積率の規定であり、消防法令の基準を緩めるものではありません
敷地が二つの地域にまたがる建物では、増築や用途変更で、延べ面積が増える場面があります。
その延べ面積が、按分で出した限度の範囲に収まるかは、建築士や特定行政庁に確かめる必要があります。
消防用設備等の判断は別なので、所轄消防署への相談も欠かせません。
明日から次の点を確認してください。
  • 建物の敷地が二つ以上の地域にまたがっていないかを、建築確認の図面等や都市計画図で確認して記録する。
  • またがっている場合は、地域ごとの都市計画の容積率と、按分後の限度を、建築士に確認して控えておく。
  • 増築や用途変更で延べ面積が変わる予定があるときは、按分後の限度に収まるかを、建築士や特定行政庁に事前に相談する。
  • 前面道路の幅員による限度や、特定行政庁の指定区域の有無を、市町村や特定行政庁に確認する。
  • 消防用設備等の判断は、所轄消防署へ相談する。
建築基準法と消防法は別々の法律です。
容積率の話と消防の話を混同しないように、それぞれの窓口へ確かめておきましょう。

敷地の地域の状況を、まず図面で確認します。
増築や用途変更の前に、相談してみます。

按分後の限度が分かれば、改修のときの相談も早くなります。
相談は、建築の窓口と消防の両方の窓口にしておくと安心です。

よくある質問

Q敷地が二つの地域にまたがるとき、厳しいほうの数値に合わせるのですか?
A第7項は、厳しいほうにそろえるとは書いていません。各地域の限度に面積の割合を掛けた合計以下と定めています。
Q面積の割合は、延べ面積で数えるのですか?
A条文は、敷地の各部分の面積の敷地面積に対する割合と書いています。延べ面積ではありません。
Q前面道路の幅員による限度も、按分の対象になりますか?
A第7項は、第1項と第2項の規定による限度を対象にしています。地域ごとに両方の規定による限度を出してから按分します。
Q建物が一方の地域だけに建っている場合も、按分しますか?
A条文は建築物の敷地について書いており、建物の位置は計算の要素にしていません。敷地が二以上の地域にわたっていれば、敷地全体で按分します。

まとめ

✔建築基準法第52条第7項は、敷地が二以上の地域、地区又は区域にわたる場合、各地域等の容積率の限度に、敷地内の各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じた数値の合計以下と定めています。
✔地域ごとの限度は、第1項と第2項の規定で出したものを使い、厳しいほうにそろえるのではなく按分します。
✔割合は、敷地のうち各地域等にある部分の面積を、敷地面積で割って出します。
✔計算例では、商業地域600平方メートルで400パーセント、第一種住居地域400平方メートルで200パーセントなら、320パーセントです。
✔前面道路の幅員が6メートルなら、地域ごとの限度が360パーセントと200パーセントになり、按分の合計は296パーセントです。
✔按分は、地域ごとの限度を先に出してから行います。按分してから小さいほうを取る順にすると、数値が変わります。
✔この条文が定めるのは建築基準法の話であって、消防法令の基準を緩めるものではありません。防火管理者は、敷地の地域の状況と限度を確認して記録します。

敷地の地域の状況を、確認しておく必要があるんですね。
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按分後の限度が分かれば、増築や用途変更の相談も進めやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第五十二条・第五十三条(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。容積率の按分や地域の境界の扱いは特定行政庁ごとに確認が必要な場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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